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2020年1月30日木曜日

欧州議会、英EU離脱案を承認 議員らが惜別の大合唱―【私の論評】英国がTPPに加入すべき理由(゚д゚)!

欧州議会、英EU離脱案を承認 議員らが惜別の大合唱



欧州議会(European Parliament)は29日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)協定案を承認した。議場では議員らが別れの歌を合唱するなど、感情的な光景が繰り広げられた。

英国は、時にぎこちない状態に陥りながらも、半世紀にわたりEUの一員としての立場を維持。直近の約3年間は緊迫した離脱協議を続けてきたが、ベルギー時間の2月1日午前0時(日本時間2月1日午前8時)、ついにEUを離脱することとなる。

欧州議会の議員らは賛成621、反対49で離脱協定案を承認。英国は今後、EUの各組織から離脱するものの、今年末までの移行期間中はEUの規則の大半に従うことになる。

投票後、議員らは、別れの曲であるスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne、日本では『蛍の光』として知られる)」を合唱した。

欧州委員会(European Commission)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は英作家ジョージ・エリオット(George Eliot)の言葉を引用し、「われわれは別れの苦しみの中でのみ、愛の深さを見つめる」と表明。さらに「われわれはこれからもずっとあなたを愛する。遠く離れることは決してない。欧州よ永遠に」と述べた。

議員の多くは、離脱協定案に賛成票を投じるのはブレグジットを支持するからではなく、合意なき離脱による混乱を回避するためだと言明。欧州議会のブレグジット問題対策グループ(BSG)を率いる元ベルギー首相のヒー・フェルホフスタット(Guy Verhofstadt)議員は、「きょう反対票を投じることでブレグジットを阻止できるならば、私は真っ先にそう勧めるだろう」と語った。

【私の論評】英国がTPPに加入すべき理由(゚д゚)!

英国はこれまで、EUの「関税同盟」や「単一市場」に加わり、域内での貿易に関税がかからず、人や資本それにサービスが原則として自由に行き来できる状況を享受してきました。

しかし、EUから離脱すると、これらを可能にしてきたEU側との協定が無効になります。さらには、EUが日本などと結んでいる貿易協定の枠組みからも締め出されることになります。

したがって、英国は、現状のような自由な貿易・投資の環境を維持しようとすれば、EUとの間はもちろんのこと、米国や日本とも新しい貿易協定を結ばなければならないのです。

自由貿易協定は、特定の国や地域の間で、関税を下げたり投資などに関する規制をなくしたりすることで、貿易・投資の自由化を進めるための協定です。こうした協定を結ぶ交渉には、数年はかかるとも言われています。

日本とEUとの経済連携協定(EPA)は、2018年に調印し、2019年2月1日の午前0時に発効しました。こ場合は、交渉開始までに3年半くらいかかりました。例えば、自動車。日本の場合、すでに自動車関税はゼロだったので、EU側は『自分たちばかりが関税を下げるよう要求され、日本側に譲歩させるものがない』として、交渉を拒んでいました。

2018年7月17日 日欧EPA調印

EUは議論の中で、自動車関税を下げられないのであれば、非関税障壁と呼ばれる日本特有のさまざまな規制を緩和してほしい、日本側が先に、ある程度の規制緩和をやってくれないと交渉には入らないと言ってきたりもしました。交渉が始まる前にこういうやり取りがあったのです。

過去に行われた貿易に関する交渉と、単純に比較することはできませんが、交渉を担った日欧EPAの場合には、交渉の正式開始から妥結まで5年近くかかりました。

さらに、交渉そのものにも時間がかかります。どのような交渉でも、相手の言い分をすべて飲めばすぐにまとまります。しかし、相手の言い分ばかり聞いていては、協定を結ぶにあたって自国の国会に承認を求める際に、承認を得られなくなる可能性があります。合意の内容をバランスのとれたものにするため、当然ながら交渉には時間がかかります。

自由貿易協定に向けたイギリスとEUの交渉が、今後どのように展開するのか、現時点ではっきりと見通すことはできません。ただ、交渉が困難になるのは避けられなでしょう。

その要因の1つは、EUとは別に米国とも自由貿易協定の交渉を進めようとする英国が置かれる状況にあります。

この交渉は、イギリスにとって“踏み絵”を踏まされる交渉になることでしょう。仮に、開国がEUの要求をどんどん受け入れることになれば、米国との交渉が難しくなるでしょう。逆に、英国が米国と早く自由貿易協定を結ぶために、米国の要求ばかりを受け入れると、今度はEUとの交渉が難しくなるのでしょう。

