2024年6月22日土曜日

南鳥島沖レアメタル鉱物密集―【私の論評】日本の海洋資源戦略:マンガンノジュールからインド太平洋戦略まで

南鳥島沖レアメタル鉱物密集


まとめ
  • 東京大学と日本財団の調査で、南鳥島沖の海底にレアメタルを豊富に含むマンガンノジュールが約2億3000万トン確認され、日本が資源大国になる可能性が示唆された。
  • 確認された鉱物には、国内消費分の約75年分のコバルトと約11年分のニッケルが含まれていると推計されている。
  • 来年から実証試験を開始し、2026年以降の商用化を検討している。


日本の鉱物資源の活用が前進する可能性があります。電気自動車の電池などに使われるレアメタルを豊富に含む鉱物が小笠原諸島の南鳥島沖に密集していることが東京大学などの調査でわかりました。

日本財団 笹川陽平 会長
「資源大国になれる可能性がある」

東京大学と日本財団によりますと、日本の排他的経済水域内にある南鳥島沖の海底を調査したところ、レアメタルを豊富に含むマンガンノジュールと呼ばれる鉱物がおよそ2億3000万トン確認されたということです。

鉱物には、▼コバルトが国内消費分のおよそ75年分、▼ニッケルがおよそ11年分、含まれていると推計されています。

来年から実証試験を始め、2026年以降、商用化を検討するとしています。

レアメタルはEV=電気自動車の電池に使われるなど世界的に需要が高まっていて、“資源小国”の日本が今後、海底資源を活用できるかが焦点となります。

【私の論評】日本の海洋資源戦略:マンガンノジュールからインド太平洋戦略まで

まとめ
  • マンガンノジュールには、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などの重要金属が含まれており、これらは電池、鉄鋼製造、ハイテク機器など現代技術に不可欠です。
  • 日本は広大な排他的経済水域(EEZ)を有し、海底熱水鉱床、レアアース泥などの資源開発を進めることで、資源自給率向上と将来的な輸出国化の可能性があります。
  • 南鳥島沖でのレアアース試掘計画やマンガンノジュールの発見は、日本の海底資源開発における重要な取り組みであり、資源安全保障強化に貢献します。
  • 安倍首相の「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、資源安全保障を含む包括的なアプローチで、シーレーンの安全確保、資源供給源の多様化、国際協力の促進を目指しています。
  • 日本の海洋資源開発は、単なる経済的利益追求ではなく、国際協調と平和構築のビジョンを示し、新たな国際秩序の構築を目指すものです。

マンガンノジュールには以下の金属が含まれています。
  • マンガン:鉄鋼の製造において、酸素と硫黄を還元する試薬として使用され、特殊鋼やアルミニウム、銅の合金化剤としても利用されます。また、乾電池の電極や化学工業の酸化剤としても重要です
  • コバルト:電気自動車(EV)の電池やハイテク機器に使用されます。
  • ニッケル:ステンレス鋼や電池の製造に使用されます。
  • :電気配線や電子機器に使用されます。
これらの金属の用途は以下です。
  • スマホ、電気自動車等の電池:コバルトとニッケルはリチウムイオン電池の主要な成分であり、電気自動車の性能と寿命を向上させるために不可欠です。
  • 鉄鋼の製造:マンガンは鉄鋼の強度、硬度、耐食性を向上させるために使用され、特にステンレス鋼や特殊鋼の製造において重要です。
  • ハイテク機器:コバルトはスマートフォンやノートパソコンなどの電子機器の製造にも使用されます。
  • ステンレス鋼:ニッケルはステンレス鋼の製造に不可欠であり、耐食性や強度を高めます。
  • 電気配線:銅は優れた導電性を持ち、電気配線や電子機器の主要な材料として使用されます。
これらの金属資源は、現代のテクノロジーやグリーンテクノロジーにおいて欠かせないものす。

日本が資源自給率を高めるだけでなく、輸出国になる可能性もあります。日本は既にメタンハイドレートやシェールガスの試掘に成功しており、これらの資源の商業化が進めば、エネルギー自給率の向上が期待されます。

