バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落
ロビン・リー(李彦宏)、2018年5月26日 |
中国のビリオネアであるロビン・リー(李彦宏)が率いる検索大手バイドゥは3月16日、ChatGPTの競合となることを目指す、独自のチャットボットの「Ernie Bot(アーニーボット)」を公開した。
バイドゥの北京本社で開催されたイベントで、54歳のリーはErnie Botの機能を説明した。しかし、この発表はライブデモではなく、あらかじめ用意されたさまざまなタスクをこなすボットの映像が流されただけだった。
そのため、参加者がその場でErnie Botと対話する機会はなかったが、バイドゥはこのサービスを16日から一部のユーザー向けに提供すると述べている。投資家はこの発表に感銘を受けなかった模様で、バイドゥの香港上場株は午後の取引で10%急落した後、6.4%安で日中の取引を終えた。
「当社のボットはまだ完璧とはいえないが、市場の需要を見た結果、リリースを決定した」とリーは語った。
香港のEverbright Securitiesの証券ストラテジストのKenny Ngによると、バイドゥがChatGPTを意識したプロダクトに取り組んでいることが最初に報じられたときに、市場の期待は非常に高く株価も上昇したという。2月のアナリスト向け電話会議でリーは、Ernie Botが検索エンジンだけでなく、動画サービスのiQiyi(愛奇芸)など、バイドゥのさまざまなサービスに徐々に統合されていくと述べていた。
近年は市場の影響力においてライバルに遅れをとっているバイドゥは、人工知能(AI)領域に注力して事業の多様化を図り、活力を取り戻そうとしている。同社の昨年第4四半期の売上高は予想を上回る48億ドル(約6400億円)を記録したが、売上の半分以上はオンラインマーケティングによるものだった。中国の経済成長が鈍化するなか、テンセントやTikTokの親会社のバイトダンスは、ブランドを自社のプラットフォームに誘致しようとしており、この分野の競争は激化している。
中国のチャットボットの限界
バイドゥはプレスリリースで、Ernie Botがビジネス文書や中国語の理解などの分野で優れていると述べている。同社のボットは、OpenAIが初期モデルのChatGPTをさらに進化させたChatGPT-4を発表したわずか2日後に発表された。マイクロソフトの支援を受けたOpenAIは、最新版のボットの安全性を高め、誤解を招いたり不適切と判断されるような回答をしないようにトレーニングしたと述べている。
しかし、中国ではChatGPTが利用できず、バイドゥやテンセント、アリババなどの大手がこぞってChatGPTを模倣したプロダクトを開発している。
リーは、Ernie Botのサービスの法的側面には触れなかったが、中国発のチャットボットは、デリケートな話題を避け、厳しい国内ルールに準拠することが求められる。ウォール・ストリート・ジャーナルが最近実施した調査によると、中国のチャットボットの多くは、すでに中国の指導者についての質問に答えることを拒否している。
【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!
このブログでは、以前ChatGPTの話題も掲載したことがあります。そうして、その中で中国のAIには限界があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!
中国ChatGPTに類似のChatYuanの画面 クリックすると拡大します |
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。
会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう
ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。
なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。
以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。
たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。
たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。
この記事でも述べましたが、経営学の大家ドラッカー氏は、イノベーションとは技術革新ではなく、社会を変えるものでなければならない、社会を変えるものでなけば、それはイノベーションとは呼べないとしています。
その意味では、中国のいわゆるイノベーションと呼ばれているものは、すべてが、技術革新ということができるでしょう。
そうして、その技術革新の目的は、社会などどうでもよく、中国共産党の幹部とその走狗が、経済的に豊になることと、中国の全体主義体制を維持することです。中国社会などどうでも良いのです。
ただ、中国政府の出すGDP等の統計は、ほとんど出鱈目だといわれており、本当はもっと低いとも言われています。
それは、無視して、この数字が正しいものとしても、中国の一人あたりのGDPは米国の1/6程度に過ぎないのです。
なぜこのようなことになるかといえば、米国においては様々な社会問題があることは事実ですが、それにしても、真の意味でのイノベーションが実行され、社会が少しずつであっても良くってきたし、これからも良くなり続けるからでしょう。
米国においては、中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などが進んでおり、それが多数の中間層を生み出し、それが活発に社会経済活動を行い、イノベーションを実施し、その結果として経済も発展してきたのです。
米国においては、あらゆる地域、あらゆる階層においてイノベーションがなされた結果、今日のような繁栄をみるようになったのです。無論、問題も多々ありますが、それでも多くの人は社会を良くすること、良くなるを前提として、日々生活しています。
これが時には行き過ぎて、社会に分断を招いたりしていますが、それでも中国と比較すれば、社会は日々進歩しています。これは、多かれ少なかれ、我が国の含めた自由主義陣営の国々に当てはまることです。だからこそ、米国に限らず、一人あたりのGDPでは多くの先進国が中国よりも、高いのです。ちなみに、中東欧諸国や台湾や韓国も中国よりは一人あたりのGDPは高いです。
ちなみに、日本は過去には金融政策を、過去も現在も財政政策を間違い続けており、そのため過去ほとんどGDPが伸びず、賃金も30年間も伸びませんでしたが、それでも一人あたりGDPでは中国よりは遥かに上です。
一方中国では、先程の述べたように、イノベーションはなされず、技術革新のみが行われ、一部の人間を経済的に豊にすることだけに注力し、社会はなおざりされたままです。中国の技術革新は、中共が掛け声をかけ、資金を投じて、一部の人間を経済的に豊にするだけで、社会はそのままです。そのため、中国では信じられないような拝金主義が横行しています。
それは、日本などの先進国でもある程度はありますが、程度問題であり、中国ほど酷くはありません。
ChatGPTのようなAIは、イノベーションによって社会変革をする環境が整っている、国や地域で、利用されて初めて真価を発揮するものと思います。中国のような、技術革新だけしようというところでは、真価は発揮し得ないでしょう。
確かに、言論の自由のない社会で、賢く、対話に長けたAIが生まれるとは想像がつかないです。
科学技術の発展によって、独裁国家の政治制度、少なくとも言論が自由を獲得する日が来る、と考えている人はいるかもしれないです。しかし、過去の中国はそうではありませんでした。
長い間、科学技術は誰にとっても公平で中立であると考えられてきました。確かに民主主義国家も、独裁国家も、技術があればミサイルやコンピューターなどを同じように生産できます。
しかし、科学技術が社会を良くすることに使われるのか、そうではないかで社会は随分違ってきたのです。科学技術でイノベーションを実現するか、そうではないかで、社会は随分異なるものになります。特に、イノベーションは二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、過去には経済成長できましたが、今後は成長できないでしょう。
チャットGPTのような自由な対話形式のAIが普及し始めたことで、この当たり前のことがも多くの人認識されるようになるでしょう。
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