例えば、すでに英国とEUの間で課題になった、塩素で洗ったチキンの扱いの問題があります。米国では、雑菌の繁殖を防ぐためにチキンを塩素で洗っていますが、EUでは、これは人体にとって有害だとして、輸入制限の対象になっています。英国が、この件で米国の要求を受け入れれば、EUは良い顔をしないでしょう。

これは、チキンに関することですが、当然のことながらこれは一例にすぎず、他にも様々な問題が山積みです。

このようなことを考えると、12月末までに自由貿易協定をまとめるのは、針に糸を通すような業だといえるかもしれません。移行期間内に妥結できなければ、期間終了後、直ちに関税や通関の手続きが復活することになり、「合意なき離脱」と同じ状況に陥ってしまいます。

英国とEUが交渉をまとめるには、これまでの完全に自由な関係から一転して貿易機会が失われるなど、互いに大きな痛みを伴います。その痛みに耐えきれなくなっときに、妥結するのことになるではないでしょうか。

離脱後の自由貿易交渉をめぐっては、日本もひと事ではありません。EU離脱後、イギリスがEUや各国とどのような交渉を展開するのか、目が離せない状況が続きます。

日本としては、日欧EPAと同じような内容のEPAを英国と結ぶのか、それもと、英国がTPPに加入するのかという問題もあります。



EU離脱を控えていた2018年10月英国に対し、安倍晋三首相が「環太平洋経済連携協定(TPP)参加を心から歓迎する」と英紙のインタビューで述べ、英国メディアで話題になっていました。

離脱後、EUに代わる自由貿易市場を環太平洋諸国に求める考えは、メイ政権(当時)内(¥では2018年の初めから検証されていました。TPPでリーダーシップを取る安倍首相からの具体的なラブコールは、離脱派を勢いづかせたと思います。

安倍晋三首相は昨年12月13日午後、都内で講演し、環太平洋連携協定(TPP)に関し、英国がジョンソン首相のもと加盟するならば心から歓迎したいと述べました。米国離脱後のTPP交渉を踏まえ、日本は自由貿易の旗手として貿易ルールを作る側に回ったと指摘しました。

英国ジョンソン首相

英国にとっては、TPPは環太平洋の11ヶ国の貿易協定であることから、これらの国々と逐一貿易協定を結ぶとなると、上でも述べてきたように、交渉にとてつもない時間がかかることになりますが、TPPに加入するということであれば、これら11ヶ国と各々交渉することに比べれば、飛躍的に交渉の時間を短縮できると思います。

日本としても、英国がTPP加入の意思をみせれば、米国の再加入にもはずみをつけることができます。もし米国がTPPに加入すれば、英国はTPPに加入すれば、米国と単独でEPAを結ぶ必要もなくなるでしょう。

私としては、英国が加入し、その後米国も加入することにでもなれば、これは中国に対しても大きな牽制となりますし、日米英の絆が深まり、安全保障の面でも良い影響が生まれるものと期待しています。

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2019年8月3日土曜日

韓国、RCEP会合で輸出管理に2回言及 世耕氏「関係ない提起」と反論―【私の論評】日本にとってRCEPなどどうでも良い、本命はTPPである(゚д゚)!

韓国、RCEP会合で輸出管理に2回言及 世耕氏「関係ない提起」と反論

RCEPの閣僚会合後、記者会見する世耕経産相=3日、北京

日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合が3日、北京で開かれた。終了後に発表された共同声明などによると、交渉対象の約20分野のうち、これまでの7分野に加えて電気通信・金融サービスなど3分野で新たに妥結した。一方、日本政府による半導体材料などの輸出管理強化に対して日韓が応酬する場面もあった。

 世耕弘成経済産業相は終了後に記者会見し「今までの会合の中ではかなり円滑に進んだ。次回の9月の閣僚会合が大きなヤマ場になる。年内妥結に向けて日本が交渉のリード役になりたい」と語った。

 世耕氏によると、韓国側は日本の輸出管理強化について閣僚会合で2回発言した。世耕氏は「まったくRCEP交渉と関係ない提起」に対して遺憾の意を示した上で「参加国の誤解」を招かないために、管理強化が安全保障を目的にした貿易管理の適切化であり、韓国が主張する世界貿易機関(WTO)違反ではないことや、世界のサプライチェーンに影響はないことを説明した。世耕氏と韓国側代表との接触は「まったくなかった」という。

