2025年1月19日日曜日

訪米慎重なのに…石破首相〝早期訪中〟の意向か 「中国寄り」悪いメッセージの拍車に危惧「日米同盟を崩壊に導きかねない」―【私の論評】石破政権が中国接近を続ければ、米国は露骨な内政干渉や政権崩壊工作に動く

訪米慎重なのに…石破首相〝早期訪中〟の意向か 「中国寄り」悪いメッセージの拍車に危惧「日米同盟を崩壊に導きかねない」

まとめ
  • 石破茂首相は早期に中国を訪問したい意向を示し、森山裕幹事長がその考えを伝えた。訪中は「中国寄り」のメッセージを強化する懸念がある。
  • 石破首相は就任後に中国の李強首相や習近平国家主席と会談を行い、岩屋外相が査証の発給要件を緩和したが、トランプ次期米大統領との対面会談は未実現である。
  • 評論家は、首相の訪中意向が日米関係に悪影響を及ぼす可能性があり、最悪なタイミングでの外交行動と指摘している。

石破茂首相

 石破茂首相は早期に中国を訪問する意向を示した。自民党の森山裕幹事長が17日に記者団にこの考えを伝えた。石破政権下では、閣僚や与党幹部が中国要人との会談や訪中を重ねているが、石破首相とドナルド・トランプ次期米大統領との対面での会談はまだ実現していない。このため、米国との関係構築に不安が残る状況である。

 識者は、石破首相の早期訪中が政権の「中国寄り」というメッセージをさらに強化するのではないかと懸念している。森山氏は、石破首相が可能な限り急いで訪問したいと考えていると述べ、李強首相から早期訪中の要請があったことを伝えた。石破首相は、就任直後の昨年10月に李強首相と、11月には習近平国家主席と会談を行い、12月には岩屋毅外相が訪中して査証発給要件の緩和を表明した。

 一方、石破首相はトランプ氏とは電話で5分間の会話をしただけで、対面の会談は2月以降になる見込みである。石破首相は1月6日のBSフジの番組でも、トランプ氏が大統領になってからの発言や人事の動きに配慮したいと慎重な姿勢を示している。

 評論家の石平氏は、岩屋外相や与党幹事長が訪中したことで、米国に対して「中国寄り」の悪いメッセージをすでに送っていると指摘している。首相の早期訪中意向がその状況をさらに悪化させる可能性があると警告する。また、国務長官候補のマルコ・ルビオ上院議員が中国を「最大の敵」と位置付けたばかりであり、首相の訪中表明はトランプ政権の神経を逆なでする最悪なタイミングでの外交行動であると批判されている。これにより、日米同盟が危機にさらされる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】石破政権が中国接近を続ければ、米国は露骨な内政干渉や政権崩壊工作に動く

まとめ
  • トランプ政権は、中国との対峙を強化し、新たな冷戦の可能性を秘めている。
  • 石破政権の無定見な中国接近が、米国の危機感を呼び起こしている。
  • 東芝ココム事件は、日本の情報セキュリティの脆弱性を示し、日米関係に影響を与えた。
  • 過去のスパイ活動の事例は、日本の警戒心の欠如を浮き彫りにしている。
  • 日米同盟の維持が中国との対峙において重要であり、石破政権が中国寄りの姿勢を続ければ、米国からの圧力が強まるリスクが高い。
トランプ政権は今後、中国との対峙を一層強めることを明確に表明している。これは場合によっては、新たな冷戦、あるいはそれ以上の対立に発展する可能性を秘めている。米国側から見れば、石破政権が無定見に中国に接近しているように映るのは間違いない。トランプ政権は冷戦時代の日本の情報セキュリティの甘さを想起し、強い危機感を抱いているだろう。


例えば、東芝ココム事件を思い出してほしい。これは1980年代に発生した、日本企業の東芝が関与した機密情報漏洩事件であり、特にアメリカとの外交関係に大きな影響を与えた重要な事件である。この事件は、日本の技術がソ連に流出することを防ぐために設立された「ココム(Cocom:コモンウェルス・コントロール・オーガニゼーション)」という国際的な輸出管理制度に関連している。ココムは現在、ワッセナー・アレンジメントに引き継がれている。

1980年代、東芝はアメリカ企業と共同で製造した高性能の半導体製品をソ連に輸出する契約を結んだ。この製品は軍事用途にも転用可能な先端技術を含んでおり、ココムの規制に抵触する可能性があったため、アメリカ政府は強く反発した。

