ロシアのサンクトペテルブルクで5月10日、バスが橋の欄干を突き破って川に転落し、乗客7人が死亡した。監視カメラの映像には、転落する前にバスが大きくハンドルを切る様子が映っていた。バスは完全に水没し、救急隊が出動。現地当局は、救助のため川に飛び込んだ通行人らに感謝の意を表した。国営ロシア通信(RIA)によると、運転手は拘束された(映像のみ)。
事故を起こしたバスの運転手は生きており現地警察に拘束され、事故原因についての捜査が開始されています。今のところ、事故原因については全く不明。
しかし、ロシアメディアの「Известия」(Izvestia:イズベスチヤ)に運転手の妻が述べた気になるコメントが掲載されていました。
内容の信憑性に加えて、長時間労働が事実だとしても事故原因を断定するものではありませんが、不眠不休でバスを運転する劣悪な労働環境が事故の背景にあったのかもしれません。
ロシア全体で今年不足している労働者の数は約480万人に上り、来年も深刻な不足状態が続くと予想されています。
ロシアでは、人手不足に伴い、適切な点検や訓練が行われていないことが原因で、深刻な事故が発生しています。2023年3月のシェレメーチェボ空港での航空機事故、6月のクラスノダール地方での鉄道事故(写真下)、9月のモスクワ郊外の建設現場での重機事故など、人手不足が安全面での懸念を高めています。
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【私の論評】ロシアで深刻化する人手不足問題、さらなる悲劇を招くのか?
- 2024年5月10日、ロシア・サンクトペテルブルクでバスが川に転落。死者7人、重軽傷者9人。
- 運転手は拘束、原因調査中。
- ウクライナ戦争による人手不足、運転手の疲労などが事故につながった可能性。
- ロシア全体で人手不足が深刻化、今後も事故の危険性あり。
- 戦争長期化で人手不足悪化、社会インフラにも影響。
事故を起こしたバスの運転手は生きており現地警察に拘束され、事故原因についての捜査が開始されています。今のところ、事故原因については全く不明。
しかし、ロシアメディアの「Известия」(Izvestia:イズベスチヤ)に運転手の妻が述べた気になるコメントが掲載されていました。
イズベスチヤの掲載記事【2024年5月11日02:05掲載】
サンクトペテルブルクでの事故当時のバスの映像が公開されたイズベスチヤの掲載内容は、運転手の妻によると夫は健康状態に問題は無かったのですが、20時間という長時間勤務のあとの出勤日に事故を起こしたというもの。他のメディアでも同様の内容に加えて、ほとんど休日の無かった夫(バスの運転手)はマネージャーに朝のシフトを強制されたという情報も報道されています。
(抜粋)
バスの運転手は拘束されたが、妻の報告によると、夫は健康状態に不満を漏らしたことはなく、悲劇に巻き込まれる前は20時間の勤務を終えて出勤していたという。https://iz.ru/1694870/2024-05-11/poiavilis-kadry-iz-salona-avtobusa-v-moment-dtp-v-peterburge
内容の信憑性に加えて、長時間労働が事実だとしても事故原因を断定するものではありませんが、不眠不休でバスを運転する劣悪な労働環境が事故の背景にあったのかもしれません。
ウクライナ戦争の長期化により、ロシアでは軍事関連の需要が高まっています。この需要の高まりにより、その結果、一般の運転手不足などの人手不足が生じている可能性があります。一方、ウクライナ軍も戦闘員の不足に直面しており、来年の戦争継続のためには50万人もの新兵が必要だと指摘されています。
ロシアの対独戦勝記念日を祝う軍事パレードに登場した戦車は、第2次世界大戦で使用された旧ソ連のT-34戦車 |
ロシアでは軍事関連の需要の高まりにより、一般の運転手などの人手不足が生じている可能性があります。このような人手不足が、事故の背景にある運転手の疲労や不注意、整備不足、監督不足などの要因につながっている可能性が考えられます。
つまり、ロシアのサンクトペテルブルクでのバス事故の背景には、ウクライナ戦争の長期化による人手不足の影響が考えられるのです。戦争の影響は両国の人的資源に深刻な影響を及ぼしており、事故の背景にもこうした要因が関係している可能性があります。今後、戦争の長期化が各国の社会インフラにも影響を及ぼすことが懸念されます。
ロシアでは、人手不足に伴い、適切な点検や訓練が行われていないことが原因で、深刻な事故が発生しています。2023年3月のシェレメーチェボ空港での航空機事故、6月のクラスノダール地方での鉄道事故(写真下)、9月のモスクワ郊外の建設現場での重機事故など、人手不足が安全面での懸念を高めています。
人材採用会社の調査では、賃金が基礎的支出を下回っていると回答したロシア人が過去2年で20%増加し、約半数に達したことが分かっています。
深刻な人手不足であっても賃金の上昇が抑えられている傾向にあります。ロシアの法定最低賃金は2007年9月以降、月2,300ルーブル(約10,500円)で推移しています。
以下にロシアの物価の推移を掲載しておきます。
ロシア 消費者物価指数(前年同月比)四半期推移
Investing.com ロシア 消費者物価指数(前年比): https://www.investing.com/economic-calendar/national-cpi-992
ニッセイ基礎研究所 ロシアの物価状況: https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77583?site=nli
物価高のなかロシアでは人手不足が深刻化し、賃金上昇圧力が高まっている一方で、賃金上昇が抑えられている状況にあります。今後の動向に注目していく必要があります。
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