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2020年3月5日木曜日

<独自>事実上、中国人と韓国人の入国を制限 イランも新たに対象―【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!


新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、関西国際空港の検疫検査場では、
サーモグラフィーで入国者の体温を確認していた=1月23日午前(須谷友郁撮影)

政府は5日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染を防ぐ水際対策として、中国と韓国に所在する日本大使館で発行した査証(ビザ)の効力を停止する方針を固めた。香港・マカオ・韓国はビザなし入国の特例も停止する。

 中国と韓国には、観光客の来日を自粛するよう要請する。これにより、事実上中国人と韓国人の入国を制限することになる。

 韓国に対しては、滞在歴のある外国人の入国を拒否する地域を大幅に拡大する。具体的には、慶尚北道慶山市、安東市、永川市、漆谷郡、義城郡、星州郡、軍威郡が新たに対象となる。これまでは、大邱と慶尚北道の一部が入国制限の対象だった。

 イランも新たに入国の制限対象とし、コム州、テヘラン州、ギーラーン州を対象地域にあげた。

 5日夕の国家安全保障会議(NSC)の会合で確認する。

 中国と韓国からの入国者は、検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出す。

 また、中国と韓国からの航空便の到着空港を成田空港と関西空港に限定する。船舶は、中国と韓国からの旅客運送を停止するよう要請する。

【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!

私自身は、上記の措置を待ち望んでいました。特に中国からの入国制限は、一ヶ月前から実行すべきと思っていました。

何やら、様々な理由で、中国全域からの入国制限には意味はないとする人々もいましたが、たとえそれが正しかろうと、間違いであろうと、まずは中国からの入国は最初制限すべきだったと思います。

最初の時点で、中国からの入国者はを検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出すようにしていれば、そもそも中国全域の入国制限に意味がないか、あるかは実際に検査できたはずです。

その時に、中国全域からの入国制限が無意味とわかれば、入国制限を解除すれば良いですし、意味があるなら継続ということで良かったと思います。

しかし、一ヶ月遅れたとはいえ、実施されたことは非常に良かったです。

本日は、この他菅義偉官房長官が午後の記者会見で、日中両政府が4月上旬で調整してきた中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、時期を再調整すると発表しました。

菅官房長官

これに関しては、首相は2月28日、首相官邸で中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員と面会した際、「十分な(習氏来日の)成果を挙げるために入念な準備を行わなければならない」と述べ、来日時期よりも成果を重視する考えを強調し、延期を示唆していました。事実上この時で延期は決まっていたのですが、今日正式に発表したということです。

今日まで、発表が遅れたのは、やはり党内の親中派に対して懐柔する必要があったのかもしれません。私自身は、もうとっくに延期は決まったものと断定していたので、本日の発表には驚きました。そういわれてみれば、正式の発表は今日までなかったことに気づきました。

日本における新型コロナウイルスの流行はもはや危機的状況であり、これを抑えるためには、できることは何でもしなければいけない段階にきていると見るべきであると、台湾と比較して、そういう人も多いです。しかし、これは本当に正しいのかどうかは、なんともいえないことをこのブログで以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す―【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

今後、このようなデマが多く出回ることでしょう。以下はデマとまでいえるかどうかわかりませんが、日本での感染者数はかなり多いと認識されているようですが、そうともいえないデータがあります。それを以下に掲載します。

以下の表は、武漢肺炎感染者数の人口比率(2020/03/03)です。

感染に限らず統計は、客観的に見ないと理解できませんし、見方を誤ってしまいます。上の表は、感染者➗人口の比率で比較した表です。 
この表でみると、現在では韓国が世界で一番感染率が高いです。少なくとも、韓国の防疫体制が優れているとはいえないことがわかります。それと、中国の統計は単純に信じることはできないと思います。中国の経済統計はデタラメです。コロナウイルスの感染者数だけが、正しいということはできないと思います。 
この表によれば、日本は16位ということで、19位の台湾とあまり変わりません。現時点では、特に日本が台湾などの他国と比較して、格段に防疫体制が格段に劣っているとは思えません。
台湾の人口は、約2千3百万人です。日本の人口は、1億2千万人 です。日本の人口は、台湾の5倍以上です。これでは、単純比較はできないわけで、やはり感染者者数の人口比でみるのが正しいです。

