2023年3月12日日曜日

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難―【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難

ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領

米国と自由連合協定を組むミクロネシア連邦のパニュエロ大統領が、太平洋で「政治的な戦争」を仕掛けていると中国を非難し、同国との外交関係の断絶も提唱する書簡をしたためていたことが12日までにわかった。

論議を招きそうな大胆な内容が交じる書簡は13ページの長さで、CNNも入手した。中国は台湾への侵攻を準備しているとし、この戦争が起きた場合、ミクロネシアの中立の立場を確保するため賄賂、政治的な干渉に加え、「直接的な脅し」さえかけていると指弾した。

また、中国に代わり台湾との外交樹立を検討したこともあると明かした。

パニュエロ氏は自国内で中国が進めるとされる政治的な戦争について、同盟関係の構築、経済的な方途や公共の場でのプロパガンダ流布などの公然たる活動に言及。さらに、「賄賂、心理戦争や恐喝」といった非公然活動にも触れた。

中国によるこの政治的な戦争が多くの分野で成功している理由の一つは、「共謀者になったり、沈黙を守らせるために我々が収賄されているからだ」と主張。「激しい表現だが、実態の正確な描写でもある」と強調した。

パニュエロ氏はこれまでも、南太平洋を含むインド太平洋で影響力の拡大を図る中国に対して警戒姿勢を見せ、その旨の発言も示してきた。

中国は近年、一部の島しょ国家で自らが関与するスタジアム、高速道路や橋梁などインフラ施設の建設を推進し、存在感の誇示を図っている。中国の習近平(シーチンピン)国家主席も2014、18両年に島しょ国家を歴訪し、政府高官の派遣にも踏み切っている。

南太平洋諸国を台湾から切り離す狙いもあるとされ、同地域では台湾を認める国が14カ国のうちの4カ国までに落ち込んだ。2019年にはソロモン諸島とキリバスが台湾を見限り、中国との国交樹立に転じていた。

この中でパニュエロ大統領は、中国が太平洋の10カ国の島しょ国家に申し出た広範な地域的な安全保障の枠組みにも反対の見解を表明。昨年5月には太平洋諸国の22人の指導者に書簡を送り、枠組みの提案は中国と外交的な関係を持つ島しょ国家を中国の勢力圏へさらに引き寄せる意図があると警告。

島しょ国家の主権が揺さぶられるほか、提案への調印は中国と西側諸国の間の緊張が高まる新たな冷戦をもたらしかねないと釘を刺していた。提案は結局、実現していなかった。

オーストラリア北東部に多く位置する太平洋の島しょ国家は軍事戦略上、米軍基地もある西太平洋の米領グアム島と米国の同盟国オーストラリアをつなげる重要な接続回路と長年位置づけられてきた。

パニュエロ氏は最近の総選挙で議席を失い、今後2カ月内に大統領を退任する予定。大統領は19年から務めていた。

一方、中国外務省の報道官は定例の記者会見でパニュエロ氏の書簡内容に触れ、「中傷や非難のたまもの」と反論。中国は国の規模の大小に関係なく全ての国の平等性を常に支持してきたことを強調したいとし、ミクロネシアが自らの事情に基づき開発の方途を選ぶことを終始尊重してきたとも続けた。

【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

中国の南太平洋での最近の動きについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中対立の最前線たる南太平洋 日米豪仏の連携を―【私の論評】米中対立の最前線は、すでに台湾から南太平洋に移った(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を以下に引用します。

その(中国の台湾侵攻には大きな犠牲が伴う)ため中国としては、軍事的侵攻は避け、台湾が持つ他国との国交をどんどん消していくことで、台湾に外交をできなくさせる狙いがあるのでしょう。

そうすることによって、台湾を国際社会から孤立させ、あわよくば、台湾を飲み込んでしまうとする意図があると考えられます。中国はそれぞれの国(南太平洋の島嶼国)に対し、中国と台湾の二重承認を許していません。まさに白か黒かのオセロゲームのようです。台湾を国際的に孤立させるため、中国は膨大な支援を通じて、台湾と断交し、自分たちと国交を結ぶように迫っているのです。

