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2020年3月5日木曜日

<独自>事実上、中国人と韓国人の入国を制限 イランも新たに対象―【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!


新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、関西国際空港の検疫検査場では、
サーモグラフィーで入国者の体温を確認していた=1月23日午前(須谷友郁撮影)

政府は5日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染を防ぐ水際対策として、中国と韓国に所在する日本大使館で発行した査証(ビザ)の効力を停止する方針を固めた。香港・マカオ・韓国はビザなし入国の特例も停止する。

 中国と韓国には、観光客の来日を自粛するよう要請する。これにより、事実上中国人と韓国人の入国を制限することになる。

 韓国に対しては、滞在歴のある外国人の入国を拒否する地域を大幅に拡大する。具体的には、慶尚北道慶山市、安東市、永川市、漆谷郡、義城郡、星州郡、軍威郡が新たに対象となる。これまでは、大邱と慶尚北道の一部が入国制限の対象だった。

 イランも新たに入国の制限対象とし、コム州、テヘラン州、ギーラーン州を対象地域にあげた。

 5日夕の国家安全保障会議(NSC)の会合で確認する。

 中国と韓国からの入国者は、検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出す。

 また、中国と韓国からの航空便の到着空港を成田空港と関西空港に限定する。船舶は、中国と韓国からの旅客運送を停止するよう要請する。

【私の論評】台湾の動きに注目!日本の親中派は今のままだと中共の道連れに(゚д゚)!

私自身は、上記の措置を待ち望んでいました。特に中国からの入国制限は、一ヶ月前から実行すべきと思っていました。

何やら、様々な理由で、中国全域からの入国制限には意味はないとする人々もいましたが、たとえそれが正しかろうと、間違いであろうと、まずは中国からの入国は最初制限すべきだったと思います。

最初の時点で、中国からの入国者はを検疫法に基づく「停留」措置を取り、政府指定の施設などで2週間隔離したうえで、入国許可を出すようにしていれば、そもそも中国全域の入国制限に意味がないか、あるかは実際に検査できたはずです。

その時に、中国全域からの入国制限が無意味とわかれば、入国制限を解除すれば良いですし、意味があるなら継続ということで良かったと思います。

しかし、一ヶ月遅れたとはいえ、実施されたことは非常に良かったです。

本日は、この他菅義偉官房長官が午後の記者会見で、日中両政府が4月上旬で調整してきた中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、時期を再調整すると発表しました。

菅官房長官

これに関しては、首相は2月28日、首相官邸で中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員と面会した際、「十分な(習氏来日の)成果を挙げるために入念な準備を行わなければならない」と述べ、来日時期よりも成果を重視する考えを強調し、延期を示唆していました。事実上この時で延期は決まっていたのですが、今日正式に発表したということです。

今日まで、発表が遅れたのは、やはり党内の親中派に対して懐柔する必要があったのかもしれません。私自身は、もうとっくに延期は決まったものと断定していたので、本日の発表には驚きました。そういわれてみれば、正式の発表は今日までなかったことに気づきました。

日本における新型コロナウイルスの流行はもはや危機的状況であり、これを抑えるためには、できることは何でもしなければいけない段階にきていると見るべきであると、台湾と比較して、そういう人も多いです。しかし、これは本当に正しいのかどうかは、なんともいえないことをこのブログで以前掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
五輪延期では済まぬ。韓国式「新型肺炎」検査が日本経済を潰す―【私の論評】武漢肺炎も、数値で見て客観的に物事を判断しないとフェイクに煽られる(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

今後、このようなデマが多く出回ることでしょう。以下はデマとまでいえるかどうかわかりませんが、日本での感染者数はかなり多いと認識されているようですが、そうともいえないデータがあります。それを以下に掲載します。

以下の表は、武漢肺炎感染者数の人口比率(2020/03/03)です。

感染に限らず統計は、客観的に見ないと理解できませんし、見方を誤ってしまいます。上の表は、感染者➗人口の比率で比較した表です。 
この表でみると、現在では韓国が世界で一番感染率が高いです。少なくとも、韓国の防疫体制が優れているとはいえないことがわかります。それと、中国の統計は単純に信じることはできないと思います。中国の経済統計はデタラメです。コロナウイルスの感染者数だけが、正しいということはできないと思います。 
この表によれば、日本は16位ということで、19位の台湾とあまり変わりません。現時点では、特に日本が台湾などの他国と比較して、格段に防疫体制が格段に劣っているとは思えません。
台湾の人口は、約2千3百万人です。日本の人口は、1億2千万人 です。日本の人口は、台湾の5倍以上です。これでは、単純比較はできないわけで、やはり感染者者数の人口比でみるのが正しいです。

そうすると、台湾と日本とでは、感染比にさほど大きな差異があるとはいえないことがわかります。しかし、若干の違いはあります。この差異が当初に中国からの入国を制限したものによるかどうかは今後の経過をみていけばわかるでしょう。

さて、日本と台湾では感染比ではさほど違いはないのですが、それでも日本は台湾に見習うべきところがあります。

とにかく、台湾の反応は素早かったです。まず中国大陸との各種往来をいったん絶ちました。また、中国の意向を汲んで台湾の出席を拒み続けてきたWHOに対して、「台湾人の健康と命の安全」という人道上の問題として訴えることで国際会議への台湾のオブザーバー参加を認めさせました。

1月早々に専門家を交えた緊急対応会議を開き、2月2日から空港などの検疫体制を強化。台湾での感染者が出ていない1月20日の段階で「国家感染症指揮センター」を立ち上げて、水際作戦の体制を整えました。

1月23日には蘇貞昌行政院長の「マスク輸出制限指示」があり、2月6日にはマスク購入実名制度を導入し、オンラインマップでマスク在庫状況を公開しました。さらには政府補填による民間企業へのマスク増産指示、医療機関への優先的配布といったと素早い対応で、各国で起きているマスクの買い占めによる不足や高額転売問題を回避しました。

台湾がこれほど果断に素早く政策を打ち出せたのは、蔡英文政権がここにきて台湾の親中派財界や大陸世論を考慮しなくてよいほど、台湾社会の反中感情が高まったせいもあります。

蔡英文台湾総統

こうした台湾の動きと対照的なのが、日本の中国政府への配慮からくる新型肺炎対応の鈍さです。

どうして日本がこういうことになったかといえば、主に以下に3つの点があると思います。
①WHOの機能不全と厚労省のリスク管理部門が杜撰
②二階幹事長を初め多数の親中媚中派がいて中国に支援すべきと動いたこと。そのため、菅官房長官と総理の関係が現在最悪の状態になっていること  
③日本企業は中国で利益を得ても持って帰れない。撤退すればBSが一気に壊れ 倒産する企業も出てくる可能性が高いという現実がある。
このような複合的な要因が重なり、日本政府は中国に配慮して、なかなか思い切った措置がとれなかったようです。

しかし、かつての台湾も中国との結びつきが強く、中国への配慮は欠かせなかったのですが、最近の台湾はそうではなくなっています。

蔡英文政権2期目のテーマは台湾の国際社会における国家承認の推進です。こうした方向性は中国側から武力恫喝と経済制裁を伴う強い圧力を受けると想像されていました。

武力に関しては、さすがの中国側もなかなか実際の行動はとらないとしても、台湾と中国の長年の経済緊密化のせいで、中国からの経済制裁はかなり台湾経済に強い打撃を与えると予想されていました。

ところが幸か不幸か、新型肺炎という突然の疫病蔓延で、台湾だけでなく世界各国で中国との人的交流、物流の制限が否応なくかけられることになったのです。

2月10日は中国が全国の工場再稼働を宣言した日ですが、台湾はこれに合わせて、中国との直行便を北京、上海など5空港をのぞき全面一時停止措置をとり、海運交通なども大幅に制限をかけました。

中国に工場をもつ台湾企業社員や、中国工場で働く台湾人労働者に足止めを食らわせた格好です。台湾企業としては早々に中国に戻って工場を再稼働させたいところでしょうが、「両岸の人民に感染を拡大させていいのか」と問われればイエスとは言えずにいます。

武漢封鎖当初、武漢市に残っていた1140人余りの台湾人の帰国問題も、2月3日に第1チャーター便で戻った247人の中に感染者が出たことから、台湾政府としては受け入れが整っていないとして、依然900人が台湾に戻れないままだ。

一方、総統選挙の動きの中で、完全に中国共産党の代理政党に落ちぶれていることが発覚した国民党は、親中路線からの脱却を図ろうとしている。中国共産党の言いなりだった呉敦義が選挙惨敗の責任をとって党主席を辞任したあと、元台北市長の郝竜斌と立法委員の江啓臣が主席の座を争うことになったが、ともに台湾ファースト、脱中国イメージを訴えています。

