まとめ
- 米国防総省のセキュリティークリアランス審査で、30代の女性が北朝鮮の指導者と血縁関係にあるとして最高機密レベルの資格を拒否された
- その女性は、北朝鮮の金正恩総書記の伯母の娘である可能性が指摘されている
- 両親とともに1990年代に北朝鮮から米国に亡命し市民権を取得したが、血縁関係が問題視された
この女性は、北朝鮮の金正恩総書記の近親者である可能性が指摘されている。具体的には、金正恩の伯母であるヨンスク氏の娘との説がある。
審査記録によると、この女性はX国(おそらく北朝鮮)で生まれ、両親とともに1990年代に米国に亡命し市民権を取得した。家族全員が北朝鮮との接触を断っていたが、血縁関係が最高機密レベルの資格付与を拒否された理由となった。
【私の論評】日本で早急にセキュリティークリアランス制度を導入すべき理由
まとめ
- 日本にはセキュリティー・クリアランス制度が存在せず、個人の前歴審査は行われていない
- そのため、防衛関係企業の従業員や国会議員、要職の公務員に不適切な人物が入り込む可能性がある
- 具体的には外国勢力や反社会的勢力との関係、経済的利害関係の存在といったリスク要因が挙げられる
- 一方で公務員倫理法やマスコミによる監視など、一定の歯止め機能はあるものの十分ではない
- このため、機密情報の保護や安全保障上の観点から、個人審査制度導入の導入は必要不可欠である
上の記事にでてくるX国とは、米国の利益や価値観と対立するような国を指す表現です。具体的な国名は明記せずに匿名化して「X国」と表記することがあります。
米国政府は、機密情報や特定の施設へのアクセスを認める際、出身国の人権状況や反米活動、テロ支援など様々な観点から審査を行います。その際、問題のある国を匿名化して「X国」と呼ぶことで、秘密保持を図りつつ、一定の国に対する警戒心を示しているのです。
X国の具体例としては、北朝鮮、イラン、シリアなど米国の賢明国家や国際テロ組織と関係の深い国が想定されますが、あくまで事例ごとに判断されるため、一概に特定の国とは限りません。
つまり、X国とは機密情報の取り扱いにおいて、米国の安全保障上のリスクが高いと見なされる国を指す、一般的な表現なのです。
日本でも同様のケースが起こる可能性はあり、その場合に排除されるかどうかは、以下の点に依存すると考えられます。
- 法的根拠の有無 日本には米国のようなセキュリティークリアランス制度は存在しませんが、公務員にも一定の制限は課されています。国家公務員法では、公務員に対し「信頼関係に反する行為の禁止」が定められており、国の利益を侵害するおそれがあれば、職務上の制限は課されうるでしょう。
- 具体的な危険性の有無 単に血縁関係があるだけでなく、実際に国家機密を漏洩するリスクがあると判断された場合には、職務上の制限や排除の可能性が高まります。危険性の程度が重要な判断材料になります。
- 人権への配慮 一方で、出身や血縁関係のみを理由に排除することは、人権侵害につながる恐れがあります。日本国憲法が保障する思想・良心の自由等も考慮する必要があるでしょう。
セキュリティークリアランス AI生成画 |
これは、本当に恐ろしいことだと思います。日本でもセキュリティー・クリアランス制度の導入の話があったはずなのにどうなってしまったのでしょう。
セキュリティー・クリアランス制度の導入に向けて議論が進められていましたが、結局、法案の審議は過去の通常国会では、見送られています。以下にその経緯を説明します。
- セキュリティー・クリアランス制度とは セキュリティー・クリアランス(適格性評価)制度は、国の機密情報を扱う資格者を認定する仕組みです。この制度は、秘密情報へのアクセスを許可するために、研究者や職員の信頼性を確認することを目的としています。
- 高市早苗氏の意欲 高市早苗経済安全保障相は、セキュリティー・クリアランス制度の導入に強い意欲を示しています。彼女は、日本が主要7カ国(G7)で唯一、経済安保上の機密を扱う人を認定する制度を整えていないことを指摘しています。
- 経済安保推進法改正案の提出 高市氏は、2024年の通常国会に経済安保推進法の改正案を提出する意向を明言しています。この改正案には、セキュリティー・クリアランス制度の導入が含まれており、日本の国際競争力を維持するためにも重要とされています。
- 審議の見送り 一方で、政府は経済安保推進法にクリアランス制度を盛り込むことを見送りました。この決定には、様々な課題が影響していると考えられています。例えば、公衆の反対、労働者のプライバシー懸念、各国の異なる基準などが挙げられます。
- 将来の展望 セキュリティー・クリアランス制度の導入は、日本の先端技術を守り、国際共同研究・開発に参加するために必要です。高市氏は、この課題に取り組む決意を示しています。
高市早苗氏 |
セキュリティー・クリアランス制度がない日本においては、確かに防衛関係者や国会議員、重要な公務員ポストに、一定の懸念がある人物が就任している可能性は否定できません。
具体的なリスクとしては、外国や反社会的勢力との関係、経済的利害関係の存在、過激な思想や信条、不正や違法行為の前科などが考えられます。
米国の事例みられるように、より厳格な審査制度は、安全保障上の観点から必要不可欠とみられ、今後この制度の導入を一刻もはやくすすめるべきです。
【関連記事】
内閣府の再エネタスクフォース資料に中国企業の透かし 河野太郎氏「チェック体制の不備」―【私の論評】再エネタスクフォースにおける中国企業関与の問題:情報漏洩の深刻なリスクと政府のすべき対応〈'24 3/24〉
0 件のコメント:
コメントを投稿