2025年3月28日金曜日

日本の所得水準、50年後は世界45位に後退 日経センター―【私の論評】外国人流入は日本を救うどころか滅ぼす!日銀の金融緩和こそ賃金アップの鍵

日本の所得水準、50年後は世界45位に後退 日経センター

まとめ
  • 日本経済研究センターの50年予測によると、日本の1人当たり実質GDPは2024年の29位から2075年には45位に低下し、世界の中位群に後退。成長にはAI活用や雇用改革が必要。
  • 日本全体の実質GDPは24年の4位(3.5兆ドル)から75年に11位(4.4兆ドル)に下がり、平均成長率は71〜75年で0.3%にとどまる。米国と中国はAIで生産性を上げ、1位と2位を維持。
  • 人口減少が成長を抑制し、日本の合計特殊出生率は75年まで1.1に低下。純移民数は年23万〜24万人で、75年の総人口は約9700万人、外国人1600万人に。成長維持には外国人流入が不可欠。
  • 1人当たりGDPは75年に4万5800ドル(約690万円)でG7最下位となり、韓国(21位)や中東欧諸国などに抜かれる。
  • 世界成長率は21〜30年の3.3%から71〜75年の1.3%に鈍化。新興国の影響力が増し、BRICS合計GDPは75年に米国の1.4倍に拡大。
日本経済研究センター 代表理事・会長 喜多 恒雄氏

日本経済研究センターは今後50年の長期経済予測を発表。1人当たり実質GDPで日本は2024年の29位から2075年には45位に低下し、世界の中位群に後退。成長にはAIなどデジタル技術の活用や雇用改革が必要とした。日本の実質GDPは24年の4位から75年には11位に下がり、成長率は0.3%に低迷。米国と中国はAI活用で生産性が上がり、GDP1位と2位を維持。日本はAI効果が弱く、G7最下位が続く。

人口動態では、日本の合計特殊出生率は75年に1.1に低下、総人口は9700万人に減少。移民純流入は年23万〜24万人で、世界5位の受け入れ国となるが、成長維持には外国人流入が不可欠。韓国の1人当たりGDPは日本を上回り、中東欧諸国などにも抜かれる。

世界全体の成長率はAIで21〜30年は3.3%だが、71〜75年には1.3%に鈍化。東アジアの人口は6億人以上減少し、アフリカが40年代半ばに上回る。新興国の影響力拡大で、75年のGDPはインド3位、インドネシア5位、BRICS合計は米国の1.4倍に。米国はG7連携やCPTPP・EU統合で対抗が必要と指摘した。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】外国人流入は日本を救うどころか滅ぼす!日銀の金融緩和こそ賃金アップの鍵

まとめ
  • 「外国人流入が成長に不可欠」は誤り。全体GDPは増えても、1人当たりGDPは労働力増加だけでは上がらず、資本希薄化で下がる。BorjasやOttavianoらの研究で、低スキル移民が賃金と生産性を下げる実証がある。
  • 賃金上昇には日銀の金融緩和が有効。総需要を刺激し、労働市場を逼迫させることで賃金が上がる。世界標準のマクロ経済学の原則にもとづけば積極的緩和を支持。
  • 日本の賃金30年停滞は日銀の失策が原因。デフレ放置と緩和不足で需要が低迷。OECDデータで他国が20〜30%賃上げの中、日本は横ばい。
  • アベノミクス初期の緩和で賃金上昇が見られたが、消費税増税と日銀の躊躇で失速。対照的にFRBは大胆な緩和で賃金を伸ばした。
  • 日経センターレポートは経済学を無視した暴論。外国人頼みは1人当たりGDPを下げ、日本を貧しくする。日銀の緩和こそ解決策なのに、それを否定するレポートは日本を滅ぼす毒だ。
成長維持には外国人流入が不可欠????

「成長維持には外国人流入が不可欠」という記述は、1人当たりGDP(≒一人あたりの所得)を考慮すると明らかな間違いだ。全体のGDPは労働力が増えれば上昇する可能性がある。しかし、1人当たりGDPは労働力増加だけでは上がらない。資本が希薄化すれば逆に下がるのがマクロ経済学の基本だ。

Borjasの研究では、米国の移民流入が全体GDPを増やす一方、1人当たりGDPは移民のスキル次第で低下することが実証されている。労働供給が増えると賃金が下がり、生産性も落ちる場合がある。OttavianoとPeriの分析でも、低スキル移民が既存労働者の賃金を圧迫し、1人当たりGDPを下げるケースが確認されている。

資本ストックが労働力増加に追いつかない場合、1人当たりGDPは停滞する。Acemogluらの研究がこの点を明確に示している。移民の質が生産性向上につながらなければ意味はない。

Docquierの国際比較では、高スキル移民がなければ1人当たりGDPの上昇は期待できない。日本のような経済でも、スキル選抜がなければ効果は薄い。外国人流入が成長の最低条件という主張は誤りだ。生産性向上や資本蓄積が成長の鍵であり、労働力の量だけでは不十分である。全体GDPと1人当たりGDPを混同した明らかな過ちである。

