2025年2月27日木曜日

トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任―【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは?

トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任

まとめ
  • 鉱物資源合意と安全保障: トランプ大統領は、28日にゼレンスキー大統領と鉱物資源の権益に関する合意文書に署名予定と発表。一方、米の権益が宇にあることが安全保証につながると述べつつも米ではなく欧州が担うべきだとした。
  • ロシアへの対応: トランプ大統領は、宇の安全は欧州の責任と強調し、停戦協議ではロシアのプーチン大統領も譲歩が必要だと述べた。
  • ゼレンスキー大統領の期待: ゼレンスキー大統領は、米との交渉に期待を寄せ、平和実現には米の継続的支援と力が必要だと訴えた。

トランプ・ゼレンスキー会談 AI生成画像

アメリカのトランプ大統領は、今月28日にウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、鉱物資源の権益に関する合意文書に署名する予定だと発表しました。トランプ大統領は、アメリカの権益がウクライナ国内にあることで、ウクライナの安全確保にもつながると述べつつも、安全の保証については「ヨーロッパが責任を負うべきだ」と強調しました。特に、ウクライナの安全保障に関しては、地理的な近さを理由にヨーロッパが主導するべきだという姿勢を示し、ロシアのプーチン大統領にも譲歩が必要だと指摘しました。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、今週金曜日に予定されているアメリカとの交渉に向けて準備を進めていると述べ、トランプ大統領との会談にも期待を寄せています。ゼレンスキー氏は、アメリカの支援がウクライナの平和と安全の鍵であると強調し、「平和への道には力が不可欠だ」と訴え、引き続きアメリカの支援を求めました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは?

まとめ

  • 米国の政策転換: ウクライナ侵攻3年目の国連総会特別会合で、米国はロシア非難決議案に反対票を投じ、紛争の早期終結を重視する姿勢を示した。
  • トランプ氏の影響: ゼレンスキー大統領批判を強め、中国対抗を優先する戦略が背景にあり、欧州依存脱却の一貫した姿勢を見せている。
  • 経済・国内事情: エネルギー市場の変動やインフレなどの国内政治的圧力が、米国の対ロシア政策に影響を与えた。
  • 国際的な反応: 欧州諸国は米国の急激な政策転換に追いつけず、スロベニアなどが懸念を表明している。
  • 日本への影響: 日本はブレない姿勢を示しているが、トランプは、ウクライナ戦争の和平条件にこだわるより、今戦争を止め、その後は中国を含むどの国にも侵略を許さない力による平和を求めようとしている。

  • ロシアによるウクライナ侵攻3年に合わせて開かれた国連総会の特別会合=24日

    米国は24日、ロシアによるウクライナ侵攻から3年目を迎えた国連総会特別会合で、ロシアを非難する決議案に反対票を投じた(賛成93、反対18、棄権65)。これまでウクライナ支援を政策の柱としてきた米国が、ここにきて紛争の早期終結を重視する姿勢を明確にしたのである。

    この動きの背景には、トランプ大統領の存在がある。彼は近頃、ゼレンスキー大統領への批判を強め、米政権はロシアとの戦争終結に向けた協議を進めている。トランプ氏はかつて、2018年の国連演説でドイツなどがロシアの天然ガスに依存する姿勢を痛烈に批判していたが、今回の決議姿勢はその過去の発言とは一線を画しているようにもみえる。

    しかし、実は彼の一貫性は揺らいでいない。トランプ氏は2018年当時から中国を最大の競争相手と見なしており、欧州がロシア依存を脱し、軍事費を増やし、もっと強硬に対峙していれば、ウクライナ戦争は防げたという考えを持ち続けているのだ。欧州の力による平和の対応不足に対する苛立ちと、中国への対抗姿勢が、彼の対ロ政策の変化の背後にある。

    2018年国連で演説するトランプ大統領(当時)

    さらに、米国の戦略転換には経済的な事情も絡んでいる。エネルギー市場の変動や国内の政治的圧力が、かつての対ロ強硬路線を揺るがしたといえる。「エネルギー市場の変動」とは、2022年以降、バイデン政権によりロシア産天然ガスの供給不安や価格高騰が欧州経済を揺さぶり、米国がエネルギー輸出で利益を得る一方、ロシアとの対立がエネルギー安定を脅かすリスクを高めた状況を指す。ただし、バイデン政権と異なり、トランプ政権では、エネルギー政策を変更し、エネルギーによるロシアの優位性は崩れ、交渉における大きな障害の一つが取り除かれたといって良い状況になっている。

    「国内の政治的圧力」は、インフレや経済停滞への不安が高まる中、国民や議会の一部がウクライナ支援のコスト増に反発している現状を意味する。いつまでも、戦争を長引かせることは明らかに米国にとっては得策とはいえない。こうした声を無視できないトランプ政権は、国内優先の政策を打ちだしたといえる。

    そして、何よりもトランプ氏の頭にあるのは、中国だ。2024年11月、彼の選挙公約は「中国の経済的・軍事的台頭を抑えるため、欧州の紛争にリソースを割く余裕はない」と明言している。側近たちも「ロシアよりも中国封じ込めに集中すべきだ」と語っており、政権のスタンスは明確である(ワシントン・ポスト、2024年12月10日付)。

    その証拠に、同日、米国は国連安全保障理事会で同様の決議案を提出し、賛成10票(ロシア含む)で採択された。しかし、英国やフランスなど欧州5カ国は棄権。この結果に、欧州諸国は危機感を募らせ、トランプ氏の「紛争の早期終結」路線が国際社会でも影響力を増していることを示している。

