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岡崎研究所
まとめ
- バイデン政権はウクライナを支援しつつも、ロシア領内への攻撃を禁じる制約を設けており、これが戦争を長引かせている。
- プーチン大統領はウクライナがレッドラインを越えると核戦争が起こると脅しているが、実際にはエスカレーションは起こっていない。
- 米国はロシアに対して戦略的聖域を提供しており、ロシアは国境防衛の心配なく戦える一方、ウクライナは自国領内でのみ戦わなければならない。
- ウクライナに供与される兵器システムの使用において、ロシア領内への攻撃を禁じる制限は非合理的であり、解除すべきである。
- ロシアの核の恫喝に屈せず、NATOとして明確なメッセージを送り続けることが重要である。
フィリップス・オブライエン氏 |
バイデン政権は、ロシアのエスカレーションを恐れてウクライナの攻撃範囲を制限してるが、実際にはロシアの脅しは虚偽であることが繰り返し示されている。例えば、米国が供与した兵器システムが使用されるたびに、ロシアのエスカレーションは起こっていない。
最近では、米国がクリミアに到達可能なATACMSを供与し、ウクライナがロシア艦艇を攻撃したが、ロシアからのエスカレーションはなかった。オブライエン教授は、ウクライナに戦争を戦い勝利する最善の機会を与えるべきだと強調している。
さらに、ロシア領内への攻撃を禁じる制限の解除が議論され、5月31日にはブリンケン米国務長官が「国境のロシア側に所在するロシア軍」に対する攻撃を認める旨を公式に確認した。しかし、攻撃可能な距離に制限があることが問題視されている。
ロシアの核の脅しに屈せず、NATOとして明確なメッセージを送り続けることが重要だ。
【私の論評】ロシアの核兵器使用の脅威と経済力のこけおどし:西側諸国の戦略的対応策
まとめ
- プーチン大統領はウクライナ侵攻に関連して核兵器の使用を示唆しているが、実際の使用はリスクが高く、国際的な非難と報復を招くため、実行される可能性は低い。
- プーチン大統領はロシアの経済が購買力平価(PPP)で日本を追い抜いたと主張しているが、名目GDPでは日本は依然として世界4位、実質GDPでは世界第3位の経済大国である。
- 戦時経済では軍需物資の大量生産が行われ、経済活動が一時的に活発化する傾向がある。ロシアも戦時下での経済活動が一時的に拡大していると考えられる。
- ロシアの核兵器使用に対して明確かつ一貫したメッセージを発信し、経済制裁を強化し、ウクライナへの軍事支援を継続すべき。NATOや他の国際機関が連携し、ロシアの虚偽情報に対抗すべき。
- ロシアの戦略核使用はないとみれるが、通常戦力が崩壊し、敗北が避けられない状況で低出力の戦術核兵器を使用する可能性はある。最初はウクライナに限定される可能性が高い。
ロシアが核兵器を使用する懸念と、ロシアが日本のGDPを追い抜いたというプーチン大統領の発言は、どちらも戦略的な虚仮威しとして理解することができます。以下にその論点をわかりやすく説明し、さらに西側諸国がどのように対応すべきかを論じます。
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻に関連して核兵器の使用を示唆する発言を繰り返しています。これは、西側諸国に対する威嚇として機能していますが、実際には核兵器の使用は極めてリスクが高く、国際的な非難と報復を招く可能性が高いため、現実的には実行される可能性は低いと考えられます。西側諸国もこの点を理解しており、ロシアの脅しに対して冷静に対応しています。
プーチン |
プーチン大統領は、ロシアの経済が購買力平価(PPP)で日本を追い抜いたと主張しています。しかし、これは名目GDPではなく、購買力平価という特定の指標に基づいたものであり、実際の経済力を完全に反映しているわけではありません。名目GDPでは、2023年の日本のGDPは591.4兆円で、依然として世界4位の位置にありますが、円安の影響でドル換算では順位が変動しています。一方、実質GDPでは日本は依然として世界第3位の経済大国です。
戦時経済では、軍需物資の大量生産が行われるため、経済活動が一時的に活発化する傾向があります。例えば、第二次世界大戦中の日本では、軍需と輸出が経済を支え、平時産業も国家の動向に大きく左右されました。経営学の大家ドラッカー氏は、「数字だけを見れば、第二次世界大戦は、単なる好景気だったように見えるだろう」と語っています。このような状況は、ロシアにおいても同様であり、戦時下での経済活動が一時的に拡大することがあります。
