2024年8月21日水曜日

候補者乱立する総裁選〝保守共倒れ〟危機 小林鷹之氏「自民党は生まれ変わる」と出馬表明も〝支持層〟被る高市早苗氏、青山繁晴氏―【私の論評】小林鷹之氏の出馬と「無能な働き者」:自民党内の新たな政策論争の行方

候補者乱立する総裁選〝保守共倒れ〟危機 小林鷹之氏「自民党は生まれ変わる」と出馬表明も〝支持層〟被る高市早苗氏、青山繁晴氏

まとめ
  • 自民党総裁選で保守系議員への支持が注目され、高市早苗氏、小林鷹之氏、青山繁晴氏が支持層を競っている。
  • 小林鷹之氏が出馬を表明し、自民党の刷新と明確な日本の将来ビジョンを示した。
  • 小林氏は優秀だが党内基盤が弱く、主に岸田首相に不満を持つ若手・中堅議員の支持を得ている。
  • 小林氏は保守的な政治信条を持ち、憲法改正や経済安保に積極的な姿勢を示している。
  • 保守系候補の乱立により支持が分散する可能性があり、総裁選がリベラル派中心になれば岩盤保守層の自民党離れが加速する懸念がある。

青山繁晴氏

9月の自民党総裁選では、保守系議員への支持に注目が集まっている。岸田文雄内閣の支持率が低下している背景には、「岩盤保守層」の離脱が影響している。この状況の中、高市早苗経済安保相(63)や小林鷹之前経済安保相(49)、青山繁晴参院議員(72)といった保守派候補が注目を集めている。

特に、小林氏は19日に正式に出馬表明を行い、自民党の刷新を訴えながら、日本の未来に関する明確なビジョンを示した。彼は「まずは信頼回復」「政策活動費や旧文通費の透明化」「脱派閥選挙の徹底」といった具体的な政策を提案し、国民に強いメッセージを送っている。しかし、政治評論家の有馬晴海氏によれば、小林氏は党内基盤がまだ弱く、財務相や外相などの大臣経験がないことがネックとなっている。

小林氏の出馬会見には、党所属の中堅若手議員が多数同席しており、彼らは岸田首相に対する不満を抱えている層とされている。さらに、小林氏の保守的な政治信条に期待する声もあり、憲法改正や自衛隊の明記を訴える姿勢が評価されている。彼は経済安全保障の重要性を早くから指摘しており、先の国会で高市氏が成立させた「セキュリティ・クリアランス(SC)制度」の法制化に貢献したとも言われている。

一方で、候補者の乱立が懸念されており、知名度の低い新顔の保守系候補が登場したことで、議員や党員の支持が分散する可能性も指摘されている。最近の世論調査では、次期総裁にふさわしい人物として石破茂元幹事長がトップに立ち、小林氏も支持率を急上昇させているが、依然として知名度が課題だ。

高市氏は自身のSNSで「国家経営を担うべく、心を固めている」と述べるなど、出馬準備を進めている。彼女は岩盤保守層からの強い支持を受けており、全国各地での講演会には多くの聴衆が集まっている。青山氏も強固な保守派として知られ、支持を集めている。

総裁選には20人の推薦人が必要だが、候補者の乱立や推薦人の引きはがしが発生すれば、高市氏や青山氏の出馬が難航する可能性がある。もしそうなれば、岩盤保守層の自民党への支持が低下する恐れがあり、9月27日に投開票される総裁選がリベラル派だけの戦いとなる可能性もある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】小林鷹之氏の出馬と「無能な働き者」:自民党内の新たな政策論争の行方

まとめ
  • 小林鷹之氏の出馬会見に同席した議員の中に7名の令和臨調参加議員が含まれており、これは小林氏の政策方針を理解する上で重要な手がかりとなる。
  • 小林氏は財務省出身で緊縮財政派の立場を取っていると考えられるが、これは必ずしも伝統的な保守派の政策と一致するとは限らない。
  • 小林氏の出馬は財務省や緊縮財政派の影響力を維持・強化しようとする動きの一環である可能性がある。
  • この状況は自民党内での政策論争や総裁選の展開に大きな影響を与える可能性があり、「保守」の定義や自民党の政策方針をめぐる議論が活発化する可能性がある。
  • 小林氏の総裁選出馬は時期尚早である可能性が高く、次の次、もしくはその次の総裁選を目指すべきかもしれない。

