2025年1月23日木曜日

夫婦別姓、党議拘束は必要 自民幹事長、法案採決時―【私の論評】党議拘束が引き起こす自民党内の激震と保守派が採用すべき反撃戦術

夫婦別姓、党議拘束は必要 自民幹事長、法案採決時

まとめ
  • 自民党の森山裕幹事長は選択的夫婦別姓制度に関する法案の採決時に党議拘束が必要であり慎重であるべきだと述べ、石破茂首相は公明党との協議について党内の意見をまとめる必要があるためもう少し待つように伝えた。自民党内の保守派には異論が多く、意見集約が難航する見込み。
自民党森山幹事長

自民党の森山裕幹事長は、共同通信のインタビューで、選択的夫婦別姓制度の関連法案が国会で採決される際に党議拘束が必要であるとし、歴史や国の形を考慮して慎重であるべきだと述べた。

また、旧姓使用の法整備については「一つの選択」とした。一方、石破茂首相は公明党の斉藤代表との会談で、党内の意見をまとめる必要があるため、協議をもう少し待つように伝えた。自民党内には保守派を中心に異論が多いため、意見集約には時間がかかる見込みである。

この記事は、元記事の要約です。

【私の論評】党議拘束が引き起こす自民党内の激震と保守派が採用すべき反撃戦術

まとめ
  • 党議拘束は、政党が議員に特定の議案に対する賛否を統一させる制度であり、議員は党の方針に従って投票する。
  • メリットは政策の一貫性と信頼性の向上、デメリットは議員の自己信念や有権者の意見の反映が難しくなることである。
  • 自民党はLGBT理解増進法案の審議に際して党議拘束をかけ、反した議員に具体的な処分を行った。
  • 萩生田氏は、選択的夫婦別姓法案について旧姓使用の拡充を提案し、保守系議員連盟の議論を進める意向を示した。
  • 保守派議員は、党議拘束に対抗するために反対運動を展開したり、議員連盟を結成することが求められ、三木氏の戦術を参考にするべきである。
  • 三木武夫氏は、党内抗争を巧みに利用し、派閥間のパワーバランスを操作して影響力を高め、自らの立場を強化した戦術を採用した。
党議拘束とは、政党が所属議員に特定の議案に対する賛否を統一するよう求める制度である。議員は党の方針に従って投票し、個々の意見よりも党の立場が優先される。

この制度のメリットは、政党の政策を一貫して維持しやすくなる点である。党議拘束により、議案に対する統一的な姿勢が示され、信頼性が向上する。また、議会内での連携が強化され、議論が円滑に進むことにも寄与する。

デメリットは、議員が自己の信念や選挙区の有権者の意見を反映しにくくなることである。党議拘束が強い場合、議員は党の方針に従わざるを得ず、民主的な意思決定が損なわれる恐れがある。このように、党議拘束は党の統一性を保つ一方で、個々の議員の責任や民主的なプロセスに影響を与えるため、慎重な運用が求められる。

自民党において、LGBT理解増進法案の審議に際して党議拘束がかけられたことは、茂木敏充幹事長が衆院本会議採決を控えて強調したことからも明らかである。世耕参院幹事長が参院本会議での採決時に退席した3人の議員に対し、「党議拘束に反した行動」として対応を検討する考えを示したことも、この事実を裏付けている。

党議拘束に反した議員への対応として、自民党は具体的な処分を行った。和田政宗議員は国会対策副委員長の職を解かれ、山東昭子前参議院議長と青山繁晴議員は厳重注意処分となった。これらの処分は、党議拘束の重要性と違反の深刻さを示している。

党内では、党議拘束の適用により一部の議員が難しい決断を迫られた。有村治子議員は党を代表して質問に立つ機会を得る代わりに、投票行動において党議拘束に従うことを決断した。法案に懸念を持ちながらも、党議拘束に従って賛成票を投じた議員もいた。

これらの事実から、自民党がLGBT理解増進法案の審議に関して党議拘束をかけ、それに従わない議員に対して処分を行ったことが確認できる。党議拘束は党の方針を統一し、法案の可決を確実にする手段として機能したが、一部の議員の個人的な見解や懸念と衝突する結果となった。

LGBT理解増進法が昨年成立したことに続き、選択的夫婦別姓に関する法案が推進される場合、特に保守的な価値観を持つ議員や支持者からの反対意見が強くなる可能性が高い。自民党内には、伝統的な家族観を重視する保守派が存在し、選択的夫婦別姓制度に対して慎重な姿勢を持つ議員が多い。党議拘束がかけられた場合、議員は党の方針に従うことが求められ、個々の信念や選挙区の有権者の意見を反映しにくくなる。こうした状況は、保守派の議員から強い反発を招くことが予想される。

LGBT理解増進法には当事者からも講義の声が巻き起こった

LGBT理解増進法案に続き、選択的夫婦別姓法案にも党議拘束がかけられることになれば、保守系の議員は何らかの動きを見せる可能性が高い。特に、伝統的な家族観や価値観を重視する保守派議員にとって、このような動きは大きな懸念材料となる。党議拘束がかけられることで、彼らは自らの信念や選挙区の有権者の意見との間でジレンマに直面し、党内での意見対立が激化することが予想される。

