2020年1月5日日曜日

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」―【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」

トランプ米大統領の指示で殺害されたイランのソレイマニ司令官を悼み、デモを行うテヘラン市民


 米国とイランの緊張がさらに高まっている。イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガーセム・ソレイマニ司令官が米軍に殺害された現場となったイラクの首都バグダッドで4日、米大使館近くにロケット弾4発が撃ち込まれたのだ。一方、米政府は「ソレイマニ氏=対米テロの首謀者」と認識しており、米国内にはドナルド・トランプ大統領の判断を支持する声も多い。トランプ氏は同日、報復への徹底抗戦を警告した。日本の左派メディアの「反米」報道だけでは、状況を見誤りそうだ。

 「米国に死を!」

 バグダッドで4日行われたソレイマニ氏の葬列の行進開始に合わせて、市民数千人が街頭で弔意を示す一方、こう反米色をあらわにした。

 こうしたなか、バグダッド中心部の米大使館近くなど3カ所に4日、ロケット弾計4発が撃ち込まれた。死者は確認されていない。犯行声明は出ていない。イランはイスラム教シーア派の大国だが、隣国イラクにもシーア派は多数いる。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐(ふくしゅう)」が待っていると米国に警告している。中東地域の米関連施設が攻撃目標となるとの見方が強い。

 これに対し、米国の理解は違う。

 トランプ氏は、攻撃に踏み切った根拠について、「ソレイマニ氏が、イラクとシリア、レバノン、中東にいる米外交官と米軍将兵を今にも攻撃しようとしているとの確度の高い情報があった」「攻撃は戦争を阻止するためだ。戦争を起こすためではない」「米国民を守るために、すべての措置を講じる」と声明(3日)で説明した。

 さらに、トランプ氏は4日のツイッターで、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告した。米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めている。

トランプ大統領

 日本の左派メディアは、ソレイマニ氏について「イランの国民的英雄」「ハメネイ師に次ぐナンバー2の実力者」などと伝えているが、これだけでは日本人をミスリードする危険性がある。

 米CNN(日本語版)は4日、ソレイマニ氏が率いた「コッズ部隊」を「米国からは外国テロ組織と見なされている」とし、「国防総省は、ソレイマニ司令官と指揮下の部隊が『米国や有志連合の要員数百人の殺害、数千人の負傷に関与した』としている」と伝えた。

 英BBC(同)も同日、「米政府からすれば、ソレイマニは大勢のアメリカ人を死なせてきた、血染めの張本人だった」と解説した。

 ともかく、日本がエネルギーを大きく依存する中東の情勢が緊迫しているのは間違いない。

【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

日本メディアにはソレイマニがさも立派な人物だったと強調する記事が多いようです。そこまでいかなくとも、あたかも先進国などのまともな軍隊の司令官のような扱いをするのが多いようです。

それを読んだ一般人はそんな立派な人物を殺したトランプは愚かだ、トランプのせいで戦争が始まると考えるのではないかと思います。ソレイマニが最恐テロリストである事実は、ほとんど指摘されていません。

イランではヒジャーブをとった女性が禁錮刑となり、同性愛者が処刑され、11月に開始した反体制デモ参加者2000人近くが革命防衛隊に殺害されています。

私も一昨日、このブログの記事で「ソレイマニ司令官」という表現をしてしまいましたが、無論ソレイマニは、イラン正規軍の司令官でも、ましてや先進国の正規軍の司令官のような存在でもないので、この表現は良くなかったと反省しています。「革命防衛隊というテロリストのリーダー」あたりが穏当な表現だったと思います。

さて、ソレイマニ氏殺害に続き、上の記事にもあるように、トランプ大統領は、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告しています。さらに、米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めているとあります。

では、米国とイランの対立が戦争にまで拡大するかといえば、そのようなことはないと思います。

そもそも、米国にとっては中東はさほど重要ではありません。それを示すデータなどを以下に掲載します。以下に中東の名目GDPを掲載します。


これを見ると、サウジアラビアがトップであり、石油で儲けた王族などがイメージされ、さもありなんと思いがちですが、サウジアラビアのGDPは、昨日の記事でも掲載したように、世界で18番目です。

