- 防衛省・統合幕僚監部は2025年1月6日、鹿児島県の種子島沖で中国海軍のドンディアオ級情報収集艦(艦番号796)を確認し、自衛隊が撮影した写真を公開した。
- ドンディアオ級情報収集艦は、電子情報を収集するための偵察船で、弾道ミサイルを追跡する能力を持ち、2024年12月13日にも沖縄本島と宮古島の間で確認されている。
ドンディアオ級情報収集艦(艦番号796) |
ドンディアオ級情報収集艦は、電子情報を収集するための偵察船で、合計9隻が建造されています。船体には多数のアンテナを備え、弾道ミサイルなどを追跡する能力も持つといわれています。
今回は5日午前4時頃、種子島の北東約70kmの海域に出現したとのこと。その後、大隅海峡を西進して東シナ海へ向けて航行したとしています。なお、この艦艇は、2024年12月13日に沖縄本島と宮古島の間の海域でも確認されています。
これに対し海上自衛隊は、護衛艦「とね」と掃海艦「あおしま」、P-1哨戒機で警戒監視・情報収集を行ったとしています。
まとめ
以上のように、日本のシギント能力は、経済安全保障、サイバー防衛、宇宙情報収集、国際的な協力の観点から強化され続けており、これらの取り組みは国際情勢の変化に対応するための重要な要素となっている。さらに、日本が情報収集艦を持つべき理由として、海上の脅威に対する迅速な対応能力の向上が挙げられる。中国の海洋進出や北朝鮮の動向を監視するためには、情報収集艦が有効な手段となる。情報収集艦を保有することで、より包括的かつ迅速な情報収集が可能となり、国防と経済安全保障の強化に寄与することが期待される。
日本がインテリジェンスでも米英諸国と本格的に連携しようと思うならば、自衛隊のシギント機関を発展・拡大して本格的な国家シギント機関を創設すべきである。これにより、日本は国際的な情報戦において必要な地位を確立し、同盟国との協力をさらに強化することが可能となる。情報収集艦の運用は、単なる防衛手段にとどまらず、国際的な影響力を高めるための重要な戦略的資産となるだろう。
今後もさらなる進展が期待される中で、技術の進化や地政学的な変動に対応するための柔軟な戦略が求められる。日本は、これらすべてを踏まえた上で、積極的に情報収集能力を向上させ、国際社会での立ち位置を強化する努力が必要である。情報収集艦の導入は、その第一歩として非常に重要な意味を持つだろう。これを所有することにより、日本はその決意を世界に表明することができる。国際情勢がますます複雑化する中で、日本は自らの安全保障を確保し、持続可能な未来を築くための選択肢を模索し続ける必要がある。
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今回は5日午前4時頃、種子島の北東約70kmの海域に出現したとのこと。その後、大隅海峡を西進して東シナ海へ向けて航行したとしています。なお、この艦艇は、2024年12月13日に沖縄本島と宮古島の間の海域でも確認されています。
これに対し海上自衛隊は、護衛艦「とね」と掃海艦「あおしま」、P-1哨戒機で警戒監視・情報収集を行ったとしています。
【私の論評】日本は情報収集艦所有とシギント能力強化で国際社会での立ち位置を強化せよ
- 情報収集艦は、シギントを目的とした艦船であり、敵国の通信や電子信号を監視・収集する重要な役割を果たしている。
- アメリカ、中国、ロシアなどが情報収集艦を保有し、特にアメリカは高度な技術を駆使して情報収集活動を行っている。
- 日本は情報収集艦を持っておらず、その理由は地理的特性や防衛政策に起因している。
- 一方日本のシギント能力は強化されており、特に経済安全保障やサイバー防衛の観点から重要性が増している。
- 日本がインテリジェンスで米英諸国と本格的に連携するためには、国家シギント機関を創設し、情報収集艦を保有すべきである。
情報収集艦とは、主にシギント(信号情報活動)を目的とした艦船であり、海上での通信や電子信号を監視・収集するために設計されている。これらの艦は、敵国の通信やレーダー信号、その他の電子的な情報を収集し、分析する重要な役割を果たす。情報収集艦には、多数のアンテナやセンサーが装備されており、海洋や空中の状況を把握するために欠かせない機能を持っている。
米軍のミサイル追跡能力をもつ情報収集艦ハワード・O・ロレンツェン(T-AGM-25) 2つの箱状のものは巨大レーダー |
情報収集艦を保有している国々には、アメリカ、中国、ロシア、フランス、ドイツなどがある。アメリカ海軍は、世界中での情報収集活動を行うために多数の情報収集艦を運用し、その艦は高度な技術を駆使して敵の通信を傍受し、分析する能力を持っている。たとえばハワード・O・ロレンツェン(T-AGM-25)は、その行動は隠されているが、日本にも寄港しており、北朝鮮のミサイルの監視をしているとみられる。一方、中国はドンディアオ級情報収集艦を用いて、弾道ミサイルの追跡能力を備えた艦艇を運用し、近年その数を増強している。ロシア海軍も情報収集艦を持ち、特に北極地域や海洋での情報収集活動を強化している。
シギントは、信号情報(Signal Intelligence)の略で、電子通信やレーダー信号などの信号を収集・分析する情報活動を指す。シギントは、通信の傍受や電子信号の解析を通じて、軍事的な状況把握や戦略的意思決定において非常に重要な役割を果たす。現代の戦争において、シギントの重要性は特に顕著であり、敵の動向を把握するための手段として不可欠である。アメリカはイラク戦争やアフガニスタン戦争において、シギントを駆使して敵の通信を傍受し、戦略的な優位性を保つことに成功した。