高橋洋一氏のツイートによると、小林氏の出馬会見に同席した議員の中に、7名の令和臨調参加議員が含まれています
(右表の塗りつぶしの部分)。令和臨調(令和国民会議)は財政健全化を重視する議員グループであり、小林氏自身もこのグループに属しているという事実は、彼の政策方針を理解する上で重要な手がかりとなります。
小林氏は財務省出身であり、緊縮財政派の立場を取っていると考えられます。これは、彼の経歴や支持基盤と整合性があります。しかし、この立場が必ずしも伝統的な保守派の政策と一致するとは限りません。

小林氏が保守的な政策を掲げながらも、実際には財政規律を重視する財務省的な考え方を持っているという見方を示唆しています。

この観点から見ると、小林氏の出馬は単なる世代交代や党の刷新を目指すものではなく、財務省や緊縮財政派の影響力を維持・強化しようとする動きの一環である可能性があります。

これは、従来の「岩盤保守層」とは異なる政策方針を持つ候補者が台頭してきていることを意味し、自民党内の路線対立がより複雑化する可能性を示唆しています。したがって、小林氏の出馬と彼を支持する議員グループの背景には、財務省との強いつながりがあると考えられます。これは単に小林氏の経歴だけでなく、彼を支持する議員の多くが緊縮財政派であることからも裏付けられます。

この状況は、自民党内での政策論争や総裁選の展開に大きな影響を与える可能性があり、「保守」の定義や自民党の政策方針をめぐる議論が今後さらに活発化する可能性があります。

令和臨調については、以前このブログでも、高橋洋一氏の記事を元記事として論評しました。その記事のリンクを以下に掲載します。

「令和臨調」提言に透けてみえる〝アベノミクス否定〟と〝利上げ・増税〟 方向性を間違えると改革も困難に―【私の論評】「無能な働き者」の巣窟と化したか「令和臨調」(゚д゚)!

令和臨調の平野信行共同座長(左)、翁百合共同座長(右)ら

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの元記事の要点だけをまとめておきます。
令和臨調は2023年1月30日に、政府と日銀の新たな共同声明に関する提言を行った。この団体は比較的政府寄りで、改革系の民間経営者が集まっており、岸田文雄政権をサポートする傾向が強い。
提言の主な内容は、2%のインフレ目標を「長期的な目標」と位置付け直すこと、日銀に対しては金融政策の正常化を求め、政府には財政規律の回復を促すものだ。これらの提言は、アベノミクスの否定とも解釈でき、実質的に「利上げ・増税」を求めていると考えらる。
現在の日本経済の状況を考慮すると、これらの提言のタイミングは適切ではない。特に、消費者物価指数が4%増であっても、エネルギー価格などの海外要因が主な原因であり、GDPデフレーターは依然としてマイナスであることを指摘している。このため、経済がデフレから完全に脱却するまでは、金融緩和と積極財政を継続する必要がある。。
最終的に、令和臨調の提言には評価できる改革案も存在するものの、マクロ経済政策については誤った方向性を示している。
詳細は、この記事をご覧いただくか、元記事を御覧ください。

私も令和臨調に関して【私の論評】で批判していますが、その批判はタイトルにもあるように一言でいうと"「無能な働き者」の巣窟"というものです。

令和臨調は、財政規律の回復や社会保障改革を重視し、金融政策の正常化(利上げ、量的緊縮)を提言しています。しかし、高橋洋一氏の指摘によれば、この組織は「財務省のポチ」のような人々で構成されており、アベノミクスの政策方向を転換したい意図がみられます。

マクロ経済の常識からすると、デフレ脱却が完全ではない現状で財政規律の急激な引き締めや金融政策の正常化を急ぐことは、経済成長を阻害するリスクがあります。この点で、令和臨調の提言は「無能な働き者」といえます。

