G20首脳会議 米中首脳会談
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中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダ当局に逮捕された事件は、米中両国の世界覇権をめぐる死闘の始まりを意味している。
なぜなら、米国にとってファーウェイは、サイバー攻撃によって同国の最先端技術や最重要情報などを狙うハッカー集団の元締めであり、このままファーウェイの行為を許していれば、米国の軍事情報を含む安全保障上の重要情報はほとんど中国に筒抜けになるからである。
一方の中国にとっては、ファーウェイは今後も中国の経済成長と生産性向上を推進するためになくてはならない中核企業であり、その最高幹部が逮捕されることによって、中国の最重要経済政策がなし崩し的に破綻に追い込まれる可能性がある。
ポンぺオ米国務長官は12月12日、世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルで発覚した最大5億人分の顧客の個人情報流出に「中国が関与している」と語り、中国を名指しで非難。これを受けて、米上院司法委員会のグラスリー委員長は12日、「世界で行われるサイバー攻撃を通じた産業スパイ活動のうち、90%以上は中国と考えられている」と中国を糾弾した。
これは、このまま中国に軍事情報などを盗まれ続ければ、世界のなかで「米国一強」の地位は中国に脅かされ、中国によって世界覇権を奪取されかねないとの強い危機意識が働いているからにほかならない。
このため、米政府や議会は、中国政府がサイバー攻撃を仕掛けて技術を盗んだり、機密情報にアクセスできる要人のデータを集めたりしていると警戒しており、今年8月にはファーウェイや同じく中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)の製品を政府調達から排除することを決定した。なぜなら、ファーウェイやZTEの製品を通じてスパイウェアやマルウェアが政府の中枢システムに入り込み、サイバー攻撃の温床になっているとみられるからだ。
メンツを潰された習近平
折しも、米中両国は今年7月から、トランプ米政権による対中関税発動を契機に貿易戦争に突入した。大幅な関税引き上げにより、とりわけ中国経済が悪化していることは一目瞭然だ。中国国家統計局によると、中国の今年7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増で、4~6月期より0.2ポイント減速しており、リーマン・ショック直後の09年1~3月期以来、9年半ぶりの低水準にとどまっている。この原因は貿易戦争勃発後、外資企業や中国企業が次々と生産拠点を中国から他国に移転し、中国内の失業者が急増していることが挙げられる。
11月28日付の経済ニュース専門サイト「財新網」は「国内雇用低迷のため、202万件の求人広告が消えた」と報じた。「網易」(10月22日付)も『今年上半期国内504万社が倒産、失業者数200万人超』との見出しを掲げた記事を配信。さらに、中国農業農村省は11月8日、740万人の農民工(出稼ぎ農民)が地元に戻ったと発表し、その実態を裏付けている。加えて、これまで右肩上がりで上昇していた都市部のホワイトカラー層の所得が伸び悩んでおり、習指導部の支持基盤である都市部住民の不満が高まっているのだ。
このようなことから、習主席はトランプ氏に首脳会談を提案。習氏は12月1日、主要20カ国・地域首脳会議(G20)の場を利用し、訪問先のアルゼンチンで、わざわざ米側の宿舎となっているホテルに習指導部の主要幹部を引き連れて行き、トランプ氏と会談したほどだ。まさに、習氏はトランプ氏に三拝九拝して会ってもらったといってよい。中国の皇帝は相手を“かしずかせて会ってやる”という「朝貢外交」の伝統があるが、習氏は皇帝のプライドをかなぐり捨てて、トランプ氏との首脳会談に臨んだのである。
この結果、米国が来年1月に予定していた中国への追加制裁を90日間猶予することが決まった。習氏は面目を保ったかに見えたのだが、実は、ファーウェイの孟氏は首脳会談当日の1日に逮捕されていたことが、のちに判明する。つまり、習氏は完全にメンツをつぶれされたのである。
中国への信頼度低下
しかも、孟氏の祖父は元四川省副省長という中国政府幹部であり、周恩来首相人脈につらなる古参幹部。また、孟氏の父は中国人民解放軍出身でファーウェイ会長。孟氏自身は父の跡を継いで来年にもファーウェイ会長に就任するといわれる大物幹部であり、中国政府にとっても最重要人物だ。
習氏は高級幹部子弟の太子党閥の総帥だが、孟氏は典型的な太子党だけに、その孟氏が海外で逮捕されたのは、完全にトランプ政権に裏をかかれた格好で、中国の最重要人物を保護できなかった習指導部の失態としかいいようがない。
さらに習氏が犯した失敗は、孟氏逮捕の報復として、中国在住の2人のカナダ人男性を「国家安全を害した容疑」で拘束したことだ。これについて、中国外務省スポークスマンは「法に基づいて行動した」と述べ、孟氏逮捕とは無関係と主張したものの、報道ではカナダへの報復との見方が強い。中国がいくら「ファーウェイの問題と無関係」と言っても、タイミング的に2人のカナダ人が拘束されれば、誰でも報復措置と考えるのは当然だ。
この“違法”な身柄拘束によって、「中国はいまだに外国人を誘拐するような非人道的な真似をするのか。中国はまだ法治国家にはほど遠い」との印象を国際社会に与えることになり、習指導部への薄気味悪さは一段と増すことになる。これによって、西側社会の中国への信頼感は、限りなくゼロに近くなるといってもよいだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
【私の論評】中国の異形の実体を知れば、全く信頼できないし、危険であるとみなすのが当然(゚д゚)!
