まとめ
- 攻撃概要: 2025年3月11日未明、ウクライナがモスクワに過去最大のドローン攻撃。343機使用、3人死亡、17人負傷、4空港閉鎖。
- ロシアの反応: ロシアは91機をモスクワ州、126機をクルスク州で撃墜。外務省は協議タイミングを指摘、報復提案も。
- 被害: 住宅7軒破壊、クルスク原子力発電所付近で撃墜、周辺空港も閉鎖だがパニックなし。
2025年3月11日未明、ウクライナがロシアの首都モスクワに対し過去最大規模のドローン攻撃を実施した。少なくとも3人が死亡、17人が負傷し、モスクワ州では火災が発生した。モスクワの4つの主要空港全てが一時閉鎖され、運航が停止。ロシア国防省は343機のドローンを撃墜し、91機がモスクワ州上空、126機がクルスク州上空で迎撃され、クルスク原子力発電所付近でも撃墜があったと発表した。
ロシア外務省は、この攻撃がサウジアラビアでの米国とウクライナの高官協議に合わせて行われたとし、兵器供給国に責任があると非難。モスクワ州知事は、7軒の集合住宅が破壊されたとテレグラムで報告。航空当局はモスクワとヤロスラブリ、ニジニノヴゴロドの空港を閉鎖した。モスクワ市長は攻撃の規模を過去最大と強調し、ロシア側は民間インフラへの攻撃として非難。元国防次官は新型ミサイル「オレシニク」での報復を提案した。メディアは住宅火災の動画を公開したが、モスクワ市内でパニックは見られなかった。
【私の論評】ウクライナのモスクワ攻撃が停戦交渉を揺さぶる!核の影と日本の覚悟
まとめ
- 停戦交渉の進展: 3月11日、サウジアラビアで米国とウクライナが30日間の即時停戦案で合意。米国は軍事援助と情報を再開し、ロシアの同意を待つ段階に突入。
- モスクワ攻撃の警告: ウクライナが343機のドローンでモスクワを攻撃。停戦前のロシアへの圧力と「破れば報復」のメッセージが込められている。
- ロシア全土への脅威: モスクワ到達でウクライナの攻撃力露呈。2000km飛行可能なドローンで、シベリアもウラルも標的になり得る。
- クルスクの核示唆: クルスク原子力発電所近くで126機撃墜。ダーティボムや核兵器を匂わせ、ロシアに心理的打撃を与えた可能性がある。
- 日本の教訓:やり方の是非は別にして、 ウクライナの覚悟と力を日本も見習うべき。守る気概がなければ舐められるだけだ。
3月11日、サウジアラビアのジェッダで米国とウクライナの高官が顔を突き合わせた。米国がぶち上げた30日間の即時停戦案に、ウクライナが「乗る」と腹を決めたのだ。これを受けて米国は、ウクライナへの軍事援助と情報提供のストップを即刻解除すると宣言。共同声明で「ロシアが首を振らなきゃ平和は来ない」と言い切り、モスクワへの働きかけに動き出した。停戦はロシアが「よし」と言えば即発効、戦闘を根こそぎ止めるのが狙いだ。トランプ政権の「戦争を終わらせる」という大看板の下、交渉は今、まさにモスクワに照準を合わせている。ロシアの返事はまだ聞こえてこないが、停戦への道が一歩近づいたのは間違いない。
そんな矢先に起きたのが、ウクライナによるモスクワへのドローン攻撃だ。343機が飛び交い、モスクワの空を切り裂いたこの攻撃は、停戦を前にしたロシアへの強烈な警告だろう。ウクライナ国家安全保障防衛会議の報道官アンドリー・コバレンコが吠えた。「モスクワへの大規模攻撃は、プーチンに空での停戦が必要だと叩き込むシグナルだ」。交渉を前に、ロシアに「舐めるな」と圧をかける意図が透けて見える。過去を振り返れば、2024年8月、クルスク州でウクライナ軍がロシア領に踏み込み、38平方マイルを一時奪った。あの時も、ロシアに「本土だってやられるぞ」と見せつけた。今回のモスクワ攻撃も、停戦を破れば地獄が待っているというメッセージに違いない。
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ウクライナのドローン攻撃に逃げ場のないプーチン AI生成画像 |
モスクワがやられたということは、ウクライナがロシア国内のいずれの地域でも攻撃力を持っている証だ。343機ものドローンがモスクワにたどり着いた現実を前に、ロシアの防空網がザルだったことがバレてしまった。2025年1月にはリュザンで石油精製所が燃え、ロシア側は121機を迎撃したと主張したにもかかわらず、火の手が上がった。2024年9月のモスクワ攻撃でも、石油精製所が炎上して民間人が死んでいる。Xでは、ウクライナのドローンが2000km飛べる上に250kgの爆弾を積めると噂が飛び交う。モスクワはキーウから600kmだが、シベリアだろうがウラルだろうが、どこでも狙えるということだ。ロシアにはもう、逃げ場はない。
クルスク原子力発電所近くでの攻撃は、もっと際どい話だ。ロシア国防省は、126機がクルスク州で落とされ、一部が発電所そばで撃ち落とされたと報告している。将来的にダーティボムや核兵器をチラつかせる狙いがあるかもしれない。2022年10月、ロシアは「ウクライナがダーティボムを作る」と騒いだが、国際機関に否定された。だが今回は、核施設のすぐ近くを狙った。
2023年10月には、クルスクの核廃棄物施設にドローンが突っ込んで、ロシアが「核テロ」と叫んだことがある。250kg積めるドローンなら、放射性物質をばらまくダーティボムはすぐに作れる。ウクライナには原発があり、プルトニウムも手に入る。長崎の原爆はプルトニウム製で、旧ソ連の技術を引き継ぐウクライナなら、その気になれば似たもの比較的短期で作れる可能性がある。クルスクでの攻撃は、ロシアに「核戦争だってあり得るぞ」とモスクワに頭を抱えさせる一撃だったろう。
2023年10月には、クルスクの核廃棄物施設にドローンが突っ込んで、ロシアが「核テロ」と叫んだことがある。250kg積めるドローンなら、放射性物質をばらまくダーティボムはすぐに作れる。ウクライナには原発があり、プルトニウムも手に入る。長崎の原爆はプルトニウム製で、旧ソ連の技術を引き継ぐウクライナなら、その気になれば似たもの比較的短期で作れる可能性がある。クルスクでの攻撃は、ロシアに「核戦争だってあり得るぞ」とモスクワに頭を抱えさせる一撃だったろう。
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ドローン攻撃を受けるクルスク原発付近 AI生成画像 |
日本も目を覚ますべきだ。ウクライナのように、自分の国を守る覚悟と力を見せつけなれば、いつまでたっても中露北に舐められたままだ。やり方の是非は別にして、ウクライナのこの肝っ玉だけは見習うべきだ。日本は、現状のままでは本気で生き残る覚悟があるのかと、批判されても仕方ないかもしれない。
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