ここで、賃金を上げるための施策は、外国人流入ではなく、日銀による金融緩和策を継続することであることを、世界標準のマクロ経済学の観点と、日本の他国にはない特殊事情観点からさらに解説する。特に、日本の賃金が過去30年以上も上がらなかったのは、日銀の金融政策が間違え続けたためである点に焦点を当てる。

世界標準のマクロ経済学では、賃金上昇は労働需要の増加に依存する。ケインズ経済学やニューケインジアンモデルに基づけば、総需要が不足すると企業は雇用を増やさず、賃金も上がらない。金融緩和はマネーサプライを増やし、総需要を刺激する。これにより失業率が下がり、労働市場が逼迫して賃金が上昇する。リフレ派の経済学者クルーグマンは、デフレ下では積極的な金融政策で需要を喚起すべきだと主張する。日本でも主流派経済学者といわれる人々の論点は話しにならいが、世界標準のマクロ経済学に準拠する高橋洋一や田中秀臣が同様の見解を示し、日銀の消極的な政策を批判してきた。

日本銀行

日本の賃金停滞の原因は、日銀がデフレを放置し、金融緩和を十分に行わなかったことだ。1990年代以降、日本はゼロ金利政策を導入したが、マネタリーベースの拡大が不十分で、デフレ期待が根付いた。フィリップス曲線の観点から見れば、インフレ率が低すぎると賃金上昇圧力が生まれない。

実際、1997年の消費税増税や2000年代の量的緩和打ち切りは、景気回復を阻害し、企業に賃上げの余力を与えなかった。OECDデータによれば、日本の名目賃金は1997年から2020年までほぼ横ばいであり、米国やドイツでは20〜30%上昇したのと対照的だ。

アベノミクスの初期(2013〜2015年)には、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)を始め、インフレ率が一時1%を超えた時期には、実質賃金がプラスに転じた企業もあった。しかし、2014年の消費税増税で景気が失速し、日銀が追加緩和を躊躇した結果、賃金上昇は止まった。対照的に、米国のFRBは2008年危機後に大胆な量的緩和を続け、失業率低下と賃金上昇を実現した。世界標準のマクロ経済学者の岩田規久男(元日銀副総裁)は「日銀がインフレ目標2%を本気で追わなかったことが賃金停滞の元凶」と指摘する。

外国人流入に頼るより、金融緩和で需要を喚起する方が賃金上昇に直結する。他国と日本の違いは、日銀の金融政策のみと言っても過言ではない。賃金停滞の核心は、日銀がデフレを放置し、積極的な緩和を怠ったことだ。

OECDデータや他国との比較、理論的裏付けからも、日銀の失策が決定的な差を生んだ。労働市場や生産性の問題も、その根底には金融政策の失敗があり、他国が同様の問題を抱えつつ賃金を伸ばした事実がこれを証明する。微細な例外(財政政策の影響など)はあるが、主要因として日銀の金融政策の特異性を超えるものはない。


日本は現在インフレ気味ではあるが、これは主にコストプッシュ型(エネルギーや輸入価格の上昇)であり、需要牽引型ではない。ニューケインジアンモデルでは、持続的な賃金上昇には総需要の拡大が必要だ。日銀が金融緩和を継続し、インフレ期待を高めれば、企業は投資を増やし、労働需要が上がる。これが現状でも原理が当てはまる証拠だ。米国の2021〜2022年のインフレ期(CPI6〜9%)でも、FRBの緩和策が需要を支え、賃金が年5%上昇した例がある。日本も同様に、エネルギー・資源価格高騰の対策を行いつつ緩和を維持すればインフレを賃金上昇に変えられる。外国人流入に頼る必要はない。

日本経済研究センターのレポートの主張はマクロ経済学の初歩すら理解していない。1人当たりGDPと全体GDPの区別もできず、「労働力が増えれば成長する」と安直に結論づけるのは、データも理論も無視したど素人レベルの戯言だ。日本の資本ストックが追いつかない中、外国人流入を増やせば、1人当たりGDPは下がり、デフレがさらに悪化する。無論賃金も下がる。

こんな政策を「最低条件」と持ち上げるのは、経済を数字で読めない無能の証明だ。日銀が金融緩和で需要を喚起すれば、外国人頼みなど不要なのに、それを無視して移民にすがるのは、日本の未来を貧しくするだけだ。アベノミクスでさえ緩和不足で失敗したのに、このレポートは30年の教訓をまるで学んでいない。

国力を削ぐような愚策を「成長」と呼ぶなら、そんな成長はゴミ箱に叩き込め! 日銀がまともな金融緩和を続ければ、日本は自力で立ち直れる。それを否定するこのレポートは、日本を亡国の淵に突き落とす毒だ。こんなものを信じる奴は、日本の敵だ!

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