まとめ
- 「パレスチナ人の正当な権利の侵害」とサウジ、イスラエルは歓迎も
- 今週始まった停戦第2段階の交渉、トランプ氏発言で危うく-関係者
ガザ |
トランプ氏はガザの再建に米国が関与し、米軍を展開する可能性も示唆しており、この提案がガザの将来を巡る議論を引き起こす結果となった。アラブ諸国の間では、この提案が交渉に与える影響について懸念が広がっている。特に、地域の人々が移住に強く反発することが予想され、イランなどがこの反発を利用して地域の緊張を高める可能性がある。また、国際的には強制的な移住が新たな苦しみを生むとする声が多く、ドイツやフランスも移住提案に反対している。
このように、トランプ氏のガザ管理案は、イスラエルとアラブ諸国の間で異なる反応を引き起こし、国際社会でも大きな議論を呼ぶ結果となった。
- トランプの提案は、ガザ問題を解決することが目的ではなく、アメリカの戦略的リソースを中国との最終対決に集中させるための布石である。
- 彼の政策は「アメリカ第一」を強調し、対中戦略を最優先し、他の懸念事項を整理している。
- カナダやメキシコとの貿易関係も、アメリカ製造業の強化と中国への依存から脱却するための一環として進められた。
- フェンタニルの流入問題を受け、アメリカはカナダやメキシコに圧力をかけ、薬物の中継地を防ごうとしている。
- トランプのガザ提案は、中東でのアメリカの過剰な関与を避け、アジア太平洋地域への戦略的シフトを図るものだ。
トランプ前大統領が提案した「ガザからのパレスチナ人移住」と「米国によるガザ統治」は、表面上イスラエルの支援を目的とするものに見えるが、その背後には中国との最終対決に備えた戦略的な狙いが隠されている。彼は、CIAやFBIなどのインテリジェンスを信用していないが、軍や保守系シンクタンクなどの最高水準の信頼できるインテリジェンスを活用でき、この提案が無理筋であることは最初から理解しているはずだ。
にもかかわらず彼がこの提案をする理由は、決してそのすべての実現を目指したものではなく、むしろアメリカの戦略的懸念事項を整理し、リソースを中国との対決に集中させるための布石だ。これを理解するためには、彼の過去の外交・経済政策や発言を紐解く必要がある。
トランプ氏の2025年の大統領就任演説で、「アメリカの黄金時代がいま始まる」と語り、「我々は世界の警察ではなく、自国の利益を最優先する」と述べたことは、彼が掲げる「アメリカ第一」の本質を物語っている。これは、アメリカが世界のあらゆる問題に介入するのではなく、自国の利益と安全を最優先するという方針を再確認したものだ。その中で、中国との最終対決が最大の焦点であり、アメリカが直面する最も重要な課題であることは明白である。
2017年に就任したトランプは、対中貿易戦争を本格化させ、関税措置を次々に発動した。中国の経済的台頭を抑制し、アメリカの製造業を再活性化させる狙いがあった。特に、2020年には国家安全保障を理由に、中国製品の排除や華為技術(Huawei)への制裁を強化した。アメリカ企業に対しても、中国への投資制限を命じるなどして、明確に中国の影響力を削ごうとしたのだ。これらの政策は、すべて中国の台頭を抑えるためのものだった。
また、トランプ氏は「中国が世界を支配しようとしている」と警告し、米国とその同盟国が対中戦略に備えるべきだと繰り返し強調した。南シナ海や台湾海峡での中国の動きを警戒し、米軍のプレゼンス強化を命じたことは、その一環である。台湾との関係強化や武器供与の増加も、間接的に中国に対する圧力をかける手段として進められた。
2025年の再選に向けて、トランプは「アメリカ第一」の政策をさらに強化している。その中で、「アメリカの衰退を終わらせ、世界に誇るべき国を再建する」というメッセージを訴え、国家の安全保障を回復させることを最優先課題としている。つまり、アメリカの戦略的リソースを中国との最終対決に向け、他の不必要な懸念事項を排除することが最も重要だと認識している。
カナダやメキシコとの貿易関係も、この戦略の一部である。特に、USMCA(新NAFTA)の締結は、アメリカ製造業の強化と中国への依存から脱却するための重要な手段だった。また、関税問題についても、アメリカは中国から流入するフェンタニルをめぐる問題に対応するため、カナダやメキシコに圧力をかけ、薬物の中継地としての役割を果たさせないようにした。これも対中戦略と直接的に結びついている。
また、パナマにおける中国の影響力拡大を懸念し、アメリカはその影響力を強化するための外交圧力を強めた。これも中国との競争においてアメリカが有利な立場を維持するための一環である。結局、カナダ、メキシコ両国も、パナマもトランプの意向を理解し譲歩している。最初は不法移民問題で、最初は元気いっぱいだったコロンビアの大統領も譲歩している。
トランプ氏のガザに関する提案も、この戦略の延長線上にあると考えるべきだ。中東での不必要なコストを削減し、リソースを中国との最終決戦に集中させるための一手だ。ガザ問題を整理することによって、アメリカは中東への過剰な関与を避け、代わりにそれらのリソースをアジア太平洋地域の戦略に振り向けることができる。
最後に、この提案は、トランプ氏が再選を目指す中で、アメリカの優先順位を明確にし、国内外に向けて「アメリカ第一」の立場を強調するための戦略的なメッセージだと言える。ガザ問題はその一部であり、真の狙いは「アメリカの戦略的優位を取り戻すこと」そのものである。
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