まとめ
- トランプ氏の再登場により、米国内外で政策や情勢が大きく変化。
- 保守主義の台頭に伴い、進歩派は重税や規制が批判され支持を失いつつある。
- 米欧では一般国民に直接に訴える本来の「大衆直訴主義」としてポピュリズムの政治主導が効果を上げてきた。
ファリード・ザカリア氏 |
ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ大統領として再登場し、国内外で大きな変化をもたらしている。国内では、不法入国者の追放やLGBT文化の抑制、さらにはエネルギー政策の復活が進行中であり、これらの政策は保守的な支持層からの期待を集めている。国際的には、イスラエルとハマスの停戦やロシア、中国との関係改善が見られるなど、トランプ氏の強硬な外交姿勢がさまざまな面で影響を及ぼしていることは明らかである。
選挙前には、トランプ氏への厳しい批判が多く存在したが、最終的にはアメリカ国民の多数が彼を支持する結果となった。これは、リベラル派によるトランプ氏への攻撃が必ずしも国民の共感を得ていないことを示している。リベラル派の著名な評論家であるファリード・ザカリア氏は、トランプ氏の圧勝は進歩的な政治に対する不満から生じたものであり、保守主義の方が住民に満足を与えていると分析している。ザカリア氏は、特に民主党統治のニューヨーク州と共和党統治のフロリダ州の政治状況を比較し、フロリダ州の方が税負担や治安、教育などにおいて住民に満足感を提供していることを強調している。
さらに、ポピュリズムに関する議論も重要である。ザカリア氏は、トランプ氏の手法が一般的に「大衆迎合主義」とされる解釈とは異なり、既存の政治エリートに対する反発が根底にあることを強調している。このような視点は、トランプ氏の支持が単なる感情的反応ではなく、実際の政策に対する期待と不満の表れであることを示唆している。
最後に、文化的エリートを守り、覚醒(ウォーク)思想を保ち、膨張した政府を続ける限り、永遠の野党の立場に甘んじる可能性が高いと警告している。このように、トランプ氏の再登場がもたらす影響は多岐にわたり、今後の展開に注目が集まっている。アメリカの政治情勢は変化の真っただ中にあり、その行方は全世界に影響を及ぼす重要な要素となるであろう。
選挙前には、トランプ氏への厳しい批判が多く存在したが、最終的にはアメリカ国民の多数が彼を支持する結果となった。これは、リベラル派によるトランプ氏への攻撃が必ずしも国民の共感を得ていないことを示している。リベラル派の著名な評論家であるファリード・ザカリア氏は、トランプ氏の圧勝は進歩的な政治に対する不満から生じたものであり、保守主義の方が住民に満足を与えていると分析している。ザカリア氏は、特に民主党統治のニューヨーク州と共和党統治のフロリダ州の政治状況を比較し、フロリダ州の方が税負担や治安、教育などにおいて住民に満足感を提供していることを強調している。
さらに、ポピュリズムに関する議論も重要である。ザカリア氏は、トランプ氏の手法が一般的に「大衆迎合主義」とされる解釈とは異なり、既存の政治エリートに対する反発が根底にあることを強調している。このような視点は、トランプ氏の支持が単なる感情的反応ではなく、実際の政策に対する期待と不満の表れであることを示唆している。
最後に、文化的エリートを守り、覚醒(ウォーク)思想を保ち、膨張した政府を続ける限り、永遠の野党の立場に甘んじる可能性が高いと警告している。このように、トランプ氏の再登場がもたらす影響は多岐にわたり、今後の展開に注目が集まっている。アメリカの政治情勢は変化の真っただ中にあり、その行方は全世界に影響を及ぼす重要な要素となるであろう。
【私の論評】覚醒思想(WOKE)の危機とポピュリズムの復権:米国政治の未来を占う
まとめ
- 覚醒思想(ウオーク:英語はWOKE)はアイデンティティ政治やDEIと結びつき、特定の社会的グループの権利を中心に据えるが、社会の分断を招くことになった。
- リベラル派は社会の不平等を解消しようとするが、トランプ支持者は過剰な規制が自由を脅かすと批判している。
- リベラル・左派の政策は社会工学実験の領域にまで踏み込んでおり、予期しない弊害や反発を招いている。
- ポピュリズムは19世紀に一般市民の利益を代表する運動として発展したが、20世紀に入ってからは左翼によって「大衆迎合主義」として貶められた。
- 米民主党は社会工学実験にまで踏み入ってしまった政策を見直し、ポピュリズムの元来の意味を再評価しなければ、万年野党の座から抜け出せない可能性が高く、それは米国にとって良いことではない。
覚醒思想(WOKE)は米国の分断を促進 |
覚醒(ウォーク)思想は、社会的不正や差別に対する意識と行動を促す考え方であり、特に、人種、性別、LGBTQ+の権利、経済的不平等などの問題に焦点を当てる。アイデンティティ政治やDEI(多様性、公平性、包括性)と深く結びついている。アイデンティティ政治は特定の社会的グループ(人種、性別、性的指向など)の経験や権利を中心に据えた政治的アプローチであり、マイノリティの声を政治の場に反映させることを目指している。
しかし、これらのアプローチは同時に分断を招く危険性もはらんでいる。DEIは、組織や社会における多様性を促進し、すべての人が公平に扱われる環境を作ることを目的としているが、その実践にはさまざまな課題が伴う。