そうすると、台湾と日本とでは、感染比にさほど大きな差異があるとはいえないことがわかります。しかし、若干の違いはあります。この差異が当初に中国からの入国を制限したものによるかどうかは今後の経過をみていけばわかるでしょう。

さて、日本と台湾では感染比ではさほど違いはないのですが、それでも日本は台湾に見習うべきところがあります。

とにかく、台湾の反応は素早かったです。まず中国大陸との各種往来をいったん絶ちました。また、中国の意向を汲んで台湾の出席を拒み続けてきたWHOに対して、「台湾人の健康と命の安全」という人道上の問題として訴えることで国際会議への台湾のオブザーバー参加を認めさせました。

1月早々に専門家を交えた緊急対応会議を開き、2月2日から空港などの検疫体制を強化。台湾での感染者が出ていない1月20日の段階で「国家感染症指揮センター」を立ち上げて、水際作戦の体制を整えました。

1月23日には蘇貞昌行政院長の「マスク輸出制限指示」があり、2月6日にはマスク購入実名制度を導入し、オンラインマップでマスク在庫状況を公開しました。さらには政府補填による民間企業へのマスク増産指示、医療機関への優先的配布といったと素早い対応で、各国で起きているマスクの買い占めによる不足や高額転売問題を回避しました。

台湾がこれほど果断に素早く政策を打ち出せたのは、蔡英文政権がここにきて台湾の親中派財界や大陸世論を考慮しなくてよいほど、台湾社会の反中感情が高まったせいもあります。

蔡英文台湾総統

こうした台湾の動きと対照的なのが、日本の中国政府への配慮からくる新型肺炎対応の鈍さです。

どうして日本がこういうことになったかといえば、主に以下に3つの点があると思います。
①WHOの機能不全と厚労省のリスク管理部門が杜撰
②二階幹事長を初め多数の親中媚中派がいて中国に支援すべきと動いたこと。そのため、菅官房長官と総理の関係が現在最悪の状態になっていること  
③日本企業は中国で利益を得ても持って帰れない。撤退すればBSが一気に壊れ 倒産する企業も出てくる可能性が高いという現実がある。
このような複合的な要因が重なり、日本政府は中国に配慮して、なかなか思い切った措置がとれなかったようです。

しかし、かつての台湾も中国との結びつきが強く、中国への配慮は欠かせなかったのですが、最近の台湾はそうではなくなっています。

蔡英文政権2期目のテーマは台湾の国際社会における国家承認の推進です。こうした方向性は中国側から武力恫喝と経済制裁を伴う強い圧力を受けると想像されていました。

武力に関しては、さすがの中国側もなかなか実際の行動はとらないとしても、台湾と中国の長年の経済緊密化のせいで、中国からの経済制裁はかなり台湾経済に強い打撃を与えると予想されていました。

ところが幸か不幸か、新型肺炎という突然の疫病蔓延で、台湾だけでなく世界各国で中国との人的交流、物流の制限が否応なくかけられることになったのです。

2月10日は中国が全国の工場再稼働を宣言した日ですが、台湾はこれに合わせて、中国との直行便を北京、上海など5空港をのぞき全面一時停止措置をとり、海運交通なども大幅に制限をかけました。

中国に工場をもつ台湾企業社員や、中国工場で働く台湾人労働者に足止めを食らわせた格好です。台湾企業としては早々に中国に戻って工場を再稼働させたいところでしょうが、「両岸の人民に感染を拡大させていいのか」と問われればイエスとは言えずにいます。

武漢封鎖当初、武漢市に残っていた1140人余りの台湾人の帰国問題も、2月3日に第1チャーター便で戻った247人の中に感染者が出たことから、台湾政府としては受け入れが整っていないとして、依然900人が台湾に戻れないままだ。

一方、総統選挙の動きの中で、完全に中国共産党の代理政党に落ちぶれていることが発覚した国民党は、親中路線からの脱却を図ろうとしている。中国共産党の言いなりだった呉敦義が選挙惨敗の責任をとって党主席を辞任したあと、元台北市長の郝竜斌と立法委員の江啓臣が主席の座を争うことになったが、ともに台湾ファースト、脱中国イメージを訴えています。

