2025年5月5日月曜日

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?—【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?

まとめ

  • E-3の役割E-3「セントリー」はボーイング707基盤のAWACSで、360度レーダーによる索敵・指揮・情報共有を担い、米空軍の空中指揮中枢。
  • E-3の老朽化湾岸戦争などで活躍も、50年経過で16機に減。部品難や疲労により、2025年現在指揮統制に空白の危機。
  • E-7導入後継E-7「ウェッジテイル」はボーイング737基盤。高性能レーダー搭載、2027年から導入、26機配備まで約10年。
  • E-7の利点と課題オーストラリアなどで実績。整備性優れるが、移行期はE-3酷使と同盟国連携が課題。
  • 航空自衛隊E-767とE-2C/Dで18機運用。規模小さいがAWACS数で米超え。米はE-7移行で空の覇権維持が課題。

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」は、1970年代の冷戦期に登場し、アメリカ空軍の空中指揮統制の中枢として湾岸戦争やアフガニスタンなど主要作戦で活躍。ボーイング707を基に、360度監視可能な回転式レーダードームを搭載し、索敵、戦術指揮、データリンクによる情報共有、陸海軍との連携を担う「空の中枢神経系」だ。しかし、製造から約50年が経ち、構造的疲労や部品供給難、メンテナンス負担増により、2025年現在は16機にまで減少。冷戦期の30機以上から大幅に縮小し、指揮統制に空白が生じる危機にある。

これを受け、アメリカ空軍は次世代AWACSとしてE-7「ウェッジテイル」の導入を決定。ボーイング737-700を基盤に、高性能な固定式フェーズドアレイ・レーダー「MESA」を備え、高リフレッシュレートの監視能力や柔軟な通信ネットワークを誇る。すでにオーストラリア、韓国、トルコで運用され、NATOやイギリスも採用。整備性とコスト面でも優れるが、2027年から本格導入予定で、最大26機の配備完了には約10年を要する見込み。移行期は既存E-3の酷使が続く厳しい状況だ。

一方、航空自衛隊はE-767を4機、E-2C/Dを14機、計18機のAWACS・AEW機を運用。国土規模や任務範囲がアメリカより小さいにもかかわらず、AWACS保有数で上回る充実ぶりを誇る。アメリカ空軍はE-3からE-7への移行期に、整備体制の刷新、海軍やNATO・同盟国との統合作戦による機能補完など、喫緊の課題に直面している。空の情報掌握が戦局を決める現代、空の覇権を維持するため、E-3の遺産からE-7の新時代への転換は、アメリカ空軍の将来を左右する重大な挑戦である。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

まとめ
  • 米軍の装備危機:潜水艦とAWACSは老朽化と製造能力低下に直面。ロサンゼルス級原潜は2028年頃に49隻から46隻に減少し、E-3「セントリー」は16機に激減。グローバル化による製造業の海外依存が原因。
  • 潜水艦の課題:ロサンゼルス級の退役で戦力低下。オハイオ級は戦略任務に特化し、通常海戦では限定的。寿命延長やバージニア級の強化で対応するが、建造遅延が問題。ディーゼル潜水艦技術は失われた。
  • AWACSの状況:E-3の老朽化で戦力空白。E-7導入は2027年から。部品供給難とメンテナンス負担が戦力維持を阻む。
  • 日本のAWACS優位性:航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の18機で世界最高水準。アメリカや他国を上回り、高性能レーダーと日米連携で島国防衛を確保。
  • トランプ政権の対応:グローバル化の代償で生産基盤が弱体化したため、経済合理性を犠牲にしてでも製造業の国内回帰を推進。関税や補助金でサプライチェーンを再編し、軍事産業の復活を目指す。


米海軍機主力のロサンゼルス級攻撃型原潜

米軍の装備は、老朽化と製造能力の低下という危機に瀕している。AWACSと潜水艦戦力は、その象徴だ。その背後には、グローバル化がもたらした製造業の空洞化が横たわる。一方、日本の航空自衛隊はAWACSで世界最高水準の戦力を誇り、対照的な姿を見せる。この現実を前に、トランプ政権がなぜ製造業の国内回帰にこだわるのか、その理由が浮かび上がる。