リベラル派の支持者たちは、これらの理念を通じて社会の不平等を解消しようと奮闘しているが、トランプ氏の支持者はこれに対し、過剰な規制が一般市民の自由を脅かすものだと批判している。トランプ氏の再登場に関する文脈において、覚醒思想やアイデンティティ政治、DEIはリベラル派の主要な信条として位置づけられ、保守主義政策と対立する立場を形成している。
さらに、リベラル・左派の政策には、社会正義や環境正義、フェミニズム、LGBTQ+権利、人権擁護、公共サービスの拡充、富の再分配などが含まれる。これらの施策は一見、美辞麗句に飾られた素晴らしい理念のように見えるが、実際にはリベラル・左派の価値観を実現するための社会工学実験にまで至っている。社会工学実験とは、社会の構造や人々の行動を意図的に変えようとする試みであり、理想的な社会を実現するためにさまざまな政策やプログラムを推進することを指す。
しかし、このような実験には予期しない弊害が伴うことが多く、保守派だけでなく、多くの人々からの賛同を得ることができなかった。過剰な規制や重税、自由の制限などが一般市民に影響を及ぼし、反発を招いている。社会工学実験は、実施するにしても限られた空間で安全を確保した形で行うべきであり、決して地方自治体レベルや国レベルで行うべきものではない。共産主義もまた、社会工学実験の一つとして位置づけられ、理想とされる社会を実現しようとした結果、多くの人々に深刻な影響を及ぼした歴史を持っている。
実際に行われた社会工学実験が引き起こした衝撃的な事例として、アメリカの「禁酒法」を挙げることができる。1920年から1933年にかけて施行された禁酒法は、アルコールの製造、販売、輸送を禁止したが、結果的には地下経済の拡大や犯罪の増加を招いた。この期間中、ギャングの台頭や暴力事件が相次ぎ、社会が混乱した。
さらに禁酒法が終了した後、国民の間に法律への不信感が広がり、法治主義の根底を揺るがす結果となった。これに関する研究としては、ハーバード大学の経済学者による分析(例:Mark Thornton, "The Economics of Prohibition," 1991)があり、禁酒法がもたらした社会的影響について詳細に論じられている。
禁酒法時代に酒を捨てる人々 |
また、1971年に行われた「スタンフォード監獄実験」も忘れてはならない。この実験では、18人の男子学生を看守役と囚人役に分け、刑務所生活を再現したが、予想以上に早く暴力的な行動や精神的な苦痛を引き起こし、わずか6日で中止された。この実験は、人間の行動が環境や役割によってどれほど影響を受けるかを示す一方で、倫理的な問題も引き起こし、心理学界における倫理基準の見直しを促す結果となった。
スタンフォード監獄実験を題材にした映画『ザ・スタンフォード・プリズン・エクスペリメント』は、2015年に公開され、監督はアビー・ルーサー、主演はタロン・エジャトンやオスカー・アイザックである。この映画は、実験の影響や結果についての関心を一層高めた。
最近のトランスジェンダーの女性スポーツへの進出も、過激な社会工学実験だ。これは、スポーツ自体を破壊することになるとんでもない暴挙と言わざるを得ない。社会変革は、失敗すれば大きな悪影響をもたらす、慎重に行うべきであり、すでに成功してその効果が実証されている手法を取り入れることによって実行されるべきである、決して実験的に行うべきではない。
ザ・スタンフォード・プリズン・エクスペリメントの一シーンのスティル写真 |
ザカリア氏の警告にも見られるように、民主党が過剰な覚醒主義の理念を守り続け、過剰な規制や重税を課す限り、彼らは選挙での支持を失う可能性が高い。さらに、ザカリア氏は米欧いずれでもポピュリズムの政治主導が効果をあげてきたことを強調している。
ポピュリズムは19世紀のアメリカで発展し、当初は中産階級や農民の利益を代表する運動として位置づけられた。元々の意味は「一般市民の利益を代表する」という広義の概念であり、これには中産階級だけでなく、労働者階級やマイノリティの声も含まれる。ポピュリズムは、エリートや権力者に対する反発の姿勢を持ち、一般市民の感情や不満に訴えかけるスタイルの政治として、特に経済的不平等や社会的な不公正に対する反発から生まれた。
しかし、20世紀に入ると、ポピュリズムという言葉は特に左翼によって「大衆迎合主義」として貶められていく過程が見られた。これは、ポピュリズムが単に感情や不満に訴えることで、理性的な政策や理念を欠いた政治を指すものとして使われるようになったためである。このようにして、ポピュリズムは軽視される存在となり、特にエリート層や知識人からは批判の対象となった。一方で、トランプ氏や米国の保守派は、現代でも元来の意味でのポピュリズムを使用しており、一般市民の利益を代表し、エリートに対抗する姿勢を強調している。
このように、米民主党は覚醒思想やアイデンティティ政治、DEI、さらにはリベラル・左派の政策を見直す必要がある。米国社会を破滅に導きかねない、社会工学実験的な暴挙を慎み、ポピュリズムの本来の意味を再評価して自らの政治手法に取り入れなければ、万年野党の座から抜け出すことは不可能だろう。これは米国にとって決して好ましい状況ではない。米国は、健全な二大政党制の時代に戻るべきである。しかし、二大政党制であっても、社会工学実験を厭わない政党にその責任を託すべきではない。真に国民の声を反映させる政治が求められているのだ。
【関連記事】
コロンビア、送還を一転受け入れ 関税で「脅す」トランプ流に妥協―【私の論評】トランプ外交の鍵『公平』の概念が国際関係を変える 、 コロンビア大統領への塩対応と穏やかな英首相との会談の違い 2025年1月27日
0 件のコメント:
コメントを投稿