2025年1月13日月曜日

<独自>「自爆ドローン」310機導入へ 令和8年度に陸自、イスラエル製など候補―【私の論評】ドローン運用の戦略:ウクライナ戦争と日本の海洋防衛適用の成功要因とは?

<独自>「自爆ドローン」310機導入へ 令和8年度に陸自、イスラエル製など候補

まとめ
  • 防衛省は令和8年度に約310機の自爆型小型攻撃用無人機を導入する方針を決定し、自衛隊として初の導入となる。
  • 既に複数の国のドローンで運用試験を行い、今後は一般競争入札で機種を決定する予定である。
  • ドローンの導入は、隊員不足の解消や対処力の向上を目指し、今後5年間で約1兆円を投じる計画の一環である。

ウクライナ軍が小型で探知の困難な徘徊型自爆ドローンにより大きな戦果をあげている

 防衛省は、令和8年度に約310機の小型攻撃用無人機(ドローン)を導入する方針を固めた。このドローンは爆弾を搭載し、敵の車両や舟艇に体当たりする「自爆型」であり、自衛隊がこのタイプを保有するのは初めてである。ロシアによるウクライナ侵略におけるドローンの活用を踏まえ、配備が必要と判断された。

 すでにイスラエル製、オーストラリア製、スペイン製のドローンで運用試験を行っており、今後は一般競争入札で機種を決定する。防衛省は7年度予算案に小型攻撃用ドローンの取得費として32億円を計上し、陸上自衛隊の普通科部隊に配備することで南西諸島などでの対処力を高める狙いがある。

 この導入は「無人アセット(装備品)防衛能力」の一環であり、防衛省は5年間で約1兆円をドローン配備に投じる計画である。隊員不足に悩む自衛隊にとって、隊員を危険にさらさないドローンは重要な戦力となる。陸自は段階的にドローンによる攻撃能力を高め、将来的には大型の攻撃用ドローンの保有も視野に入れている。今後の展開が注目される。

【私の論評】ドローン運用の戦略:ウクライナ戦争と日本の海洋防衛適用の成功要因とは?

まとめ
  • ドローンの運用にはインテリジェンス、兵站、索敵能力が重要であり、ウクライナ戦争の事例がその必要性を示している。
  • インテリジェンスは敵の動向を把握し、効果的な攻撃を可能にする。ウクライナのドローン攻撃がロシア高官の死亡に寄与した例がある。
  • 兵站の整備がドローン運用の持続性に影響し、兵站の脆弱性が作戦に遅延をもたらすことがある。
  • 日本は海洋防衛において優れた技術を持ち、水中ドローン等の活用により効率的な運用を進めようとしている。
  • 小型攻撃用ドローンの導入は日本の防衛力を強化し、迅速な対応や多様な戦術を可能にすることが期待されている。
ウクライナ軍のドローン活用

ドローンの効果的な運用には、インテリジェンス、兵站、索敵能力が不可欠であることが、ウクライナ戦争の事例を通じて明らかになっている。特に、インテリジェンスは敵の動きや位置を把握するための情報収集を指し、それに基づいて、ドローンによる効果的な攻撃が可能になる。

たとえば、ウクライナ側は、特定のドローン攻撃によってロシアの高官が死亡したとする報告を行っており、これが戦術的な優位性をもたらす要因となったとされている。ロシア高官の位置情報などは、優れたインテリジェンスに負うところが大きい。

兵站は、軍事作戦を支えるための物資や資源の供給を指し、ドローンの運用には小型のものは、電力、大型のものは燃料が必要であり、供給網が整っていなければ持続的な運用が困難になる。ウクライナの前線での戦闘において、燃料供給が不足したためにドローンの運用が制限されたケースが存在する。

特に前線での迅速な補給が行われないと、ドローンの飛行時間や作戦の継続性に影響を及ぼす。このような兵站の問題は、戦闘の展開や戦術に直接的な影響を与えることが分かっている。ウクライナ軍のドローン部隊は、供給ラインの脆弱性から作戦の実行に遅延が生じ、敵の攻撃を許す事態となったことが報告されている。

索敵能力は敵の動向を把握するための能力であり、ドローンの運用において不可欠である。敵の位置や動きを把握できなければ、効果的な攻撃や情報収集は難しい。ウクライナはアメリカからの偵察衛星の情報やAWACS(早期警戒機)からのデータを受け取っている可能性がある。これにより、敵の動向をリアルタイムで把握する能力が強化され、ドローンの運用に必要な情報を迅速に取得することができる。こうした情報の提供は、ウクライナ軍の戦術的な優位性を高め、より効果的な攻撃計画を立てる助けとなっている。

航空自衛隊が運用する米国製E-767早期警戒管制機

ドローンの効果的な運用には、インテリジェンス、兵站、索敵能力が必要不可欠であり、逆にいうと、これらを欠いているにもかかわらず、ドローンだけを導入したとしても、あまり意味がない。

一方、日本は特に海洋における防衛と安全保障において強力な能力を持っており、優れた水中音響探知能力や索敵能力を活用することで、水中ドローンを含む効果的なドローン運用が可能である。日本は長年にわたり、海上自衛隊の潜水艦や水上艦艇に高度なASW(Anti Submarine Warefare:対潜戦争)の技術を導入してきた。例えば、「いずも型」護衛艦や「そうりゅう型」潜水艦は水中での敵潜水艦の探知と追尾に優れた能力を持ち、周辺海域の安全を確保している。

さらに、海上自衛隊は、未来の海洋防衛に向けて革新的な技術開発を進めている。主な焦点は、ステルス性の向上と無人機の活用による省人化である。ステルス技術により、艦艇の生存性が高まり、護衛艦のデザインも進化している。

人員不足に対応するため、UUV(無人潜水艇)やUSV(無人水上艇)等の水中ドローンの開発が進められ、情報収集や監視任務の効率化が図られている。また、2026年度までに自動運航技術を活用した「哨戒艦」の導入が計画されており、少人数での運用が可能となる。これらの技術革新により、海上自衛隊は効率的かつ強力な海洋防衛体制の構築を目指している。

また、国際的な協力も重要な要素であり、日本はアメリカやオーストラリアと協力し、共同訓練や情報共有を行っている。これにより、戦術や技術の向上が図られ、効果的なドローン運用が実現する可能性が高まる。

海自の水中航走式機雷掃討具「S10」

これらの要素を総合的に考慮すると、日本は優れたASW能力と索敵能力を活用することで、水中ドローンを含む効果的なドローン運用が可能である。これにより、海洋の安全保障を強化し、地域の安定に寄与することが期待される。

今回の防衛省による小型攻撃用無人機(ドローン)の導入は、現状では試験的なもののようだが、日本にとって極めて重要な意義を持つ。これにより将来日本の防衛力が強化され、特に離島防衛や海洋安全保障において迅速かつ効果的な対応できる可能性が高まる。小型攻撃用ドローンは、敵の脅威に対して即応性を持ち、情報収集や偵察活動に加え、攻撃能力を兼ね備えることで多様な戦術を展開できるようになるだろう。

この結果、自衛隊はより柔軟で迅速な戦術を採用し、地域の安全保障環境において重要な役割を果たすことが期待される。さらに、ドローンの導入は技術革新を促進し、防衛産業の発展にも寄与するだろう。これらの要因が相まって、日本の防衛体制が一層強化されることが期待される。 

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