アメリカ海軍の潜水艦は、主力のロサンゼルス級攻撃型原潜の老朽化が進む。2020年代後半から2030年代にかけて退役が集中し、2028年頃には現在の49隻が46隻程度にまで落ち込む。この「谷間」は、中国の対艦ミサイルや潜水艦増強が脅威となるインド太平洋での抑止力を危うくする。オハイオ級弾道ミサイル原潜や巡航ミサイル原潜は戦略任務に特化し、通常の海戦では役に立たない。特に巡航ミサイル原潜の2028年退役は、火力の大幅な低下を意味する。

米海軍はロサンゼルス級の一部に核燃料交換とオーバーホールで寿命を延ばし、バージニア級新造艦にバージニア・ペイロード・モジュールを追加して艦体を延長、トマホークミサイル40発を搭載することで戦力の穴埋めを図る。しかし、建造の遅れが足を引っ張る。

AWACSも同様だ。アメリカ空軍のE-3「セントリー」は老朽化で2025年時点で16機に激減。次世代のE-7「ウェッジテイル」は2027年から導入予定だが、移行期の戦力空白は避けられない。部品供給の途絶やメンテナンスの負担が、戦力維持を困難にしている。

アメリカは1990年にディーゼル電気潜水艦を全廃し、すべての潜水艦を核動力原潜に統一した。バージニア級、オハイオ級、開発中のコロンビア級は長期間の潜航と高速性を誇るが、静粛性や沿岸作戦に優れるディーゼル潜水艦の技術は失われた。遠洋作戦に特化した原潜は強力だが、沿岸での柔軟性を欠き、技術の再構築は不可能に近い。

造船能力の低下も深刻だ。冷戦終結後、造船所は50以上から20未満に激減。原潜建造は2社に限られ、コロンビア級とバージニア級の同時建造で生産は限界に達する。核認証を受けた労働者の不足、低賃金による若手の離職、部品供給の途絶が追い打ちをかける。バージニア級の建造ペースは目標の年2隻に対し1.2~1.3隻にとどまり、2025年度予算では調達がさらに削減された。AUKUS協定でのオーストラリアへの潜水艦売却も、生産能力の不足で暗礁に乗り上げる。

サンフランシスコ海軍造船所

これらの問題の根底には、グローバル化による製造業の変容がある。アメリカはコスト削減を優先し、製造業の生産部門を中国や東南アジアにアウトソーシングした。デザインや研究開発は国内に残したが、部品製造は海外依存となり、国内のサプライチェーンは脆弱化した。造船所の労働力や専門技術も失われ、潜水艦の建造遅延やAWACSのメンテナンス難を招いた。

対照的に、日本の航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の計18機のAWACS・AEW機を運用し、世界最高水準の戦力を誇る。2025年現在、機数はアメリカのE-3(16機)、NATOのE-3(約14機)、ロシアのA-50(約10機)、中国のKJシリーズ(10~15機)を上回る。E-767はE-3並みの高性能レーダーとリンク16で広域監視を、E-2Dは精密監視とミサイル防衛で相互補完性を発揮。日本の狭い領空に最適化され、高度な訓練と日米連携が強みだ。

アメリカのE-3は老朽化し、E-7は未配備。ロシアのA-50は電子機器が時代遅れで、中国のKJ-500は実戦経験が乏しい。日本は機数と質のバランスで他国を圧倒し、島国防衛の情報掌握を確実にしている。中国の新型機やロシアのA-100の性能が未知数でも、日本のトップクラスの地位は揺るがない。


日本の優位性は頼もしいが、アメリカの状況は気がかりだ。潜水艦とAWACSの危機は、グローバル化の代償そのものだ。だからこそ、トランプ政権は製造業の国内回帰を強力に推し進める。経済合理性を多少犠牲にしても、製造業をアメリカに取り戻す戦略だ。グローバル化のコスト競争が、潜水艦やAWACSの生産基盤を弱体化させ、戦略的戦力の維持を危うくしたとの認識が根底にある。関税引き上げ、補助金による産業保護、労働力育成の強化を通じて、サプライチェーンを自国中心に再編し、軍事産業の持続可能性を確保しようとしている。

米潜水艦とAWACS戦力は、老朽化、戦力減少、造船・製造能力の低下に直面する。中国の海軍・航空戦力の急拡大を前に、産業基盤の再構築は待ったなしだ。米海軍と空軍は労働力育成やサプライチェーン投資を進めるが、2028年までの生産回復は厳しい。インド太平洋の抑止力維持は、この戦略的危機を乗り越えられるかにかかっている。アメリカの再起は、製造業の復活にかかっているのだ。

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