 今後、韓国が態度を硬化させて日韓の関税交渉が難航する可能性もあるが、世耕氏は「日本側が影響させる意図はまったくない。もし韓国が影響させてRCEPが停滞すれば各国がどう思うか」と牽制した。

 中国の胡春華副首相は開幕式で演説し「強い政治的意志を積極的行動につなげ、年内妥結という目標に向けて揺るぎなく前進してほしい」と呼びかけた。

【私の論評】日本にとってRCEPなどどうでも良い、本命はTPPである(゚д゚)!

韓国は、RCEPの交渉で日本を非難しているようですが、そんなことはどうでも良いです。なぜなら、日本にとってはTPPのほうが本命中の本命だからです。

RCEP交渉自体は、いままで円滑に進んではきませんでした。交渉開始からすでに6年が経過しています。

北京で開かれたRCEPの閣僚会合=3日

物の貿易の自由化について、インドは関税の削減や撤廃に極めて後ろ向きです。知的財産権や電子商取引などのルール作りの交渉では、高いレベルのルールを求める日本、オーストラリア等に対して、中国やインドは反対しています。

WTOのドーハラウンド交渉が頓挫した大きな要因は、貿易の自由化をさらに推進し、25年前の1993年に合意されたルールを時代に合ったものにしようとする先進国に対して、途上国の大国を自認する中国やインドが消極的な態度をとり続けてきたことです。これらの国が参加するRCEPに、TPP並みのレベルは期待できません。

さらに、一定の労働基準や環境規制の遵守を要求し、これを緩めることによって自国の産業の競争力を高めようとする、いわゆる"底辺への競争"(race to the bottom)という行為に規律を課そうとする "貿易と労働" "貿易と環境" という分野、さらには補助金や規制によって保護される国有企業が外国企業よりも有利に競争できることになっていることに対する規律など、これまでWTOではカバーされず、TPP交渉で合意された重要な柱は、RCEP交渉の対象になってはいません。これらを交渉することに、中国は大きな困難を抱えるからです。

日本の政府やマスコミは、メガFTAであるRCEPの参加国のGDP規模の大きさを強調してきました。FTAの対象となる市場が大きくなることは事実ですが、GDPの大きさだけがFTAの価値を決めるものではないです。

ほとんど関税も削減しない、WTO以上のルールや規律は設定しない、という内容の乏しいFTAでは、いくら参加国のGDPが大きかったとしても現状に大きな変更を加えるものではありません。この意味からもRCEPはまともな協定にならない可能性が高いです。

さらなる問題は、複数のFTAが重複することによって、それぞれの関税、ルール、規則などが複雑に絡み合ったスパゲッティのように錯綜して貿易が混乱するという「スパゲッティボール効果」です。

からまったスパゲティー

TPP11と日EUのFTAは対象となる地域が異なるので、このような問題は生じないです。しかし、TPP11とRCEPの参加国には重複があります。スパゲッティボール効果を避けるためには、一つの大きなFTAに関係国すべてが参加することが望ましいです。

自由貿易の推進や新しいルールの設定の両面でレベルの高いTPPに、アジア太平洋地域の経済を統合すべきです。

米国のオバマ政権は、TPPを新しい通商・投資のルールを作る21世紀型の自由貿易協定だと誇らしげに語っていました。しかも、マスコミで報道されている内容と異なり、オバマ政権にとって、TPPは中国を排除しようとする仕組みではなく、この高いレベルの規律が適用されるアジア太平洋自由貿易圏に中国を取り込むための仕組みでした。

TPPにおいて、中国と同じ社会主義国でありかつ多数の国有企業を抱えるベトナムと交渉することで、国有企業に対する高いレベルの規律を作るという目論見でした。将来TPPが拡大すると、中国もこれに参加せざるを得なくなったことでしょう。そのときに中国に国有企業に関する規律を適用しようとしたのです。

知的財産権の保護もこれらの規律の一つです。残念ながら、トランプ政権はこの壮大な構想を理解できず、TPPからの脱退を表明しました。もっとも、中国に知的財産権の保護を行わせるという観点から、ようやくTPPの重要性に気付いたようです。ですから、少なくともトランプの次の大統領はTPPに参加することになるでしょう。

2017年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、環太平洋連携協定(TPP)
    からの正式離脱に関する大統領令に署名した

