2024年8月14日水曜日

ウクライナはクルスク電撃侵攻をどのように成功させたのか 現代戦の最前線―【私の論評】電撃戦の戦術と現代の海洋防衛戦略:島国侵攻におけるASW能力の重要性

ウクライナはクルスク電撃侵攻をどのように成功させたのか 現代戦の最前線

まとめ
  • ウクライナ軍は2024年8月6日にロシア西部クルスク州に電撃的な侵攻を開始し、短期間で広範囲を制圧した。
  • この成功は、ウクライナ軍が新たに開発した電子戦とドローン技術を駆使した戦術によるものである。
  • ウクライナ軍はまずロシアの偵察ドローンを撃墜し、通信を妨害することでロシア側の監視網を無力化した。
  • 大量のFPVドローンを使用して、掩蔽施設や塹壕を爆撃し、敵兵力を排除した後、迅速に地上部隊が進軍した。
  • ロシア側の防衛が不十分だったことや、ウクライナ軍のジャミング技術が効果的だったことが、作戦成功の要因となった。

ウクライナ軍は2024年8月6日、ロシア西部クルスク州に対して電撃的な侵攻を開始した。この攻撃は、ロシア側に予想外の展開をもたらし、ウクライナ軍は短期間のうちに広範囲の地域を制圧することに成功した。この急速な進展は、ウクライナ軍が新たに開発した革新的な戦術によるものだと考えられている。

ウクライナ軍の新戦術は、電子戦とドローン技術を巧みに組み合わせたものだった。まず、ウクライナ軍はロシア側の偵察ドローンを撃墜し、敵の監視網を遮断した。次に、短距離ジャマー(通信妨害装置)を前線に配置して、ロシア側の通信を効果的に妨害した。これにより、ロシア側のドローンが無力化され、ウクライナ軍の機甲部隊が安全に進軍できる環境が整った。

さらに、ウクライナ軍は大量のFPVドローンを駆使した独自の戦術を展開した。これらのドローンを使用して、ロシア側の掩蔽施設や塹壕を爆撃し、開口部を作成した。その後、熟練したドローン操縦士がFPVドローンを使って塹壕内部を掃討し、敵兵力を排除した。加えて、新型の急降下爆撃ドローンも投入され、地上部隊への効果的な支援を行った。

この作戦が成功した背景には、いくつかの要因があった。まず、ロシア側がこの地域に最新の防衛機材を配備していなかったことが挙げられる。また、ウクライナ軍のジャミング技術がロシア側のドローン対策を上回っていたことも大きな要因だった。さらに、ウクライナ軍の「レンジャー」部隊が素早く移動し、制圧した地域を迅速に確保したことも、作戦の成功に貢献した。

この侵攻作戦は、現代の戦争におけるドローン技術と電子戦の重要性を如実に示す新たな事例となった。ウクライナ軍の革新的な戦術は、従来の戦争の概念を覆し、技術と戦略の融合が戦場でいかに大きな影響を与えうるかを明らかにした。今後の軍事戦略や戦術の発展に大きな影響を与える可能性があり、世界中の軍事専門家たちの注目を集めている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】電撃戦の戦術と現代の海洋防衛戦略:島国侵攻におけるASW能力の重要性

まとめ
  • 電撃戦は機動力と集中攻撃を重視し、敵の防御を迅速に突破することを目的とする戦術である。
  • 現代の電撃戦ではドローン技術が重要な役割を果たし、情報収集と精密攻撃能力を向上させている。
  • ウクライナの成功によってドローンの脅威が高まり、日本も脆弱になると考えるのは杞憂である。海洋に囲まれた島国への侵攻には、優れたASW(対潜水艦戦)能力、特に潜水艦探知能力が不可欠である。
  • 島国の防衛には、敵の発見・位置特定能力と自国の艦艇・施設を守る能力の両方が重要である。
  • 地理的特性の違いにより、今回ウクライナの戦術を日本や台湾などの島国にそのまま適用することは困難である。
電撃戦(ブリッツクリーク)は、第二次世界大戦中にドイツ軍が用いた戦術で、迅速かつ圧倒的な攻撃力をもって敵を混乱させ、短期間で戦闘を決着させることを目的としていました。この戦術の基本的な要素として、まず機動力の重視があります。

電撃戦に用いられたドイツ軍の急降下爆撃機『スツーカ』

電撃戦では、機甲部隊である戦車と航空部隊の急降下爆撃機を組み合わせ、敵の防御線に突破口を開きます。これにより、迅速に敵の後方に進出し、指揮系統や補給線を破壊することが可能になります。

また、電撃戦では集中攻撃が重要です。敵戦線の弱点に戦力を集中させ、砲兵や航空機の強力な援護を受けながら、戦車部隊が迅速に戦線を突破します。その後、後続の機械化歩兵が進出し、制圧地域を確保します。