中国全域からの入国禁止の措置に関しては、政府の小中高校などのほぼ全面休日など国民に対して厳しい措置をしていながら、中国人は日本に自由に入り我が者顔で、町を闊歩するようなことにでもなれば、国民の反発は必至ということで、さすがに親中派もいつまでも、全域からの入国禁止を拒むことはできなかったのでしょう。

安倍総理は、元々セキュリティダイヤモンド構想で中国封じ込め政策を主張していました。これは、オーストラリア、インド、アメリカ合衆国(ハワイ)の3か国と日本を四角形に結ぶことで4つの海洋民主主義国家の間で、インド洋と太平洋における貿易ルートと法の支配を守るために設計されたものです。

中国の東シナ海、南シナ海進出を抑止することを狙いとします。日本政府としては尖閣諸島の領有問題や中東からの石油輸出において重要なシーレーンの安全確保のため、重要な外交・安全保障政策となっています。インド太平洋、Free and Open Indo- Pacific Strategyの概念の確立、アメリカの対アジア戦略に「Indo-Pacific economic vision」(インド太平洋構想)として採用されました。

その安倍首相が、二階氏など自民党内で重要なポストについている議員などのため、党内政治を円滑にするため、中国に配慮せざるを得なくなっているので、新コロナウイルス対策においても、なかなか思い切った手が打てなかったのでしょう。

しかし、安倍首相も、中国全域から入国制限に踏み切ることを決意したのです。台湾では、すでに国内世論は反中国に大きく傾いています。この世論には、さすがの国民党も逆らえなくなっているのです。

台湾にできたことは、日本にもできるはずです。日本も、今回の新コロナウィルスを奇貨として、自民党内はもとより政治家の親中派、マスコミの親中派、財界の親中派などの力を弱めていくべきです。

台湾もそうですが、わずか数年前までの米国も親中派が幅をきかせていて、その状況はどうにもらないように見えていました。トランプ氏など絶対に大統領にならないだろうと見られていました。しかし、そうではありませんでした。

米台にできて日本にできないはずがありません。現在の中国はもともと経済がかなり弱っていたことに加えて、現状はコロナ肺炎で大変なことになっています。しかも、経済もコロナ肺炎も中国共産党の自業自得である部分がほとんどです。

それに、米国からかなり厳しい対中国冷戦を挑まれています。これは、どう考えても、中国に勝ち目はありません。

米国は、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などするつもりのない中国共産党に見切りをつけ、かつてのソ連に対してそうしたように、中国の経済がかなり弱体化するまで冷戦を継続します。

日本の親中派も、かつての米国のパンダハガー(親中派)のように中国に配慮しても無意味であることを理解すべきです。そうでないといずれ中共の道連れになるでしょう。

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2020年1月21日火曜日

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 ―【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

米国やイランも歓迎なのに…海自中東派遣に反対の野党 韓国外交は板挟みで迷走中 
高橋洋一 日本の解き方

中東に派遣された海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」

 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機が中東に派遣された。その意義と、中東情勢において日本の果たす役割について考えてみたい。

 イラン沖のホルムズ海峡は、狭いところが33キロしかない世界海上交通の要衝だ。特に日本にとっては、この海峡が封鎖されると、石油の輸入の大半が絶たれてしまう。

 経済産業省の「石油統計」によれば、日本の原油輸入元として、2018年時点でサウジアラビア(38・0%)、アラブ首長国連邦(25・4%)、カタール(8・1%)、クウェート(7・6%)と上位4カ国で約計79%を占める。欧米の中東依存度が2割程度であるのと比べても比重が大きい。日本の1次エネルギー国内供給の4割は石油であり、その8割がホルムズ海峡に依存しているので、同海峡は日本のエネルギーの生命線といってもいいだろう。

 現在、米国とイランの間で一触即発の緊張関係が続いている。もし万が一ホルムズ海峡で有事になると、日本経済への打撃は他の欧米諸国の比でない。

 日本のタンカーはホルムズ海峡を日々通過しているが、その安全が確保されない場合、どのように対処すべきか。

 ロジカルには、(1)自衛隊の単独派遣(2)他国との協力(3)静観-である。このうち、(2)の他国との協力では、米主導の欧米の有志連合への参加以外の選択肢は今のところない。

 一部の野党は、(1)にも(2)にも反対なので、結果として(3)の静観ということになる。かつて一部の野党は、「石油が日本に入らなくてもたいしたことはない」と豪語していたが、論外だ。国内の石油備蓄は200日分以上もあるので、備蓄がある限りは日本経済はなんとか持ちこたえるが、それがなくなると苦境に陥るのは、過去の石油危機をみればわかることだ。

海自中東派遣に反対の立憲民主党枝野代表

 筆者は、あるべき対応として、(3)は論外として、本コラムで(1)を勧めてきた。日本の米国とイランに対する立ち位置を考えたときに、(2)の有志連合では対イランとの関係でまずいからだ。安倍晋三政権は常識的な判断として(1)を選択した。

 この方針は、米国にもイランにも支持されている。今回、安倍首相は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンを歴訪した。中東での平和外交であり、タイミングは絶妙だ。しかも、その成果として、(1)について、これらの諸国の賛同を取り付けた。

 一方、韓国外交はこの問題で迷走している。当初は有志連合への参加方針だったが、イランから恫喝(どうかつ)され、米国からは有志連合への早期参加を催促され板挟みになった。日本は早い段階で(1)を決めたのと好対照だ。

 今回の安倍首相の中東歴訪は、オマーン国王死去にも重なり、弔問外交にもなった。喪に服するという意味で中東には一時的に紛争が起きにくい状況なので、この好機に日本主導で中東和平ができるかもしれない。これは、米国とイランの両方にパイプを持っている安倍政権しかできないことだ。まさに正念場である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中東海自派遣には、いずれの国も反対していない。反対するのは日本の野党のみ(゚д゚)!

私は野党がなぜ、海自中東派遣に反対するのか全く理解できません。そもそも、民間のタンカーが危険な地区に行くのは問題がなくて、海自がその地区に行くことは反対というのは理解できません。

中東に派遣された海自のP3C哨戒機

たとえば、武装した敵に包囲されていて、それでも日々に必要な水を包囲した敵の近くの水場まで汲みに行くのに、主婦や子供などに水を汲みにいけというのでしょうか。まともな感覚であれば、もし身近に軍人や、警察などがいれば、それらに行かせるか、あるいは水汲みをする人たちの警護に当たらせるのではないでしょうか。

自衛隊を中東派遣すると「イスラムに嫌われる」などと報道されていますが、あれは全くの欺瞞です。中東の産油国にとっても海路の安全確保は極めて重要です。

タンカーがミサイル攻撃されるとか、海賊に襲われることはあってはならないということで、日本と産油国の利害は一致しています。そもそも、日本を敵視するイスラムとは誰のことなのでしょう。IS、アルカイダ、それとも海賊なのでしょうか。

日本はテロリストや海賊のご機嫌を取るために、自衛隊を派遣しない方が良いというのでしょうか。彼らは自衛隊を派遣しようとしまいと日本を敵視しています。自衛隊を派遣すると中東諸国に嫌われるという発言はいろんな意味でまともではありません。

それにしても、安倍総理がこのタイミングで中東歴訪したことは良いことでした。サウジアラビア、UAE、オマーンに行って皆さんと同じように海路の安全確保が大事だと考え、自衛隊を派遣しますと直接伝え、相手からも同意を得た上で海自を中東に派遣したのです。

サウジアラビア・ウラー近郊でムハンマド皇太子(左)の歓迎を受け握手する安倍首相=1月12日

一方、上の記事では韓国外交はこの問題で迷走しているとしていますが、韓国もとうとう中東に艦艇を派遣することを決めました。

韓国政府は21日、中東・ホルムズ海峡への独自の海軍部隊派遣を決めたと発表しました。海賊から韓国船を保護する目的でソマリア沖・アデン湾へ既に派遣されている部隊の活動範囲を一時的に拡大します。米国が求めていたホルムズ海峡の安全確保を目指す有志連合には参加せず、必要に応じて協力するとしています。

米韓間では最近、北朝鮮への韓国人の個人観光を進めたい韓国と難色を示す米国との溝が深まっています。文在寅政権としては、米側の派兵要請に応じることで懸案を減らしたい考えとみられますが、支持層が反発する可能性もあります。

いずれにせよ、韓国ですら派遣を決めたのです。日本の一部の野党は、これをどう捉えるのでしょうか。

海上自衛隊の護衛艦による警護を希望する船舶は約2600隻にのぼるといいます。これは、アデン湾を航行する日本関係船舶の年間隻数にほぼ匹敵するそうです。

海賊発生件数が多発した2010(平成22)年には、219件の襲撃があり49隻が乗っ取られ、1181人が人質にされました。ニュースとしてしばしば取り上げられ、翌2011年にピークに達し237件も発生しました。

