2023年10月26日木曜日

民間で唯一「潜水艦の目」開発拠点、33年ぶり新装 進む艦艇の無人化 ソナー需要爆上がり!?―【私の論評】日本が誇る水中音響技術、世界トップクラスへ(゚д゚)!

民間で唯一「潜水艦の目」開発拠点、33年ぶり新装 進む艦艇の無人化 ソナー需要爆上がり!?

まとめ
  • 海に設置された水中音響計測施設「SEATEC NEO」が完成
  • 海水の自然な状態を反映した試験が可能
  • 水中音響機器の開発・試験に貢献
  • 日本の海洋防衛能力の向上に期待
  • 世界トップクラスの水中音響技術の実現に期待
 

 沖電気工業(OKI)が33年ぶりにリニューアルした水中音響計測施設「SEATEC NEO」は、大型化が進む自立型無人潜水機(AUV)や感覚走査型無人潜水機(ROV)、無人潜水艇(USV)などのUUV(Unmanned Underwater Vehicle:無人潜水艇)のテストに対応できる設備を備えています。

 従来の施設では、開口部が小さく大型の機器を吊り下げることが難しかったため、バージの外で試験を行うことが多かったといいます。しかし、SEATEC NEOでは開口部が広く、最大2tまでの機器を吊り下げることができるため、屋内でも安定した試験が可能になりました。

 また、使用可能な電力の容量もアップし、より多くの機器を同時に使用できるようになりました。さらに、屋上のソーラーパネルで発電した電力を施設内で蓄電し、24時間連続で監視カメラや気象観測装置を稼働させることができるようになりました。

 OKIは、海洋事業への参入を視野に、SEATEC NEOを拠点に海洋データプラットフォームの事業化を目指しています。

 具体的には、風向、風速、気温、湿度、降雨量、水温、塩分濃度、溶存酸素量、日照などのデータを年間通じて取得し、海洋情報を必要とする漁業関係者へのデータ提供や、新たな事業創出などに活用していく計画です。

 SEATEC NEOは、OKIの海洋事業拡大に向けた重要な拠点となると期待されています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本が誇る水中音響技術、世界トップクラスへ(゚д゚)!

水中音響計測施設は、潜水艦等の目ともいわれる海中音響機器等が海中でどのように動作するかを調べるための施設です。海中音響機器は、海水の音響特性や、海流や潮流などの環境条件の影響を受けるため、これらの条件を再現した状態で試験を行うことで、水中音響機器の性能を正確に評価することができます。

その中でも、「SEATEC NEO」は海上に設置されているというか、船のように移動できる特殊なものです。

SEATEC NEOの内部

沖電気工業がリニューアルした水中音響計測施設「SEATEC NEO」に関して、軍事的、地政学的な意味を掲載します。

まず、軍事的な意味から掲載していきます。AUVやROV、USVは、いずれも無人水中システム(UUV)と呼ばれるもので、潜水艦や艦船の代わりに海中での偵察や攻撃を行うことができます。近年、これらの機器は大型化・高性能化が進んでおり、より高度な任務を遂行できるようになっています。

SEATEC NEOは、これらの大型化・高性能化したUUVのテストに対応できる設備を備えているため、海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力向上に大きく貢献すると考えられます。

具体的には、SEATEC NEOは以下の点で海上自衛隊の軍事力向上に寄与すると考えられます。大型化したUUVのテストが可能になる

SEATEC NEOは、従来の施設よりも開口部が広く、最大2tまでの機器を吊り下げることができるため、大型化したUUVのテストが可能になります。これにより、海上自衛隊はより高度な任務を遂行できる大型UUVを開発・運用できるようになるでしょう。より安定した試験が可能になります。

SEATEC NEOは、従来の施設よりも波浪の影響を受けにくい場所に設置されているため、より安定した試験が可能になります。これにより、UUVの性能をより正確に評価できるようになり、開発の効率化にもつながるでしょう。より多くの機器を同時にテスト可能になる

SEATEC NEOは、従来の施設よりも使用可能な電力の容量がアップしているため、より多くの機器を同時にテスト可能になります。これにより、UUVの開発・試験のスピードアップが期待できます。

また、SEATEC NEOは海洋データプラットフォームの事業化も視野に入れており、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これらのデータは、海上自衛隊の運用や訓練にも活用できると考えられます。