TPPに関心を示す国は多いです。メガFTAには参加しないと不利益を受けるので参加せざるを得ないというドミノ効果が働くからです。

韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、タイというアジアの国に加えて、コロンビアが参加の意思を表明しましたし、イギリスも関心を示しています。合意する見通しがなく、合意が得られたとしても質の高いFTAにはなりそうにないRCEP交渉に貴重な人的資源を割くよりも、日本政府はTPPの拡大に能力と資源を傾注すべきです。

かつて社会主義経済の中国のWTO加入交渉には15年を要しました。これほどではないにしても、TPP拡大のためには、単に加入の声掛けをするだけではなく、貿易の自由化の程度や各種の規制がまちまちである加入希望国について、どのような条件で加入を認めるかという交渉に多くの時間と労力を必要とするからです。

私は、中国は結局TPPには加入できないと思います。なぜなら、TPPが要求する水準を中国はとても受け入れられないからです。それを実行すれば、それこそ中共は崩壊するかもしれません。韓国も日本が韓国に対して貿易管理を強化しただけで、反発していることから、無理かもしれません。しかし、米国はおそらくいずれ入らざるを得ないでしょう。

なお、中共が崩壊した後の中国、もしくはこの地域に新たにできる国々全部もしくは一部は、加盟できるかもしれません。結局TPPは、中国包囲網となってしまうでしょう。

そうして米国が入り、メガFTAが拡大すればするほど、そのドミノ効果は大きくなります。アジア太平洋地域の国を巻き込んでTPPが拡大していくと、米国だけでなく、。日本はRCEPで実現しようとした以上のはるか上のことを実現できるのです。日本はこれからもどんどんTPPを拡大すべきです。

それにしても、トランプ氏は良いことをしてくれたと思います。米国が抜けたおかげて、日本がTPPのリーダー役をつとめることができたのです。

米国が旗振り役のTPPだとどうしても、米国の意向をかなり反映した貿易協定になっていた可能性が大きいです。しかし、日本がリーダーとなったことで、それはなくなりました。

米国の覇権主義を嫌う国々にとって、TPPは加入しやすくなったのは間違いありません。後で米国が加入したにしても、日本のリーダー的地位を脅かすことはできないでしょう。これは、覇権によらない、防衛協定として多くまともな国々とっては受け入れやすいものになったと思います。トランプ氏は着せずして、世界の自由貿易に大きな貢献をしたかもしれません。

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2019年1月19日土曜日

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制


TPP協定発効記念式典で各国の関係者と談笑する安倍晋三首相
(中央右)と茂木敏充経済再生担当相(同左)=19日午後、首相官邸

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加11カ国が19日、新規加盟の拡大を目指すことで一致したのは、米中による貿易戦争が激化する中で、世界経済の先行きに不透明感が強まっているからだ。広い分野の関税撤廃と高水準のルールを共有する“仲間”を増やすことで、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)する狙いだ。(大柳聡庸)

 現在、新規加盟に最も近いとされるのがタイ。近隣のベトナムに比べ農産品分野などで競争力が低下することに危機感を抱いているからだ。タイの加盟申請は総選挙後になるとみられる。2月末と想定されていた総選挙は延期の公算が大きいが、早ければ今年前半にも新規加盟に向けた交渉が始まる可能性がある。3月に欧州連合(EU)からの脱退を予定する英国も加盟に強い意欲を示す。

 TPPを離脱した米国の産品は関税が下がらず輸出競争力が低下するため、TPPに復帰を促す契機になる可能性がある。閣僚級会合で議長を務めた茂木敏充経済再生担当相は19日の記者会見で、「多くの国・地域の参加を期待している。米国も同様だ」と述べた。

 また、TPPは知的財産権の保護で模倣品などに対する厳格な規律をもうけるなど、高水準のルールを定めており、不公正な貿易慣行を続ける中国に対する抑止効果も期待できる。

 米中の貿易戦争は、中国による知財侵害に対し、米国が追加関税といった保護主義的な動きで対抗したのがきっかけだ。

 安倍晋三首相は会合で「不満が保護主義への誘惑を生み出し、国と国との間に激しい対立を生み出すが、私たちは時計の針を決して逆戻りさせてはならない」と述べ、米中の貿易戦争を念頭に、自由貿易体制の重要性を訴えた。

