2024年8月25日日曜日

<高市氏、総裁選立候補へ>「前回の総裁選でのお礼がなかった」…党内基盤の弱さがネックも「立候補者が増えれば増えるほど高市に風が吹く」といわれる理由―【私の論評】高市氏が保守の未来を切り拓く可能性と石破氏の厳しい戦い

<高市氏、総裁選立候補へ>「前回の総裁選でのお礼がなかった」…党内基盤の弱さがネックも「立候補者が増えれば増えるほど高市に風が吹く」といわれる理由

まとめ
  • 自民党の総裁選は岸田文雄首相の不出馬を受け、多くの議員が立候補を検討する大乱立の状況となっている。
  • 経済安全保障担当大臣の高市早苗氏が注目されており、保守層からの支持が高いが、党内基盤の弱さが懸念されている。
  • 高市氏は過去に派閥を離脱しており、その影響で党内での支持を集めるのに苦労している。
  • 今回の総裁選では候補者が多いため、議員票の重要性が相対的に低下し、党員票の影響力が増す可能性がある。
  • 各候補者の政策や論戦の内容が、党内の権力闘争よりも重要になると予想されている。
高市早苗氏

来月予定されている自民党総裁選は、岸田文雄首相の不出馬表明を受けて、多くの議員が立候補を検討するという大乱立の状況が生まれている。その中でも特に注目されているのが、経済安全保障担当大臣の高市早苗氏だ。彼女は自民党支持層からの人気が高く、すでに立候補に必要な推薦人20人を確保したとの報道もあるが、同時に党内基盤が弱いという懸念もある。

高市氏の党内基盤の弱さは、過去の派閥離脱や人間関係の構築の難しさに起因している。彼女は自民党の中でもタカ派の名門派閥である清和会に所属していたが、2011年に派閥を離脱し、無派閥となった。この決断は、当時の自民党の状況や安倍晋三氏への支持を考慮した結果だったが、派閥内での支持を失う要因ともなった。このような背景から、高市氏は党内での仲間集めに苦労しており、推薦人の確保に一時は苦戦する場面も見られた。

今回の総裁選は、候補者の乱立により、従来の党内政局とは異なる展開が予想されている。候補者が多ければ多いほど、議員票の重要性が相対的に低下し、党員票の影響力が増す可能性がある。これは、高市氏にとって有利に働く要素となるかもしれない。彼女は自民党支持層からの人気が高いため、党員票を獲得するチャンスが広がる可能性がある。

最終的には、党内の権力闘争よりも、候補者の政策や論戦の内容が重要になるだろう。このような状況の中で、各候補者が自らの政治家としての真価を問われることになるだろう。高市氏をはじめとする候補者たちが、どのように支持を集め、総理総裁の座を獲得するのか、注目が集まります。

集英社オンライン編集部ニュース班

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】高市早苗氏が保守の未来を切り拓く可能性と石破茂氏の厳しい戦い

まとめ
  • 自民党総裁選では候補者の乱立が予想され、高市早苗氏にとって有利な状況が形成されつつある。
  • 国会議員票と党員票が同数であり、候補者が多い場合、議員票が分散し党員票の影響力が増すため、高市氏の強みが発揮される可能性がある。
  • 高市氏は自民党支持層からの人気が高く、特に保守層からの支持を得やすい立場にある。
  • 石破茂氏はメディアでの人気が高いものの、党内での支持獲得に苦戦しており、党内にいながら自民党に対する批判的な過去の発言が影響している。
  • 高市氏は推薦人を確保し、相対的に強い立場にある一方で、総裁選の結果を予測するのは依然として難しい。
自民党総裁選の仕組み

自民党総裁選において、候補者の乱立が予想される中、特に高市早苗氏にとって有利な状況が生まれつつあります。この状況を理解するためには、まず自民党総裁選のルールを把握する必要があります。総裁選では、国会議員票と党員票がそれぞれ同数(通常は各384票)を占めており、国会議員は1人1票を持ちます。一方、党員票は地方票として集計され、得票率に応じて配分されるシステムになっています。

候補者が多数立候補する場合、このルールが特に重要になってきます。立候補には20人の推薦人が必要であるため、例えば10人が立候補すると、最低でも200票が固定票となります。これにより、国会議員の票が大きく分散し、残りの浮動票が少なくなる傾向があります。その結果、議員票での大差がつきにくくなり、議員票の重要性が相対的に低下することになります。

一方で、党員票は変わらず384票のままであるため、党員票での差が最終結果により大きな影響を与える可能性が高まります。ここで高市氏の強みが発揮されると考えられます。高市氏は自民党支持層、特に保守層からの人気が高いとされており、党員票で強みを発揮できる可能性があるのです。

従来の総裁選では、党内基盤の強さが重要視されてきましたが、今回の状況では、党員からの支持が強い候補者が有利になる可能性があります。高市氏は党内基盤では必ずしも強くないとされていますが、党員からの支持が強いため、この状況を活かせる可能性があります。議員票での不利を党員票で挽回するチャンスが広がっているのです。


さらに、候補者が多いほど、決選投票に持ち込まれる可能性も高くなります。決選投票では、上位2名による争いとなるため、1回目の投票で3位以下となった候補者の支持者の動向が重要になります。高市氏が決選投票に残った場合、保守層からの強い支持を背景に、他の候補者の支持者からも票を集められる可能性があります。

このように、候補者の乱立という一見混沌とした状況が、高市氏にとっては有利に働く可能性があるのです。ただし、総裁選はあくまで政策論争や人物評価など、多様な要素が絡み合う複雑な政治プロセスであり、最終的な結果を予測することは困難です。高市氏がこの状況をどのように活かし、他の候補者との差別化を図っていくのか、今後の展開が注目されます。