日本は情報収集艦を持っていない国の一つである。これはいくつかの理由による。まず、日本の地理的特性が影響している。日本は島国であり、周囲を海に囲まれているため、海上よりも空中や陸上での情報収集が重視されている。特に、衛星や航空機による情報収集が重要視され、これにリソースが集中している。
次に、日本の防衛政策が影響を与えている。日本は平和主義に基づく専守防衛を基本としており、積極的な軍事活動や情報収集艦の運用が抑制される傾向にある。また、日本はアメリカや他の同盟国との協力を重視し、他国の情報収集能力を活用するアプローチを取っている。たとえば、日本はアメリカの衛星情報を活用し、共同で情報分析を行うことで、自国の防衛能力を強化している。
これらの要因が組み合わさり、日本は情報収集艦を保有せず、代わりに他国との情報共有や協力を通じて安全保障を確保する道を選んでいる。今後の国際情勢に応じて、情報収集の手段や戦略は変わる可能性があるが、現時点ではこのようなアプローチが取られている。
日本のシギントに関しては、2020年以降、国家安全保障局(NSS)のインテリジェンス機能が強化され、特に経済安全保障や先端技術分野でのシギント能力の向上が進められている。シギントは、通信やレーダー信号の収集を含む広範な情報活動を指し、これにより国の安全保障や経済の脅威に対する監視が強化されている。
近年、サイバー空間や経済分野での情報収集の重要性が増している中、2021年には中国企業による日本の先端技術の盗用が問題視された。このような背景から、経済安全保障を確保するためにシギントの役割が強調され、NSSは国際的な技術競争の中で敵対的な情報活動に対抗するための情報収集能力を強化する施策を講じている。具体的には、経済安全保障政策が策定され、サイバー脅威や技術流出に対する防御策が検討されている。
防衛省では、自衛隊のサイバー防衛隊の人数が2022年に約540人から約800人に増強され、サイバー空間におけるシギント能力が向上している。この増強により、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクに対する対応力が強化されており、特に2020年に発生した「JBSサイバー攻撃」のような事例が、食品供給チェーンを狙った攻撃の脅威を浮き彫りにしている。これを受けて、サイバーセキュリティに関する法整備も進められている。
自衛隊のサイバー防衛隊 |
また、宇宙領域での情報収集能力も強化されており、2020年には宇宙領域専門部隊が創設された。この部隊は、宇宙からの通信信号やデータを収集することでシギント能力を向上させており、2021年には日本の通信衛星が特定の地域における軍事活動を監視するためのデータを収集し、国際的な安全保障環境において重要な役割を果たした。情報収集衛星の打ち上げも継続されており、AIを活用したシギント分析システムの開発も進行中である。
さらに、日本はアメリカやオーストラリア、インドとの「クアッド」の枠組みを通じて、国際的な情報共有と協力を強化している。これにより、シギントに関する情報交換が促進され、共同の防衛戦略が策定されている。国際協力の面では、日本は「ファイブアイズ」諸国との情報共有を強化し、経済安全保障分野での協力が進んでいる。
政府は民間企業や大学との連携を強化し、最新の通信技術や暗号技術をシギント能力の向上に活用している。法制度の整備も進み、2022年には経済安全保障推進法が成立し、重要技術情報の保護やサプライチェーンの安全確保に関する法的基盤が強化された。
今後の課題としては、宇宙空間での測位信号の活用や、より高度な情報収集能力の獲得が挙げられる。多様な宇宙システムの構築・維持・向上のためには、基幹ロケットの継続運用・強化、打ち上げ能力の向上や費用低減を進める必要がある。さらに、民間ロケットの活用を含め、即時に小型衛星を打ち上げる能力の確保も重要である。安全保障と危機管理に関する情報力の強化も引き続き進める必要がある。
日本のH3ロケット |
日本がインテリジェンスでも米英諸国と本格的に連携しようと思うならば、自衛隊のシギント機関を発展・拡大して本格的な国家シギント機関を創設すべきである。これにより、日本は国際的な情報戦において必要な地位を確立し、同盟国との協力をさらに強化することが可能となる。情報収集艦の運用は、単なる防衛手段にとどまらず、国際的な影響力を高めるための重要な戦略的資産となるだろう。
今後もさらなる進展が期待される中で、技術の進化や地政学的な変動に対応するための柔軟な戦略が求められる。日本は、これらすべてを踏まえた上で、積極的に情報収集能力を向上させ、国際社会での立ち位置を強化する努力が必要である。情報収集艦の導入は、その第一歩として非常に重要な意味を持つだろう。これを所有することにより、日本はその決意を世界に表明することができる。国際情勢がますます複雑化する中で、日本は自らの安全保障を確保し、持続可能な未来を築くための選択肢を模索し続ける必要がある。
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