【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の発効後、初めて参加11か国の閣僚らが集まり、本日加盟国の拡大に向け共同声明を発表しました。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては、冒頭の記事にあるインドネシアやタイだけではなく、台湾、コロンビアといった国や地域が新規加盟に関心を示しています。「TPPは世界とアジア太平洋地域の経済・貿易の発展に重要な意義を持つ」(台湾)などと、新規メンバーの早期受け入れを求める声も上がっています。

中でも注目されるのが、3月末に欧州連合(EU)からの離脱を控える英国です。離脱後は、米国などEU以外の国々との貿易関係の強化が急務となりますが、メイ英政権は各国との自由貿易協定(FTA)締結に加え、TPPへの加盟に意欲を見せています。

英国メイ首相

フォックス国際貿易相は先月30日のTPP発効に際し、「(英国が)TPPに参加すれば、カナダや日本のような古くからの友人との強い経済的な結びつきを固めることになるだろう」とする声明を出しました。今月10日の日英首脳会談で安倍晋三首相は、英国がTPPに加盟意欲を示していることを歓迎しています。

加盟希望国に共通しているのは、巨大な経済圏内に入ることによる輸出拡大など経済的な恩恵への期待感です。また、TPPの枠内で新たな国際ルールの整備が進めば、自国が取り残されるという警戒感もあります。

一方、TPP加入の積極論と慎重論がせめぎ合っている国もあります。

「TPP参加で板挟みにある韓国」

韓国の英字紙、コリア・タイムズ(電子版)は今月上旬、同国でTPP参加の可否が割れていると報じました。

TPPに入らないことで加盟国と比べて貿易面で不利な立場に置かれる恐れがある一方、加盟すれば関税の引き下げで自動車など日本製品との激しい競争に国産製品がさらされるとの懸念を指摘。そのため韓国政府は「取引に積極的に参加すべきかどうか迷っている」のが現状だといいます。

TPPの最大の意義は、米国の保護主義的な動きや中国の不公正な貿易慣行を牽制(けんせい)できる可能性が大きいことです。これに関しては、以前のこのブロクにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
TPP12月30日発効 世界GDPの13%経済圏誕生へ―【私の論評】最終的にはTPPのルールを世界のルールに(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 トランプ大統領が「TPPは正しい考え方ではなく、我々は貿易でTPP以上の成果を得られる」とTPPを否定する理由は、関税自主権を行使して、中国などとの貿易不均衡を是正したいからです。昨年のアメリカの対中貿易赤字は3470億ドル(約40兆円)。これを関税などによって解消しようというのが、米国の対中貿易戦争です。 
「弱いアメリカ」がTPP参加国とともに中国経済に対抗する方針から、「強いアメリカ」として二国間交渉で中国に臨む方針に変わったということのようです。そうして、米国は実際に対中国貿易戦争を開始しました。これは、もうトランプ政権による貿易戦争の次元から、超党派の米国議会による経済冷戦の次元にまで高まっています。
昨年1月23日、トランプ米大統領は選挙公約通り、TPPからの正式離脱に関する大統領令に署名した

おそらく、中国の体制が変わるまで、かなり長い間、米国は対中国制裁をやめないどころか、あらゆる手段を講じて、中国を追い詰めるでしょう。 
中国は、アメリカを抜いて世界の覇権を握ることを目指していますが、まだ米国と全面対決できるほどの力はありません。 
米国が問題視している国際貿易機関(WTO)で規定されていない、知的財産権や技術移転要求については、日本は米国に協調できます。その手段として考えられるのがTPPの活用です。米国が中国に対して懸念していることのすべてはTPP協定でカバーしています。 
タイ、インドネシア、台湾、英国、コロンビアなどを加入させてTPPが拡大し、また米国がTPPに復帰するなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなります。その時、中国に知的財産権や投資についての高度な規定を課すことができます。努力すべきはTPP参加国の拡大です。 
ただし、中国はTPPに加入するということになれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化という構造改革を実施しなければなりません。これを実行しなければ、TPPには加入できません。 
この構造改革を実施することになれば、中国共産党は、統治の正当性を失うことになるでしょう。それは中共の崩壊を意味します。 
最悪、米国や中国がTPPに参加しない場合でも、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。 
この段階まで来ると、中国は中共を解体してもTPP協定を含むWTOに入るか、中共を解体せず新WTOにも入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国が待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。
米国が中国に対して懸念していることの全てはTPP協定がカバーしています。これは、当然米国も理解しているでしょう。だから、TPPから脱退したトランプも、良い条件が得られるならという留保を付けたにせよ、TPPに復帰してもよいという発言をしたのでしょう。

