欧州議会(European Parliament)は29日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)協定案を承認した。議場では議員らが別れの歌を合唱するなど、感情的な光景が繰り広げられた。
英国は、時にぎこちない状態に陥りながらも、半世紀にわたりEUの一員としての立場を維持。直近の約3年間は緊迫した離脱協議を続けてきたが、ベルギー時間の2月1日午前0時(日本時間2月1日午前8時)、ついにEUを離脱することとなる。
欧州議会の議員らは賛成621、反対49で離脱協定案を承認。英国は今後、EUの各組織から離脱するものの、今年末までの移行期間中はEUの規則の大半に従うことになる。
投票後、議員らは、別れの曲であるスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne、日本では『蛍の光』として知られる)」を合唱した。
欧州委員会(European Commission)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は英作家ジョージ・エリオット(George Eliot)の言葉を引用し、「われわれは別れの苦しみの中でのみ、愛の深さを見つめる」と表明。さらに「われわれはこれからもずっとあなたを愛する。遠く離れることは決してない。欧州よ永遠に」と述べた。
議員の多くは、離脱協定案に賛成票を投じるのはブレグジットを支持するからではなく、合意なき離脱による混乱を回避するためだと言明。欧州議会のブレグジット問題対策グループ(BSG)を率いる元ベルギー首相のヒー・フェルホフスタット(Guy Verhofstadt)議員は、「きょう反対票を投じることでブレグジットを阻止できるならば、私は真っ先にそう勧めるだろう」と語った。
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しかし、EUから離脱すると、これらを可能にしてきたEU側との協定が無効になります。さらには、EUが日本などと結んでいる貿易協定の枠組みからも締め出されることになります。
したがって、英国は、現状のような自由な貿易・投資の環境を維持しようとすれば、EUとの間はもちろんのこと、米国や日本とも新しい貿易協定を結ばなければならないのです。
自由貿易協定は、特定の国や地域の間で、関税を下げたり投資などに関する規制をなくしたりすることで、貿易・投資の自由化を進めるための協定です。こうした協定を結ぶ交渉には、数年はかかるとも言われています。
日本とEUとの経済連携協定(EPA)は、2018年に調印し、2019年2月1日の午前0時に発効しました。こ場合は、交渉開始までに3年半くらいかかりました。例えば、自動車。日本の場合、すでに自動車関税はゼロだったので、EU側は『自分たちばかりが関税を下げるよう要求され、日本側に譲歩させるものがない』として、交渉を拒んでいました。
2018年7月17日 日欧EPA調印 |
EUは議論の中で、自動車関税を下げられないのであれば、非関税障壁と呼ばれる日本特有のさまざまな規制を緩和してほしい、日本側が先に、ある程度の規制緩和をやってくれないと交渉には入らないと言ってきたりもしました。交渉が始まる前にこういうやり取りがあったのです。
過去に行われた貿易に関する交渉と、単純に比較することはできませんが、交渉を担った日欧EPAの場合には、交渉の正式開始から妥結まで5年近くかかりました。
さらに、交渉そのものにも時間がかかります。どのような交渉でも、相手の言い分をすべて飲めばすぐにまとまります。しかし、相手の言い分ばかり聞いていては、協定を結ぶにあたって自国の国会に承認を求める際に、承認を得られなくなる可能性があります。合意の内容をバランスのとれたものにするため、当然ながら交渉には時間がかかります。
過去に行われた貿易に関する交渉と、単純に比較することはできませんが、交渉を担った日欧EPAの場合には、交渉の正式開始から妥結まで5年近くかかりました。
さらに、交渉そのものにも時間がかかります。どのような交渉でも、相手の言い分をすべて飲めばすぐにまとまります。しかし、相手の言い分ばかり聞いていては、協定を結ぶにあたって自国の国会に承認を求める際に、承認を得られなくなる可能性があります。合意の内容をバランスのとれたものにするため、当然ながら交渉には時間がかかります。
自由貿易協定に向けたイギリスとEUの交渉が、今後どのように展開するのか、現時点ではっきりと見通すことはできません。ただ、交渉が困難になるのは避けられなでしょう。
その要因の1つは、EUとは別に米国とも自由貿易協定の交渉を進めようとする英国が置かれる状況にあります。
この交渉は、イギリスにとって“踏み絵”を踏まされる交渉になることでしょう。仮に、開国がEUの要求をどんどん受け入れることになれば、米国との交渉が難しくなるでしょう。逆に、英国が米国と早く自由貿易協定を結ぶために、米国の要求ばかりを受け入れると、今度はEUとの交渉が難しくなるのでしょう。
例えば、すでに英国とEUの間で課題になった、塩素で洗ったチキンの扱いの問題があります。米国では、雑菌の繁殖を防ぐためにチキンを塩素で洗っていますが、EUでは、これは人体にとって有害だとして、輸入制限の対象になっています。英国が、この件で米国の要求を受け入れれば、EUは良い顔をしないでしょう。
これは、チキンに関することですが、当然のことながらこれは一例にすぎず、他にも様々な問題が山積みです。
このようなことを考えると、12月末までに自由貿易協定をまとめるのは、針に糸を通すような業だといえるかもしれません。移行期間内に妥結できなければ、期間終了後、直ちに関税や通関の手続きが復活することになり、「合意なき離脱」と同じ状況に陥ってしまいます。
英国とEUが交渉をまとめるには、これまでの完全に自由な関係から一転して貿易機会が失われるなど、互いに大きな痛みを伴います。その痛みに耐えきれなくなっときに、妥結するのことになるではないでしょうか。
離脱後の自由貿易交渉をめぐっては、日本もひと事ではありません。EU離脱後、イギリスがEUや各国とどのような交渉を展開するのか、目が離せない状況が続きます。
離脱後の自由貿易交渉をめぐっては、日本もひと事ではありません。EU離脱後、イギリスがEUや各国とどのような交渉を展開するのか、目が離せない状況が続きます。
日本としては、日欧EPAと同じような内容のEPAを英国と結ぶのか、それもと、英国がTPPに加入するのかという問題もあります。
離脱後、EUに代わる自由貿易市場を環太平洋諸国に求める考えは、メイ政権(当時)内(¥では2018年の初めから検証されていました。TPPでリーダーシップを取る安倍首相からの具体的なラブコールは、離脱派を勢いづかせたと思います。
安倍晋三首相は昨年12月13日午後、都内で講演し、環太平洋連携協定(TPP)に関し、英国がジョンソン首相のもと加盟するならば心から歓迎したいと述べました。米国離脱後のTPP交渉を踏まえ、日本は自由貿易の旗手として貿易ルールを作る側に回ったと指摘しました。
英国ジョンソン首相 |
英国にとっては、TPPは環太平洋の11ヶ国の貿易協定であることから、これらの国々と逐一貿易協定を結ぶとなると、上でも述べてきたように、交渉にとてつもない時間がかかることになりますが、TPPに加入するということであれば、これら11ヶ国と各々交渉することに比べれば、飛躍的に交渉の時間を短縮できると思います。
日本としても、英国がTPP加入の意思をみせれば、米国の再加入にもはずみをつけることができます。もし米国がTPPに加入すれば、英国はTPPに加入すれば、米国と単独でEPAを結ぶ必要もなくなるでしょう。
私としては、英国が加入し、その後米国も加入することにでもなれば、これは中国に対しても大きな牽制となりますし、日米英の絆が深まり、安全保障の面でも良い影響が生まれるものと期待しています。
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