2024年5月16日木曜日

狡猾な朝日新聞 政治記者なら百も承知も…報じる「選挙対策 かさむ出費」とを大悪事、合唱し続ける本当の狙い―【私の論評】政治資金問題は、民主主義体制である限り完璧にはなくなることはない

花田紀凱 天下の暴論プラス

まとめ
  • 朝日新聞が政治資金に関する問題を取り上げ、特に選挙対策での費用増加を指摘。
  • 議員たちは地元対策や事務所運営のために多額の政治資金を必要としている。
  • 政治資金報告書への不記載を朝日が「安倍派裏金1億円超」と報道し政治の混乱と憲法改正議論の停滞状況を生み出した。
  • メディアの報道姿勢が政治資金問題を煽り、政治風土や政治家と有権者との関係を無視しているとの問題提起。
  • 現在の政治的混乱の責任は、政治資金、パーティーでの政治資金集めを、あたかも、大悪事を働いたかのように報じ続けた朝日、その他のメディアにある。

月間『Hanada』の編集長花田紀凱氏

 5月12日に掲載された朝日新聞の記事は、政治改革2024を主題とし、「選挙対策 かさむ出費」というタイトルで、政治活動に関わる多額の費用に焦点を当てた。記事では、特に選挙対策での費用増加が問題とされ、地元会合などでの「会費」が膨らむ実態や、有権者からの金品要求の事例が紹介されている。また、政治資金の規制強化についての議論が進んでいる状況も触れられている。

 この記事の中で、西田昌司参議院議員は、会合への出席による費用が年間数百万円に上るとしている。さらに、前自民党衆院議員の長尾たかし氏や経済安保担当大臣の高市早苗氏、自民党参議院議員の和田政宗氏の発言から、政治家が政治資金集めに苦労している現状がわかる。これらの発言からは、地元対策や事務所運営に必要な費用が、議員の手取りとは比較にならないほど高額であることが浮き彫りにした。

 しかし、朝日新聞が「安倍派裏金1億円超」と報じたことを発端に、新聞、テレビ、ネットが「裏金」報道に飛びつき、本当は免許不携帯程度の罪ともいえる政治資金報告書の不記載を大罪のように扱った。このような報道姿勢が、結果として政治の大混乱を引き起こし、憲法改正の議論を停滞させた。

 こうした報道は、従来から指摘されている日本の政治風土や政治家と有権者との微妙な関係等から選挙対策には巨額の費用がかかることを無視し、意図的に問題を煽っている。今回の日本政治の大混乱は、安倍派憎し、自民党憎しで、知っていながら政治資金、パーティーでの政治資金集めを、あたかも、大悪事を働いたかのように報じ続けた朝日、その他のメディアにある。

 今さら「選挙対策 かさむ出費」もないだろう。

 朝日は狡猾だ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】政治資金問題は、民主主義体制である限り完璧にはなくなることはない

まとめ
  • 今回の政治資金不記載問題は、過去に逮捕者が出た重大な政治資金関連事件と比較すると軽い問題であるといえる。
  • 過去の重大な政治資金関連事件には、ロッキード事件、リクルート事件、金丸信事件、佐川急便事件などがあり、これらの事件は政治と企業間の不透明な関係や政治資金の透明性の欠如を浮き彫りにした。
  • 政治資金の問題は与党議員だけでなく、野党議員にも指摘されており、外国人からの政治献金問題や政治資金収支報告書に関する不適切な記載が問題となっている。
  • 政治資金に関する問題は、日本政治の敏感なテーマとして残り、選挙対策費用の莫大なかかり方が根本的な問題であり是正されるべきだ。
  • ただし、民主主義体制においては政治資金に関する問題がなくなることはなく、これは民主的な体制の特性として受け入れなければないところがある。
今回の政治資金不記載問題が、免許不携帯くらいの罪という花田氏の見解は、正しいかどうかは良くはわかりませんが、それにしても、過去の逮捕者も出た政治資金に関連する事件と比較すれば、今回の不記載問題は確かに軽いものといえると思います。

過去の政治資金に関連する事件をあげます。

政治資金規正法違反事件(ロッキード事件)
1976年に発覚したロッキード事件は、アメリカの航空機メーカー、ロッキード社が日本の政治家や官僚に賄賂を支払っていたスキャンダルです。この事件で最も有名なのは、元首相の田中角栄が賄賂を受け取ったとして逮捕され、政治資金規正法違反で有罪判決を受けたことです。この事件は、日本政治の腐敗の深刻さを浮き彫りにし、政治改革の必要性を強調することとなりました。
田中角栄氏
リクルート事件
リクルート事件は、1980年代後半に発生した政財界を巻き込んだ贈収賄事件です。リクルート社が、未公開株を政治家、官僚、企業幹部などに有利な条件で提供し、その後の株価上昇によって巨額の利益を得させたことが問題となりました。この事件により、多くの政治家や官僚が辞職に追い込まれ、中曽根康弘内閣の退陣にも繋がったとされています。この事件は、政治とビジネスの不透明な関係を象徴するものとして、日本社会に大きな衝撃を与えました。
金丸事件(金丸信事件)
金丸信事件は、1990年代初頭に発覚した政治資金スキャンダルです。金丸信(当時の自由民主党副総裁)が、建設会社から巨額の資金を受け取っていたことが明らかになりました。これは、建設業界からの政治献金として、または土木工事の受注をめぐる贈収賄として行われたものでした。金丸はこの資金を私的に使用した疑い(税金逃れを含む)が持たれ、最終的に脱税で有罪判決を受けました。この事件は、政治と企業の癒着や、政治資金の透明性の欠如が日本政治の大きな問題であることを浮き彫りにしました。