タイ、インドネシア、韓国、台湾、イギリス、コロンビア等を加入させてTPPが拡大し、また、米国がTPPに復帰して来るなら、TPPは巨大な自由貿易圏を形成することになります。そうなると、中国もTPPに参加せざるを得なくなるか、参加せず(参加することは中国社会の構造改革をすることを意味する)に米国の制裁を受け続け経済的にかなり弱体化し他国に対する影響力を失うことになります。

農地の視察をする習近平(中央)

いずれにせよ、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

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2019年1月7日月曜日

【社説】米国がTPP11発効で失った市場―【私の論評】トランプの次の大統領がTPPを見直す(゚д゚)!

【社説】米国がTPP11発効で失った市場

The wallstreet journal



 たとえ米国が動かなくとも、世界は動く。この表現は、貿易においては確かに真実だ。環太平洋経済連携協定(TPP)は、ドナルド・トランプ米大統領が離脱を表明した2年後、TPP11という新たな装いの下で年明けとともに11カ国で始動した。これによる最大の敗者は、米国の生産者だ。

 正式名称「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」、いわゆるTPP11は先週、カナダ、日本、メキシコ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポールの間で発効した。同協定は、全輸入品目の95%について加盟国間の関税を撤廃するもので、加盟諸国の国内総生産(GDP)の合計は世界全体の13%に相当する。TPP11はベトナムでは1月14日に発効し、ブルネイ、チリ、マレーシア、ペルーでも批准手続きが進められている。

 元々のTPPで規定されていた1000以上の項目は、20前後の項目を除いて全て、新たな協定に盛り込まれた。凍結された項目の中には、著作権の有効期間の延長、バイオ医薬品の特許保護期間を8年とすることなど、米国にとっての優先項目も含まれている。しかし、知的財産権に関する他の成果や、外国投資家の保護、国有企業に公平な競争条件を求める項目は、新協定に引き継がれた。

 米国の離脱にもかかわらず、加盟国は依然として大きな利益を得られる状況で、ピーターソン国際経済研究所によれば、世界でざっと1470億ドル(約16兆円)の実質所得の拡大が見込まれる。同研究所はマレーシアとシンガポールで2030年までにさらに3.1%と2.7%の実質所得の伸びを予想している。別の推計によれば、ベトナムからTPP11加盟国への繊維・アパレル輸出は30億ドル増えるとみられている。

 カナダは、米国がTPPに残留していた場合よりも大きなGDP押し上げ効果を得られる見通しだ。これは主に、日本の市場から追い出される公算が大きい米国の農家が犠牲になることで生じる。日本政府は通常、牛肉に38.5%の関税をかけており、米国にはこれが適用されるが、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアからの輸入品にかかる関税は9%に下がる。カナダ政府は結果として牛肉の総輸出が10%増えるだろうと予測している。

 米小麦協会のビンス・ピーターソン会長は先月ワシントンで、TPP11が発効すれば、日本で53%を占めている米生産者の市場シェアが、「直ちに崩壊する」恐れがあると述べていた。日本に輸出される米国産小麦の価格は、カナダ産や豪州産より1ブッシェル当たり40セント不利になる見通しだ。

 米国産豚肉にとっても、状況が良いとは言いがたい。2017年の欧州から日本への豚肉の輸出額は過去10年間で初めて米国からの輸出額を超えた。差し迫った日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効により、欧州は一層有利になる。米国から中国への豚肉の輸出も、トランプ政権が課した関税への報復措置として中国政府がかける62%の関税に直面している。

 トランプ大統領の貿易政策を支持する人々は、彼の関税措置が単なる短期的なコストであり、結果としてはより良い貿易取り決めにつながると主張している。しかし、TPPからの離脱は、それによってどの国からも貿易的な譲歩措置を得ることができなくなるため、市場の非効率による過度の経済損失(deadweight economic loss)となる。米国と日本は2国間貿易協定について改めて交渉を行うが、2国間協議よりも容易に、そしてはるかに迅速に日本市場を開放する道はTPPだった。

 新協定のTPP11はまた、他の参加諸国の内部変革にも拍車を掛けている。ベトナムは同協定の一環として外国小売企業に対する制限の緩和、金融部門に対する外国企業の投資上限引き上げを行っている。マレーシアはTPP11加盟国の銀行に対し、同国内での支店開設数を従来の2倍に拡大することを認める。

 米国のTPP離脱は近年の経済史上、最悪のオウンゴール(自殺点)の1つとなった。トランプ氏が残りの任期である今後2年間のうちに方針を再考することはありそうにないが、恐らく次の大統領はそうするだろう。

【私の論評】トランプの次の大統領がTPPを見直す(゚д゚)!