しかし、2012年には80件弱となり、2013、2014年はひと桁、2015年には遂にゼロになったことからも劇的に状況が改善しました。

世界各国が手を携え、軍艦や自衛艦などを派遣し根気強く洋上の監視を行い、海賊という共通の脅威に対抗した結果がもたらしたものです。

今回の派遣は海賊対処に加えて日本関係船舶の安全航行のためで、ジブチ基地沖のアデン湾からアラビア海北部、そしてホルムズ海峡(含まない)に繋がるオマーン湾まで、正しく日本列島に匹敵する広範囲に及びます。

国家存立の基本であるエネルギーは、輸入先や資源の多様化が叫ばれて久しいですが、原油の中東依存は1970年代の石油危機時よりも増大し88%にも達しています。

北海道では、昨年ブラックアウトがあつたばかりですが、石油がなくなれば、あのようなことも起こりえます。北海道では2、3日のことですみましたが、長期にわたってあのような事態が起これば、大変なことになります。それこそ、死人がでかねません。

他方で、ドナルド・トランプ大統領は、米国はエネルギーを他国に依存する必要がなくなったと宣言しました。

このことからは、米国の中東関与も逐次縮小が予測され、日本は自らエネルギー安全確保の必要性に迫られることになりました。

このことからも、自衛隊の活動の礎をしっかり確立することが直近の課題であり、現行憲法範囲内でもできることはすべて行うという姿勢も重要ですが、将来的には憲法の見直しが不可欠です。

その意味で、野党の自衛隊の安全のため、中東への派遣は中止すべきという提言はあまりに近視眼的なものであり、とうてい日本の安全保証をまともに考えているとは思えません。

私には、彼らは倒閣のため、国民の安全を犠牲にしているとしか思えません。

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2019年7月21日日曜日

イラン革命防衛隊、英タンカー拿捕の映像公開―【私の論評】イランと英国の対立も制限なきチキンレースになることはなく、いずれ収束する(゚д゚)!

イラン革命防衛隊、英タンカー拿捕の映像公開

イラン革命防衛隊がへりコプターから英タンカーに降下し、拿捕する様子

イラン革命防衛隊は、中東・ホルムズ海峡で、イギリスのタンカーを拿捕した際に撮影したとする映像を公開しました。

ヘリコプターからおろされたロープを伝い、タンカーの甲板に次々と人が下りていきます。ヘリコプター内部から撮影された映像には、覆面姿の兵士が複数映りこみ、腕にはイランの国旗が確認できます。この映像は、イラン革命防衛隊が20日、国営テレビを通じて公開したもので、イギリスのタンカー「ステナ・インペロ」を拿捕した際に撮影されたものとみられます。

国営イラン通信によりますと、イラン側は「イギリスのタンカーはイランの漁船と衝突したうえ、救難信号に応えなかった」と主張。ただ、実際に衝突事故があったのかどうかは明らかになっていません。

また、ロイター通信によりますと、イランの港湾関係者は「タンカーの乗組員23人はイラン側が調査をする間、船内に残ることになる」と説明しているということです。

「ザリフ外相との会話やイランの声明からは、今回の件を、ジブラルタルでのタンカー拿捕の報復とみていることが明白にわかる」(イギリス ハント外相)

こうしたなか、イギリスのハント外相は20日午後、イランのザリフ外相と電話会談をし、「先週は事態を鎮静化させたいと言っていたのに、イランがその真逆の行動に出たのは非常に残念だ」と伝えたということです。ハント外相は、ジブラルタル沖でイランの原油を積んだタンカー「グレース1」を拿捕したのはEUの制裁に違反している疑いがあったからだと改めて強調した上で、“『ステナ・インペロ』はオマーン領海にいたところを強制的にイランに連れていかれた、これは国際法に明らかに違反している”と主張して、タンカーの解放を求めました。

イギリスのテレグラフ紙は、イギリス政府が資産凍結などの対抗措置を検討していると報じています。ハント外相は「イラン核合意は引き続き順守する」としていますが、これまでアメリカとは一線を画した対応してきたイギリス・ドイツ・フランスの核合意当事国が今回の拿捕をきっかけに方針を変化させるかどうかも1つの焦点です。(21日08:51)
【私の論評】イランと英国の対立も制限なきチキンレースになることはなく、いずれ収束する(゚д゚)!


イランがホルムズ海峡で英船籍タンカーを拿捕(だほ)した問題を受け、欧州連合(EU)とドイツ、フランスは20日、それぞれ声明を出し、一斉にイランを非難しました。タンカーと乗組員の速やかな解放を要求し、独仏は英国との連帯姿勢を鮮明にしました。

EUの報道官は声明で、拿捕に「深い懸念」を示し、「緊迫した状況をさらに悪化させる恐れがあり、解決の道を探ろうとする取り組みを台無しにしてしまう」と批判。「船と乗組員の即時解放を要求し、自制を求める」と訴えました。

独外務省はイランを「最大限に非難する」とした上で、「民間海運への正当化できない攻撃だ」と指摘。状況悪化への懸念を示し、「英国と協力し合う」と強調しました。仏外務省も「地域の緊張緩和を妨害する行為を断固として非難する」とし、英国との「完全な連帯」を表明しました。

イランと英国の対立の深まりは、欧州が存続を目指すイラン核合意をめぐる問題にも影響を与える可能性があります。

今日のイラン危機は、ペルシャ湾岸国だけではなく全世界に教訓を示しています。

イラン危機の現状をみて、ロシアや中国といった国は、西側がハイブリッド戦争(軍事力と政治的効果を狙った市民活動など各種手法を組み合わせた戦争)に対する答えを持っていないという自分たちの考えが正しかったと確信するでしょう。

イラン海軍の軍事力は非常に弱く、軍事作戦が展開されれば、バーレーンを拠点とする米海軍第5艦隊に粉砕されることでしょう。

そのためイランは代わりに、ハードパワーがあまり問われないハイブリッド戦争を展開しています。これにより、西側がいかにハイブリッド戦争に対する準備をしていないかが浮き彫りになっています。

ハイブリッド戦争は、在来型・非在来型軍事手段と偽情報、名誉毀損(きそん)、経済、ソーシャルメディアの操作、宗教やその他政府が関連する活動の利用などの手段を組み合わせ、「伝統的」戦争を行うことなく敵を弱体化させることを目的としています。

現在進行しているイラン危機は、ロシアや中国が被害を被ることなく、いかに西側のハードパワーに対抗するかということをみる試金石だともいえそうです。

ハイブリッド戦争の提案者らは西側と「戦わない」ことを選びましたが、これは賢明な判断であり、堅実な軍事戦略です。

イラン、ロシア、そして最近では中国も、伝統的軍事力と深く結びついた自由民主主義が築き上げた構造を破壊することに非常にたけています。英議員ボブ・シーリー氏は「これらの国は以前に比べ、慣習にとらわれない考え方をするようになっている」と警告しています。
ボブ・シーリー氏

英国はイランへの経済制裁について、政治的には欧州連合(EU)を支持する一方、軍事的には米国と緊密な関係を保とうとしている。「英国は戦略的に苦境に陥っている」とシーリー氏は話す。

イランは自分たちの苦境にできる限り外交的関心を集めたいと考えており、それを実現するためには中東の安定性を損なうこともするだろう。米国もしくは英国が軍事行動を起こせば、イランはそれを可能な限り迅速に国際問題化する可能性がある。

イランの政治は唯一の階層的構造があるわけではなく、対抗する勢力が複数存在している。「代理戦争や非対称戦争についてやり取りする時、必ずしもイラン議会と交渉するとは限らない。むしろ政権とは距離を置くイラン革命防衛隊を相手にすることになる」とシーリー氏は説明する。

英国防参謀総長を務めたことがあるデビッド・リチャーズ氏は、これらはすべて、ブレグジット後の大規模戦略を策定する必要があることを示していると指摘する。「英国は種々の危険や危機に見舞われ揺れており、自らが取るべき世界的な戦略や目的を誰も実際には理解していない」

リチャーズ氏はペルシャ湾もしくはそれ以外の地域における問題で「意図されたものかどうかにかかわらず、新首相は今後半年間、試されることになるだろう」と語った。
「大部分(の政治家)が、そのような試練に対する準備をまったくしていないことを懸念している」
イランは結局のところ、米国ではない英国などにテロを仕掛けて様子を見ているるというのが正しい見方だと思います。

