2024年5月24日金曜日

戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ―【私の論評】大戦の脅威を煽るより、ロシアの違法な軍事行動に対し、断固とした姿勢で臨め

戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

まとめ
  • 歴史学者ティモシー・スナイダーは、ロシアと戦うウクライナが第3次世界大戦を防いでいると述べ、現在の状況を第2次世界大戦直前に例えた。
  • スナイダーは、ウクライナをナチスに降伏したチェコスロバキアになぞらえ、ウクライナが諦めると将来ロシアがさらなる戦争を引き起こすと警告した。
  • 現在のウクライナ紛争は第3次世界大戦の危機を高めているが、NATO諸国は関与を避け、暴力の拡大を防ごうとしている。
  • ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナがロシアに敗れれば次にヨーロッパの他の国が攻撃対象になると警告している。
  • ベラルーシのルカシェンコ大統領も世界が崖っぷちに立たされていると警告し、第3次世界大戦の懸念を表明している。

ウクライナ軍女性兵士

 著名な歴史学者ティモシー・スナイダーは、ロシアと戦っているウクライナが第3次世界大戦を防いでいると述べた。彼は米イェール大学の歴史学教授で、東欧とソビエト連邦を専門家だ。スナイダーは、ウクライナとロシアの全面戦争が3年目に突入している現状を、第2次世界大戦直前の時期に例えた。

 彼は2024年を1938年と比較し、ウクライナが第2次大戦初期にナチスに降伏したチェコスロバキアと似ていると述べた。1939年、ナチス・ドイツがチェコスロバキアに侵攻し、これによりイギリスとフランスがポーランドの同盟国としてナチス・ドイツに宣戦布告し、第2次世界大戦が始まった。スナイダーは、エストニアのタリンでの会議で、ウクライナが諦めるか、国際社会がウクライナを見捨てれば、将来的に異なるロシアが戦争を行うことになると警告した。

 スナイダーは、ウクライナが現在の状況を引き延ばし、1939年のような大戦の勃発を防いでいると述べた。ウクライナでの2年以上にわたる紛争は、第3次世界大戦の可能性を高めているが、NATO諸国はウクライナ戦争の当事者ではないと強調し、暴力が国境を越えて広がるのを防いでいるとした。ウクライナは、ロシアに敗北すれば次にヨーロッパの他の国がロシアの攻撃対象になると警告している。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵入してきた直後に、ウクライナの戦いを支援するよう呼び掛けた。彼は「もしウクライナが倒れれば、ヨーロッパも倒れる」と述べた。また、3月中旬には世界が「本格的な第3次世界大戦の一歩手前」にあると警告した。

 一方、プーチンの忠実な味方であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は2024年2月に世界が「再び崖っぷちに立たされている」と警告し、第3次世界大戦について「懸念する根拠はある」と述べた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ロシアの経済的制約と西側の圧力 - ウクライナ侵攻の行方

まとめ
  • 現代ロシアは軍事力は侮れないが、経済力ではナチス・ドイツほどの潜在力はない。資源依存型の経済構造が足かせとなっている。GDPでは韓国を若干下回る程度である。
  • 一方、当時のドイツは再軍備と経済成長の相乗効果で、ヨーロッパ有数の経済・軍事大国として台頭していた。
  • ロシアのウクライナ侵攻は長期化すれば、その経済的制約からロシアに第三次世界大戦を引き起こすだけの実力はない。
  • 重要なのは、ロシアの違法な軍事行動を容認せず、ウクライナの主権と領土を守ることである。
  • 米国を筆頭に西側がロシアへの圧力を強める動きは、ロシアの暴挙に毅然と立ち向かう決意の表れである。
第二次世界大戦中のドイツSS(親衛隊)

現代ロシアは確かに軍事力に優れていますが、経済面ではナチス・ドイツほどの潜在力はありません。現在ロシア経済は天然資源、とりわけエネルギー輸出に過度に依存しているのに対し、かつてのソ連は現在のロシアと比較して、製造業や先端技術分野での地位ははるかに上位に位置し、米国としのぎを削っていました。国内総生産(GDP)でも、米中に大きく水をあけられている有様です。  