また、世界的に資源ナショナリズムが進行している中で、日本が自国の資源開発を進めることで、国内での資源供給が安定し、余剰分を輸出することが可能になるかもしれません。これらの要素を考慮すると、日本が資源自給率を高めるだけでなく、将来的には資源輸出国になる可能性も十分に考えられます。

南鳥島近辺はこれ以外にも、レアアース試掘計画がすすめられています。

政府が進める日本最東端の南鳥島沖でのレアアース試掘計画が、当初の予定から約1年遅れ、令和7年度以降に開始されることが昨年明らかになりました。遅延の主な原因は、海底から泥を吸い上げるための「揚泥管」の調達の遅れです。ウクライナ戦争の影響で、英国の製造企業が軍事部門に注力したため、揚泥管の製造に遅れが生じています。

南鳥島沖の水深約6千メートルの海底には、世界需要の数百年分相当のレアアースを含む泥が確認されています。政府の計画では、地球深部探査船「ちきゅう」から揚泥管を伸ばし、1日当たり約70トンの泥を吸い上げる予定です。

地球深部探査船「ちきゅう」

南鳥島沖のレアアース試掘計画とマンガンノジュールの発見は、直接的な関係はありませんが、どちらも日本の海底資源開発における重要な取り組みです。

レアアース試掘計画は政府が進める海底泥からのレアアース採掘を目指すもので、一方のマンガンノジュールの発見は東京大学と日本財団による調査結果です。両者は同じ南鳥島沖の海域で行われていますが、対象資源が異なります。

これらの取り組みは、日本が海底資源開発を通じて資源自給率を高め、中国などへの依存度を下げることを目指す国家戦略の一環として位置づけられています。両プロジェクトは日本の海洋資源開発の可能性を示す重要な成果であり、将来的な資源安全保障に貢献する可能性があります。

日本の領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は約447万km²に及び、これは世界第6位の広さです。この面積は日本の陸地面積(約37.8万km²)の約12倍に相当し、多くの離島を含むため広大です。

日本の海域には、海底熱水鉱床、コバルト・リッチ・クラスト、マンガン団塊、メタンハイドレート、海底石油・天然ガス、レアアース泥などの資源が存在する可能性が指摘されています。これらの資源は、日本の資源自給率を高めるだけでなく、将来的には輸出国になる可能性も秘めており、政府は資源安全保障の強化を目指しています。

将来的には、日本が豊富な海洋資源を背景に、国際的な平和と繁栄に貢献すべきです。世界的に需要が高まるレアメタルやエネルギー資源を安定的に供給し、国際市場の安定化に寄与し、これを通じた外交関係の強化や、資源開発技術の共有を通じて、他国との協力関係を深めることによって世界に平和と安定をもたらすべきです。



安倍総理の「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、世界に新たな秩序をもたらし、現在でも日本の国家安全保障の中核を成すものであり、資源安全保障と密接に関連しています。この戦略は、重要なシーレーンの安全確保を通じて日本のエネルギー資源の安定供給を保証し、同時に資源供給源の多様化を推進しています。また、国際法に基づく秩序維持により、南シナ海や東シナ海における日本の海洋資源権益も守ろうとしています。

さらに、この戦略は地域諸国とのエネルギー協力促進や、インフラ投資を通じた新たな資源開発機会の創出も目指しています。技術協力による資源利用効率化や循環型経済の推進、経済連携協定の締結による安定的な資源取引環境の整備も、戦略の重要な側面です。加えて、新エネルギー技術の開発・普及を通じて、長期的な資源安全保障の強化も図っています。

このように、安倍首相のインド太平洋戦略は、地政学的な構想を超えて、日本の経済安全保障、特に資源安全保障を多面的に強化する包括的なアプローチとなっており、変化する国際環境の中で日本のエネルギーと資源の安定確保を目指す長期的なビジョンを示しているのです。

日本の海洋資源を活用した国際貢献は、安倍首相のインド太平洋戦略の重要な一面を形成しています。それは単なる経済的利益の追求ではなく、資源を通じた国際協調と平和構築の ビション を示すものです。この アプローチは、資源をめぐる紛争を防ぎ、共存共栄の理念に基づいた新たな国際秩序の構築を目指すものであり、安倍首相の外交ビジョン の本質的な部分を体現しするものでもあるのです。

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