中国全域からの入国禁止の措置に関しては、政府の小中高校などのほぼ全面休日など国民に対して厳しい措置をしていながら、中国人は日本に自由に入り我が者顔で、町を闊歩するようなことにでもなれば、国民の反発は必至ということで、さすがに親中派もいつまでも、全域からの入国禁止を拒むことはできなかったのでしょう。

安倍総理は、元々セキュリティダイヤモンド構想で中国封じ込め政策を主張していました。これは、オーストラリア、インド、アメリカ合衆国(ハワイ)の3か国と日本を四角形に結ぶことで4つの海洋民主主義国家の間で、インド洋と太平洋における貿易ルートと法の支配を守るために設計されたものです。

中国の東シナ海、南シナ海進出を抑止することを狙いとします。日本政府としては尖閣諸島の領有問題や中東からの石油輸出において重要なシーレーンの安全確保のため、重要な外交・安全保障政策となっています。インド太平洋、Free and Open Indo- Pacific Strategyの概念の確立、アメリカの対アジア戦略に「Indo-Pacific economic vision」(インド太平洋構想)として採用されました。

その安倍首相が、二階氏など自民党内で重要なポストについている議員などのため、党内政治を円滑にするため、中国に配慮せざるを得なくなっているので、新コロナウイルス対策においても、なかなか思い切った手が打てなかったのでしょう。

しかし、安倍首相も、中国全域から入国制限に踏み切ることを決意したのです。台湾では、すでに国内世論は反中国に大きく傾いています。この世論には、さすがの国民党も逆らえなくなっているのです。

台湾にできたことは、日本にもできるはずです。日本も、今回の新コロナウィルスを奇貨として、自民党内はもとより政治家の親中派、マスコミの親中派、財界の親中派などの力を弱めていくべきです。

台湾もそうですが、わずか数年前までの米国も親中派が幅をきかせていて、その状況はどうにもらないように見えていました。トランプ氏など絶対に大統領にならないだろうと見られていました。しかし、そうではありませんでした。

米台にできて日本にできないはずがありません。現在の中国はもともと経済がかなり弱っていたことに加えて、現状はコロナ肺炎で大変なことになっています。しかも、経済もコロナ肺炎も中国共産党の自業自得である部分がほとんどです。

それに、米国からかなり厳しい対中国冷戦を挑まれています。これは、どう考えても、中国に勝ち目はありません。

米国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などするつもりのない中国共産党に見切りをつけ、かつてのソ連に対してそうしたように、中国の経済がかなり弱体化するまで冷戦を継続します。

日本の親中派も、かつての米国のパンダハガー(親中派)のように中国に配慮しても無意味であることを理解すべきです。そうでないといずれ中共の道連れになるでしょう。

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2019年5月9日木曜日

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米―【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

サイバー防衛でがっちり手を結ぶ日米

岡崎研究所 

 日米の外務・防衛担当4閣僚(河野外相、岩屋防衛相、ポンペオ国務長官、シャナハン国防長官代行)は4月19日、ワシントンで日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催、日米両国が協力して「自由で開かれたインド太平洋」の実現に取り組むことを柱とする共同発表を発表した。

 共同発表では、とりわけ領域横断(クロス・ドメイン)作戦のための協力の重要性が強調されたことが目を引く。具体的には、宇宙、サイバー、電磁波である。以下、共同発表の当該部分を抜粋紹介する。


 閣僚は、宇宙、サイバー及び電磁波を含む新たな領域における急速に進化する技術進歩に懸念を表明した。

 戦闘様相が変化していることを認識し、閣僚は、従来の領域と新たな領域の双方における能力向上及び更なる運用協力の重要性を強調した。閣僚は、日米同盟が領域横断作戦により良く備えるべく、宇宙、サイバー及び電磁波領域を優先分野として強調した。

 サイバー空間に係る課題に関し、閣僚は、悪意のあるサイバー活動が、日米双方の安全及び繁栄にとって、一層の脅威となっていることを認識した。この脅威に対処するために、閣僚は、抑止及び対処能力を含む、サイバーに係る課題に関する協力を強化することにコミットしたが、優先事項として、各々の国が国家のネットワーク及び重要インフラ防護のための関連能力の向上に責任を負っていることを強調した。