 佐川急便事件

1993年に発覚したこの事件は、佐川急便が政治家に対して違法な献金を行っていた疑惑が中心です。この事件では、政治資金規正法違反の疑いで複数の政治家が逮捕されました。この事件は、政治と企業間の不透明な金銭のやり取りを国民に知らしめ、政治資金の透明性を高めるきっかけとなりました。
以上の事件では、政治資金のやりとりに明らかに問題があり、また金額も大きく、これに関わった政治家が逮捕されています。

これらに比較すれば、今回の政治資金不記載問題は、かなり軽いものといえます。免許証不携帯程度かどうかは別にして、

これらの事件は、政治資金の透明性を高め、政治家と企業間の不適切な関係を防ぐための法律や規制の強化を促すきっかけとなりました。しかし、依然として政治資金に関する問題は日本政治の敏感なテーマとして残っています。

さらに、政治資金問題は与党議員のそれが強調されますが、野党議員にも問題が指摘さています。

菅直人
菅(かん)直人氏は、2010年から2011年にかけて日本の首相を務めました。その在任中、外国人からの政治献金を受け取っていた問題が浮上しました。日本の政治資金規正法では、外国人や外国企業からの政治献金を禁止しています。この規制は、外国の影響力から日本の政治を保護するために設けられています。これに関して、菅氏は献金の事実を認め、受け取った献金を返還するとともに、公に謝罪しました。
前原誠司
前原誠司氏は民主党(当時)所属の政治家で、2011年に外務大臣を務めていた時期に、外国人からの政治献金が明らかになりました。

日本の政治資金規正法は確かに、政治家や政党が外国人や外国企業から政治献金を受け取ることを禁じています。前原氏は、外国人からの献金を受け取っていた事実が明らかになった後、これを認め、2011年3月に外務大臣を辞任しました。
小沢一郎
小沢一郎氏(当時民主党所属)は、土地取引に関連する政治資金の問題で何度か訴追されました。これは、政治資金収支報告書に記載されていない大金が動いていたことから発覚しました。小沢氏は最終的に無罪判決を受けましたが、この問題は日本政治における政治資金の透明性や管理の重要性を改めて国民に意識させることとなりました。
鳩山由紀夫
鳩山由紀夫元首相は、政治資金収支報告書において、母親からの巨額の個人献金を正しく報告していなかった問題がありました。この問題は、政治資金の透明性に関する議論を呼び起こしました。
辻元清美
辻元清美(立憲民主党)は過去に、政治資金収支報告書において、オフィスの家賃に関する不適切な記載が問題となりました。この問題は、政治資金の適切な管理と透明性に関する重要性を示す事例の一つです。

辻元清美氏

山井和則
山井和則(立憲民主党)は、政治資金収支報告書において、政治活動とは無関係の支出が記載されていた問題が発覚しました。具体的には、飲食店での支出などが政治活動として適切でないと指摘されました。
蓮舫の二重国籍問題と政治資金問題
蓮舫(立憲民主党)は、二重国籍問題とは別に、政治資金の管理に関しても注目されました。彼女の政治資金収支報告書において、特定の支出の詳細が不明確であると指摘されたことがあります。
山尾志桜里(菅野志桜里)
山尾志桜里(当時民進党、後に立憲民主党)は、2017年に政治資金収支報告書に記載されていない出費が発覚しました。これには、政治活動とは関連性が低いとされるバーでの支出が含まれていました。山尾氏は、これらの支出について説明を行い、政治資金の適正な管理を求める声が高まりました。
以上あげたのは、一部に過ぎません、まだまだあります。しかし、朝日をはじめとするマスコミは与党の議員の問題ばかりを強調しています。

この問題の本質は、個々の議員の選挙対策費が莫大にかかることだと思います。現在であれば、インターネットを効果的に用い、選挙活動にあまりお金をかけず、効果的な選挙活動ができるのではないかと思います。さらに、会合への出席による費用が年間数百万円などを法律などで禁じるという手もあると思います。

しかし、これもやり過ぎれば、選挙の意味が薄れてきます。絶対に正しい究極の理想の選挙だけを追い求めていけば、とんでもないことになりかねません。

何から何まで禁じてしまうということになると、それこそ全体主義や独裁国家のようになりかねません。たとえば、北朝鮮では議員の政治資金など問題にはなりません。

北朝鮮には日本でいえは、国会に相当するような最高人民会議がありますが、実質的には労働党一党支配の下での形式的な存在にすぎません。北朝鮮では選挙そのものが承認装置に過ぎず、個々の議員による本来の選挙活動や選挙対策費はほとんど発生していないと考えられます。独裁体制下の見せかけの選挙では、民主的な選挙制度における課題は生じていないといえるでしょう。

北朝鮮最高人民会議

いかなる民主主義国において、政治家や政党が選挙運動を行うためには多額の資金が必要不可欠です。しかし、その資金調達をめぐっては、企業や団体からの寄付、個人の寄付、公的資金など、出入り源の透明性が常に問題視されてきました。

特に大口の寄付は、利権との癒着や不正を生む温床となりかねません。さらに規制を設けても、議員個人の選挙対策費が莫大にのぼるケースも後を絶ちません。このように、資金の流れが不透明化しやすい構造的な要因から、民主主義国においては政治資金問題が完全に解消されることは難しいと考えられています。

重要なのは、可能な限り透明性を確保し、不正や腐敗を未然に防ぐ仕組みを整備することにあります。

結局のところ、民主主義体制においては政治資金に関しては、問題になり続けるということであり、それが全くなくなることはないです。無論、大きな問題になることは避けるべきでしょう。しかし、どんなに透明性や、公明正大性を追求したとしても、問題はある程度残り続けるでしょう。

政治資金問題が全くない体制というのは、決して理想的な民主的な体制とはいえないのです。

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