ところが、昨日もこのブログで述べたように、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

ちなみに、サウジアラビアのGDPの規模は日本の県と比較すると、ほぼ福岡県相当です。

無論、経済の大きさだけで、米国にとっての中東の重要度を推し量ることはできませんが、それにしてもこの程度ということを認識しておくべきです。

では、なぜ米国が中東をかつてはかなり重視して、米国中央郡を中東に配置していたかといえば、やはり中東が世界最大の石油の輸出国だったからです。そうして、米国は石油輸入国だったからです。

ところが、この状況も昨年から変わりました。米エネルギー情報局(EIA)が昨年11月29日発表した統計で、9月の米国の原油・石油製品の1日当たりの輸出量が、輸入量を上回ったことが分かりました。シェールオイルの生産増が輸出を押し上げました。米ブルームバーグ通信によれば、単月で純輸出国となるのは政府の記録が残る1949年以来、70年間で初めてです。

原油市場では、米国によるシェールオイル増産が相場の押し下げ要因になっています。一方、中東地域への依存度が低下することで同地域に対する米国の関与が薄まり、地政学的なリスクが高まる恐れもあります。
9月の輸入は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やペルシャ湾地域などからの分が大きく減り、前年同月比約12%減に落ち込んだ。これに対し輸出は約18%増となり、1日当たりで8万9000バレルの輸出超過となりました。

この傾向は続き、米国は2020年には年間でも原油・石油製品の純輸出国になる見通しです。エネルギー市場で米国の存在感が高まり、原油価格を下押しする圧力になります。米国の中東への依存が減り、トランプ政権の外交戦略にも影響する可能性があります。

米シェールオイルの最大鉱区パーミアン盆地にある原油貯蔵タンク。米テキサス州

ただし、中東に関しては、争乱の耐えない地域であることや、米国や同盟国に対するテロを目論む組織も多数存在することから、米国が全く関与しなくなるということはないでしょう。

さらには、トランプ大統領の支持基盤である米国福音派は、イスラエルを守ることは米国の使命であると考えているようで、この面からもトランプ大統領はこれを疎かにできないという背景もあります。

ところが、昨日も述べたように、今や中国のGDPは米国に次いで第二位で、一人あたりのGDPは未だ中進国の中でも低いレベルなのですが、中国共産党は、その全体の経済力を自由に使うことができるということで、現状では、世界で唯一米国に経済的にも、軍事的にも脅威を与える存在です。

であれば、昨日このブログでも掲載したように、やはりトランプ政権は、中国に対峙することを最優先順位においていると考えるべきです。

米中の貿易交渉第一次合意の結果について、米国は監視を続け、3ヶ月後(今年3月)には判断を下します。これを過ぎでも、中国が合意内容を守らない場合は、米国は無論対中国制裁を上乗せすることになります。それでも、守らなければさらに厳しい制裁を課すことになるでしょう。

それでも、WTOに加盟した中国が、体裁だけ整えて結局約束を守らず、WTOそのものを無意味にしてしまったことを米国は悔いています。

今回米中貿易協定を中国が結局反故にした場合、米国は思い切った制裁手段に出ることが予想されます。一つは、かつてなかったようなほどの大規模な金融制裁です。もう一つは、見せしめのために、北朝鮮に軍事攻撃を仕掛けることです。

昨日も述べたように、北への軍事攻撃も、全面戦争にはならないでしょうが、それにしても金正恩ならびに幹部の殺害もしくは捕獲と、核施設の破壊はするでしょう。どの程度の破壊になるかは、未知数ですが、少なくとも長距離ミサイルは確実に破壊するでしょう。

これを実行する可能性は十分あります。そうなると、習近平とその取り巻きにはかなりの脅威を与えることができます。

ただし、これも今年の3月を過ぎてすぐということでないでしょう。北朝鮮は中国の干渉を嫌っているため北朝鮮とその核が、朝鮮半島全体への中国の浸透を防ぎ、結果としてバランスが保たれてきました。そのバランスが崩れるか、あらかじめバランスが崩れることが予想された場合は、米国は躊躇なく北朝鮮に武力行使するでしょう。それが、年内になる可能性もあります。

いずれにせよ、米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらないでしょう。これが変わらない限り、習近平と中共幹部は枕を高くして寝ることはできないでしょう。

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