 閣僚は、国際法がサイバー空間に適用されるとともに、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安保条約第5条の規定(注:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する)の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認した。

 閣僚はまた、いかなる場合にサイバー攻撃が第5条の下での武力攻撃を構成するかは、他の脅威の場合と同様に、日米間の緊密な協議を通じて個別具体的に判断されることを確認した。

出典:『日米安全保障協議委員会共同発表(仮訳)』(外務省、2019年4月20日)

 上記発表を一読すれば、中国(およびロシア)の宇宙空間、サイバー空間における能力、活動の活発化を念頭に置いていることは明らかである。共同発表では国名を具体的に名指ししてはいないが、共同記者会見でポンペオ国務長官は中国を、シャナハン国防長官は中ロを名指しした。

 国内の報道で最も焦点を当てられたのは、サイバー攻撃に対して日米安保条約第5条が適用され得るとされた点である。このことの意義は、日米同盟の枠組みにおいても、サイバー攻撃をその規模や態様によっては武力攻撃と同視し得る、従って自衛権の対象となり得る、と明確に位置づけた点にある。

 サイバー攻撃の国際法上の位置づけについては、2011年には米豪2プラス2で、米豪の安全保障を脅かすようなサイバー攻撃は、ANZUS条約(事実上の米豪同盟条約)の集団的自衛権行使の対象であると確認されている。

 画期となったのは、2013年にNATOの専門委員会がまとめた「タリン・マニュアル」である。同文書によれば、「動力学的武器」による攻撃と同視し得るような被害を出すようなサイバー攻撃は自衛権の対象となり得る。国際的な認識、取り組みは、そうした方向に向かいつつある。 

 2014年のNATOサミットでは「サイバー防衛は NATO 集団防衛の中核的任務の 1 つである」と明言されている。今般の2プラス2で、日米安保条約第5条の適用が明記されたのもそうした流れに沿ったものである。

 日米がサイバー防衛の協力を強化するとして、サイバー攻撃の抑止というのは技術的に困難が大きい。今後、さらなる共同研究が必要となろう。そうであっても、日米がサイバー防衛での協力強化を明言したことは、同盟の強化にも、サイバーセキュリティをめぐる国際規範の流れの強化にもつながり、意義深いと言える。

ファーウェイを排除するか否か

 ファーウェイを排除するか否かが国際的な問題となっている5G(第5世代移動通信システム)の構築は、当然、サイバーセキュリティの最大の課題の一つである。5Gについて、共同発表では触れられていないが、シャナハン国防長官代行は、共同記者会見で「情報安全保障は我々の防衛関係のまさに中核に位置している。

 日本が、政府調達から排除したり、サイバーセキュリティの基準の遵守を求めるなどして、リスクの高い5G企業を移動通信インフラから排除しようとしていることを、我々はよく認識し感謝している」と述べている。

 欧州諸国は、米国と情報を共有するファイブ・アイズ(米、英、豪、加、NZ)のリーダーの一つである英国も含め、5Gからのファーウェイの完全な排除に消極的であり、米国は神経を尖らせている。そうした中で、日本の一貫した態度は、米国にとって貴重なものと映っていることは想像に難くない。

【私の論評】一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得る(゚д゚)!

国家が関与するサイバー攻撃がますます高度化し、強力になっている中、一部の専門家は、意図的か偶然かはともかく、遅かれ早かれそうした事故で死者が発生するのではないかと恐れています。

国家によるサイバー攻撃によって別の国の国内で人命が失われた場合、何が起こるのでしょうか。

北大西洋条約機構(NATO)は2014年に方針を改定し、重大なサイバー攻撃は、条約の集団防衛に関する条項である第5条の対象になり得ると決定しました。また、冒頭の記事にもあるように日米の外務・防衛担当4閣僚は、4月19日サイバー攻撃は、米安保条約第5条の規定の適用上武力攻撃を構成し得ることを確認しています。