現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。
もちろん、中国は台湾統一を諦めたわけではありません。しかし、昨年暮れ米国が中国による台湾侵攻をシミレートした結果を公表しましたが、それはできないという結果が出ています。

さらに、中国は日米も攻撃して、日米が甚大な被害を被る可能性もありますが、それでも台湾侵攻はできないという結果になっています。

その事自体は、中国も認識しているでしょう。それでも無理をして台湾を武力侵攻すれば、中国海軍が崩壊する可能性もあります。だからこそ、中国は当面、南太平洋の島々に対して外交攻勢を強め、台湾の力を弱め、さらに軍事的要衝でもあるこの地域を中国の覇権が及ぶ地域にすることが予想されます。

この動きに対して、日本を含めた西側諸国も対応力を強めつつあります。AUKUS(オーカス)は、2021年9月にオーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国によって発足合意に至った軍事・安全保障上の同盟の枠組みです。太平洋を中心とする海域の軍事的主導権を握る対中国戦略の枠組みともされます。

AUKUSの枠組みには加わっていない日本も、中国の脅威を感じている点で米国やオーストラリアと立場を同じくします。22年5月23日に東京で行われた日米首脳会談では「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」という共同声明が発表されるなど、日米間の軍事面での関係は今後さらに強化されていくとみらます。

南太平洋における日米豪等の連携は既にとれているところがありますが、米国は、AUKUS加盟国ではないカナダに対してもそれを再確認しています。

米国とカナダは10日、インド太平洋地域の安全保障や経済などに関する初の対話を開き、南太平洋の島嶼(とうしょ)国や東南アジア諸国への関与を強化する方針で一致しました。米国家安全保障会議(NSC)が11日発表しました。カナダは昨年、中国を「秩序を乱す大国」と位置付けたインド太平洋戦略を策定しており、中国と覇権を争う米国と足並みをそろえました。

悪手するバイデン米大統領(左)とトルドー加大統領

南太平洋というと、かつてはこの海域の島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げました。それを題材とした「南太平洋波高し」という映画が今月ケープルテレビなどで放映されたそうですが、今日すぐに南太平洋で戦争が起こるなどとは思えませんが、中国の外交攻勢等や、日米加豪などのこれに対抗と、再びこの地域は波が高い状態になりつつあるといえます。

米カナダ両政府は、インド太平洋地域や南シナ海の安定を確保するため、東南アジア諸国連合(ASEAN)や地域協力機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」、太平洋の島嶼国を支援する枠組み「ブルーパシフィックにおけるパートナー」との協力や連携を強めることを確認しました。

対話は米国とカナダが地域への関与を深めることを目的に昨年10月の両国外相会談で開催を決定。初対話には米国のキャンベル・インド太平洋調整官とカナダのトーマス首相補佐官が出席しました。

日本もこの動きに呼応しています。日本政府は3月下旬に林芳正外相をソロモン諸島とキリバス、クック諸島に派遣する方向で調整を始めたと、2023年3月12日日曜、読売新聞が複数の政府関係者からの情報を引用し報じました。

日程は3月18日~22日となる見込みで、昨年、中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結し、中国が南太平洋地域での影響力を拡大しようとしていると、米国やオーストリアから懸念が示されていることを受けての歴訪となります。

林外相は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け3つの島国との協力を確認する意向で、安全保障面での協力についても提案することを検討していると報じられています。

映画「南太平洋波高し」のポスター 高倉健(左) 鶴田浩二(右)

南太平洋では、島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げた地域でもあります。今月は、これを題材とした「南太平洋波高し」という映画が、東映チャンネルで放映されていました。この地域、かつてのようにすぐに戦争になるという事は考えられませんが、中国の外交攻勢等とそれに対抗する日米豪加等が、火花を散らし、また波が高くなりそうです。

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