米国とイランの対立は果てしないチキンゲームになることはありません。それは、両者とも理解していることでしょう。それについては、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
際限なきチキンゲームに、イラン、相次ぐ核合意破り―【私の論評】チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えている(゚д゚)!
ウラン濃縮度引き上げを発表 するイラン政府高官
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
このままイランが制裁破りをすれば、米国は武力行使の以前の段階で、種々の金融制裁を実施し、さらに最終的には米国の「ドル使用禁止」という切り札により、イランが崩壊して終わることになります。
これは、中国、北朝鮮とて同じことです。ドル決済ができなければ、お手上げになります。古代ですら、イランは海外との取引をしていたはずです。そのイランが、現代では海外と取引がほとんどできなくなれば、古代以前の石器時代に戻るしかなくなります。勝負は最初から決まっています。

古代からのイランの輸出品「ペルシャ絨毯」
ただし、米国が一足飛びにイランに対して本格的な金融制裁をしてしまえば、イラン側も必死になり、それこそ破れかぶれで、テロ攻撃、イスラエル攻撃などを実施することも考えられます。だから、米国としてはそれをする前の様子見をしているというところでしょう。イランはイランで、どこまで制裁破りをすれば、米国がどのような挙動に出るのか見極めるために、いろいろ実施しているというところでしょう。 
現状の制裁でも、時間が経てば、イランはかなり疲弊します。そこで、最後の手段として本格的金融制裁をするかしないかを決定するでしょう。これは、中国に対しても全く同じです。チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えているのです。
「ドル使用禁止」という制裁は、米国ドルが基軸通貨である現在、世間で一般に思われている以上に厳しい制裁です。これが、日本のような国であれば、「ドル使用禁止」になったにしても、GDPの殆どが内需で占められ、貿易依存度が低い国では、確かに相当苦しいですが、何とかはできます。ちなみに日本の貿易依存度は27%です。

しかし、イランのような国ではそのようなわけにはいきません。イランは貿易依存度が41%です。 このような国では、「ドル使用禁止」されると、その制裁の効果は破滅的なものになります。

そのため、イランも対立が長引けば、いずれ「ドル使用禁止」をされて、破滅することは最初から理解していることでしょう。この破滅的な政策にあっては、いくらイランがハイブリット戦争を仕掛けたにしても、太刀打ちできないです。

ただし、そうはいってもどこまで米国がハイブリット戦争や、テロなどを仕掛けられれば、「ドル使用禁止」などで対抗してくるかを探っているとみるべきでしょう。

これは、米国だけではなく、米国の同盟国である英国も同じことです。場合によっては、我が国に仕掛けてくるということも十分に考えられます。

そうして、イランは米国や英国に対しても、ハイブリッド戦争やテロを仕掛けて自らに有利なのはどの程度なのかということを探り、その範囲内でいろいろ仕掛けてみずらにとっても有利なところはどこなのか探りを入れているのでしょう。

これは、かつての中国もそうでした。南シナ海で海洋進出してみたり、その他世界でいろいろなことを仕掛けてみました。その結果オバマはさしたる反撃もしなかったため、調子に乗ってやりすぎたところをトランプに貿易戦争を挑まれました。

米国としては、どこまでイランや中国、そしてロシアのような国々にハイブリット戦争や、テロを挑まれた場合許容できる点と、そうではない点をある程度明確にしているでしょう。

ある地点を超えた場合、何のためらいもなく「ドル使用禁止」「資産の凍結」などを実行することでしょぅ。そうして、その場合は、軍事的報復なども計算に入れているでしょう。

だから、英国も同盟国の米国の戦略まで含めてみれば、英国がハイブリット戦争に対して全く準備していないということはないのです。

シティ・オブ・ロンドン

英国のポンドは基軸通貨ではなくなったものの、ロンドンの金融街であるシティは未だに数々の特権を認められた自治都市を形成しています。これは米国のウォール街がニューヨーク市のいち区画に過ぎないのとは異なります。

英国の中央銀行である、イングランド銀行を筆頭に、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)の株式の大多数をシティーの金融街が握っており、英国(シティー)が今でも米国対して大きな影響力を持っているのです。

シティーが米国に作ったのがCFR(外交問題評議会)です。金融ばかりでなく米国の政治、経済、軍事も対してもシティが大きな影響力を行使することができるのです。その権力の中央に位置するのがイングランド銀行なのです。

イランがこの実体を知らないまま、英国に対してハイブリット戦争をなどを仕掛け続ければ、米国から痛い目に合わせられる日がくるのは必定です。ただ、米国とてすぐに厳しい措置をとれば、イラン側がどのような行動をするか、確かめながら実行しなけば、かえって被害を被る可能性も否定しきれません。

そのため、イランと英国の対立も制限なきチキンゲームになることはなく、いずれどこかの点で収束することでしょう。

ホルムズ海峡「有志連合」結成へ 問われる日本の決断―【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!



2019年7月11日木曜日

ホルムズ海峡「有志連合」結成へ 問われる日本の決断―【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!


トランプ大統領

参院選が盛り上がらない。消費増税という与野党の対立点があるにもかかわらず、マスコミは年金で煽っているが、いまいちだ。

 消費増税が盛り上がらないのは、新聞が軽減税率を受けるために、新聞が消費増税の中身を報じられないからだ。

明確な争点設定ができていない選挙

 軽減税率の対象が、「コメ、ミソ、ショウユ」まではわかるが、「新聞」がそれに付け加わるのはおかしいだろう。

 また、年金の支給額などを政争の具にしてはいけない。年金は複雑な仕組みのようだが、2019年6月13日付け本コラムで示したように、保険でありシンプルな数学問題だ。年金で老後の生活のすべてがみられるはずはないのは、一般国民ならみんな分かっている。あえて保険で説明すると、すべてのドライバーが加入しなければいけない自賠責では不十分で、一部の人は任意保険に加入するのと同じだ。つまり強制加入の年金は、保険料を上げられないので、ミニマムの保障しかできないので、それ以上の生活を望む人は別に貯蓄せざるを得ないのだ。年金だけの生活では満足できない人もおり、その人たちの貯蓄は2000万円というわけだ。また、自営で定年がなければ、長く働くことは可能であり、その場合には貯蓄もほとんど不要である。

 こうした内政問題では、マスコミでは明確な争点設定ができていないが、格好の外交・安全保障上の問題が降ってきた。米軍の統合参謀本部議長が、ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する有志連合を結成する考えを示し、日本政府にも協力を打診したと報じられている。

 筆者は、安倍首相が先日イランに訪問し、最高主導者との会談中に起こった日本関連タンカーへの襲撃事件は、日本への警告という認識だった。アメリカはイランの仕業と言うが、少なくともアメリカ軍は、日本関連のタンカーが襲撃される光景を上空から見ていたわけで、もし米国関連船なら、警告をしていたはずだ。この意味で、アメリカ軍も見過ごしていたので、イランの仕業としてもアメリカも傍観していたという意味で、日本への警告とみられる。

 ホルムズ海峡は、日本のエネルギーの生命線である。トランプ大統領は、日本も自国でシーレーンを守ったらどうかという。今回のアメリカの打診も、その延長線だろう。

法改正か、特措法か

 これが国際政治のリアルな社会だ。2015年9月に成立した安保法制では、ホルムズ海峡での機雷掃海が、集団的自衛権の例として出ていた。その審議では、そのための要件はかなり厳格であり、今のような事態では要件を満たしていないといわれるだろう。

 であれば、法改正をすべきかどうか。現行法では、自衛隊法による海上警備行動もありえる。しかし、これでは、日本に関係のある船舶は守れるが、外国の船は守れない。海賊対処法では、外国船舶も護衛できるが、海上警備行動と同様な行動制約がある。こうした現行法制上の問題を考えると、特別措置法でも対応というのもありえる。

 とかく、日本は良くも悪くも面倒臭い国なのだ。ただし、米イランの問題は深刻だ。イランの状態をあえていえば、1990年代なかごろの北朝鮮の核問題に似ている。米朝で開戦一歩手前までいったが、結果として米朝枠組み合意ができた。しかし、その後の歴史をみれば、北朝鮮が抜け駆けして、今では北朝鮮は事実上核保有国になった。

 このままでいけば、イランも同じ道をたどるかもしれない。北朝鮮の時には、アメリカは具体的な北朝鮮攻撃も考えていたが、今のイランにも同じようにアメリカは考えている可能性もある。となると、そのための一歩が、今回の有志連合への打診という形であるとすれば、これは国政選挙にもっともふさわしいリトマス紙になる。各政党の見解を聞きたいモノだ。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「安倍政権『徹底査定』」(悟空出版)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)など。

【私の論評】イランでも米国でも政治には宗教が大きく影響していることを忘れるべきではない(゚д゚)!