この状況において、保守系の議員は反対運動を展開したり、議員連盟を結成することも考えられる。特に選挙が近づく中で、メディアを通じて自身の意見を発信し、支持基盤を維持するための活動が活発化するだろう。こうした動きは、彼らが選択的夫婦別姓法案に対して持つ強い危機感を反映したものとなる。

さらに、党議拘束がかけられることは、トランプ大統領が大統領令を連発した状況と類似している。トランプ政権下では、民主党のリベラル・左翼的な制度を大統領令によって迅速に推進する動きがあった。日本では、他の法案にも党議拘束がかけられることで、リベラル・左翼的な法案がなし崩し的に通過する恐れがある。これにより、保守派の議員たちの危機感は一層高まる。彼らは、選択的夫婦別姓法案が通過することで、党全体の方針がリベラルな方向にシフトするのではないかという懸念を抱くことになるだろう。

このように、選択的夫婦別姓法案に党議拘束がかけられることは、保守系議員にとって重大な問題であり、彼らの反発や行動が今後の政策形成に大きな影響を与えることが予想される。

自民党の萩生田光一元政調会長は、10日夜のインターネット番組「言論テレビ」で、選択的夫婦別姓の導入に関する議論について、旧姓使用の拡充で対応すべきだと提案した。彼は、「党の執行部にいないから平場で声を上げることができる」と述べ、保守系議員連盟「創生日本」を足場に議論を進める意向を示した。萩生田氏は、この問題に関しては皆で議論し、意見を集約することが重要だと強調した。

萩生田氏が出演した櫻井よしこ氏のインターネット番組

対中外交に関しては、岩屋毅外相が中国人向けのビザ発給要件を緩和したことについて、「ビザの拡大は大きな問題だ」と疑問を呈した。彼は、政府の外交方針に党が関与していないことに不満を示し、「今の政府のやり方はちょっと乱暴じゃないか」と指摘した。この発言は、外交政策における党の役割の重要性を訴えるものであった。

さらに、高市早苗前経済安全保障担当相については、彼女が昨年の総裁選で決選投票に進出したことを評価し、保守の価値観を持つ人々が団結しなければ次のリーダーは育たないと述べた。萩生田氏は、自身が調整役を果たす意向を示し、保守派の団結を呼びかけた。

番組の司会を務めたジャーナリストの櫻井よしこ氏が、安倍元首相が萩生田氏を後継者として考えていたことを紹介し、立ち上がる考えがあるか尋ねた。萩生田氏は、「これはやらないとか、やりたいとか言っている場合じゃない。できる仕事は何でもやろうと思っている。その選択肢に総裁というのが入ってくるなら、覚悟しないといけない」と語り、今後の政治家人生に対する覚悟を示した。

しかし、現自民党の執行部や閣内は、情弱のためかLGBT理解増進法の成立や選択的夫婦別姓法案の推進が、保守的な岩盤層の怒りを買い、支持率が低下していることをほとんど認識していない。政治資金問題で譲歩したり、リベラル・左派的な政策を実施したからといって、リベラル派の有権者が自民党に投票することはないことも、理解させる努力が必要である。

こうした説得が実を結ぶ機会がないとみるなら、萩生田氏が20名以上の議員を引き連れ、自民党からの離党をちらつかせることで、党内でのキャスティング・ボードを握るという戦略も考慮すべきだ。この手法は、1970年代に三木武夫が実践した「三木おろし」への対応策に似た動きであり、党内の権力闘争の鍵を握るものである。

三木武夫氏

「三木おろし」とは、三木武夫首相が党内の反発を受けて失脚した自民党内の権力闘争である。三木は「クリーンな政治」を掲げ、特にロッキード事件に対して厳格な姿勢を示し、金権政治を批判したが、これにより田中角栄派などの有力派閥との対立が激化した。しかし、この「クリーンな政治」の姿勢はあくまで権力を掌握するための建前であり、実際には手段を選ばぬ立ち回りで党内での立場を強化しようとしたのだ。

三木派は1970年代初頭、約20~30人の議員で構成されていた。これは自民党内の主要派閥に比べると少なく、田中派や福田派に対して明らかに劣っていた。しかし、三木は党内抗争や派閥間のパワーバランスを巧みに利用し、与党内での影響力を高めていった。三木派の一部は自民党を離党することはなかったが、1976年に三木派の一部が新自由クラブを結成し、これによって自民党を離れた。その後、1986年に新自由クラブは自民党と合併した。この巧妙な戦略により、三木は自らの派閥を守りながら、党内での優位性を確保したのである。

自民党の保守派はいざとなれば、このくらいのことを本気で実行する胆力を持たなければ、岸破連合に翻弄されるだけになるだろう。政治の世界は、単なる理想論や美辞麗句では動かない。実際の行動こそが、未来を切り開く鍵なのだ。保守派の議員たちよ、今こそ自らの信念を貫き、党内の権力闘争に立ち向かう勇気を持つべきである。さもなければ、次第にリベラルな潮流に飲み込まれ、かつての伝統や価値観が失われることになるだろう。行動こそが、未来を変えるのだ。

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