事件が発覚したのは1987年であり、アメリカ政府は東芝の行為を問題視し、調査を開始した。結果、当時東芝の子会社である東芝機械はココムの規制に違反していたとされた。この問題は、ココム問題を超え、日米摩擦に発展した。アメリカは,東芝機械により不正輸出された工作機械で、ソ連は低騒音の潜水艦用スクリューを作り、結果的に西側の安全保障機能が阻害されたと主張した。

日本政府は東芝機械を一年間の対共産圏輸出禁止処分としたが、親会社の東芝社長も辞任せざるをえなかった。その年の春には、日本製半導体に対し 74年通商法301条による制裁が行なわれていたため、アメリカの対日感情はこの事件により一層悪化し、議会では東芝制裁法案が提出され、東芝製品の輸入禁止の声が高まった。具体的には、アメリカは東芝が関与した製品に対して輸出禁止措置を講じたため、東芝はアメリカ市場でのビジネスが制限された。

さらに、アメリカ政府は他の日本企業への監視を強化し、日本の企業はアメリカとの取引に慎重になる必要が生じた。また、アメリカは日本政府に対しても圧力をかけ、輸出管理や情報セキュリティに関する政策の見直しを求めた。この出来事は日米関係に緊張をもたらし、特に経済や安全保障に関する協力に影響を与えることとなった。以上は米国の理不尽さを物語るエピソードでもあるが、石破政権の中国接近は、日本の安全保障にとって危険であるばかりでなく、このような事態を自ら招きかねない。

「東芝機械ココム事件」で東芝を強く非難する米議員ら(1987年)

冷戦時代、ソ連側のスパイであったレフチェンコ氏やスヴォーロフ氏の米国議会での証言は、冷戦時代の日本における情報セキュリティの脆弱性を示す重要な指摘である。日本がソ連のスパイ活動にとって好都合な環境だった理由には、地理的な近さや、日本の政治家や官僚の警戒心の薄さが挙げられる。

具体的なソ連のスパイ活動としては、1954年1月のラストボロフ事件がある。在日ソ連通商代表部の二等書記官ラストボロフが米国に亡命し、ソ連の秘密情報機関の活動を暴露した。これにより、ソ連が日本の政府機関に工作員を送り込み、情報活動を展開していたことが明らかになったのだ。

1971年7月のコノノフ事件では、在日ソ連大使館付武官補佐官のハビノフ陸軍中佐とコノノフ空軍中佐が米軍基地関係者に接触し、米軍機密資料の入手を企てた。この事件は警視庁によって摘発された。1982年12月には、KGB機関員でノーボェ・プレーミヤ誌東京支局長だったレフチェンコが米国議会でソ連の工作活動について証言し、ソ連が多数の日本人エージェントを運営し、政治工作を行っていた実態を明らかにした。

1997年7月には、SVR(ロシア対外情報庁)所属の非合法機関員が約30年にわたり日本国内外でスパイ活動を行っていた事件が発覚した。警視庁は被疑者宅から乱数表や受信機などを押収している。同年11月には、日本人翻訳家がSVR機関員とみられる在日ロシア通商代表部員からスパイ工作を受け、約7年にわたりハイテク技術関係のスパイ活動を行っていたことが明らかになった。

これらの事例は、当時の日本の政治家や企業が驚くほど警戒心が薄かったことを示している。具体的には、日本企業が外国人とのビジネスミーティングで機密情報を無警戒に話してしまったり、政治家が外国要人との会談で内部情報を軽々しく漏らすケースがあった。また、大学や研究機関の国際会議でも、研究者たちが日本の科学技術や政策に関する情報を無邪気に交換し、それがスパイ活動に利用されることもあった。このような無防備な接触や情報漏洩は、国家の安全保障にリスクをもたらしていた。


このように、トランプ政権が中国との対立を強める中で、石破政権が過去の日本の情報セキュリティの脆弱性を反映した警戒心の薄さを抱えるならば、米国において国家安全保障に対する懸念が高まるのは避けられない。さらに、岩屋氏が米国を訪問した場合、中国を『最大の敵』と位置付けた国務長官候補のマルコ・ルビオ上院議員等から厳しく釘を刺されることは間違いない。

日米同盟は、米国にとって中国と対峙する上で極めて重要である。特に、米国にとって日本の軍事力、経済力は重要であり、これなしでは中国と対峙するのは難しくなる。この同盟を毀損すれば、中国が大喜びするだけであり、米国がこれを解消することはありえない。石破政権が中国寄りの姿勢を堅持すれば、米国から露骨な内政干渉を受けたり、日米関係を毀損しない形で石破内閣崩壊に向けた裏工作が始まることになるだろう。 

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