日米の外務・防衛担当4閣僚の共同声明の発表

法律の専門家も、重大なサイバー攻撃は武力攻撃に等しいと見なすことができると明確に述べています。しかし、実際に何が起こるかははっきりしないです。

Flashpointのアジア太平洋研究ディレクターJon Condra氏は、「政策コミュニティーの中でも、少なくとも10年以上前から、どの程度のサイバー攻撃になったときに軍による物理的な報復が必要になるかが議論になっている」と述べています。

「現在の戦争に関する法体系は古くなっており、必ずしもこの種の問題をうまく取り扱えるわけではない。サイバー空間の境界は実際の国境よりもずっと可変性があり不明確なため、どのような場合に、国家が強硬な手段で報復する道徳的、あるいは倫理的な権利が発生するかは完全には明確になっていない」(Condra氏)

攻撃の1つで大量の死者が発生し、明確に特定の国家によるものだと特定できた場合は、極めて重大な報復を行う必要がある、とCondra氏は言います。「倫理的および道徳的な要因を別にしても、被害国はおそらく、相応の対応を求める国内からの政治的圧力によって、報復を行うことを強いられるだろう」と同氏は述べています。

もっと率直な見方を示す専門家もいます。

カリフォルニア大学教授のGiovanni Vigna氏は、問題は単純だと主張します。「それは実際の戦争だ」と同氏は言います。

また、現在Illumioのサイバーセキュリティ戦略責任者を務めているJonathan Reiber氏は、「そのような事態は敵意を呼び起こす可能性が非常に高い」と述べています。

「なぜなら、それは他の領域における攻撃と同じようなものだからだ」と同氏は続けます。

サイバー戦争に関する問題の1つは、多くの場合、攻撃を実行したのが誰かを証明するのが難しいことです。どのようなレベルで活動している攻撃者も、痕跡を隠蔽し、責任を問われるのを避けるために全力を尽くしています。

Tritonの事件の場合、攻撃は国家関与のグループによるものだと指摘する研究者はいたが、公式には攻撃者は特定されなかった。

「攻撃者の特定は難しい作業だ。攻撃者の特定にはかなりの無理がある」とReschke氏は言います。

昨年開催された冬季オリンピックの最中に、韓国を標的とする攻撃に使用されたマルウェア「Olympic Destroyer」の例を見れば分かります。攻撃の発生後に各調査会社が発表したレポートに書かれていた攻撃者の正体はまちまちでした。攻撃を行った可能性がある国として、中国や北朝鮮、ロシアの名前が挙がっていました

昨年開催された平昌五輪韓国を標的とするサイバー攻撃がなされた

「攻撃者を特定することの問題は、それが極めて困難で、ほとんど当てずっぽうのようになってしまう場合があることだ」とVigna氏は言います。

「特定の犯人であることを示唆するような痕跡が見つかった場合でも、それは誰かが偽装のために残したものかもしれない。ロシア人に責任を押しつけるために、誰かがロシア語のメッセージを残した可能性もある。従って、なんらかの別のルートで事実を確認できない限り、誰が何をやったかを判断するのは非常に難しい」(Vigna氏)

しかし時には、攻撃者がミスを犯して、当局が攻撃の実行者を特定できる場合もあります。WannaCryは北朝鮮のものだと言われており、「NotPetya」はロシア軍の手によるものだとされています。サイバー攻撃で死者が発生し、実行した国が特定できた場合、被害者は報復を望む可能性が極めて高く、その報復は必ずしも別のサイバー攻撃の形を取るとは限らないです。

米国にはすでに、サイバー攻撃に関与したことに対する報復としてロシアに制裁を科した実績があり、攻撃で死者が発生すれば、より強い報復が求められるでしょう。

もっとも極端なケースでは、国土に対するサイバー攻撃への唯一の報復措置は、軍事的な報復だと判断する国が出てくるかもしれないです。そのような報復が行われるとすれば、かなりの人命が失われた場合である可能性が高いですが、複雑な国際地政学の世界では、小さな火花が前例のない反応を引き起こす可能性もあります。

「わたしには、どの時点から物事が破壊的な方向に進み、どこが分岐点になるのかは分からない。国家がこれ以上は我慢できないと判断する分岐点を知ることは、いつでも困難だ」とReschke氏は言います。

