2025年1月10日金曜日

<主張>海底ケーブル切断 深刻な脅威と見て対応を―【私の論評】実は、海底ケーブルは安保上・軍事上の最重要インフラ!日本はこれを守り抜け

<主張>海底ケーブル切断 深刻な脅威と見て対応を

まとめ
  • 台湾の海巡署は、中国人乗組員の貨物船が海底ケーブルを切断した疑いで捜査を開始し、海底ケーブルの重要性と日本への影響を強調している。
  • 中国民間船による海底ケーブルの破損が増加しており、グレーゾーンの破壊工作の可能性が指摘されている。
  • 日本政府は、中国に説明責任を求めるべきであり、海底ケーブル問題を安全保障の重要課題として国際的な連携を強化する必要がある。

AI生成画像

 台湾の海巡署は、中国人が乗組員の貨物船が台湾北部の海域で通信用の海底ケーブルを切断した疑いがあると発表し、捜査を開始した。海底ケーブルは国家の安全や経済を支える重要なインフラであり、有事やその前には敵国の攻撃対象となる可能性がある。日本は、このような問題を他国の事例として軽視すべきではない。

 疑惑の貨物船はカメルーン籍で、船主は香港籍、船員は全員中国人である。船は韓国の釜山港に向かっており、海巡署は韓国に協力を求めて捜査を進めている。日本の通信の99%は海底ケーブルを介して行われており、台湾有事の際には、日本に繋がる海底ケーブルも切断されるリスクがある。これにより、世界との通信が閉ざされる可能性があるため、非常に重大な問題である。

 最近、台湾周辺では中国民間船による海底ケーブルの破損が多発しているとの専門家の指摘があり、これがグレーゾーンの破壊工作の一環である可能性が指摘されている。自民党の萩生田光一元政調会長は、意図的に海底ケーブルを切断している事例が増えているとの見解を示し、日本政府は中国に対して説明責任を求めるべきであると訴えている。

 また、バルト海でも昨年末にフィンランドとエストニアを結ぶ海底ケーブルが損傷し、ロシアの関与が疑われている。NATOはこの地域での軍事的なプレゼンスを強化すると表明しており、日本も海底ケーブル問題を安全保障の重要な課題として捉え、国際的な連携を進める必要がある。監視やケーブルの防護、迅速な復旧の手立てを講じることが求められている。

 上の記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】実は、海底ケーブルは安保上・軍事上の最重要インフラ!日本はこれを守り抜け

まとめ
  • 海底ケーブルは通信インフラだけでなく、国家安全保障にも関わる重要なインフラである。
  • 米国の統合海底監視システム(IUSS)や日本のSOSUSは、海中活動の監視や潜水艦の探知を目的とした高度な監視技術を提供している。
  • 自然災害や人為的要因による海底ケーブルの破損が多発しており、冗長性の向上や迅速な修理体制の整備が求められている。
  • 中国の民間船による意図的な海底ケーブル破損の疑いが浮上しており、監視体制の強化や国際法の整備が必要である。
  • 海底ケーブルの保護と監視の強化は、日本と米国の戦略的選択肢であり、国際的な安定にも寄与する重要なテーマである。
IUSS AI生成画像

海底ケーブルと聞くと、通信インフラとしての側面が強調されがちだが、その実態はそれだけではない。海底ケーブルには、センサーを付属した監視システムも存在する。たとえば、米国の統合海底監視システム(IUSS:Integrated Undersea Surveillance System)がその代表例である。

このシステムは、海底に設置されたセンサーや監視機器を用いて海中の活動を監視・追跡するためのものである。主に潜水艦の探知を目的としており、敵潜水艦やその他の水中脅威を早期に発見する技術を提供している。また、複数のセンサーから得られるデータを統合し、リアルタイムで状況を把握することで迅速な意思決定を可能にし、国家の防衛戦略に寄与している。

IUSSは、米海軍の作戦能力を向上させるために欠かせない役割を果たしている。システムは、北極海のグリーンランド海、ノルウェー海、バレンツ海、大西洋の北大西洋、地中海、インド洋、さらには太平洋の北太平洋、南太平洋に設置されており、基本的に海底ケーブルを用いてデータの伝送や通信を行っている。

日本も、統合海底監視システムとして独自のシステムを運用している。このシステムは一般的にSOSUS(Sound Surveillance System)と呼ばれ、防衛機密の中でも最高級に位置付けられている。日本のSOSUSは、米国のシステムと同様に海底ケーブルを用いて構築されており、広範囲にわたる海中音響の監視が可能となっている。

現在判明している設置箇所は津軽海峡と対馬海峡であるが、南西諸島方面、特に宮古海峡を中心に設置が進められていると考えられる。2013年に就役した敷設艦「むろと」によって、システムの拡張と性能向上が図られている。具体的な性能は不明だが、米海軍のシステムが条件次第で最大1,000km先の潜水艦音を探知できるとされていることから、日本のシステムも同様の能力を持っていると推測される。

日米協力の観点から、日本のSOSUSは米国のシステムと連接している可能性が高く、これにより日本周辺海域における潜水艦の監視能力が強化されている。また、最新の技術開発として、OKI(沖電気工業)が「海面から海底に至る空間の常時監視技術と海中音源自動識別技術の開発」を進めており、より高度な海洋監視システムの構築が期待される。