冒頭の記事にあるとおり、消費増税という与野党の対立点があるにもかかわらず、参院選が盛り上がっていません。これは、無論新聞が軽減税率を受けるために、新聞が消費増税の中身を報じられないからという側面が大きいです。

しかし、野党が増税に反対するものの、なぜ増税が日本経済にとって良くないのか、説明できないということもあると思います。彼らの戦術では、とにかく政権与党を不利にするために、反対しているというだけで、マクロ経済に疎く、なぜ増税が日本経済にとって良くないのかを説明できないため、全く迫力に欠けるのです。さらに付け加えれば、財務省と正面切って闘う、覚悟もないようです。だから、まともな争点にもならないのです。

とにかく、普段から「権力に対抗すること」を第一義とし、倒閣ばかり考えて行動しているため、まともな政策論ができないどころか、経済も安全保障に関しても幼稚な次元にとどまっているようです。

そういう観点からすると、今回の「ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する有志連合を結成」での米国の日本への協力依頼は、高橋洋一氏の言うように、格好のリトマス試験紙となるかもしれません。

ここでまた、日本の安全保証に関して、彼らが単に倒閣のための道具として用いるようだと、国民の信頼を失い、ポロ負けすることになるでしょう。

冒頭の記事にもあるとおり、ペルシャ湾の出入り口、ホルムズと紅海の出入り口であるバベルマンデブ両海峡の航行の安全を守るためトランプ政権が練ってきた「有志連合護衛艦隊」(センチネル作戦)が遂に結成されることになりました。

2、3週間以内にも始動する見通しですが、輸入原油の8割以上を同湾に依存する日本が参加するよう求められるのは必至です。

「有志連合護衛艦隊」の結成は7月9日、米軍の制服組のトップであるジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長がエスパー次期国防長官、ポンペオ国務長官と会談した後、明らかにしました。同議長によると、この構想は数日以内に最終決定され、2、3週間以内に有志連合艦隊への参加国がはっきりするとしています。

米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長
議長は現在、同盟国に参加を打診している最中だとし、参加国が当初は少なくても、順次増やしていけばいいとの考えを示しました。参加同盟国として見込まれているのは、英仏などの欧州各国と、同湾のエネルギー資源に大きく依存している日本です。

軍事面での公平分担が持論のトランプ大統領はペルシャ湾でタンカー攻撃が起きたこともあり、「自国の船舶は自分で守るべきだ。なぜ米国が他国のために無償でシーレーンを守らなければいけないのか」と不満をぶちまけてきました。

米国防総省はこうした大統領の意向を受け、同盟国による民間船舶の護衛を中心とした「センチネル作戦」の立案を進めてきました。ダンフォード議長によると、艦隊の指揮は米軍が取り、各国の護衛艦に監視活動で入手した情報を伝達、それぞれの艦船がタンカーなど自国の船舶を守りながら護衛航行する仕組みです。

輸入原油の80%をペルシャ湾に依存している中国は米国と経済戦争で衝突していますし、ロシアも対米関係は最悪な状態です。協力を得られる見通しは全くないです。日本やドイツなどの同盟国も「イランがやったという、より明確な証拠が必要」と消極的です。

菅官房長官はイランの関与について「予断を持って答えるのは控える」と慎重です。米国のイラン犯人説を支持しているのは、サウジアラビアやイスラエル、そして英国ぐらいのものです。

しかし、タンカー攻撃が再発すれば、米国の求めをむげに拒否することはできないでしょう。なんといっても、中国同様、日本の輸入原油の約85%がホルムズ海峡を通って入ってきており、トランプ大統領が出てきて「一番恩恵を受けているのは日本だ」と迫る場合も想定しておかなければならないです。湾岸戦争の際、貢献が小さいとして世界からバッシングにあった悪夢を繰り返すわけにはいかないです。賢い対応が必要です。

有志連合艦隊が結成されるというが・・・・・

こうした中、イランは強硬策を打ち出しました。イラン原子力庁は17日、核合意が守られていないことを理由に、低濃縮ウランの貯蔵量が合意で定められた上限を10日後の27日に超過すると発表した上、7月上旬以降、濃縮度を核兵器のウラン製造が容易になる20%まで高める選択肢もあると警告しました。イランが、この路線を進めば、理論的には1年弱で核爆弾を保有することができるようになります。

なんとか支持拡大を図りたいトランプ政権は25、26の両日、ペルシャ湾のバーレーンで開催される「パレスチナ経済支援サミット」会議の場で、反イラン包囲網を固めることを計画しています。

同会議は元々、トランプ氏が「世紀の取引」と売り込む中東和平提案の経済分野を公表し、パレスチナへの経済援助を引き出すために開催されるものです。ところが、イラン危機が激化した今、より緊急な課題は対イラン包囲網の構築です。会議に先立ち、米国はイラン対応のため、1000人の兵力をペルシャ湾に増派しました。

米国の対イラン強硬方針により、欧州には、大量破壊兵器保有の確固たる証拠のないままイラクに侵攻した「イラク戦争の前夜に似てきた」(アナリスト)との見方が強まっています。ホルムズ海峡の安全航行と、イランの核保有阻止という2つの問題にトランプ大統領がどう決断を下すのでしょうか。

ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官らの対イラン主戦論者の勢いが増しているかのようですが、防波堤として大きく立ちはだかっているのは実はトランプ大統領です。戦争になれば、最優先課題の再選が危うくなりかねないからです。皮肉にも米国の戦争を押しとどめているのは、イラン核合意から脱退したトランプ氏自身なのです。

にもかかわらず、トランプ大統領がなぜイランに対して強硬策を繰り返すのかといえば、その目的は、米国のキリスト教福音派の支持を固めることにあります。2016年の大統領選挙では福音派の80%程度がトランプ氏を支持したといわれ、トランプ氏にとって重要な支持基盤です。

           ドナルド・トランプ大統領と共に祈った米国の福音派指導者ら=2017年11月11日
           ホワイトハウスの大統領執務室で
福音派の人々には、親イスラエル政策は宗教上の義務との考えが強いです。トランプ氏にとって中東地域での覇権をめぐってイスラエルと敵対するイランへの圧力を強め、屈服させようとすることは福音派からの支持をさらに強め、自らの支持を盤石とするために欠かせないのです。トランプ大統領の対イスラエル支援策は、時間の経過とともに強化されていくことでしょう。

トランプ大統領としても、福音派の支持基盤を固めるためには、イランに対して強硬手段を取らなければならない側面がありつつ、戦争になってしまえば、再戦が危うくなりかねないというジレンマに陥っているのです。

ただ、一昨日もこのブログで掲載したように、米国には武力行使に至る前の「金融制裁」があります。同じく金融制裁とはいっても、資産凍結、取引停止、最終的には一番厳しい「ドル使用禁止」など様々な段階があります。

「ドル使用禁止」が以下に厳しい措置であるかは、一昨日このブログで述べました。米国は武力行使に至る前に、何段階かの金融制裁という手があります。まずは、金融制裁のうち比較的軽いところから、新たな制裁をくりた出していくことでしょう。そうみるのが、現時点では妥当と思われます。

ただし、米国の制裁が厳しくなればなるほど、イランによるテロは過激になり、ホルムズ海峡の危機は高まることになります。ここで、日本の胆力が試されることになります。

日本ではついつい忘れがちですが、イランでも米国でも政治には根底では宗教が大きく影響していることを忘れるべきではありません。それを忘れると、国際情勢が見えなくなります。このことを忘れた、マスコミや政治家が、珍妙な論議を繰り返すであろうことが、今から目に見えるようです。

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2019年7月9日火曜日

際限なきチキンゲームに、イラン、相次ぐ核合意破り―【私の論評】チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えている(゚д゚)!

際限なきチキンゲームに、イラン、相次ぐ核合意破り

イランは核合意で定められた低濃縮ウランの貯蔵上限や濃縮制限を相次いで破り、座して米制裁に甘んじることのない意思を鮮明にした。対立するトランプ大統領は「気を付けろ」と脅しまがいの捨て台詞を吐き、軍事的緊張の高まりで原油価格も上昇した。両者が突っ張り合いの姿勢を強めるチキンゲームはどこに向かおうとしているのか。

ウラン濃縮度引き上げを発表 するイラン政府高官

「瀬戸際戦術」の賭け

 イランが米国やイスラエルからの軍事攻撃を受ける危険を承知の上で、核合意を破る「瀬戸際戦術」という賭けに出た理由は明らかだ。このまま制裁を受け続ければ、イランの経済が悪化し、国家が破綻しかねないからである。最大の収入源である原油の輸出は現在、日量30万バレルまで急減、イランが核合意にこぎつけた2015年の3分の1のレベルまで落ち込んでいる。

 この結果、野菜の値段が5割も上がるなど物価の高騰、失業率の増加、通貨リアルの下落という3重苦は深まる一方。穏健派のロウハニ大統領に対する風当たりは高まり、とりわけ革命防衛隊や宗教勢力などの保守強硬派は「経済が好転するどころか悪化したのは元々核合意が失敗だったからだ」との批判を強めている。