このように、SEATEC NEOは海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力向上に大きく貢献する可能性を秘めた施設と言えるでしょう。

SEATEC NEOの整備は、自衛隊が今後本格的にUUVを活用することを暗に示していると言えるでしょう。

近年、UUVは急速に技術革新が進んでおり、潜水艦や艦船の代わりに海中での偵察や攻撃を行うことができるようになりました。また、UUVは人命や艦船を危険にさらすリスクが低いため、自衛隊にとって非常に魅力的な兵器となっています。

SEATEC NEOは、これらの大型化・高性能化したUUVのテストに対応できる設備を備えているため、自衛隊がUUVを本格的に運用していくための重要な拠点となるでしょう。

日本のUUV「OZZ-5 自律型水中航走式機雷探知機」模式図

具体的には、SEATEC NEOは以下の点で自衛隊のUUV運用に貢献すると考えられます。

・UUVの開発・試験の加速
SEATEC NEOは、大型化したUUVのテストが可能であるため、自衛隊はより高度なUUVを開発・運用できるようになるでしょう。また、より安定した試験が可能であるため、UUVの性能をより正確に評価できるようになり、開発の効率化にもつながるでしょう。
・UUVの運用能力の向上
SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これらのデータは、UUVの運用や訓練にも活用できるため、自衛隊のUUV運用能力の向上につながるでしょう。
なお、海上自衛隊は2022年3月に、UUVの運用を本格化するための「無人水中システム運用構想」を策定しています。この構想では、2030年代までに大型UUVを導入し、海上自衛隊の潜水艦や艦船の能力を向上させることを目標としています。

SEATEC NEOの整備は、この構想を実現するための重要な取り組みと言えます。

SEATEC NEOは海に設置されていますが、中国やロシアはこのような施設はなく巨大な水槽で行っています。水槽で行う水中音響計測では、水槽内の海水の状態を人工的に制御することができます。例えば、水温や塩分濃度、濁度などを一定に保つことで、より正確な試験結果を得ることができます。

ちなみに、日本にも水槽の水中音響計測施設が存在します。代表的な施設としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 三菱重工水中音響試験場(三重県伊勢市)
  • 東芝海洋音響研究所(茨城県那珂市)
  • 日本大学水中音響研究所(神奈川県藤沢市)

三菱重工の水中通信機器の音響特性を計測する世界最大級の無響水槽

これらの施設は、主に民間の企業や大学によって運営されており、UUVやソナーシステムなどの開発・試験に活用されています。

一方、SEATEC NEOは海に設置されている(船のように移動できる)ため、海水の自然な状態をそのまま反映した試験結果を得ることができます。これは、実海域での運用を想定した試験を行う上で非常に重要です。

また、SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えています。これは、水槽では実現できない機能であり、SEATEC NEOの大きな強みと言えるでしょう。

ちなみに、米国にもSEATECH NEOのように海に設置された施設があります。

その名は、Naval Undersea Warfare Center (NUWC) Keyport(ワシントン州)です。この施設は、米国海軍によって運営されており、潜水艦や艦船のソナーや、UUVなどの開発・試験に活用されています。

SEATEC NEOとこの米国の施設は、中露の水槽とは根本的に異なる水中音響計測施設です。

具体的には、SEATEC NEOと中露の水槽の違いは以下のとおりです。


SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えているため、地政学的な影響力という観点からも、中国とロシアの施設よりも優れていると言えるでしょう。

「SEATEC NEO」の整備は、地政学的には、以下の2つの影響を与えると考えられます。

・日本の周辺海域の監視能力の向上

SEATEC NEOは、大型化したUUVのテストに対応できるため、日本の周辺海域の監視能力を向上させることができます。これにより、中国や北朝鮮などの軍事活動をより正確に把握できるようになり、日本の安全保障につながるでしょう。

・海洋資源開発の促進

SEATEC NEOは、海洋に関するデータを収集・蓄積する機能を備えているため、海洋資源開発を促進することができます。これにより、日本の海洋権益を拡大し、経済力を強化することにつながるでしょう。
SEATEC NEOは日本の海洋防衛能力と海洋権益の拡大に大きな可能性を秘めた施設と言えるでしょう。


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