2023年3月30日木曜日

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初―【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで、世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

英のTPP加盟、31日にも合意 発足11カ国以外で初

2018年3月8日、日本やカナダを含む11カ国は、環太平洋連携協定(TPP)に修正を加えた「包括的および先進的環太平洋連携協定(CPTPP)」に署名した

 環太平洋連携協定(TPP)に参加する日本など11カ国が31日にもオンライン形式で閣僚会合を開き、英国の加盟に大筋合意する見通しであることが分かった。複数の日本政府関係者が29日、明らかにした。発足時のメンバー以外では初となる。年内に、各国の閣僚がルールや新規加盟を議論する最高意思決定機関「TPP委員会」で正式に承認する見込みだ。


 TPPは、関税撤廃や知的財産などの統一的ルールにより自由貿易を推進する枠組み。今後は、英国と同様に加盟申請している中国や台湾の扱いが焦点となる。

 中国がアジア太平洋地域で影響力を拡大し、ルールの順守にも懸念があることから、日本は中国の加盟に慎重な立場を取っている。中国は台湾の加盟に反対している。一方、日本は英参加を足掛かりに、トランプ政権時代に離脱した米国の復帰に向けて機運を高めたい考えだ。

 英国は2021年2月にTPPへの加盟を正式に申請し、中国と台湾のほかウルグアイなどが続いた。英国の審査はこうした国々に対しての試金石となるため、加盟国が慎重に協議していた。

【私の論評】岸田首相は、TPPの拡大とそのルールをWTOのルールにすることで世界でリーダーシップを発揮すべき(゚д゚)!

TPPは、域内の関税撤廃・削減や投資の共通ルール策定などを行う協定。最終的な関税撤廃率は95~100%と高いうえ、知的財産の保護など広い範囲をカバー。例えばデジタル分野でソフトウエアの「ソースコード(設計図)」の開示を求めることを禁止し、巨大ITなど多国籍企業の活動への進出先の政府の介入を防ぐ内容を含みます。

日中韓豪や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する自由貿易圏「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の関税撤廃率が平均91%にとどまるのに比べ、「TPPは通商・投資ルールとしての水準が高い」(経産省筋)です。

TPPはもともと、シンガポールやニュージーランドなど4か国の協定をベースに交渉国を拡大し、日米豪、カナダ、マレーシアなどアジア太平洋地域の12か国で15年10月に合意した。しかし、米トランプ政権が「米国第一」を掲げて17年1月に離脱したため、18年末に11か国の「TPP11」として発効しました。

現在のTPP加盟国

英国が加われば、TPP加盟国の国内総生産(GDP)が世界のGDPに占める比率は現状の13%から16%超に高まります。

規模拡大効果は限定的ですが、欧州からの参加は高いレベルの国際貿易・投資ルールを、アジア太平洋を越えて広げる第一歩であり、日本としては、トランプ政権時代に世界的に後退した自由貿易の機運を再び盛り上げるきっかけとなります。さらに、米国の復帰に向けた呼び水にもなる可能性があります。

英国にとっては、欧州連合(EU)から2020年末に完全に離脱し、EU外と自由に通商交渉できるようになったばかりで、21年1月に発効した日英包括的経済連携協定(EPA)とともに、EU離脱のメリットを国民に分かりやすく示す目玉政策となります。

同時に、中国をにらんだ思惑も指摘されます。

そもそも、TPPは米オバマ政権時代、日米を中心に、高い自由化を掲げ、計画経済、統制経済が色濃く残る中国を牽制することも狙って合意した経緯がある。

関税引き下げや、外国企業の活動への介入の規制など高い目標を中国に突き付けることで、中国が受け入れれば中国の経済改革を進められるし、受け入れなければASEANなど他のアジア諸国との関係で中国に対して日米が優位に立てる――という狙いだった。

ところが、その後、状況は一変しました。2国間協議による「取引」を重視したトランプ政権がTPPを離脱し、後を継いだバイデン政権も、「自由貿易で国内の雇用が奪われた」という声が国内で根強いことから、TPP復帰には当面、消極的です。

他方、米国の混乱のスキを突くように、中国が動きました。20年11月、習近平主席がTPPへの参加を「積極的に考える」と表明しました。中国がにわかにTPPの厳しい条件を受け入れるのはこんなんですが、米国の方針が定まる前に手を挙げ、加入交渉で有利な条件を引き出したいとの思惑との見方が一般的です。

そのほか、韓国、台湾、タイも参加に関心を示すなど、英国の加入申請を含め、動きがあわただしくなっていました。

中国など1か国のためにTPPのルールを変えることは、ありえず、資本の自由な移動が制限されている中国は現在のままだと加入できる見込みは全くありません。

一方台湾については、TPPに加入することについて反対する国はありません。呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は昨年11月21日、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)加入を推進する過程で、公開または非公開の場で台湾を支持しないと表明した国は「今のところない」と明らかにしました。立法院(国会)外交・国防委員会での答弁。

呉釗燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)

台湾のTPP加入申請を巡り、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席したオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相が同年同月18日、台湾のTPP加入を支持するか取材陣に聞かれ、「承認された国家しかTPPに加入できない」と発言。これを受け、野党や無所属の立法委員(国会議員)から関心が寄せられました。

最大野党・国民党の温玉霞立法委員から、台湾のTPP加入に対して支持を表明した国の数について聞かれた呉氏は、具体的な数字は挙げられないとしつつ、今のところ、ほぼ全ての参加国が台湾との非正式協議に応じていると説明。当初は台湾のことを理解していなかった国や台湾の加入に比較的冷ややかな態度を示していた国も、台湾側の努力によって支持する姿勢を見せるようになったとしました。

呉氏は、台湾の加入審査が進められるのは、英国の加入審査が完了した後になるとの見方を示しました。

外交部(外務省)は同年同月18日、アルバニージー氏の発言の直後にオーストラリア政府から「台湾のTPP加入に対する立場に変更はなく、台湾を含め、TPPの高いレベルを満たす全てのエコノミーの加入を歓迎する」との弁明を受けたことを明らかにしていました。

台湾がTPPに加盟することで日本と世界には、以下のようなメリットがあります。

まずは台湾市場の拡大です。台湾のTPP加盟によって、TPP加盟国との間で関税が撤廃され、自由貿易が促進されることで、日本企業や世界の企業が台湾市場にアクセスしやすくなります。

また、台湾のTPP加盟によって、日本と台湾の企業間で技術的な相乗効果が期待できます。両国の企業が協力し、製品開発や生産技術の向上に取り組むことで、世界の製造業にとってもプラスの影響を与えることができます。特に、半導体の分野では、それが期待できます。

以前このブログでも指摘したように、米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

英国、台湾に続き、タイ、インドネシア、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。

最悪、米国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。

TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国もあからさまに反対できないでしょう。

この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに随分前から倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相(中央右 当時)と茂木敏充経済再生担当相(同左)

安倍元総理は、米国が加入しなくてもTPPを発効させることに成功しました。しかし、安倍元首相には、この方面で積み残したことがたくさんあります。

TPPの参加国を増やして、拡大すること。TPPの規定をWTO、すなわち世界の貿易ルールにすることなどです。私は、故安倍元総理は、この両方が成就することを望んていたと思います。

岸田政権は、こうした安倍政権の積み残しを実現して、世界でリーダーシップを発揮していただきたいです。


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