第二次世界大戦中のかつ国のGDPの推移 |
西側諸国がロシアの虚仮威しに対して冷静かつ戦略的に対応するためには、いくつかのアプローチが求められます。まず、ロシアの核兵器使用に対しては、明確かつ一貫したメッセージを発信し続けることが重要です。例えば、「核兵器の使用は重大な結果を招く」という立場を堅持し、ロシアに対する抑止力を維持することが必要です。
次に、ロシアの戦争継続能力を抑制するために、経済制裁を強化し、ロシア経済に対する圧力を高めることが求められます。これにより、ロシアの軍事行動を制約することができます。また、ウクライナに対する軍事支援を継続し、必要な兵器システムを提供することで、ウクライナが自国を防衛し、戦争に勝利するための最善の機会を与えることが重要です。
さらに、NATOや他の国際機関と連携し、ロシアの脅威に対する共同の対応策を講じることが必要です。これにより、ロシアに対する国際的な圧力を強化し、孤立させることができます。加えて、ロシアの虚偽情報やプロパガンダに対抗するために、正確な情報を迅速に発信し、国際社会に対するロシアの影響力を削ぐ努力を続けることが求められます。
もしロシアが核兵器を用いる素振りを見せた場合、西側諸国は以下のような対応を取るべきです。まず、国際社会に対して迅速かつ明確な非難を表明し、ロシアの行動が国際法に違反していることを強調します。次に、NATOや他の同盟国と緊密に連携し、軍事的な抑止力を強化するための具体的な措置を講じます。これには、核兵器の使用に対する明確な報復措置を含むことが考えられます。
さらに、経済制裁を一層強化し、ロシアの経済に対する圧力を最大限に高めます。これにより、ロシアの戦争継続能力をさらに制約することができます。また、情報戦を強化し、ロシアの虚偽情報やプロパガンダに対抗するための正確な情報を迅速に発信します。これにより、国際社会の支持を得て、ロシアの行動を孤立させることができます。
最後に、外交的な努力を続け、ロシアに対して核兵器の使用を思いとどまらせるための対話を継続します。これには、国連や他の国際機関を通じた圧力を含むことが考えられます。西側諸国は、これらの対応を通じて、ロシアの核兵器使用の脅威に対して冷静かつ戦略的に対処することが求められます。
非難だけではどうにもならない場合、長距離ミサイルを用いてロシアの核基地や核兵器を破壊することも検討すべきです。これは極めてリスクの高い選択肢ですが、ロシアが核兵器を使用する明確な兆候がある場合には、先制的な防衛措置として考慮すべきです。例えば、北朝鮮の核兵器開発に対する対応として、韓国が対地ミサイル攻撃能力を強化し、北朝鮮の核施設を攻撃する選択肢を検討していることが参考になります。このような行動は、国際法や国際社会の反応を慎重に考慮しつつ、最終手段としての位置づけが必要です。
ロシアが核兵器を使用する可能性のある具体的なシナリオとしては、以下のような状況が考えられます。まず、ロシアの通常戦力が戦場で崩壊し、敗北が避けられない状況に陥った場合、低出力の戦術核兵器を限定的に使用することで戦局を打開しようとする可能性があります。例えば、ロシアは弾道ミサイル「イスカンデル」など、核弾頭を搭載できる各種兵器をウクライナ周辺に配備しており、これらを使用することでウクライナ政府に衝撃を与え、屈服させることを狙うかもしれません。
ロシアの戦術核「イスカンデル」 |
また、ロシアが核兵器を使用する場合、最初はウクライナに向けたものに限定される可能性が高いです。プーチン大統領は、こうした力の行使をすれば、西側諸国は戦争に関する戦略を全面的に見直さざるを得なくなると信じている可能性があります。戦略核を用いることはないでしょう。それを用いれば、第三次世界大戦になることはプーチンも理解しているでしょう。
結論として、ロシアの核兵器使用の脅しと、経済力に関する発言は、どちらも国内外に対する戦略的な虚仮威しとしての側面が強いです。これらの発言は、ロシアの強さを誇示し、敵対国に対する抑止力を高めるためのものであり、実際の行動に移される可能性は低いと考えられます。西側諸国はこれを理解し、冷静かつ戦略的に対応することが求められます。
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