    フランスのマクロン大統領は同日、トランプ氏と会談し「ロシアへの強硬姿勢が和平に必要だ」と主張した。マクロンに発言を訂正されつつも、トランプ氏はこれを一蹴した。また、スロベニアのズボガル大使はBBCに「米国の急激な政策転換に欧州は追いついていない」と語り、EUが独自の平和戦略を模索する必要性を指摘した(BBC、2025年2月26日)。


    そして今、2月28日にゼレンスキー大統領が訪米し、トランプ氏と会談する予定だ。トランプ氏はウクライナの鉱物資源を活用した経済協定を提案し、紛争の早期終結を狙う。しかし、ゼレンスキー氏は安全保障の保証を求めるだろう。両者の意見が一致する可能性は低く、部分的な進展があったとしても、包括的な合意に至るのは難しいかもしれない。

    一方、日本の石破首相は2月24日、ウクライナが主催した首脳会合にオンライン参加し、「ロシアによる攻撃を強く非難し、ウクライナが関与する形で公正な平和を実現することが重要だ」と声明を出した。日本はブレない姿勢を見せている。ロシアに不法占拠されている北方領土を有する日本として当然の対応かもしれない。

    しかし、米国の動きは日本の政界に動揺を広げている。特に、国連総会特別会合で採択された決議案は、ロシアの侵攻が世界の安定に与える深刻な影響を懸念し、平和的解決を求める内容だったにもかかわらず、米国はロシアを「侵略者」と呼ばず、ウクライナの領土一体性に触れない案を出したが、修正案の採択を受け棄権した。

    結局、米国は国連安全保障理事会でも同様の決議案を提出し、賛成10票で採択された。トランプ氏の影響力が高まり、日本のメディアや政府は米国の急激な政策転換に対応できていない。

    例えば、朝日新聞は2月26日付の社説で「米国の意図が不明確」と困惑を示し、外務省関係者は「ウクライナ支援の枠組み見直しが急務」と漏らしているが、具体策は見えてこない(NHK、2025年2月27日)。

    ただ、トランプ政権がもう後戻りすることはない。戦争によって奪われた領土が平和交渉などで戻って来るようなことは「例外中の例外」に近い稀なケースである。また、国連は2018年のトランプの演説での警告に何らの対応もできなかったし、トランプ氏自身も期待していなかったが、最後通牒として警告を発したのだろう。ミンスク合意はウクライナ東部紛争を解決しようとした試みだったが、曖昧さや双方の不信感から失敗に終わりブダペスト覚書のような過去の約束も破られ、結局国連などによる、いわゆる国際社会のルールは理念としては機能するが、現実の力関係を覆すほどの強制力を持たない。それが厳しい現実だ。

    そのようなことをさせないためには、力による平和により、最初から領土を奪われないようにするしかない。習近平、プーチン、金正恩も力による平和は理解するが、理念など通用しない。であれば、ウクライナはいつまでも西欧諸国の支援に頼り続けるより、自ら核武装すべきだろう。そうしなければ、和平が成立したとしても、後々再度ロシアに侵攻されないという保証はない。ウクライナには原発が存在し、核兵器の原料プルトニウムが存在し、また核兵器を製造する技術力もある。

    今は理念を語る、EUや日本の首相もいずれにそれに気づくことになるだろう。ウクライナ戦争の和平条件にいつまでも拘泥するよりも、今の時点で戦争をやめさせ、それ以降の侵略は中国を含めいかなる国にも絶対にさせないという、力による平和を実現しなければ、世界秩序はいずれ完全に崩れ去るだろう。これが、トランプの考えだ。これに対して、日本も含めた西側諸国も、備えを固めなければならない。世界は、再び力による平和が重視される時代に戻るのだ。というより、現在の状況は、ソ連崩壊により、一時小康状態が続いていただけなのかもしれない。

    【関連記事】

    <ウクライナ戦争和平交渉の成否を分ける3つのカギ>プーチンが求める「大国に相応しい地位」をどう失わせるか、あり得る目標とは―【私の論評】トランプ氏激怒!プーチンへの強硬批判と報復策―経済制裁・ウクライナ支援・露外交孤立化の可能性 2025年2月25日

    米露首脳が電話会談、ウクライナ戦争終結へ「ただちに交渉開始」合意 相互訪問も―【私の論評】ウクライナ和平は、米国が中国との対立に備えるための重要な局面に 2025年2月13日

    ロシアの昨年GDP、4・1%増…人手不足で賃金上昇し個人消費が好調―【私の論評】ロシア経済の成長は本物か?軍事支出が生む歪みとその限界 2025年2月9日

    支援の見返りに「レアアースを」、トランプ氏がウクライナに求める…「彼らは喜んで供給するだろう」―【私の論評】ウクライナ、資源大国から経済巨人への道を歩めるか 2025年2月5日

    ウクライナ危機は米中間選挙の争点になるのか―【私の論評】バイデン政権の大失敗であるアフガン撤退も、ウクライナ危機も中間選挙の大きな争点になる 2022年3月9日

    0 件のコメント:

    トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任―【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは?

    トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任 まとめ 鉱物資源合意と安全保障 : トランプ大統領は、28日にゼレンスキー大統領と鉱物資源の権益に関する合意文書に署名予定と発表。一方、米の権益が宇にあることが安全保証につながると述べつつも米ではなく欧州が担うべきだとし...