石破茂氏も、自民党総裁選において有利な状況にある可能性があります。候補者の乱立が予想される中、特に党員票の重要性が増すことが彼にとっての利点となります。候補者が多い場合、国会議員票が分散し、党員票の影響力が相対的に大きくなるため、石破氏はこの状況を活かすことができるかもしれません。

石破氏は世論調査では次の総理大臣にふさわしい人物としてしばしばトップに挙げられています。過去の総裁選でも、2012年の選挙では安倍晋三元首相の2倍近い党員票を獲得しており、これは彼の党員からの支持の強さを示しています。

また、今回の総裁選では派閥の締め付けが緩んでいるため、これまで石破氏の弱点とされてきた党内基盤の問題があまり影響しない可能性があります。さらに、もし石破氏が1回目の投票で上位2名に入れば、決選投票に進出することができます。

石破氏のメディア報道での人気は、この1回目の投票で有利に働く可能性があります。しかし、石破氏自身も「難しい、厳しいというのはいつも一緒。楽だった(総裁)選挙なんて1回もありません」と述べており、楽観視はしていません。過去4回の総裁選で勝利できなかった経験から、党内での支持獲得の難しさも十分に認識しているようです。

石破茂氏は、自民党総裁選においてメディア報道での人気が高いものの、党内での支持獲得に苦戦しています。多くの自民党議員から敬遠されている理由として、党内批判やコミュニケーション不足、政策の不一致、特に保守派議員との不一致が挙げられます。

石破氏は自身の言動について、「自民党にいながら自民党を批判してるからですよ」と明確に述べています。さらに、「間違っていることは間違ってないか、これは考え直した方がいいんじゃないかってことを言うと、後ろからたまを打つとか、雉も鳴かずば撃たれまい、雉が鳴くと撃たれるぞとかそういうことがあって」と説明しています。

これらの発言から、石破氏が実際に党内で批判的な意見を述べており、そのために「後ろから鉄砲を撃つやつ」といった批判を受けていることが分かります。これは印象ではなく、石破氏自身が認める事実であり、党内での支持を得られない主な理由の一つとなっています。これにより、20名の推薦人を集めることが難しくなっています。

仮に決選投票に進んだ場合でも、議員票での劣勢を覆すのは困難です。過去の総裁選でも、党員票での支持を得ても議員票で逆転される結果となっています。石破氏自身も厳しい戦いを認識しており、メディア報道における人気と党内での不人気という大きなギャップに直面しているため、総裁選での勝利は非常に難しい状況です。

地元鳥取にて、来たる9月の自民党総裁選挙への思いを表明する石破氏

高市早苗氏は、石破茂氏と比較して相対的に有利な状況にあると考えられます。日経新聞とテレビ東京の世論調査によると、自民党支持層では高市氏が15%で2位、石破氏が14%で3位となっており、高市氏の方が党内での支持基盤がやや強いことを示しています。

また、高市氏は「安倍路線の継承者」として、保守派からの支持を得やすい立場にあります。さらに、石破氏は、上でも述べたように「自民党にいながら自民党を批判している」と認めており、党内での批判を受けていますが、高市氏はそのような批判を受けていません。

また、高市氏は立候補に必要な20人の推薦人を確保したと報じられており、石破氏は推薦人確保に苦戦している状況です。これらの要素から、高市氏は石破氏に対して相対的に強い立場にあると言えるでしょう。

以上のような要因が重なり、高市氏にとって有利な状況が徐々に形成されつつあると言えます。ただし、総裁選の結果を予測するのは依然として難しく、今後の展開次第で状況が変化する可能性もあります。これについては、今後も注視し変化があれば、当ブログでお知らせします。

【関連記事】

候補者乱立する総裁選〝保守共倒れ〟危機 小林鷹之氏「自民党は生まれ変わる」と出馬表明も〝支持層〟被る高市早苗氏、青山繁晴氏―【私の論評】小林鷹之氏の出馬と「無能な働き者」:自民党内の新たな政策論争の行方 2024年8月21日

総裁選「地震」で不出馬に追い込まれた岸田首相 ダメ押しは日向灘地震と中央アジア訪問ドタキャン 米対応で高市氏の存在が浮上―【私の論評】高市早苗氏の米国連邦議会での経験と自民党総裁選の重要性  2024年8月17日

自民総裁選、高市早苗氏〝出馬封じ〟報道 選管委メンバー選び、候補の推薦人になれない…「岸田派ゼロ」の異様 無派閥から最多5人―【私の論評】高市早苗氏に対する「高市潰し」疑惑:政治的影響力の増大と次期総裁候補としての台頭 2024年7月28日

菅前首相と麻生副総裁、自民総裁選は首相経験者2人によるキングメーカー争いの様相―【私の論評】高市早苗氏の可能性と麻生太郎氏の影響力 - 党支持率回復への道 2024年7月3日

「ポスト岸田」世論調査で〝大異変〟高市氏が2位に急浮上 トップ石破氏「『女系天皇』検討発言」の波紋 菅氏は「新リーダー」に期待―【私の論評】自民党総裁選の行方: 石破茂氏と高市早苗氏の勝算を徹底分析 2024年6月25日

0 件のコメント:

経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき―【私の論評】エネルギー政策は確実性のある技術を基にし、過去の成功事例を参考にしながら進めるべき

高橋洋一「日本の解き方」 ■ 経産省が素案公表「エネルギー基本計画」の読み方 欧米と比較、日本の原子力強化は理にかなっている 国際情勢の変化を反映すべき まとめ 経済産業省はエネルギー基本計画の素案を公表し、再生可能エネルギーを4割から5割、原子力を2割程度に設定している。 20...