2024年5月15日水曜日

つばさの党、選挙カー追跡 「交通の便妨げる行為」適用も視野に捜査 警視庁―【私の論評】選挙妨害は社会秩序破壊への挑戦、絶対許すな

つばさの党、選挙カー追跡 「交通の便妨げる行為」適用も視野に捜査 警視庁

まとめ
  • 衆議院東京15区の補欠選挙で、「つばさの党」の選挙カーが他陣営の選挙カーを執拗に追跡し、一部陣営が警察署に避難する事態が発生。
  • この追跡行為は選挙活動の自由を妨害するものとして、警視庁が公職選挙法違反の疑いで捜査を進めている。
  • つばさの党の代表と幹部が他陣営を罵声で攻撃するなどの行為も繰り返していた。
  • 警視庁は選挙カーの追跡が有権者に対する情報提供の機会を妨げたと見ており、家宅捜索を実施して証拠品を押収。
  • 選挙カーによる自由妨害での摘発は前例が少なく、捜査は慎重に進められている。
翼の党による選挙妨害


 4月に実施された衆議院東京15区の補欠選挙において、異常な状況が発生した。政治団体「つばさの党」に所属する選挙カーが、他の政党の選挙カーを執拗に追跡し、その結果、複数の陣営が選挙活動の予定を変更し、警察署に避難するという事態に至った。


 この行為は、選挙の自由を著しく妨害するものとして、警視庁捜査2課による捜査が行われている。特に、つばさの党の代表である黒川敦彦氏と党幹部の根本良輔氏を含む数名が、立憲民主党など他の陣営に対して、罵声を浴びせるなどして選挙活動を妨害した。


 警視庁は、この追跡行為が公職選挙法における「自由妨害」と定義される「交通の便を妨げる行為」にあたるとみて、立件に向けた捜査を進めている。追跡を受けた陣営からは110番通報がなされ、城東署や深川署への避難が行われた事例もあり、これらの行為が街頭演説の妨害だけでなく、有権者への情報提供の機会をも妨害したと捜査チームは考えている。


 さらに、警視庁は13日につばさの党本部と黒川氏、根本氏の自宅に対して家宅捜索を実施し、パソコンなど数十点の物品を押収しました。しかし、選挙カーによる追跡という形の自由妨害行為については摘発の前例が乏しく、捜査は関係機関との調整を含め慎重に進められています。


 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。


【私の論評】選挙妨害は社会秩序破壊への挑戦、絶対許すな

まとめ

  • 令和元年の参院選での選挙妨害事案では、札幌地裁が原告の勝訴を言い渡したが、二審では警察の行為が妥当とされた。
  • 安倍晋三元首相は選挙妨害により、「ステルス遊説」を行うようになった。
  • 選挙妨害は言論の自由への挑戦であり、聴衆の「知る権利」を侵害している。
  • メディアによる選挙妨害の正当化は、民主主義の破壊行為に他ならない。
  • 選挙妨害を正当化する動きは、社会の規律の緩みや分断を助長するものであり、公共の場での秩序や規範を維持することの重要性を、社会全体で共有し、守っていく必要がある。

今回の翼の党による選挙妨害について、よく引き合いに出されるのが、令和元年の参院選で、札幌市で演説中の安倍晋三首相(当時)に「安倍辞めろ」とヤジを飛ばした2人が北海道警の警察官に現場から排除され、損害賠償を求めた裁判です。

この裁判結果には私も不服です。


札幌地裁は第一審で原告側の「勝訴」判決を言い渡しました。原告は大杉雅栄(34)と桃井希生(26)で、北海道に対し、慰謝料660万円の損害賠償請求しました。

ただし、二審札幌高裁では、大杉氏は安倍氏に危害を加える恐れがあったとして、警察官の行為は妥当と認定し、一審札幌地裁の賠償命令を取り消しました。一方、桃井希生(27)については、排除は憲法で保障された表現の自由の侵害に当たるとして55万円の賠償命令を維持しており、桃井は上告できません。

これ以前にも安倍首相に対する選挙妨害は行わていました。

平成29年の東京・秋葉原で行われた安倍晋三元首相の演説中に一部聴衆から「安倍やめろ」「帰れ」との大合唱が起こり、演説をかき消す事態が発生しました。安倍氏はこれらの妨害に対して抗議しましたが、一部新聞はヤジを演説への意見表明として正当化し、安倍氏の反応を批判しました。

これらの論調は多くのテレビメディアにも同調され、結果として安倍氏は選挙妨害者との接触を避けるために遊説場所を事前に告知しない「ステルス遊説」を展開することになりました。さらに、警察の対応も萎縮させる結果となり、安倍氏暗殺事件時にテロリストの取り押さえが遅れる一因となりました。

安倍首相がステルス遊説をすることになった原因を作り出した悪質な選挙妨害

この一連の出来事は、「安倍やめろ」「帰れ」というヤジが単なる意見表明ではなく、演説者に対する恫喝的な命令であり、非言論によって言論をかき消す行為、すなわち言論の自由への挑戦行為であることを示しています。さらに、これは演説を聴きたいとして集まったひとたちの権利を奪うものでもあります。

法の下の平等の原則から、このような妨害行為を警察が排除することは困難ですが、これによって最終的に被害を受けるのは、候補者の政治的主張について知りたいと思っている一般聴衆の「知る権利」です。

この事案を通じて、多くの国民がヤジを正当化するメディアの欺瞞を強く認識すべきですし、非言論による選挙妨害を正当化する言論機関の行動が、実際には民主主義の破壊行為に他ならないことを認識すべきです。

このような身勝手な「表現の自由」の行使は、言論の自由を守るべき使命を持つ言論機関によるものであってはならず、言論の自由の本質と民主主義の根幹を揺るがす問題として、深い反省と対策が求められています。

選挙妨害の正当化は社会に混乱をもたらし、社会の規律の緩みを生じさせかねません。これにより、公共の場でのルールや秩序を守るという共通の認識が損なわれる可能性があります。このような状況は、言論の自由という基本的な権利の誤用につながり、それがさらに社会全体のモラルや規範意識の低下を招くことにもなりかねません。

特に、選挙という民主主義の根幹を成すプロセスにおいて、言論の場が不当に妨害されることが許容されるようになれば、それが「力による支配」や「多数による圧力」といった不健全な社会風潮を助長することにもつながります。このような風潮は、学校や職場など、社会のあらゆる場でのいじめの排除、パワハラ、セクハラ、モラハラ排除といった問題に対する意識の鈍化を引き起こす可能性があります。

米国の暴動

さらに、選挙妨害を正当化する動きが、特定の意見や立場のみが許容されるという排他的な社会を生み出すことにも繋がりかねません。これは、多様性や相互理解といった民主社会の基盤を揺るがすことになり、結果的に社会全体の寛容性の低下や分断を助長することになるでしょう。そうしたことの果には、米国などにみられる暴動が起こる可能性も否定しきれません。

したがって、選挙妨害の正当化は、ただちに社会に混乱をもたらすだけでなく、長期的に見ても社会の規律の緩みやいじめやモラルの崩壊の助長など、さまざまな負の影響を生じさせる可能性が高いと言えます。このため、言論の自由を含む基本的人権を尊重しつつも、公共の場での秩序や規範を維持することの重要性を、社会全体で共有し、守っていく必要があります。

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