 このため、イランは核合意の当事者である英独仏に対し、米国からの制裁による経済的な損失を補うシステムづくりを要求。欧州3カ国は米制裁をう回する「貿易取引支援機関」(INSTEX)を設立、このほど稼働した。しかし、欧州の企業は米制裁のとばっちりを受けることを恐れ、このシステムはうまくいかないとの見方が一般的。なによりも、INSTEXでは数億円ほどしか補填できないと見られており、イランが求める数千億円規模とは程遠い。

 こうした中、イランが強硬な措置に踏み切ったのは米国の制裁には屈しないという断固たる姿勢を内外に示すとともに、3カ国に対して核合意維持のため、米国を恐れず、経済的損失を補填する有効な手立てをさらに考えるよう迫ったものだ。米国の離脱で“半死状態”にある核合意が完全に崩壊すれば、イランが本格的な核開発に走り、結果として中東が不安定化し、欧州にとって好ましくない状況が生まれるという理屈だが、一種の脅しである。

 しかし、こうしたイランの「瀬戸際戦術」は危険な綱渡りであり、自らの首をさらに絞めかねない。3カ国はイランの合意破りに懸念を表明し、合意の枠内にとどまるよう要求したが、トランプ政権から制裁を加えられたイランへの同情論も消えつつある。3カ国がイランを見限り、米国の圧力路線に同調すれば、イランの孤立は一段と深まるだろう。

 マクロン仏大統領はこのほど、ロウハニ大統領と電話で会談し、全当事者による対話再開に向けた条件を15日までに探ることで合意したが、「これが最後のチャンス」(専門家)かもしれない。10日には、イランの核開発をめぐって国際原子力機関(IAEA)が会合を開催することになっており、イラン危機の行方を占う上でこの1週間が大きなヤマになるだろう。

核爆弾製造までの時間

 イランの合意破りは7月1日と7日に明らかになった。まず1日、イランは核合意で定められた低濃縮ウランの貯蔵上限300キロを超えたことを公表、さらに7日には「3.67%以下」に設定されていたウラン濃縮度上限をこの日のうちに超過させることを発表した。

 核分裂反応を示すウラン235は自然界にあるウランにはわずか0・7%しか含まれていない。この235の比率を高め、濃縮度90%になったものが核爆弾に使用できる。原子炉用は濃縮度5%、医療用アイソトープは濃縮度20%とされる。イランは今回、無制限の濃縮を明らかにしたものの、実際には5%程度までの濃縮に留めると見られている。段階的に要求をつり上げる余地を残すことと、米国やイスラエルからの軍事攻撃を回避するためだ。

 だが、濃縮度の上限を取り払ったからといってすぐに核爆弾が製造できるわけではない。専門家らによると、核爆弾1個を製造するためには低濃縮ウランが1200キロも必要になるという。現状で、イランが生産できる低濃縮ウランは1日1キロほど。つまり、これだけでも核爆弾保有には数年かかるという計算になる。

 核合意はそもそも、イランが合意を破って核開発に乗り出しても1年はかかるというスパンで設計された。1年あれば、核施設を軍事的に攻撃する時間や経済的に締め上げて、イランの核開発を阻止できるという思惑だった。現実には核爆弾製造にはこれ以上の時間が必要になるということだ。

打つ手乏しいトランプ

 トランプ大統領は1日の低濃縮ウランが上限を突破したという発表に対し「イランは火遊びをしている」と非難、その後「手痛いしっぺ返しを食らうだろう」「気を付けろ」などと軍事行動を仄めかしてきた。実際、6月20日の米無人偵察機の撃墜事件では、いったんはイランへの限定攻撃を承認し、攻撃10分前に撤回するという緊急事態も起きている。

 ペルシャ湾では、米国がイラン革命防衛隊の仕業とするタンカー攻撃も発生しており、いつ軍事的な衝突事件が起きてもおかしくない状態が続いている。しかし、トランプ大統領が望んでいるのはあくまでも限定的な攻撃だ。数カ所を攻撃し、「イラン側を沈黙させ、大人しくさせる」(ベイルート筋)ことが狙いで、全面戦争は全く望んでいないだろう。

 だが、大統領が限定的と想定して攻撃しても、イラン側は全面攻撃とみて報復する可能性がある。そうなれば、ペルシャ湾から地中海に至る一帯に戦線が拡大しかねない。湾岸にある米軍基地やイランの宿敵サウジアラビアやイスラエルなども巻き込んだ戦争になる恐れがあるということだ。

 特に米国が気にしているのは中東各地に広がるイラン支援の武装勢力や民兵の動きだ。米紙によると、5月14日のサウジのパイプラインへの無人機攻撃は当初、イランが支援しているとされるイエメンの武装勢力フーシ派による犯行と見られていたが、米国の最近の調査で無人機はイラクから発進したドローンであることが分かった。

 イラクのイラン配下の民兵による無人機攻撃と見られるが、中東各地には、こうしたイラン支援の武装勢力がおり、米国や米同盟国への攻撃がいつでも可能であることをパイプライン攻撃は示している。

 トランプ氏が全面戦争を望んでいないのは再選に向けた選挙が来年に迫り、米兵をつぎ込む戦争は支持を得ないと見極めているからだ。かといって追加制裁をしようにもほとんどやりつくしており、事実上打つ手がないジレンマ状況。「夏季シーズンに何かが起きる」(専門家)というチキンゲームの行方はどうなるのだろうか。

【私の論評】チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えている(゚д゚)!

米国は昨年のイラン核合意から離脱後、対イラン制裁を復活し、「史上最強」レベルに高めてきました。

主要産業の石油部門などへの制裁効果は大きいとされていますが、対話に向けてイランが譲歩する姿勢は見えません。

トランプ政権は昨年5月の離脱表明後、新たなイラン政策を発表。「ウラン濃縮の完全停止」や「中東地域でのテロ活動支援停止」など12項目を突きつけ、40年近く敵対してきたイランに「完全屈服」を求めました。

米国が特に標的としたのがイラン革命防衛隊です。最高指導部直属で、傘下企業は国内の通信関連市場をほぼ独占し、石油化学で3分の1、金融で15~20%のシェアを有するとされます。核・ミサイル開発やテロ支援の資金源とみて、外国の国家機関の一部として初めて「テロ組織」に指定しました。

イラン革命防衛隊の本質は中国人民解放軍と同じく「武装商社」である

石油部門などに対しては昨年11月に制裁を再開。猶予措置も今年5月に撤廃し全面禁輸に踏み切りました。ロイター通信によるとイラン産原油の輸出は昨年5月の日量240万バレルから今年6月に日量30万バレルに減少。同月には、米無人偵察機の撃墜など「敵意ある行為に最終的な責任がある」として最高指導者ハメネイ師を制裁対象に追加しています。

こうした米国の強硬姿勢を中国外務省の耿爽(こうそう)報道官は8日の記者会見で「危機の根源だ」と批判。イランが核合意の規定を超える濃縮度のウラン製造に着手すると表明したことに対して「遺憾」の意を表明しました。

ブログ冒頭の記事では、イランと米国のチキンレースが始まったとしていますが、果たしてそうでしょうか。イランによる制裁破りで、米国はいつでもイランを金融制裁の対象に出来ます。

一般にはあまり知られていないですが、貿易に代表される国際取引の多くは米国の通貨であるドルを介して行われています。そのため、国際取引の多くはドルを使わないと成立せず、従って国際取引の多くは米国政府やFRB(連邦準備制度)の監視を免れません。

そして米国政府やFRBは、「ドル利用禁止」等の経済制裁を通じて「望ましくない取引」を止めることができます。以下、現行の国際決済システムを概観し、米国政府やFRBの国際取引における影響力を確認します。


国債決済におけるドルを中心とするハブ構造

上図は貿易など国際決済の様子を簡略化した概念図です。ごく一般的な国際決済の例を挙げます。例えばロシアのケチャップ会社がトルコの農業企業からトマトを輸入するとしよます。

ロシアのケチャップ会社からトルコの農業企業への支払いがドルで決済される場合、代金はルーブルからドルに交換された後、ロシアのケチャップ会社の取引金融機関からトルコの農業企業の取引金融機関へと支払われます(その後、トルコの農業企業がドルをリラに交換して受け取る場合もあります)。

その際、国際資金決済には「カバー」と言われる仕組みがあり、決済を行なう金融機関どうしが通常は決済通貨の母国(ドルの場合、米国)にある金融機関に有する口座を介して決済資金の付け替えが行われています。

すなわちドル決済の場合、「ロシアのケチャップ会社の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」から「トルコの農業企業の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」に支払われることになります。トルコ・ロシア間の取引でありながら、決済は在米金融機関の間で行われているのです。

