まとめ
- 中国船舶科学研究センター(CSSRC)が深さ4000mで海底ケーブルを切断できる小型装置を開発し、中国の最新潜水艇と統合可能。
- 香港紙が初公開と報道、台湾やバルト海でのケーブル損傷事案が続き、グレーゾーン攻撃や通信不安定化の懸念が浮上。
- CSSRCは海洋資源開発目的と主張するが、戦略拠点付近での切断は地政学的危機を引き起こす可能性がある。
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AI生成画像 |
台湾やバルト海で海底ケーブル損傷事案が続き、グレーゾーン攻撃の懸念が浮上。米国グアムなど西太平洋の戦略拠点付近でケーブルが切断されれば通信が不安定化する恐れがあるが、CSSRCは海洋資源開発への貢献を目的と主張している。
【私の論評】中国の海底ケーブル戦略と西側の対潜戦力:隠された意図を暴く
まとめ
- 中国の海底ケーブル陸揚げ地点は上海、広東省(広州・深圳)、青島に集中し、通信インフラの要所だ。米国はこれを監視対象と認識している。
- 通信途絶を狙うなら、深海より陸上拠点をミサイルで攻撃する方が効果的だが、中国は深海ケーブル切断技術を公表し、技術力と抑止力を誇示する。
- 中国の潜水艦技術は沈没事故(例: 周級核潜水艦)で課題が露呈し、ASW能力も発展途上。この弱点を補う非対称戦術としてケーブル切断が浮上。
- 西側のASW能力は強化中(例: 米国監視網改修、AUKUS、英ドレッドノート潜水艦)。これが中国の焦りを誘い、ケーブル切断を戦略的選択肢に。
- 米海軍大学のライル・ゴールドスタインは、中国が西側のASW優位性に対抗し、非対称戦術で影響力を拡大する可能性を指摘。ケーブル切断がその一例だ。
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海底ケーブルマップ |
日本で海底ケーブルの陸上接続点は、東京湾周辺や千葉、神奈川に集中している。東京が経済と通信の中心だからだ。APCN-2やTGN-Pacificがここに繋がる。地理的な利便性とインフラ集積が背景にある。地震対策で大阪や九州にも一部あるが、東京近郊が主力だ。詳細は非公開だが、通信戦略の要である。この地上施設が破壊されれば、通信が途絶える。
そして青島だ。山東省にあって、北東アジア向けのケーブル、例えばJCNやNCPがここに接続される。これらの場所は、中国の通信インフラの心臓部だ。海底ケーブルが陸上ネットワークと結ばれる戦略的な要所である。ただし、具体的な施設名や位置はベールに包まれている。通信事業者や政府が厳しく管理し、詳細は公開されない。だから正確な場所をピンポイントで特定するのは至難の業だ。セキュリティのため、こうした拠点は厳重に守られ、場合によっては分散もされている。
米国の情報当局は、この事実をしっかり握っているだろう。上海、広州、深圳、青島。これらは単なる都市ではない。国際データ伝送のハブであり、地政学と経済の要衝だ。米国は中国の海底ケーブル網やその技術の動きを目を離さず見ている。中国船舶科学研究センター(CSSRC)が開発したケーブル切断装置や、中国企業がケーブル運用に関わる動きを、危険なシグナルと捉えている。
米国の情報当局は、この事実をしっかり握っているだろう。上海、広州、深圳、青島。これらは単なる都市ではない。国際データ伝送のハブであり、地政学と経済の要衝だ。米国は中国の海底ケーブル網やその技術の動きを目を離さず見ている。中国船舶科学研究センター(CSSRC)が開発したケーブル切断装置や、中国企業がケーブル運用に関わる動きを、危険なシグナルと捉えている。
例えば、ファーウェイ・マリンが絡むプロジェクトには、監視や情報収集のリスクがあるとして、米国は真っ向から反対してきた。報道や公開情報によれば、米国は中国の海洋活動やインフラ展開を監視するプログラムを進めている。当然、中国の陸揚げ地点もそのターゲットだ。具体的にどこまで掴んでいるかは機密だから明らかではない。だが、米国の関心と技術力を考えれば、これらの地点が見逃されているはずがない。可能性は極めて高い。
もし通信をぶった切るなら、深海のケーブルを切るより、陸上の拠点をミサイルで叩く方が断然効果的だ。深海での作業は技術的に難しく、時間もかかる。だが、陸上の接続点は手が届きやすい。一撃で複数のケーブルを潰せる。なのに中国はなぜ深海ケーブル切断技術を大々的に公表するのか。その答えは、技術の誇示と抑止力だ。深さ4000mで動く装置は、中国の海洋工学の凄さを示す象徴だ。