これは、第二次世界大戦前のドイツとはかけ離れた状況です。1939年当時、ドイツの名目GDPは約411億ドル(1990年価格換算)と、アメリカに次ぐ経済大国でした。軍備増強と内需拡大策の効果により、ドイツは欧州有数の経済力を誇っていました。軍事と経済の相乗効果で、ヨーロッパ全域に影響力を及ぼすに至ったのです。

一方の現代ロシアは、2022年のGDPがわずか1.7兆ドル程度に過ぎず、主要欧州諸国よりも小さい規模です。世界ランキングでは11位と、韓国をわずかに下回る程度です。これは日本でいえば、東京都と同じくらいです。長年の対外制裁と資源依存の経済構造が災いし、伸び悩んでいるのが実情です。

軍事パレードをするロシア軍兵士

このように、ナチス政権下のドイツは再興期にあり、軍備増強と経済発展を遂げ、ヨーロッパでの覇権を狙っていました。一方でプーチン政権のロシアは、経済的な盤石さを欠いており、他国に影響力を及ぼす余地は限られています。

こうした経済力の違いが、ロシアのウクライナ侵攻の遂行能力に大きく影響しています。戦争が長期化するなか、ロシアは経済的に行き詰まる可能性すら浮上してきました。第三次世界大戦を引き起こせるような実力は、到底持ち合わせていないと言えるでしょう。  

武力面ではロシアが軍事技術と核兵器で優れているのは事実です。しかし経済規模が韓国と肩を並べるに過ぎなければ、その行動には自ずと一定の制約がつきまとうはずです。つまり、現在の紛争が再び世界大戦に発展するリスクは、杞憂に過ぎないのかもしれません。かえって、目の前の現実的で差し迫った問題から目を逸らしかねません。

重要なのは、第三次世界大戦の脅威などではなく、ロシアのウクライナ侵攻が国際法に明白に反すること、これを決して容認できないことです。欧米諸国を中心に、ロシアのこの暴挙に対する責任を明確に追及し、ウクライナの主権と領土保全を尊重した平和的解決を目指すべきなのです。  

もちろん、ロシア軍の戦力は侮れません。しかし、ウクライナ軍の強固な決意、西側からの軍事支援、そしてロシア自身の経済的制約といった要因を考えれば、ロシアがこの紛争で完全勝利を収めることは極めて困難です。平和の実現に向けては、第三次世界大戦を恐れるのではなく、ロシアのこの明白な違法行為に毅然と対処することこそが重要なのです。

ロシアの侵攻は確かに現実的で差し迫った脅威です。しかし同時に、ウクライナの奮闘、国際社会の広範な支援、ロシア自身の能力の限界という現実も見逃せません。こうした要因を組み合わせれば、この脅威を最終的に封じ込め、抑止できるはずです。

その実現に向け、何よりも冷静さを失わず、ロシアの軍事行動を断固として非難し続けることが大切です。そうすれば第三次世界大戦の悪夢は現実のものとはならず、かえってロシアが現実路線に傾き、停戦への道を模索せざるを得なくなるでしょう。平和を願うなら、ロシアの暴挙に毅然と立ち向かうことこそが何より重要なのです。

第三次世界大戦をテーマとしたゲームの画面

実際、米国はロシアの違法な軍事行動に対する姿勢を一層厳しくしつつあります。ウクライナを訪問中のブリンケン国務長官は15日、米国製兵器を使ったロシア領内への攻撃を容認する可能性に言及し、「この戦争をどう遂行するかは最終的にはウクライナが決断することだ」と述べました。

バイデン政権はこれまで、ロシア領への直接攻撃を制限してきましたが、この発言はその方針の転換を示唆しています。ロシア側に有利に働いているとの批判を受けて、制限撤廃の要望が高まっていたためです。   

このように、おくればせながらも、米国を始めとする西側諸国がロシアへの圧力を強める動きは、ロシアの暴挙に毅然と立ち向かう決意の表れと言えるでしょう。平和実現に向けては、第三次世界大戦の脅威を煽るよりもロシアの違法な軍事行動に対し、断固とした姿勢で臨むことが何より重要なのです。

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