読者の中には「なぜルーブルを(ドルを介さず)直接リラに交換しないのか」といった疑問をもたれる方もいるでしょう。しかしルーブルからリラへの直接交換は、「ルーブル⇒ドル⇒リラ」という間接交換と比較した場合、容易ではないのです。

これは通貨に対する需給の問題です。「ルーブル⇒リラ」という直接交換が成立するためには、その反対取引となる「リラ⇒ルーブル」取引も必要となります。つまり、「ルーブル⇒リラ」あるいは「リラ⇒ルーブル」の取引が成立するためには、双方向の取引が常時相当の規模で行われているような、厚みのある「リラ・ルーブル間の外国為替取引市場」が必要なのです。そしてそのような市場が存在しない場合、上図で示したように、リラとルーブルはドルを介して決済されることになります

このように多くの国際決済は実は「ドルを介して」行われています。そして多くの場合、ドルを介した取引のほうが、マイナー通貨間の直接交換よりも、手数料が少なく済む場合が多いです。なぜならドルが絡む外国為替市場では相当額の取引が行われているため、「ドル以外の通貨⇒ドル」「ドル⇒ドル以外の通貨」2つの取引の手数料を合わせても直接交換した際の手数料を下回るからです。このような手数料の安さも「ドルを介した国際決済」の優位性のひとつです。

そして政治的に重要なのは、この「ドルを介した国際決済」というのが、上図に示したとおり米国内の決済システムを通じて行われていることです。米国政府やFRBは、米国内の銀行・金融機関の取引を厳しく管理・監督しています。従って、「ドルを介した国際決済」は米国内の決済システムを通じて全て米国政府やFRBの知るところとなっています。

そして米国政府やFRBが望ましくないと判断した取引は、「ドル利用禁止」といった手段を使って差し止められることになります。つまり「ドル利用禁止」とは事実上「貿易禁止」と同じ意味を持つのです。

このように、「ドルを介した国際決済」という制度を通じて、米国政府やFRBは世界全体の取引を監視し、必要に応じて望ましくない取引を止める権力を有しています。尚、米国の財務省には金融犯罪を担当する次官(Under Secretary of the Treasury for Terrorism and Financial Intelligence=テロリズム金融犯罪情報分析担当次官)が存在しますが、対ロ制裁でよく名前が挙がるOFAC(米国財務省外国資産管理室)は正にこの次官が管轄しています。

以上、「ドル利用禁止」が持つ意味の大きさを説明しました。一方、最近は中国経済の台頭、米国経済の停滞、米国による経済制裁の多用を受けて、いわゆる「ドル離れ」が進むといった論調が多くみられます。

確かにドル決済の強みである市場の厚みは米国経済の大きさによるもので、米国経済が衰退すればこの相対的優位は長期的には揺らぐかもしれないです。しかし、ドル決済を支えているのは市場の厚みだけでなく、ドルを決済する米国内決済システムの安定性や利便性、透明性による部分も大きいです。このように一定の厚み・安定性・利便性・透明性を併せ持つ市場が、米国以外に新たに出現するとは中期的には考えにくいです。

実際、IMFが1969年に国際準備資産としてSDR(Special Drawing Rights:特別引出権)を創設して50年近く経過しますが、決済手段として使えないSDRの普及は極めて限定的です。米国経済そのものの先行きは別にして、ドル決済の優位性と、そこから得られる情報を通じた米国経済制裁の優位性は、当面揺るがないと考えるのが自然です。

このままイランが制裁破りをすれば、米国は武力行使の以前の段階で、種々の金融制裁を実施し、さらに最終的には米国の「ドル使用禁止」という切り札により、イランが崩壊して終わることになります。

これは、中国、北朝鮮とて同じことです。ドル決済ができなければ、お手上げになります。古代ですら、イランは海外との取引をしていたはずです。そのイランが、現代では海外と取引がほとんどできなくなれば、古代以前の石器時代に戻るしかなくなります。勝負は最初から決まっています。

古代からのイランの輸出品「ペルシャ絨毯」

ただし、米国が一足飛びにイランに対して本格的な金融制裁をしてしまえば、イラン側も必死になり、それこそ破れかぶれで、テロ攻撃、イスラエル攻撃などを実施することも考えられます。だから、米国としてはそれをする前の様子見をしているというところでしょう。イランはイランで、どこまで制裁破りをすれば、米国がどのような挙動に出るのか見極めるために、いろいろ実施しているというところでしょう。

現状の制裁でも、時間が経てば、イランはかなり疲弊します。そこで、最後の手段として本格的金融制裁をするかしないかを決定するでしょう。これは、中国に対しても全く同じです。チキンゲームの最終段階は米イラン双方とも最初から見えているのです。

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タンカー攻撃、イラン直接関与は考えにくい 日本主導で対策枠組みを 山田吉彦東海大教授(海洋政策)―【私の論評】イランは一枚岩ではないことを忘れるべきではない(゚д゚)!


2018年5月14日月曜日

なぜイスラエルとイランはシリアで戦っているのか 800字で解説―【私の論評】イランの核武装で中東に新たな秩序が形成される?

なぜイスラエルとイランはシリアで戦っているのか 800字で解説

シリアでイラン高官が殺害されたことを受け、その高官の墓でイスラエル国旗を燃やす
準備をするイラン人抗議者。2015年撮影

イスラエルがシリア国内のイラン関係施設を爆撃し、2つの強力な敵対国が衝突する恐れが高まっている。その背景を解説する。

イスラエルとイランはなぜ敵対しているのか

1979年にイラン革命が起こり、イスラム教強硬派が権力を掌握して以来、イランの指導者はイスラエルの排除を訴えてきた。イランはイスラエルのことを、イスラム教支配地域を違法に占拠する者と位置づけ、同国の存在権を否定している。


これに対してイスラエルはイランを、イスラエルの存在に対する脅威とみなし、イランは核兵器を得てはならないと力説してきた。イスラエルの指導者はイランの中東における影響力拡大を恐れている。

なぜシリアは巻き込まれたのか

隣国シリアが2011年以来の内戦で荒廃していく様子を、イスラエルは不安を持って見守ってきた。

シリア政府と反体制派の戦闘から、イスラエルは距離を置いてきた。

ゴラン高原のイスラエル入植地を守るイスラエル軍人。シリアとの境界付近で

その一方で、数千人の民兵や軍事顧問を派遣してシリア政府を支援するイランの役割は、日増しに大きくなっている。

イスラエルは、自分たちの隣国で、かつ自分たちを脅かすレバノンの武装勢力と、イランの関係も気にしている。イランが密かに、レバノン武装勢力に兵器を送ろうとしているのではないかと懸念しているのだ。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランがシリア領内に基地を建設することは認めないと繰り返し述べてきた。イスラエル攻撃の拠点に使われる可能性があるためだ。

それゆえ、イランがシリア国内で存在感を増すにつれ、イスラエルはシリア内イラン施設への攻撃を激化させているのだ。



イランとイスラエルは実際に戦争状態となったことがあるのか

いいえ。イランは、レバノンの武装勢力ヒズボラやパレスチナの軍事組織ハマスなど、イスラエルを標的にする組織を長い間支援している。しかし、直接的な戦争はイランとイスラエル両陣営に大規模な破壊をもたらすだろう。

イランは長距離ミサイルを備蓄しており、シリアとイスラエルの境界線付近には重武装の協力組織もいる。

イスラエル軍は強力で、核兵器も保有していると言われている。米国の強力な支援も受けている。

(英語記事 Why are Israel and Iran fighting in Syria, in 300 words

【私の論評】イランの核武装で中東に新たな秩序が形成される?