沖電気工業の水中音響計測施設「SEATEC NEO

これらのシステムは、中国をはじめとする周辺国の海洋活動の監視や、日本の海洋安全保障の強化に重要な役割を果たしている。海底ケーブルを用いたこの高度な監視システムにより、日本は自国の領海および周辺海域の安全を確保するための手段を獲得している。

海底ケーブルを介して流れる情報には、軍事的な戦略や作戦に関する重要なデータも含まれる可能性がある。しかし、具体的な情報の内容やそのセキュリティについては、国家機密として保護されているため、詳細は公にされていないことが一般的である。

米国と日本は、海底通信ケーブルの重要性を深く認識し、その保護に向けて包括的な取り組みを展開している。両国は法制度の見直しから技術的な監視、国際協力に至るまで、多角的なアプローチで海底ケーブルの安全を確保しようとしている。

米国では連邦通信委員会が2024年11月に海底ケーブル管理法制の抜本的な見直しを決定し、変化する技術、経済、国家安全保障の環境に対応しようとしている。日本も同様に、通信事業者と連携し24時間365日の継続的な監視体制を構築している。

両国は定期的な点検と迅速な修理体制を重視しており、陸上および海中での目視点検、専門技術者による状態確認を実施している。米国は水中ドローンを活用した監視技術も導入し、日本は海底ケーブル敷設船の即応体制を整えている。

国際協力の観点からは、国際電気通信連合や国際ケーブル保護委員会と連携し、情報共有や共同演習を通じて脅威に対処する体制を強化している。特にクアッド・パートナーシップを通じて、オーストラリア、インド、米国と共同で海底通信ケーブルのセキュリティと回復力の向上に取り組んでいる。

サイバーセキュリティの分野でも、両国は海底ケーブルに対する攻撃リスクを重大な脅威と認識し、サイバー防御の強化と危機管理計画の策定に注力している。これらの取り組みは、単なる国内のインフラ防衛にとどまらず、グローバルな通信ネットワークの強靭性向上に貢献している。

米国と日本の海底ケーブル保護への取り組みは、技術、法制度、国際協力の側面で相互に補完し合いながら、世界の通信インフラの安全性確保に重要な役割を果たしている。両国の連携は、急速に変化する国際通信環境において、より強固で信頼性の高いネットワークの構築に向けた重要な取り組みとなっている。

しかし、海底ケーブルの破損が多発している主な理由は、自然災害、人為的要因、技術的限界、そして老朽化である。地震や台風などの自然現象、漁業活動や船舶の事故、海底環境の厳しさ、長期使用による経年劣化などが複合的に作用している。これらの問題に対処するため、複数のケーブルルートの確保による冗長性の向上、耐久性の高い材料や設計の採用、国際協力の強化、モニタリング技術の向上、法的規制の強化、迅速な修理体制の整備などが行われている。

近年、中国の民間船による意図的な海底ケーブル破損の疑いが浮上しており、新たな対策が必要となっている。2024年11月にはバルト海で、2025年1月には台湾北東部沖で、中国籍の船舶による海底ケーブル破損事案が報告された。これらの事案に対する対抗策として、以下のような取り組みが考えられる。

イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は台湾の大手通信業社、中華電信及び海洋委員会海巡署の話として、1月3日午前、1隻のカメルーン船籍の貨物船が北部、野柳の北東の国際水域で海底ケーブルを損傷させたと伝えた

まず、海底ケーブル周辺の監視体制を強化し、不審な船舶の動きを早期に検知する必要がある。各国の海軍や沿岸警備隊との連携を深め、必要に応じて警告や立ち入り検査を行うことも重要である。また、国際法の整備を進め、意図的な海底ケーブル破損行為を明確に違 法化し、厳しい罰則を設けることも検討すべきである。

さらに、ケーブルの物理的な保護を強化するため、より深い海底への埋設や防護カバーの改良などの技術的対策が必要である。同時に、衛星通信などの代替手段の開発・整備を進め、海底ケーブルへの依存度を下げることも長期的な対策として重要である。

これらの対策を総合的に実施することで、海底ケーブルの信頼性と耐久性を向上させ、破損のリスクを軽減することが可能になる。しかし、完全に破損を防ぐことは困難であり、継続的な努力と技術革新、そして国際社会の協力が不可欠である。

海底ケーブルは、単なる通信の手段ではなく、国家の安全保障や経済活動に直結する重要なインフラである。その保護と監視の強化は、未来に向けた日本と米国の戦略的な選択肢であり、国際社会全体の安定にも寄与するものである。海底ケーブルを巡る戦略的な動きは、今後ますます注目されるべきテーマであり、引き続き議論を深める必要がある。 

【関連記事】

中国海軍の「アンテナ山盛り軍艦」が日本に超接近!怪しい外観を自衛隊が撮影 鹿児島の“目と鼻の先”に出現―【私の論評】日本は情報収集艦所有とシギント能力強化で国際社会での立ち位置を強化せよ 2025年1月9日


0 件のコメント:

<主張>海底ケーブル切断 深刻な脅威と見て対応を―【私の論評】実は、海底ケーブルは安保上・軍事上の最重要インフラ!日本はこれを守り抜け

<主張>海底ケーブル切断 深刻な脅威と見て対応を まとめ 台湾の海巡署は、中国人乗組員の貨物船が海底ケーブルを切断した疑いで捜査を開始し、海底ケーブルの重要性と日本への影響を強調している。 中国民間船による海底ケーブルの破損が増加しており、グレーゾーンの破壊工作の可能性が指摘され...