日米の貿易協議が早ければ2019年1月下旬にも始まります。日本政府は物品に限ったTAG(物品貿易協定)の交渉に限定したいのですが、トランプ政権はサービスその他重要な分野も含めた包括的なFTA(自由貿易協定)を目指しており、日米の思惑に違いがみられます。果たして日本のシナリオ通りの展開となるのでしょうか。

TAGにこだわる安倍政権の意図

18年9月26日の日米首脳会談で日米貿易協定の交渉入りを合意しました。しかし、日本政府が、共同声明の英文にもない「TAG」という造語を使ったことから、野党からは「TAGを捏造」と批判されることになりました。

日本政府が発表した共同声明には、「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」と書かれています。


このTAGへのこだわりに安倍政権の戦略的な意図が読み取れます。安倍首相も,「TAGは日本がこれまで締結した包括的なFTAとは全く異なる」と説明しています。

この2年間、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したトランプ政権が包括的な日米FTAの締結を日本に迫るなか、米国抜きのTPP11を主導した安倍政権は、日米FTA交渉には絶対に応じないと言い続けてきました。

しかし、二国間主義に基づき追加関税で脅しながら相手国に譲歩を迫るトランプ流の交渉術が一応の成果を上げ、それが多国間よりも二国間の交渉の方が米国に有利だというトランプ政権の主張を勢いづかせ、「米国のTPP復帰が最善」と主張する日本にとっては不都合な状況になりました。

結局、米通商拡大法232条(安全保障条項)に基づく米国の自動車・同部品の25%追加関税の対象から日本を除外させることが、安倍政権の優先課題となってしまい、TPPの問題を一時棚上げにして米国の要求を受け入れ、実質的な日米FTA交渉の開始に合意するしかありませんでした。TAGはその苦肉の策です。

TPPか日米FTAか、日米の思惑が錯綜するなか、日本は着地点に向けてどのようなシナリオを描こうとしているのでしょうか。玉虫色の日米共同声明には、さらに、「上記協定の議論が完了した後、他の貿易・投資の事項についても交渉」とあります。

安倍政権は、第1段階は関税撤廃などTAGに限定、第2段階で関税以外のルールづくりを目指すという2段階方式のシナリオを描いています。ただし、米国のTPP復帰を諦めていません。

深読みすれば、ポスト・トランプも睨みながら、第2段階のルールづくりで日米FTAの議論をTPP復帰問題にすり替えるチャンスを虎視眈々と狙うしたたかな戦略を考えています。それがまた、米国のTPP復帰を前提にTPP11(CPTPP)をまとめ上げた安倍政権の矜持といえるでしょう。

死角だらけの日本の通商シナリオ

表現がどうであれ、TAGは紛れもなくFTAです。関税撤廃などを米国だけの特別扱いにするのであれば、FTAを締結しなければ、WTO協定の最恵国待遇原則に違反します。TAGに関する日本側の最大の懸念材料は、米国がTPP水準を超える農産物の市場開放を日本に要求してくることです。その懸念を払拭するため、「農産物の市場アクセスはTPPの水準を超えない」との文言が合意文書の了解事項として盛り込まれました。

さらに、18年7月の米EU合意と同様、交渉中は米国が日本に対して自動車・同部品の25%追加関税を課さないようにするため、「交渉中は、共同声明の精神に反する措置の発動を控える」という表現で米国の確約を得ました。これら2つの約束を取り付けたという意味で、安倍政権にとっては米国の圧力下で満点に近い合意を得たと言ってよいでしょう。

しかし、今後の展開は予断を許さないです。その後「TPP以上の譲歩を日本に要求する」というパーデュー農務長官の発言が飛び出すなど、「TPP並み」が農産物の攻防ラインとなるのは必至です。

さらに、米国側の了解事項に、「自動車分野について、米国内での生産及び雇用の増大に資するものとする」という文言が盛り込まれたことが火種となるでしょう。米自動車メーカーは日本市場において戦意を喪失しており、日本への自動車輸出は増える見込みがないため、日本の対米自動車輸出を規制するという「管理貿易」の議論に発展しそうです。