イランの核問題に関する最終合意として知られる包括的共同作業計画(JCPOA)は、歴史上もっとも大きな問題を内包する軍備管理合意の一つです。この合意ではイランがウラン濃縮をする権利だけでなく、ウラン濃縮を産業化する権利さえも認められています。

研究・開発施設の建設も許容され、検証・査察制度も実質的に骨抜きにされています。つまり、イランは経済制裁の解除を手にするだけでなく、核開発を正統化することに成功したのです。

ワシントンでは「イランの影響力を押し返せば中東に秩序を取り戻せる」と考えられているようですが、これは間違っています。むしろ、今後の持続可能な中東秩序にとって、イランが必要不可欠の存在であることを認識しなければならないでしょう。

中東の同盟諸国にはイランをアラブ世界から締め出す力はなく、仮にそうできたとしても、イランが残した空白を埋めることはできません。結局、中東で大きな問題が起きれば、アメリカは介入せざるを得なくなります。対イラン強硬策を続けても、イランの影響力を低下させることはなく、むしろ中東におけるロシアの影響力を拡大させるだけになることが予想されます。

イランの核兵器開発をめぐる問題の多くは、テヘランが核開発を試みているからではなく、イスラエルが核を保有していることに派生しています。イランが核武装すれば、他の核武装国がそうするように、相互抑止環境が形作られます。

これまでのところ、核武装国同士の全面戦争は起きていません。イランが核武装に成功すれば中東で抑止状況が生まれ、中東により安定した秩序が生まれることになるでしょう。イランの核武装化は最悪ではなく、最善のシナリオかもしれないのです。

このようなことを言うと、日本の特に頭がお花畑の人々は、何を語っているのか全く理解されないかもしれません。

しかし、以下の事実を知ればお花畑の人は無理でも、まともな人ならば考えが変わるかもしれません。

以下にイスラエルがいかに世界有数の保有国になったかを掲載します。

米国はイランの核開発を激しく批判し、軍事侵攻も否定していません。自らが世界最大の核兵器保有国だということを忘れ、中東にはイスラエルという世界有数の核兵器保有国があることを無視した説得力のない主張です。

イスラエルはNPT(核不拡散条約)に加盟していません。イランはNPTのルールの中で曲がりなりにも査察を受けてきたにもかかわらず、激しく批判され、制裁されてきたのですが、イスラエルはお咎めなしです。

米国がイスラエルの核開発に気づいたのは1958年のことです。CIAが飛ばした偵察機U2がネゲブ砂漠のディモナ近くで建設中の施設を発見したのですが、担当者は原子炉の疑いがあると判断しました。

偵察機U2

そこで、画像情報本部の責任者だったアーサー・ランダールはドワイト・アイゼンハワー大統領に対し、ディモナ周辺の詳細な調査を行うように求めるたのですが、それ以上の調査が実行されることはありませんでした。後に、施設はフランスとの秘密協定に基づいて建設された2万4000キロワットの原子炉だということが判明しています。

また、イスラエルの科学者は1960年2月にサハラ砂漠で行われたフランスの核実験に参加していますが、この直後にイスラエルは原爆を手にしています。1963年になると、イスラエルとフランスは共同で核実験を南西太平洋、ニュー・カレドニア島の沖で実施したのですが、両国の関係は1967年の第3次中東戦争で悪化、核開発の協力関係も崩れました。

フランスと入れ替わりで登場してきたのが南アフリカです。1968年に両国は核開発に関して協力することで合意し、イスラエルはウランを入手するかわりに核技術や兵器を提供することになりました。

米国の研究者、サーシャ・ポラコフ・スランスキーは書籍の中で、1975年に南アフリカの国防大臣だったP・W・ボタとイスラエルの国防大臣だったシモン・ペレスが会談、イスラエルが南アフリカに核弾頭を提供することで合意したことを明らかにしています。

その後、両国の関係は深まったようで、1976年1月に南アフリカはイスラエルのテルアビブに大使館を開設、同年4月には南アフリカのジョン・フォルスター首相がイスラエルを訪問しています。

勿論、こうした動きを米国が知らなかったとは思えないですが、ソ連も気づきました。1977年8月、ソ連のレオニド・ブレジネフ書記長がカーター米大統領に対し、カラハリ砂漠で南アフリカが核実験を準備している証拠をコスモス衛星がつかんだと警告、この話はイギリス、フランス、そして西ドイツにも伝えられました。その直後、アメリカの衛星もカラハリ砂漠で地下核実験の準備が進んでいることを確認しました。

カーター大統領(前列左)とブレジネフ書記長(前列右)

この実験は米ソなどの圧力で中止になりましたが、1979年9月にはアメリカのベラ衛星が南インド洋、南アフリカの近くで強い閃光を観測、CIA(中央情報局)やDIA(国防情報局は「90%以上の確率で核爆発だ」と判断しました。

ところが、ベラの情報だけでなく、無線通信の傍受内容、イスラエル国防相だったエツェル・ワイツマンの南アフリカ訪問などの事実をカーター政権は公表していません。ベンメナシェによると、南インド洋での実験で使用された核兵器の運搬手段は175ミリ砲でした。また、1981年にイスラエルはインド洋で水爆の実験を行っています。

そして1986年10月、イギリスのサンデー・タイムズ紙がイスラエルの核施設で働いていた技術者の証言を写真付きで報じました。その技術者がモルデハイ・バヌヌです。

バヌヌはイスラエルが保有する核弾頭の数を200発以上だとしていましたが、イスラエルの軍情報部の幹部だったアリ・ベンメナシェは1981年で300発以上の原爆を保有、この年には水爆の実験にも成功しているとと主張、また1977年から81年までアメリカの大統領を務めたジミー・カーターは150発という数字を示しています。

イスラエルの核兵器の実情を世界に伝えたモルデハイ・ヴァヌヌ

バヌヌの告発があるまで、アメリカのCIAやDIA)はイスラエルが保有する核弾頭の数を24から30発と推測していたといいます。現在でもこの数字に若干上乗せした数を主張している人もいるようですが、堅めにみて百数十、おそらく数百発は持っていると考えるべきだでしょう。ともかく、世界有数の核兵器保有国です。

記事が掲載される前、バヌヌはイタリアでイスラエルの情報機関によって拉致されました。大きな箱に押し込められ、船でイスラエルへ運ばれ、裁判にかけられています。拉致したイスラエル政府が制裁されることはないです。1988年3月に懲役18年の判決を受けています。

2004年にバヌヌは出所したのですが、外国人と接触したという理由で2007年7月に懲役6カ月を言い渡され、再び収監されています。そして2010年5月、また収監されています。理由は同じです。どうしてもイスラエル政府はバヌヌの口を封じておきたいようです。

イスラエルが世界有数の核弾頭保有国であり、アメリカが核兵器の開発や核物質の入手などを容認してきた事実を語られれば、イランを批判しにくくなります。あるいは、公表されていない秘密がまだあるのかもしれません。

これだけの核を有する、世界有数の核保有国イスラエルですから、中東では他国より強いのは当たり前といえば当たり前なのかもしれません。

まさに、先にも述べたように、イランが核武装に成功すれば中東で抑止状況が生まれ、中東により安定した秩序が生まれることになるでしょう。イランの核武装化は最悪ではなく、最善のシナリオかもしれないのです。

無論、米国としては、イスラエルやイランが、中距離核弾頭をはるかえにこえて、それこそ北朝鮮のようにICBMを所有し、米国も標的にしうるようになることは絶対に許さないことでしょう。

トランプ大統領は、これは許さないまでも、意外とイランの核保有を認めるかもしれません。

以前イラクに関しては、米国はアサド政権を完璧倒すことはしないであろうこと掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる―【私の論評】今後の攻撃はアサド政権を弱体化させ、反政府勢力と拮抗させる程度のものに(゚д゚)! 
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、ここではルトワックによる米国のシリア対応について掲載しました。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、ルトワックはイラクのアサド政権を米軍が攻撃して崩壊させたとしても、結局反政府勢力が反米政権を樹立するだけで米国の勝利はないといいます。

であれば、アサド政権と反政府勢力を拮抗させておき、アサド政権側が強くなれば、反政府勢力に武器を供与するなどして、これを強化し、逆に反政府勢力が強くなれば、武器供与を中止して、両勢力を拮抗させておくのが、米国としては最上の策であるとしています。

無論、現在ではシリアにロシアが関与したり、イランの軍事基地が設置されているなど、かなり複雑化していますが、それでもロシアやイランが恒久的にイラク内に踏みとどまり、アサド政権をすぐに勝利に導き傀儡政権することができるかといえば、それほど力があるわけでもありません。

現在でも、米国がアサド政権と反政府勢力を拮抗させておくという考え方は、良い選択であると考えられます。

この拮抗策を中東全域で行うということも十分考えられます。イスラエルだけが、世界有数の核保有国になっていることも、中東の状況を悪化させる大きな要因となっています。

これで、イランが核保有国になれば、イスラエルと拮抗し、新たな秩序が形成され中東で大規模な戦争が起こることもなくなる可能性が高いです。

米国が核合意から抜けたことを機にイランも抜ければ、イランは核開発を進めることができます。そうして、イスラエルと拮抗すれば、米国が介入しなけばならいほどの大きな問題が中東に起こらなくなるようになる可能性が高いです。

現状の状態をそのまま継続し、イスラエルがイランを本格的に攻撃し、本格的な戦争になったとしたら、場合によっては米国も介入しなければならないことも考えられます。

上記で述べたイランの核開発による、イスラエルとの拮抗は、大いにあり得るシナリオです。トランプ大統領は意外とこれを狙っているかもしれません。トランプ氏が、大統領選のときに日本の核武装について言及したことを思い出します。

いずれにしても、北朝鮮の問題が解決しないうちに、イランの核武装許容などということはないでしょう。そんなことをすれば、金正恩に核武装の段階的放棄などに格好の口実を与えてしまうことになります。

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