- 日本の在留外国人は全人口の約3%(340万人)に達し、永住許可者も約90万人に増加している。岸田政権は外国人労働者の受け入れを推進する法改正を行った。
- 2070年には日本の総人口の10%が外国人になるとの予測がある。
- 国家基本問題研究所は、国益を基準にした外国人政策の確立と外国人基本法の制定を提案している。
- 永住許可の要件を日本在留20年に戻すことや、定住制度への一本化を検討することが求められている。
- 外国人労働者の社会保障費用や教育費用について、官邸主導での実態調査を行い、データに基づいた冷静な議論が必要であると強調されている。
近年、日本の在留外国人の数は急増しており、現在では全人口の約3%にあたる340万人に達している。また、永住許可を持つ外国人も約90万人に増加している。このような状況を受けて、岸田文雄政権は外国人労働者の受け入れをさらに推進するための法改正を行った。このままの傾向が続くと、2070年には総人口8700万人のうち、約10%が外国人になるとの予測も出ている。
この問題に対して、櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」は、6月21日に政策提言を発表した。提言の第一は、「国益を基準にする外国人政策を確立せよ」というもので、外国人労働者の受け入れが本当に国益にかなっているのかを問い直している。具体的には、外国人基本法の制定を提案し、外国人労働者受け入れに関する経済的および社会的影響について国民的な議論を促進する必要性が強調されている。
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次に、提言の第二は「永住許可の急増を止めよ」というもので、1998年に永住許可の要件が日本在留20年から10年に短縮されたことが問題視されている。この短縮の経緯が不明であるため、永住許可の要件を再び20年に戻すことを提案している。さらに、定住制度への一本化を検討し、期限を設けて更新のたびに国益の観点から審査を行うべきだと述べている。
また、外国人労働者の増加に伴う社会保障や教育などの社会費用の拡大についても、具体的なデータに基づいた議論が必要である。特に、日本に住民票がある外国人が公的年金や医療保険に加入する必要があるにもかかわらず、その納付実態についての調査が十分に行われていない。このため、官邸主導で法務省、厚生労働省、文部科学省、総務省、警察などが連携し、徹底的な実態調査を実施すべきである。
最後に、この記事は、外国人労働者に関する政策について、感情論や印象論ではなく、データに基づいた冷静な議論を進めるべきである。これにより、国益を考慮した持続可能な外国人政策を確立すべきである。
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。
【私の論評】日本の未来を守るための選択肢:安い労働力志向からAI・ロボット化への転換
まとめ
- 日本の在留外国人増加の背景には少子高齢化による労働力不足と安い労働力を求める経営者の動きがあるが、こうした「安い日本」志向が賃金抑制の直接的原因ではない。
- 日本の賃金停滞の主要因は日銀の長期にわたる金融引き締め政策にあり、これが経済成長と賃金の伸びを抑制してきた。
- 政府は外国人労働者受け入れのための制度整備を進めているが、大規模な移民受け入れには課題があり、AI・ロボット化の推進がより効果的な解決策となる可能性がある。
- AI・ロボット化の推進は生産性向上、新産業創出、国際競争力強化、社会課題解決など多くの利点があり、これを推進するには積極的な金融緩和政策が重要である。
- 日本経済の持続的成長には、安価な労働力としての外国人労働者受け入れではなく、内外を問わず高度人材の受け入れ適正配置と技術革新の推進を組み合わせた戦略が効果的である。
連合の芳野友子会長 |
しかし、こうした「安い日本」志向が直接的に労働者の賃金抑制につながったという認識は明らかな間違いです。実際には、日本の賃金停滞の主要因は、日銀の金融政策、特に長期にわたる金融引き締めにあると考えられます。日銀がマネーの増加を抑制してきたことが、経済全体の成長を抑え、結果として賃金の伸びを抑制してきたのです。
この因果関係の誤解が今も続いており、それが安い労働力を求める動機であり続けていることが問題です。一部企業が、賃金を抑制することで競争力を維持しようとする姿勢を続けていますが、これは経済全体の成長を阻害する要因となっています。
しかしこうした背景のもと、政府は「特定技能」という新しい在留資格の創設や技能実習制度の拡大など、制度面での整備を進めてきました。企業側も人手不足を補うために外国人労働者を積極的に採用しており、2023年の調査では全体の36.3%の企業が外国人を雇用しています。特に、技能実習制度は本来技術移転を目的としていましたが、実質的には安価な労働力として機能している面があります。
しかし、多数の移民を受け入れた国々の経験から、大規模な移民受け入れには様々な課題があることが明らかになっています。そのため、このブログでも過去に主張してきたように、少子化などの問題に対応するには移民ではなく、AI・ロボット化の推進がより効果的な解決策となる可能性があります。
AI・ロボット化の推進には多くの利点があります。生産性の向上、労働力不足の解消、社会的統合の問題回避、技術革新の促進などが挙げられます。例えば、大阪王将の親会社では、AIカメラの導入により生産ラインの人員を約3割削減することに成功しています。このような状況下で、「AI・ロボット化の推進」は、マクロ経済学的に見れば「装置化」として捉えることができます。装置化とは、生産過程において人間の労働を機械や設備に置き換えていくプロセスを指します。AI・ロボット化は、この装置化をさらに高度化し、知的労働の一部までも自動化する可能性を持っています。
AI・ロボット化の推進には多くの利点があります。まず、生産性の向上が挙げられます。労働力不足を補い、効率的な生産体制を構築することで、企業の生産性が大幅に向上する可能性があります。次に、新産業の創出が期待されます。AI・ロボット関連の新たな産業が生まれることで、新たな雇用機会が創出されるでしょう。さらに、国際競争力の強化も重要な利点です。技術革新により、日本の産業競争力が向上し、グローバル市場での地位を強化することができます。
加えて、社会課題の解決にも貢献します。特に高齢化社会における介護や医療などの課題に対して、AI・ロボット技術が有効な解決策を提供する可能性があります。リフレ派の主張に基づけば、このようなAI・ロボット化を推進するためには、積極的な金融緩和政策が重要な役割を果たします。
資金供給を増やすことで企業の投資意欲を刺激し、技術革新を加速させることができるのです。同時に、財政政策を通じて公共投資や研究開発支援を行うことも必要です。これにより、AI・ロボット技術の発展と普及をさらに後押しし、日本経済全体の成長につなげることができるでしょう。
2024年3月19日、日銀はマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決定しました。しかし現在の日本経済の状況下では、金融引き締めや利上げは適切ではありません。むしろ、経済成長を促進するためには、金融緩和政策を継続し、マネーの供給を増やすことが重要です。
このような状況下で、単に安価な労働力として外国人労働者を受け入れるのではなく、高度人材の受け入れと技術革新の推進を組み合わせた戦略が、日本経済の持続的な成長にとってより効果的であると考えられます。特に、高度人材に関しては、国内外から有能な人材を各所で活用できる体制を整えるべきです。特に政府機関や委託機関等における高度人材の賃金に関しては早急に例外規定を設けるべきです。
これにより、「安い日本」から脱却し、生産性の向上と新たな産業の創出を通じて、日本経済の競争力を維持・向上させることができるでしょう。
いわゆる「安い日本」は正しい文脈で捉えられていないことが多い |
同時に、金融政策と労働市場政策の適切な連携、そして企業の賃金政策の見直しが必要です。これらの取り組みを通じて、日本は労働力不足の問題に効果的に対処しつつ、社会の調和を維持し、経済的な繁栄を実現することができると考えられます。
2023年6月3日
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