2025年6月12日木曜日

『WiLL』と『Hanada』の成功の裏側:朝日新聞批判から日本保守党批判への転換と商業メディアの真実

まとめ
  • 『WiLL』と『Hanada』は朝日新聞批判で部数を伸ばしたが、安倍政権終焉やネットメディアの台頭でマンネリ化し、限界を迎えた。
  • 2024年、両誌は日本保守党批判に転じ、飯山陽氏の記事やYouTubeでの対立事件を通じて話題性を確保、商業的成功を収めた。
  • 日本保守党がLGBT理解増進法廃案に動いていないとの批判は、党の公式政策や島田洋一議員の国会質疑から見て不正確な可能性。
  • 両誌は売上至上主義で話題性を追求し、朝日や保守党批判は商業戦略の一環。梶原麻衣子の新書で編集部の葛藤が描かれる。
  • 雑誌は商業媒体であり、読者は事実と意見を分け、複数の情報源を参照して批判的に向き合うべき。これは、すべての情報媒体と向き合う際の教訓となるだろう。
『WiLL』や『Hanada』といった保守系雑誌は、大手メディアへの対抗意識と週刊誌のようなスピード感を武器に、読者の心を掴み、部数を伸ばしてきた。特に、朝日新聞をターゲットにした批判記事は、保守派読者の不満を代弁し、商業的成功を収めた。しかし、この「朝日新聞叩き」の戦略は限界を迎え、新たな話題性として日本保守党への批判が浮上した。この流れは、雑誌が売上を優先する商業メディアである本質を浮き彫りにする。読者は、こうした雑誌を批判的に捉え、事実と意見を分けて向き合う必要がある。


2000年代中盤、『WiLL』は朝日新聞の慰安婦報道や原発報道を批判する特集で大きな注目を集め、ピーク時には公称13万6000部の発行部数を記録した。みんかぶマガジンの記事によると、この成功は、保守派読者の大手メディアへの不信感を巧みに捉えた結果だった。梶原麻衣子さんの新書『「“右翼”雑誌」の舞台裏』では、編集部が朝日新聞批判を優先し、読者から「日本の名誉を守る雑誌」との熱い支持を得ていたことが描かれている。2014年の朝日新聞の慰安婦報道検証記事を機に、両誌は「反日的」と朝日を攻撃する企画を連発し、部数を押し上げた。

花田紀凱編集長の週刊誌出身の経験が、この戦略を支えた。朝日の社説や記事を名指しで批判する特集は、読者のメディア不信を刺激し、商業的成功を確実なものにした。しかし、2022年の安倍元首相の死去やネットメディアの台頭により、「朝日新聞叩き」の鮮度が薄れ、読者の「飽き」が生じ始めた。2025年1月のデイリー新潮の記事では、保守系雑誌の従来の戦略が限界に達しつつあると指摘されている。梶原さんの新書でも、売上至上主義の中で扇情的な内容や陰謀論が採用される葛藤が描かれ、朝日批判の繰り返しがマンネリ化のリスクを孕んでいたことが示唆されている。雑誌は商業媒体であり、読者の関心を維持するためには新たな話題が必要だった。

花田紀凱編集長

そこで注目されたのが、日本保守党への批判だ。文春オンラインの記事(2024年10月)によると、両誌は2023年の日本保守党結党当初は支持する姿勢を見せていたが、2024年の衆院補選での党の動向や、党首・百田尚樹氏と事務総長・有本香氏の言動に疑問を抱き、批判に転じた。たとえば、飯山陽氏が『Hanada』で日本保守党のLGBT理解増進法への対応や政策の曖昧さを批判する記事を寄稿し、話題を呼んだ。2024年、飯山氏は衆院補選で日本保守党の候補として出馬したが落選し、党との関係を断絶。その後、YouTubeや『Hanada』で党批判を展開し、百田氏らの言動を問題視した。2024年後半の『Hanada』YouTube生放送では、ゲストが日本保守党を批判する中、百田氏と有本氏が電話で番組に抗議し、編集部との対立が表面化した。この事件は、両誌と日本保守党の緊張関係を象徴し、読者の間で議論を巻き起こした。両誌は「言論の自由」を掲げ、こうした圧力行為を批判の正当化に利用したが、その背景には商業的動機があった。2024年の関連号は書店で品薄となり、批判記事が商業的成功を収めた証拠となった。

日本保守党所属の島田洋一議員

しかし、飯山氏による「日本保守党がLGBT理解増進法廃案に動いていない」や『WiLL』の政策の曖昧さを問題視する批判は、必ずしも事実と一致しない。産経ニュース(2023年10月17日)によると、百田氏は結党会見で「LGBT法に怒り結党した」と述べ、党の重点政策としてLGBT理解増進法への反対を明確に掲げていた。日本保守党の公式サイト(2024年10月時点)でも、伝統的家族観の重視を政策に明記し、法案の問題点を追及する姿勢を示している。2024年、日本保守党所属の島田洋一議員が国会でLGBT理解増進法に関する質疑を行い、女性スペースの保全を法務大臣に約束させるなど、具体的な行動を起こしている。これらの事実から、両誌の批判が党の活動実態を十分に反映していない可能性が浮かび上がる。

雑誌は、所詮商業ベースの情報媒体だ。『WiLL』や『Hanada』の朝日新聞批判や日本保守党批判は、読者の関心を引き、部数を伸ばすための戦略に他ならない。梶原さんの新書では、売上至上主義が編集方針を歪め、倫理的葛藤を生んだことが赤裸々に綴られている。文春オンラインの記事でも、両誌が日本保守党批判を通じて新たな話題性を追求したことが示唆されており、売上を優先する姿勢が明確だ。読者は、こうした雑誌を純粋な「真実の代弁者」と見なすのではなく、売上を優先する商業媒体として捉え、複数の情報源を参照しながら批判的に向き合うべきだ。

日本保守党をYouTubeで批判する飯山陽氏

朝日新聞批判から日本保守党批判への移行は、読者の関心を維持するための必然だったが、保守派内部の分裂を深めるリスクも孕む。特に、事実と異なる批判は読者の信頼を損ねる危険がある。文春オンラインの記事が指摘するように、この内紛は保守系メディアの信頼性を損なう可能性もある。結局、雑誌との付き合い方には、冷静な視点が欠かせない。『WiLL』や『Hanada』が提供する情報は、話題性を追求する商業媒体の一面に過ぎない。読者は、複数の情報源を参照し、事実と意見を分けて考える姿勢が求められる。日本保守党批判をめぐる議論は、言論の自由や保守派の分裂を映し出すが、雑誌の動機は売上にあることを忘れてはならない。この視点は、保守系メディアに限らず、すべての情報媒体と向き合う際の教訓となるだろう。

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