- 米国の方針転換:バイデン大統領が、ウクライナによる米国製兵器を使ったロシア国境付近の軍事拠点への限定攻撃を容認。これまでの「レッドライン」方針からの大きな転換。
- 攻撃対象と制限:ハリコフ州周辺のロシア領内で、出撃準備中の部隊や司令部、武器庫などが対象。民間施設や遠方の軍事拠点は除外。
- ウクライナと欧州の反応:ウクライナは歓迎し、民間人保護の手段と評価。英国、フランス、ドイツなど欧州諸国も支持を表明。
- 軍事的・政治的な意義:ウクライナ東部での劣勢挽回と民間人保護が狙い。ロシアの勝利は「独裁国家連合」形成につながると警告。
- 今後の焦点:ウクライナはF16戦闘機の早期配備を要求。米国の決定が戦局や国際関係に与える影響に注目。
ウクライナ東部方面に展開する、ロシア軍兵士 |
ウクライナのレズニコフ前国防相はこの判断を歓迎し、ロシア側の軍事拠点を攻撃できれば民間人の犠牲を減らす有効な手段になると強調した。また、ロシア軍の制空権に対抗するためF16戦闘機の早期配備を求めた。さらに、ロシアの勝利を許せば「独裁国家連合」が世界中で形成されると警告し、ウクライナ支援の重要性を訴えた。
- 2022年ウクライナは長距離ドローンでロシア国内の空軍基地を攻撃し、ロシアの防空網の脆弱さを露呈させた。
- ウクライナは国連憲章第51条に基づく自衛権や国際法を根拠に、ロシア領内の軍事施設を攻撃できる。
- しかし、その攻撃がロシアの核使用を誘発する可能性を懸念し、西側諸国はウクライナにロシア領内への攻撃を控えるよう促してきた。特に西側諸国の武器を用いてこれを実行することを制限してきた。
- ロシア軍は弾薬庫や補給拠点をロシア領内に配置し、重要な物資を安全に保ちながら効率的な補給を行うようになった。そのため西側諸国は、制限を緩和しつつある。
- ウクライナは高い技術力を持つが、経済的には脆弱で西側諸国の援助がなければ戦争を継続できず、その制限に従わざるを得ない。そのような制限ない台湾とは対照的である。
プーチン大統領に〝逃げ場なし〟ウクライナの最新ドローンがモスクワを急襲も 「ロシア側は対抗できない」元陸上自衛隊・渡部悦和氏―【私の論評】ウクライナが、今回の攻撃を実施してもほとんどの国が反対しない理由とは(゚д゚)! 2022年12月11日
ロシア領内を攻撃するために持ちられた可能性のあるソ連製の偵察用無人機「ツポレフ141」 |
この記事の元記事の内容を要約して以下に掲載します。
ウクライナの長距離ドローンがロシア国内の重要な空軍基地2カ所を攻撃し、戦争は新局面を迎えた。攻撃には旧ソ連時代の無人機かウクライナ製の最新兵器が使われた可能性がある。
この事件はロシアの防空網の脆弱さを露呈させ、ウクライナは航続距離1000kmの新型ドローンでロシア国内のあらゆる標的を攻撃できると示唆。「ロシアに安全地帯はなくなる」と警告している。モスクワも攻撃圏内だが、専門家は戦術核使用を避けるため軍事目標のみを攻撃すべきだと助言。米国はこの攻撃を国際法に合致するものとして是認している。
この記事を元記事とした【私の論評】の内容の要約を以下に掲載します。
ウクライナのクレバ外相とドイツのホフマン第一副報道官は、国連憲章第51条に基づく自衛権を根拠に、ウクライナがロシア領内の軍事施設を攻撃する権利があると主張しています。国際法は戦争を禁止していますが、侵略を受けた国家には自衛権が認められています。しかし、国連の集団安全保障体制はロシアの拒否権により機能不全に陥っており、国際司法の手続きも関係国の同意に左右されるため、国際機関を通じた解決は困難です。
その中で、軍事力で劣るはずのウクライナがロシア領内の軍事目標に大々的な攻撃を行い、成功を収めたことが注目されています。実は、ウクライナはソ連時代から高い技術水準を持ち、兵器開発や宇宙開発に貢献し、中国の軍事技術の基礎も築いた実績があります。その技術力を駆使して個別的自衛権を行使することは、ある意味必然だったのです。
さらに、この攻撃はロシアによる核攻撃や生物化学兵器の使用を未然に阻止する意味合いもあると考えられます。ウクライナは、元々腐敗と混乱の中にありましたが、皮肉にもロシアの侵略によって、今や技術力を最大限に生かしてロシア国内を攻撃する強敵に変貌したのです。
ウクライナの攻撃で破壊されたロシアの戦略爆撃機の尾部 |
このような精密な長距離攻撃には、高度な技術と大量の資源が必要です。ロシア領内の軍事拠点を正確に特定し、長距離飛行能力と高い誘導精度を持つドローンを多数製造する必要があります。
さらに、攻撃が成功したとしても、ロシアの戦略爆撃機のような高価値目標を一機破壊するのに、多数のドローンを失う可能性があります。そうなると、費用対効果の面で「割に合わない」ということになります。
ウクライナにとって、このようなハイリスク・ハイリターンの作戦を大々的に継続することは、技術的にも物質的にも現実的ではないでしょう。むしろ、この種の攻撃を戦略的に重要な場面に限定し、主力は防衛と反撃に注ぐことが賢明な選択だと考えられます。
電撃戦で首都を早期に陥落させる計画でしたが、兵站の確保が不十分で、前線の部隊は物資不足に陥りました。さらに、ウクライナ国民を解放者として歓迎すると思い込んでいるふしがありましたが、実際には強い抵抗に遭いました。
結果、ロシア軍は戦術を180度転換し、ドンバスへの戦線縮小を余儀なくされました。現場の実態を正しく把握せず、誤った前提で作戦を展開した典型例と言えるでしょう。
しかし、このロシア軍も戦争を継続するうちに、経験知がついてきたようで「ちぐはぐ」さ自体は今でもあまり変わってはいないようですが、少なくともウクライナ側がロシア領内を攻撃しないということを逆手に取ることはできるようになったようです。
具体的には、弾薬庫や補給拠点をロシア領内に配置しています。これにより、重要な物資を安全に保ちながら、前線への効率的な補給を行うことが可能になっています。ロシア軍は、ウクライナの攻撃範囲外にこれらの拠点を設置することで、物資の破壊リスクを減らし、迅速な供給を実現しています。この戦略は、ロシア軍にとって安全性と補給効率を高め、国際的な反発を避ける利点があります。台湾の自主開発による長距離ミサイル |
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