Hannigan氏は、ロンドンで開催された国際会議「Infosecurity Europe」の場で、攻撃で市民に死者が出れば、物理的な報復が行われるだろうと述べました。

「攻撃の1つで米国の患者に死者が出たり、重大な被害が出たりすれば、米国政府に物理的かつ決定的な行動を求める圧力は極めて大きなものになるだろう。これは西側諸国の政治家全般に言えることだが、特に米国では大きな圧力になると思われる」と同氏は言います。

米サイバー軍の一翼を担うコロラド州の空軍基地のサイバー部隊

幸いまだ、国家が後援するサイバー攻撃で、他国の市民に直接的に危害が及んだり、死者が出たりした例はないと見られています。これは、そのような事態が起こった場合に、どのような対応が適切かを合意する余地が残っていることを意味します。

「国際社会は、この種の行動に対してどのように対応し、攻撃者にどのような責めを負わせるべきかについて、何らかの合意を形成する必要がある」とCondra氏は言います。

Reiber氏は、事態の悪化を止めるための方法の1つは、サイバー攻撃を常に罰することで抑止力とすることだという意見を持っています。

「発生したどのようなサイバー攻撃にも、それが50ドルの盗難であるか、破壊的な攻撃か、選挙結果の操作かを問わず、何らかの懲罰的なコストを行為者に負わせる必要がある」と同氏は言います。

「もし行為者が一定の行動が許されると考えれば、いずれ想像を超えるような幅広い行動を取ってくるだろう。しかし、それらの行動すべてに代償を負わせれば、世界が攻撃者の行動に一丸となって対抗し、阻止しようとしていると示すことになる」

しかし、攻撃に対して懲罰を科すというこの議論は、国家による死者が出るような破壊的サイバー攻撃を抑止する唯一の方法である可能性が高いです。

「技術は人を殺さない。人を殺すのは人だ。ある程度は、一歩引いて国家間、あるいは国家内の人々の間の争いを、政治レベルで解決するような政治的条件を整える必要がある」とReiber氏は言います。

「そうすればいずれは、一方のグループが敵対する相手に対してサイバー空間での攻撃を使用する可能性は減るだろう。国家間の関係が平和であれば、攻撃の可能性も減ることは明らかだ」(Reiber氏)

サイバー攻撃の対処については、様々な考え方がありますが、ある一定限度を超えたサイバー攻撃は、軍事報復の対象にもなり得ることで、米国と日本は合意しているという点については記憶にとどめておく必要がありそうです。

確かに、手段は何であれ、人が大勢なくなったり、危害を受けた場合、あるいはそうなりそうな場合は軍事攻撃の対象になりうるのは当然といえば、当然だと思います。

その意味では、国際法がサイバー空間に適用されることは、当然といえば当然です。

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2018年8月23日木曜日

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ―【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

【主張】台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ

中米全図 地図はブログ管理人挿入 以下同じ

 中国が、中米エルサルバドルとの国交を樹立した。これに伴いエルサルバドルは、外交関係のあった台湾と断交した。

 台湾の孤立化を狙う中国が仕掛けた、露骨な圧力外交の結果だ。

 台湾を外交承認する国は17カ国と過去最少を更新した。蔡英文政権下での断交は5カ国にのぼる。今年はすでに3カ国という異常なペースだ。世界2位の経済力を外交カードに台湾の外交関係を奪う戦術といえる。

 蔡総統が談話で「両岸(中台)の平和への脅威だけでなく、世界的な不安定を生み出している」と反発したのは当然である。地域の安定を損ないかねない中国の行動を強く懸念する。

 日本と台湾に正式な外交関係はない。ただ、民主主義の価値観を共有する台湾への圧力に日本は無関心であってはならない。中国に自制的に振る舞うよう働きかけるべきである。

 エルサルバドルの場合、台湾はラ・ウニオン港の開発に多額の資金援助を要請されていた。だが台湾は同国の債務状況を勘案し、要請を断ったという。

 これに対して中国の王毅国務委員兼外相は、同国との国交樹立について「いかなる(経済的な)前提もない」と述べた。だが、果たしてそうなのか。

 習近平政権の広域経済圏「一帯一路」構想の対象国の中には、中国の援助でインフラ整備を進めた結果、過大な債務負担を強いられる例が後を絶たない。採算を度外視した援助をテコに勢力圏を拡大する。同様の手法で台湾との断交を促すのなら問題が大きい。