ゼークトの組織論における「無能な働き者」は、正しい判断力や行動力が備わっていないにもかかわらず、自身の判断で行動してしまう特徴を持っています。令和臨調の提言が、現在の日本経済の実態を十分に考慮せずに、財政規律や金融政策の正常化を急ぐ姿勢を示しているとすれば、この定義に当てはまる可能性があります。

小林鷹之氏が令和臨調に属していたという点から、彼もこの「無能な働き者」的な特徴を持っている可能性があります。特に、財務省出身であり緊縮財政派の立場を取っているとされる小林氏の政策方針が、現在の日本経済の実態と乖離している可能性があります。

ただし、小林氏が今後どのような行動をとるのか、さらに総裁になれたとしてどのような政策をとるのかは未知数であって現在の時点で「無能」という表現は主観的で厳しすぎる可能性があるかもしれません。

小林鷹之氏

しかし、その可能性があることは否定できません。私が、小林氏に指摘したいのは、政治家は、せっかく有能な政治家になれる素質があったとしても、時期や順番を間違えると、凡庸な政治家になってしまうか、最悪汚名をきせられることになってしまうということです。

小林鷹之氏の総裁選出馬については、現時点では時期尚早である可能性が高いと考えられます。政治家のキャリアにおいて、タイミングは極めて重要です。適切な時期を逃すと政治家としての影響力や評価を大きく損なう恐れがあります。小林氏は49歳という若さと4期目の衆院議員という経歴から、党内基盤が十分に固まっていない可能性があります。また、経済安全保障という重要な分野での経験はありますが、総合的な国家運営のビジョンがまだ十分に熟していない可能性もあります。上でも指摘したように、特にマクロ経済に関する知見が欠落しているようです。

したがって、小林氏は次の総裁選ではなく、次の次、もしくはその次の総裁選を目指すべきかもしれません。その間に、党内での地位向上、政策立案能力の向上、国民的知名度の向上、国際経験の蓄積などを進めることが望ましいでしょう。ただし、すでに総裁選出馬を表明した後でも、この機会を学びの場として捉え、自身の政策や理念を丁寧に説明し、将来のリーダーシップに向けた準備期間として活用することは可能です。また、仮に今回の総裁選で勝利を収めることができなくても、その過程で得た経験や支持者を基盤に、次の機会に向けてより強固な政治基盤を築くことができるでしょう。

ただ、そうはいっても、上の記事にもある通り、次の総裁選がリベラルだけの選挙になる可能性もあるわけで、これだけは避けるべきです。そうなってしまえば、自民党内の保守派の存在はなきものにされる可能性もあります。


候補乱立の総裁選はリベラルだけの選挙になる可能性がある

小林鷹之氏が総裁選でリベラル派だけの戦いを避けるためには、保守派の支持を得られる政策を明確に提示し、アピールを強化することが重要です。高市早苗氏や青山繁晴氏といった他の保守系候補者との連携を深め、保守派の分断を避ける努力も必要です。党内の若手・中堅保守系議員を積極的に取り込み、新しい保守の形を示すことや、メディア露出を増やして保守的な立場からの発信を強化することも効果的でしょう。

保守とリベラルということでは、財政は直接関係はないようにもみられまずか、実体としてリベラル派のほとんどはマクロ経済に疎く、緊縮一辺倒の財務省の意向に大きく左右されますが、保守派はそうではなく、積極財政派が多いです。マクロ経済音痴ということでは、保守派の支援は得られないと言っても過言ではありません。

小林氏は財務省出身であることから、財務省の影響力を削ぐ姿勢を示すことが重要です。特に、財政規律を重視する姿勢では保守派の支持を得ることは難しいため、経済発展の明確な方向性を示し、積極財政派の支持を得ることが必要です。例えば、大規模な公共投資や防衛費の増額、科学技術への投資拡大などを通じた経済成長戦略を打ち出すべきです。

これにより、保守派からの支持を固めつつ、財務省色の強い候補者というイメージを払拭し、経済成長と国家の安全保障を重視する候補者としての立場を確立することができるでしょう。このような多面的なアプローチを通じて、小林氏は保守派の代表としての立場を強化し、リベラル派だけの戦いにならないよう努めることができるはずです。その努力すれば、次の機会が訪れるでしょう。

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