- 衆院補選で、自民党は適切な候補者を立てられず、有権者の離反が起き「自民党の自滅」があった
- さらに、共産党が立憲民主党を支援したことで、立憲民主党が勝利を収めた
- しかし立憲民主党が単独で過半数を制するのは難しく、共産党との連立が不可欠
- 他の野党が共産党の入った連立政権に参加することはなく、自民党中心の連立政権が成立する公算が高い
- 補選で健闘した新政治集団「日本保守党」の動向も見逃せない
2つ目は、共産党が独自候補を立てずに立憲民主党を支援した効果である。東京15区では共産党が立憲候補を支持し、島根1区でも共産党支持層がほとんど立憲民主党に投票したことで、立憲民主党の勝利を後押ししていた。このように立憲民主党が勝利を重ねるには、共産党支持層の獲得が重要な条件となっていた。
しかし、この勢いが続いたとしても立憲民主党が単独で過半数を制するのはほぼあり得ず、共産党との連立または協力関係を組むことが避けられない。ところが日本維新の会や国民民主党が、共産党の入った連立政権に参加することは難しい。そうなれば自民党が公明党以外の既存野党に働きかけ、3党または4党での連立政権を組むことになるだろう。自民は、そのほうが、政権を失うよりはましという判断をするだろう。
一方で、今回の補選で健闘した新政治集団「日本保守党」の動向にも注目が必要だ。同党候補の飯山陽氏は全国から支持を集め、保守層の新たな潮流を示した可能性がある。つまり立憲民主党の勝利は政権交代には至らず、むしろ自民党中心の政権運営が継続する公算が高いものの、保守層における新たな動きの胎動も見られた。
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【私の論評】日本の政治の未来、3党または4党連立政権の可能性と課題
まとめ
- 自公政権の支持率低下にともないの政権の安定性を確保するため、3党または4党連立政権が樹立される可能性がある
- 憲法改正、安全保障、外交、経済政策などの課題が連立政権における重要な課題となる。
- 政策相違による調整の困難さや政権運営の安定性への影響が連立政権の課題となるだろう。
- 過去の自民・自由・社民の3党連立政権樹立後の例から、2〜3党の連立政権が継続される可能性もある。
- 日本政治の未来において、日本保守党が早期に政治的影響力を示すことが期待される。
山口那津男公明党代表と岸田総理 |
3党または4党での連立政権とは、自公維あるいは自公維国の連立政権となることを意味しています。
自民、公明の連立与党だけでは、国民の支持を十分に得られない状況が続けば、次の総選挙で過半数割れのリスクが高まります。そうなれば、政権の安定性が危うくなります。
そのような事態を回避するために、他の野党と連立を組むことは、自民党にとって一つの選択肢となり得るでしょう。
具体的には、日本維新の会や国民民主党などの政党と連立を組むことで、政権の正統性や安定性を高められる可能性があります。
確かに、政策の相違から非常に難航が予想されますが、政権を失うよりはましという判断で、自民党が連立に踏み切る可能性は否定できません。
過去の自民党政権でも、小さな会派と手を組んで連立を組んだ例はあります。政権維持のためなら、理念の違いを一定程度乗り越えざるを得ないということもあり得るでしょう。
支持率が低下して政権の安定性が危うくなれば、自民党が3党以上との連立に動く可能性は現実的なシナリオとして考えられます。党利党略を追求する前に、政権を守る選択をする可能性はあると言えます。
ただし自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の4党連立が成立したとして、政策がどのようになるか想定してみます。
【憲法改正】 自民党と日本維新の会は改正に前向きですが、国民民主党は慎重です。合意形成は難しいでしょう。国民民主党は、日本国憲法の三つの原則を守るとともに、次世代に継承していく立場を取っています1。また、時代の変化を踏まえ、日本国憲法の足りない点については真摯に議論し、停滞している憲法審査会を動かし、必要な改正を目指す姿勢を示しています。
具体的には、国民民主党は緊急事態条項に関する憲法改正条文案を提案しており、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症のまん延などの緊急事態に対する国会機能維持や人権制限を定めています2。このように、憲法改正については慎重に議論しながら、国民の利益を考慮して進めていると言えるでしょう。
これを考えると、少なくとも憲法改正論議が後退することはないでしょう。
【安全保障】自民、公明、維新は安全保障の強化を目指しますが、国民には現実的な安保を提唱してはいますが、専守防衛を堅持する立場を取っています。調整が必要になります。
【外交】 対米関係では大きな違いはありませんが、対中や対ロシア関係での方針調整は難航する可能性があります。
対中姿勢で自民・公明は現実路線、維新は表面上は強硬、国民は穏健、対ロシア姿勢で自民は領土と制裁の両立、公明は領土重視、維新は強硬、国民は対話姿勢。北方領土問題の具体的対応にも違いがあります。
【経済政策】 維新は規制改革、国民は積極財政を主張しつつ再分配に重きを置くなど、温度差がみられます。安倍・菅政権と異なり、現在の自公は財政健全化に傾いています。調整は難しくなるでしょう。
このように、連立内での調整は決して容易ではありません。特に安全保障や経済政策では、相当の溝があると考えられます。結果として、連立の主導権争いや政策の歪みが避けられず、安定した政権運営は難しくなる可能性が高いと言えるでしょう。
国民民主党代表玉木雄一郎氏 |
政権運営の安定性や有能性を最優先するならば、単独与党か2党連立が望ましいといえます。
ただし、1983年12月から1993年8月まで続いた自民党・自由党・社会民主党の3党連立政権の例があります。この連立は約10年近く存続しました。ただし、1983年12月から1993年8月まで続いたのは、以下の連立内閣でした。
- 渡辺美智雄内閣(1983年12月~1986年7月):自民・自由・社民の3党連立
- 中曽根康弘内閣(1986年7月~1987年12月) :自民・自由の2党連立(消費税導入失敗)
- 竹下登内閣(1987年12月~1989年6月):自民・自由・民社の3党連立(消費税導入)
- 海部俊樹内閣(1989年6月~1991年11月):自民・自由・民社の3党連立
- 宮沢喜一内閣(1991年11月~1993年8月):自民・自由の2党連立
つまり、この約10年近くの期間に、3党以上の連立内閣が3つ存在したことになります。現実的には、今後このように、その都度自民と公明・維新・国民などが自民を核として、2党、3党の連立を組む政治体制がしばらく続くかもしれません。
その間に、日本保守党が成長して、日本の政治に大きな影響を与える存在になっていただきたいものです。それも、10年後などではなく、もっとはやい時期にそうなっていただきたいです。
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