結論からいえば、中国が民主化されていない、政治と経済が分離されていない、法治国家化されていないということを知っている人なら、最初から中国を全く信頼していません。私もそうです。
中国と比較すれば、米国のほうがはるかにましですし、まともです。それは、不十分なところもありながら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がされているからです。米国の為政者には縛りがあります。しかし、中国にはそれがないのです。
今のままの中国なら、中国内にとどまり、中国内のみで様々な活動をしている分には、良いかもしれないですが、一歩でも外に出て何かをやろうとすれば、周りの国々と衝突するのは当然です。
今のままの中国なら、中国内にとどまり、中国内のみで様々な活動をしている分には、良いかもしれないですが、一歩でも外に出て何かをやろうとすれば、周りの国々と衝突するのは当然です。
現在の中国共産党は結局、国内外で、最終的には何の縛りもなく、好き勝手、やりたい放題ができます。そもそも、国内でやりたい放題です。それは、国外にも適用されます。国際法など中国には無関係なのです。
このような国が覇権争いに勝って、世界中で好き勝手をしてしまうと世界は混乱の極みになることは目にみえています。
そもそも、日本を含めて世界の多くの国々の人々が、特に先進国の多くの人々が、中国を見る目は間違っているのではないかと思います。多くの人々は、何となく中国も自分たちが抱く国という概念に当てはまるのではないかと、無意識に考えてしまっているのではないかと思います。
まずは、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていないということをよく理解していないのではないかと思います。
中国のこの問題については以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。
わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。
以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえず、EPAには入れないのは当然です。
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。
中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。
確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。
その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられているのです。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。これは、結局何か大きな問題があっても、法律どころから憲法に照らしても、共産党の恣意でなんでも好き勝手にできるということです。
これが、中国国内だけで適用というのならまだ多少理解できなくはありませんが、現状ではそんな区別もありません。中国の今の制度では、中国共産党は世界中で自分たちの都合でなんでも好き勝手にできるのです。
ただし、相手国があり、相手国がその憲法や法律にもとづいて動いているため、相手国の範疇では中国といえども、それに従わなければならないので、かろうじて安定が保たれているだけです。
もし、中国が世界中で覇権を握れば、その覇権の及ぶ範囲の中では、中国共産党は何をしても許されるということです。
中国共産党が認めれば、人民解放軍などがどこで何をしても、何でも許されるのです。このように何の縛りもない中国共産党は、世界にとって危険極まりない存在です。
それに比較すれば、日米をはじめといする、いわゆる先進国はいずれの国でも、為政者(政権政党)にも当然のことながら、何らかの縛りがあります。
トランプ大統領、安倍総理などはもとより、先進国の為政者には当然のことながら縛りがあります。しかし、中国共産党、習近平主席にはそれがないのです。
中国共産党は異形の怪物? エイリアン・コベナントより |
これを理解してはじめて、中国など全く信頼できないことが理解できると思います。人の良し悪しがどうとか、一般民衆がどうのこうのとは言っても、結局国の体制がそうなっているのですから、今の中国は危険極まりないし、信頼もできないのです。
このような体制を築いた、中国の先達は、中国共産党が手前勝手になんでもできる体制に脅威を抱かなかったのでしょうか。全く不思議です。
この体制は、放置しておけば、国内では大災厄をもたらし、多くの人民から反感を買うことになりますし、国外では他国から爪弾きにあうのは必定です。
まさに、中国の現状はそのような有様です。この体制は長くは続かないでしょう。短くて、10年長くて20年だと思います。
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