 とりわけ最近の中国の強引な外交は目に余る。

 台中で来年開催する予定だった東アジアユース競技大会が、北京での臨時理事会で取り消された背景にも中国の意向がちらつく。外国航空会社に台湾の名称表記変更を求めた問題もあった。

 今回の断交は、蔡総統が中南米歴訪から戻った直後に起きた。蔡氏のメンツを潰す狙いがあったのは明白ではないか。

 台湾に閉塞(へいそく)感を与えて政権与党の民主進歩党に打撃を与えるのが目的だ。11月に実施される台湾の統一地方選への揺さぶりもあろう。だが、露骨な圧力で、台湾の民心が中国になびくわけではあるまい。むしろ対中感情を悪化させる現実を認識すべきである。

【私の論評】これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政府が判断すれば、牽制・制裁の対象になる(゚д゚)!

トランプ政権は8日、自然災害の被災者を対象とする「一時保護資格(TPS)」制度に基づき少なくとも2001年以降米国に在留しているエルサルバドル人約20万人について、出国しなければ来年から強制送還の対象になり得ると発表しました。

ちなみに、現地時間2001年1月13日11時33分頃、中米のエルサルバドル共和国沖約50kmの太平洋を震源とする、マグニチュード7.6の地震が発生しました。死者944人、負傷者5,000人以上、液状化や土砂災害などで約108,000棟に達する家屋倒壊の被害が出ました。

2001年のエルサルバドル大地震 首都サンサルバドル西部で発生した大規模な地すべり

首都サンサルバドル西部で大規模な地すべりが発生し、ここだけで500人以上が死亡しました。また、中米を縦断する主要道路の一つであるパンアメリカンハイウェイも、斜面崩壊により寸断されました。

私は、この措置は、台湾と国交を絶ち中国との国交を樹立しようとするエルサルバドルに対する牽制であるとみています。

エルサルバドルは南米の中でも一番面積が小さく一番人口密度が多い国です。マヤの遺跡を始め見所はあり、観光客も多い中、エルサルバドルの治安はあまり良くありません。約12年間続いた内戦終結後、内戦中に流出した武器が国内に大量に存在、経済状況の停滞、犯罪集団マラスやバンダが多く大都市での犯罪が増えています。

政権当局者2人が匿名を条件に記者団に語ったところによると、01年にエルサルバドルで起きた大地震の後に米国に避難し生活と就労を認められているエルサルバドル人は19年9月9日までに出国しない場合、強制送還の対象になり得るといいます。

議会調査局によると、TPSで米国在留が認められている外国人は約32万人で、エルサルバドル人は大部分を占めています。

トランプ米大統領の決定は、一部の中米人に1990年代後半以降、TPSを適用・再認可してきた以前の米政府の立場とは距離を置くものです。1人の高官によると、トランプ政権は19年まで発効日を遅らせることにより、議会がTPS対象者への恒久的な法的解決策を策定する時間を確保するといいます。

エルサルバドルの人口は、2016年時点で、634.5万 と推計されています。TPSにもとづく在米エルサルバドル人は20万人に達するといわていますが、これは、現在の全人口の3%くらいをしめるほどの数です。

この人数が、短期間に大量にエルサルバドルに戻ってくればとんでもないことになりそうです。そもそも、地震の被害を回避するために米国に渡った人たちですから、経済的に恵まれた人々とはいえず、難民とはいいませんが、感覚としては大勢の難民が押し寄せてくるようなものかもしれません。これは、地震被害から回復しつつあるエルサルバドルにとっては大きな負担になるのは間違いありません。

米国トランプ政権としては、このような牽制をしておき、もしエルサルバドルが過度に中国に接近したり、中国に利するような行動をした場合、TPSで在留しているエルサルバドル人の本国への強制送還に踏み切る腹づもりであると考えられます。このような弱小国にまで、牽制の対象とするトランプ政権です。その決意の強さがうかがわれます。