もし通信をぶった切るなら、深海のケーブルを切るより、陸上の拠点をミサイルで叩く方が断然効果的だ。深海での作業は技術的に難しく、時間もかかる。だが、陸上の接続点は手が届きやすい。一撃で複数のケーブルを潰せる。なのに中国はなぜ深海ケーブル切断技術を大々的に公表するのか。その答えは、技術の誇示と抑止力だ。深さ4000mで動く装置は、中国の海洋工学の凄さを示す象徴だ。
深海での隠密作戦は責任を追及されにくい。陸上攻撃のような直接的な火種を避け、柔軟に動ける戦略を手にしている。海洋資源開発を口実にすれば、国際的な批判もかわしやすい。中国では最新潜水艦の沈没事故が話題だ。2024年の周級核潜水艦沈没疑惑や、2003年の明級潜水艦事故がある。潜水艦技術に穴があるのは明らかだ。静粛性や推進技術で、米国やロシアに後れを取っている。対潜戦(ASW)技術もまだまだだ。この弱点を埋めるため、ケーブル切断能力を非対称戦術として打ち出している可能性がある。
中国人民解放軍海軍(PLAN)は潜水艦の近代化を急ぐが、事故や限界が次々と露呈している。周級潜水艦の沈没疑惑は、設計や運用のミスを疑わせる。訓練不足や品質管理の甘さが原因かもしれない。ASW能力を高めようと、海底センサー網や無人潜水艇(UUV)を開発しているが、米国のソナーやP-8ポセイドン哨戒機には及ばない。この差が、ケーブル切断を頼りにする理由かもしれない。
この見方を裏付ける専門家がいる。米海軍大学のライル・ゴールドスタインだ。彼は中国の潜水艦技術が西側に遅れていると断言する。だが、非対称戦術としてのケーブル切断が戦略の鍵だと見ている。西側のASW優位性に対抗するため、直接ぶつからず影響力を広げる手段として、中国がこれを使う可能性を指摘する。ゴールドスタインの分析は、中国の海洋戦略が弱点を逆手に取った柔軟さを持つと強調する。
中国人民解放軍海軍(PLAN)は潜水艦の近代化を急ぐが、事故や限界が次々と露呈している。周級潜水艦の沈没疑惑は、設計や運用のミスを疑わせる。訓練不足や品質管理の甘さが原因かもしれない。ASW能力を高めようと、海底センサー網や無人潜水艇(UUV)を開発しているが、米国のソナーやP-8ポセイドン哨戒機には及ばない。この差が、ケーブル切断を頼りにする理由かもしれない。
しかも、西側のASW能力はどんどん伸びている。これが中国を焦らせている可能性は大きい。米国は2023年に海底監視網を強化し、AUKUS協定でオーストラリアに核潜水艦技術を渡した。2025年のSea Dragon演習では日本やインドと手を組む。イギリスのBAEシステムズは、2025年3月20日、ドレッドノート原子力潜水艦の1番艦「ドレッドノート」のキールをバロー・イン・ファーネス造船所に据え付けたと発表した。英国海軍史上最大の潜水艦だ。西側のASWが強まる中、中国は潜水艦の弱さを補うため、ケーブル切断を前面に出して劣勢をカバーしようとしているのだろう。
海底ケーブルには軍事情報も流れているし、さらに潜水艦探査センサーなどに繋がれていることにも留意が必要だ。これを破壊されれば、当然のことながら、ASW能力はある程度削がれることになる。
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ドレッドノートは、イギリス海軍が2030年代初頭からの配備に向けて建造中の原子力弾道ミサイル潜水艦の艦級 |
この見方を裏付ける専門家がいる。米海軍大学のライル・ゴールドスタインだ。彼は中国の潜水艦技術が西側に遅れていると断言する。だが、非対称戦術としてのケーブル切断が戦略の鍵だと見ている。西側のASW優位性に対抗するため、直接ぶつからず影響力を広げる手段として、中国がこれを使う可能性を指摘する。ゴールドスタインの分析は、中国の海洋戦略が弱点を逆手に取った柔軟さを持つと強調する。
彼の『The National Interest』(2015年8月17日)の記事「A Frightening Thought: China Erodes America's Submarine Advantage」から引用しよう。「中国海軍は、これまで弱点だった対潜戦(ASW)能力を大きく改善している。この動きは、西側の潜水艦優位性を脅かす。とくに中国が非対称戦術を使えば、従来の海軍力のバランスを崩す戦略を取る可能性がある。」この言葉は、ケーブル切断が潜水艦技術の遅れを補う現実的な選択肢であることを示唆する。結論だ。中国がの意図や戦略にもよるが、ASWの遅れを補う意図がケーブル切断装置開発公表の裏にある可能性は高い。
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