本日の最大の話題は、石原知事が、尖閣諸島の買取を表明したことだと思います。そのため、本日は、私のブログでもその話題をとりあげることとしました。WSJもこの内容を扱っており、さらに、賛成・反対のアンケートもできるようになっています。詳細と、アンケートは、WSJのほうをごご覧いただくものとして下に要旨だけ掲載しておきます。
石原慎太郎東京都知事が16日、訪米中の講演で突然、尖閣諸島の買い取りを表明した。
この島々について、日本政府は実効支配をしていると主張しているのに対し中国や台湾は領有権を主張している。2010年にこの付近で操業中の中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件以降、国民的な注目を浴びているこの島々を都のカネ(つまり都民の税金)で買おうというのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
読売新聞によると、石原氏は、訪米前に「物議を醸してくる」と公言していたそうだが、この発言が、地震や原発や放射能問題で頭がいっぱいで、しばらくこの問題を忘れていた日本国民に大きな波紋を呼んだことは確かだ。その間も中国がこの海域で存在感を強めようとしていたことを考えると、それだけでも石原氏としては目的を達成したかもしれない。
【私の論評】 石原氏の今回の行動は、受け手の期待を破壊し覚醒の大ショックを与えるためのコミュニケーションである!!
尖閣列島 |
これは、石原知事が、最近では、マスコミもほとんど報道しなくなり、政府もなんら対応をしないためと、さらには、国際的にも日本の立場をはっきりさせるために、意図して意識して行ったデモンストレーションということだと思います。本来、政府がやるべきことをいくら待ってもしないので、痺れを切らしてやったということだと思います。
何はともあれ、国際舞台での発言だったのが、良かったと思います。日本国内での発言であればね海外にはほとんど報道されないですから、前々から機会を狙い、準備して、行ったものだと思います。
だから、石原知事にとっては、実際に土地を購入できるとか、できないとかなどの問題は、さして重要なことではなく、国際舞台で、物議を醸すことができたことで大成功なのだと思います。ただし、効果的なコミュニケーションをするためには、実際に交渉をすすめていること自体が必要だったのだと思います。単に、そうするつもりだというより、すでにそのような行動をしているというほうが、かなりインパクトがあります。
そうしてこれは、かなり効果的なコミュニケーションです。このやり方で、石原知事は、日本国内はもとより、中国に対しても、並々ならぬ日本の意思を表明することができました。コミュニケーションとしては、大成功だったと思います。先日のあの、鳩山さんのイラン訪問とは、対照的な効果的なものであったと思います。
昨年の10月時点で、中国からのパンダ貸与に関してくだらない与太話をしていた、藤村官房長官をして、尖閣列島を国が購入することもありえるとの発言をさせたということは、予想外の大成果だったと思います。
それにしても、上の動画の各政治家の声、だれも、石原都知事の真意を読み解いていないと思います。だからこそ、石原知事のような行動をこれかも取れないことでしょう。まあ、民主党のガキ大臣には、一生かかってもできない芸当かもしれません。
われわれも、このコミュニケーション方式を真摯に学ぶべきです。特に、最近のどうしようもない政治家など、爪の垢でも煎じて飲むべきです。
ドラッカーは、コミュニケーションについて、以下のように語っています。
「上司の言動、些細な言葉じり、癖や習慣までが、計算され意図されたものと受け取られる」(『エッセンシャル・マネジメント』)
階層ごとに、ものの見方があって当然である。さもなければ仕事は行なわれない。だが、階層ごとにものの見方があまりに違うため、同じことを話していても気づかないことや、逆に反対のことを話していながら、同じことを話していると錯覚することがあまりに多い。
コミュニケーションを成立させるのは受け手である。コミュニケーションの内容を発する者ではない。彼は発するだけである。聞く者がいなければコミュニケーションは成立しない。
ドラッカーは「大工と話すときは、大工の言葉を使え」とのソクラテスの言葉を引用する。コミュニケーションは受け手の言葉を使わなければ成立しない。受け手の経験に基づいた言葉を使わなければならない。
コミュニケーションを成立させるには受け手が何を見ているかを知らなければならない。その原因を知らなければならない。
人の心は期待していないものを知覚することに抵抗し、期待しているものを知覚できないことに抵抗する。
「受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーションを行うことはできない。期待を知って初めてその期待を利用できる。あるいはまた、受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを認めさせるためのショックの必要を知る」(『エッセンシャル・マネジメント』)石原さんは、まさしく、上でいうところの、「人の心は期待していないものを知覚することに抵抗し、期待しているものを知覚できないことに抵抗する」をよくわかっていたのだと思います。それに、ドラッカーは、これに加えて、「人の心は、期待していることにばかり向かい、言っても、間違ってうけとられる」ということも良くわかっているのだと思います。
だからこそ、この受け手(現政権ならびに中国)の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを認めさせるための覚醒の大ショックの必要を知り、このような行動をとったのです。
石原氏は、中国と日本政府の脳に覚醒のためのショックを与えた?! |
人とコミュニケーションをはかるとき、特に相手の期待を破壊するには、手っ取り早いのは、叱ることです。しかし、何度叱っても、効果がないときには、他の方法を講じなければなりません。石原さんも、尖閣列島に関して、何度も苦言を呈してきました。しかし、それによって、中国も、それに、本来この問題に対してもっとも関心があるべき政府にもなんらの変化も反応もえられませんでした。だからこそ、このような行動をにでたのです。同じことばかり繰り返しても効果がなければ、やり方を返ることの格好のケーススタディーになったものと思います。
それから、時期的にも、今は中国は、薄熙来・元重慶市党書記の「政治的死」でも理解できるように、権力闘争の真っ只中ですから、これも長い間機会をうかがって、意図して意識して選んだものと思います。この時期にこのような行動をとれば、さらに存在感を増すことができるという計算づくの行動だと思います。それから、これは、あまりにも当然のことですが、石原新党がうまくいかないいま、存在感を増すためにも、必要な行動だったのだと思います。まさに、中国を覚醒させ、だらしのない今の民主党政権を覚醒させ、さらに、竹島問題のある韓国にも波及効果を及ぼし、さらに北方領土問題のあるロシアに波及効果をおよぼし、それだけではなく、国内外での存在感を増すという一石五鳥を狙って成功した、素晴らしいコミュニケーションだったと思います。
アメリカでは、ドラッカーのマネジメントは、いわゆるリバイズド・エディションというのがあり、ドラッカーの『マネジメント』にもそれがあります。これは、ドラッカーの著書のなかで、事例など、古すぎて現状にそぐわなかったものを現在のものに置き換え、ドラッカーの考えはそのままという版があり、私もキンドル本で持っているいるものです。今後改定されたときに、この事例は、是非掲載していただきたいと思えるほど、良い事例だと思います。
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