米国にとって、イスラム国(IS)を壊滅した後、一番の敵は中国となったのです。一方、中国が『軍=外向型』に方針転換したのは、堂々と『帝国主義的、膨張主義的、軍国主義的な政策を取る』と宣言したに等しいです。

事実上崩壊したIS

米国は、中国を「脅威の本丸」とみなし、南シナ海での「航行の自由」作戦を継続しています。6月には台湾の大使館に相当する「米国在台湾協会」(AIT)の新事務所をオープンし、開所式典には国務省代表も列席しました。さらに、事務所警護のため、国務省は海兵隊に要員派遣を要請しました。

米国としては、中国の軍事力を押さえ込むため、軍事力の基礎となる経済力を叩くために対中国貿易戦争を仕掛けたのです。これは『中国包囲網』強化の一環で、当然のことながら、『航行の自由』作戦も『台湾重視』政策も、エルサルバドルへの牽制も絡んでいるのです。

今後、貿易戦争が本格化し、米中対立が激化すれば、軍事衝突の可能性も否定できないです。

トランプ大統領の貿易アドバイザーであるピーター・ナバロ通商製造政策局長は著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』(文芸春秋)の中で、以下のように記しています。
世界史を概観すると、一五〇〇年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した一五例のうち一一例において(すなわち、七〇%以上の確率で)戦争が起きている。
中国が南シナ海で、米国の船を止めたり、航行の自由作戦を妨害、米航空機の飛行を邪魔するようなことがあれば、軍事衝突に発展する可能性は十分あります。習近平は米国が抵抗しなければ、南シナ海全体を領海化するつもりです。

前国務長官だったレックス・ティラーソン氏は、南シナ海で中国の人工島を海上封鎖することもあり得ると示唆していました。

この海上封鎖案は、ティラーソン氏が2017年1月11日に上院外交委員会で開かれた自身の指名承認に関する公聴会で言及したものです。トランプ氏の発言や米軍タカ派の意見よりもはるかに強硬なものでした。

ティラーソン氏はこの公聴会で、中国の人工島の建設・軍事化は「2014年のロシアのクリミア併合と似ている」と指摘し、米国の反応が鈍かったため「中国にごり押しさせてしまった」と、オバマ政権の対応を批判しました。

同氏はさらに、米国が対応を強めることを支持するかとの質問に対し、「我々はまず人工島建設を停止するよう求め、さらに中国の人工島へのアクセスを認めない措置をとるとの明確なシグナルを送らざるを得なくなろう」と述べました。

このティラーソン発言は、あまりに時期尚早だったのだと思います。しかし、長期的に見た場合、南シナ海で米中軍事衝突は避けられないかもしれません。ただし、現状のまま、米国が中国と軍事衝突をしてしまえば、米国も多大なコストと犠牲を強いられることになるのは明らかですから、やはり当初は中国の経済を弱体化させることを中心に当面対中国戦略を進めることになるでしょう。

中国を経済的にかなり弱体化できれば、そもそも中国自身が、海洋進出をあきらめるかもしれません。あきらめなかったとしても、経済がそれを許さなくなります。

経済が弱体化しても、中国が海洋進出を諦めない場合は、米軍による中国の人工島の海上封鎖ということは大いに有り得ることです。その時には、無論米軍と衝突することもできず、たとえ衝突してもすぐに打ち負かされて中国は自ら人工島を放棄せざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。

米トランプ政権は、ここまで見据えた上で、現在中国に対して貿易戦争を挑んでいるのです。

中国を経済的に弱体化するためには何でもありのトランプ政権

このような状況のなか、これからの米国の行動は一見全く関係ないように見えても、エルサルバドルの事例のように、対中国戦略に何らかの関係があるとみるべきです。また、これから米国は、国際緊急経済権限法(IEEPA)の発動をはじめとして、中国や中国を利する国や企業個人に対する制裁をどんどん強めていくことになると考えられます。

これからは、国や企業や個人であろうと、中国を利することになると米政権に判断されれば、エルサルバドルのような弱小国ですら、牽制・制裁の対象になり得るということです。

そのことを意識しているマスコミや財界人はまだ少ないようで、未だ無意味な親中・媚中派から転身できていない人が多いようです。

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