このようにして、スピードとサプライズを活かして敵に心理的ショックを与え、敵の組織的な防御を麻痺させることが狙いです。物理的に敵を圧倒するのではなく、敵の防御能力を無力化することが重要なポイントです。

さらに、電撃戦の成功には補給と兵站の管理が欠かせません。迅速な進撃を特徴とする電撃戦ですが、補給線が滞ると進撃が停止するリスクがあるため、補給と兵站の管理が非常に重要です。これが不十分だと、逆に大規模な敗北を招く可能性があります。

電撃戦は、特にフランス侵攻やポーランド侵攻で成功を収めましたが、補給の問題や敵の抵抗により、後の戦線では困難に直面しました。この戦術はその後、他国でも研究され、現代の戦術の基礎となっています。

現代の電撃戦では、ドローン技術が新たな要素として加わっています。ドローンは情報収集や精密攻撃に利用され、従来の戦術を大きく変えています。敵の偵察ドローンや攻撃ドローンを無力化するためには、ドローンを用いた航空戦力が必要です。

これにより、地上攻撃の成否が左右される可能性があります。ドローン技術を駆使した現代の電撃戦は、迅速な情報収集と精密な攻撃を可能にし、敵の防御を突破する新たな戦術として注目されています。

爆弾を投下するドローン

今回のウクライナの成功により、ドローン攻撃により、日本や台湾も脆弱になるのではと心配するむきもあるかもしれませんが、それは杞憂です。ウクライナの成功した戦術が日本や台湾にそのまま適用することは難しいです。

それは、地理的な条件が大きく異なるためです。ウクライナとロシアの国境は陸続きであり、地上部隊が比較的容易に侵攻できる環境にあります。これに対して、日本は四方を海に囲まれた島国であり、陸続きの国境がありません。このため、地上部隊による直接の侵攻は物理的に不可能です。

さらに、日本や台湾は海洋国家として、海上自衛力や空中防衛力を重視しています。海が自然の防壁となっているため、敵が日本に侵攻するには海を越える必要がありますが、これは非常に大きな制約となります。海を越えての侵攻は、海上輸送や空中支援が必要であり、これらの手段を日本の防衛力が阻止できる可能性が高いです。

また、ドローン攻撃に関しても、日本は海洋を挟んでいるため、ウクライナのように地上から直接ドローンを展開することは困難です。ドローンを用いた攻撃が行われる場合でも、海上や空中での迎撃が可能であり、ウクライナの戦術がそのまま適用されることは考えにくいです。

このように、日本の地理的特性と防衛体制は、ウクライナの戦術が直接的に適用されることを防いでいます。したがって、ウクライナの成功をそのまま日本に当てはめて心配する必要はありません。

日本や台湾、英国のような海洋に囲まれた島国への侵攻は、陸続きの国への侵攻とは大きく異なります。これらの島国を侵攻するには、侵攻側が優れたASW(対潜水艦戦)能力を持つことが不可欠です。

特に重要なのが潜水艦を探知する能力です。潜水艦は海中に潜んでいるため、その存在を見つけるのが非常に難しいのです。高性能のソナーシステムや対潜水艦用の航空機、艦艇を使って、敵の潜水艦を探知し追跡する能力が必要です。

どんなに優れた武器システムを持っていても、敵を発見できなければ無用の長物になります。最新鋭の潜水艦や高性能のドローン、さらにはレールガンやレーザー兵器を持っていても、敵の位置を特定できなければ攻撃ができません。

守る側の島国は、自国の周辺海域に潜水艦を配備し、侵攻してくる敵の輸送船団を攻撃します。これは、第二次世界大戦中にドイツのUボートが連合国の輸送船団を攻撃したのと同じ戦術です。一隻の潜水艦でも、多くの輸送船を沈めることができ、侵攻作戦全体を頓挫させる可能性があります。

日本の3,000トン型潜水艦「たいげい」

近年の技術発展により、水上艦艇の脆弱性が増しています。ウクライナが開発した水上ドローンや既存のドローン技術の進歩により、かつては強力な空母や巨大強襲揚陸艦でさえ、大きな標的となっています。これらの大型艦艇は、以前はミサイルなどの脅威にさらされていましたが、今では小型で安価なドローンによっても攻撃される可能性が高まっています。

このような状況では、守る側は敵を発見し、正確に位置を特定する能力がますます重要になります。同時に、自軍の艦艇や施設を敵のドローンやミサイルから守る能力も不可欠です。現代の海洋戦では、敵を発見する能力と自軍を守る能力の両方が求められています。

したがって、海洋に囲まれた島国への侵攻作戦では、攻撃する側は特にASW能力、特に潜水艦探知能力において圧倒的な優位性を持つことが必要です。日米はともにASWにおいては現在では、世界最高の水準にあり中露を圧倒しています。

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