日本は米国の要求を飲まされるのか

米国の貿易関連法により,貿易交渉開始の30日前に、米通商代表部(USTR)は議会に交渉目的を通知しなければならないです。このため、USTRは18年12月21日、日本との貿易協議に向けて22分野の要求項目を議会に通知しました。22項目の中身をみれば、TPPとほとんど同じような分野が並んでおり、包括的な日米FTAの締結を目指すトランプ政権の強い姿勢がうかがえます。

18年12月10日にワシントンで開かれたUSTRの公聴会では、米国の業界団体からTPPを上回る水準の協定を求める声が相次ぎました。このため、要求項目には、農産品の関税引き下げや自動車貿易の改善にとどまらず、通信や金融などサービス分野を盛り込んでいます。さらに、薬価制度や為替問題も協議するとしています。

日本側が最も反発する項目は、通貨安誘導を禁ずる為替条項の導入です。米自動車業界は円安による日本車の輸出攻勢を恐れています。このため、円売り介入だけでなく、日銀の異次元金融緩和までも円安誘導策とみています。安倍政権は交渉対象から為替問題を外し、日米の財務当局に委ねたい考えです。

USTRによる議会への通知によって、改めて日米の思惑の違いが浮き彫りとなりました。日米の貿易協議を担当する茂木経済財政・再生相とライトハイザーUSTR代表が12月中旬に電話会談をし、共同声明を順守することを確認したとされますが、ゴリ押しの通商政策を展開するトランプ政権を相手に、果たして日本のシナリオ通りにTAGの議論を先行できるかは不確実です。

日米貿易協議の初会合にのぞむ茂木経済財政・再生相とライトハイザーUSTR代表(昨年10月9日、ワシントン)

米中協議が難航すれば日本に追い風?

一方,18年12月1日の米中首脳会談で90日間の貿易協議に入ると合意しました。期限は19年3月2日です。米国は対中貿易赤字の大幅削減を要求していますが、知的財産権の保護や技術移転の強要などの問題も議題に挙げています。しかし、中国の国家資本主義の象徴ともいえる「中国製造2025」をめぐる米中の対立はハイテク覇権争いが絡んでおり、落としどころも難しいです。



19年1月下旬から開始予定の日米TAG交渉に、米中協議はどのような影響を及ぼすでしょうか。「米中衝突は日本にプラス」との見方は少なくないです。中国が譲歩しすぎると米国が自信をつけて日本に高圧的になる恐れもありますが、逆に米中協議がもつれると、日本との交渉は先送りされる可能性も出てきます。

日米はTAG交渉には期限を定めていません。それでも19年6月下旬に大阪で開かれるG20首脳会議に合わせてトランプ大統領が来日しますが、その折の日米首脳会談で譲歩を迫られることを日本側は警戒しています。

安倍政権の本音としては、TAG交渉の決着をできるだけ19年夏の参院選後に引き延ばしたいということがあるでしょう。与党自民党が、農産物の市場開放がたとえTPP並みであっても、選挙にマイナスに響くことを恐れているからです。

米中協議は、予め難航することが予想されるため、TAG交渉の決着は参院選後になることが予想されます。ただしその後はどうなるかは、未だ予測がつかない段階です。

「タリフマン(関税好き)」を自称するトランプ大統領は、日米の貿易協議入りと引き換えに、自動車関税を棚上げにしましたが、矛先が日本に向くリスクは消えていません。日本側の時間稼ぎに腹を立て、再び関税の引き上げを言い出す可能性があります。2019年のTAG交渉は安倍政権にとってまさに正念場といえます。
日本側としては、冒頭の記事にもあるように、ポストトランプの大統領に望みを託すことになりそうです。

次の大統領は、TPPが協力な中国包囲網となることを容易に理解すると、考えられます。そうして、日米のそうして世界の貿易関係は、TPPの枠組みの中でというのが、理想的です。

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2018年8月8日水曜日

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 ―【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 

TPPにはかつて、世界中で反対運動が巻き起こった
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 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては根強い反対論があったが、現状では英国の参加支援などでも日本が中心的役割を担っているようにみえる。

 TPPのメリットは自由貿易の恩恵だ。これは約200年の経済学の歴史で最も確実な理論だといえる。ただ、自由貿易でメリットを受けるのは輸出者、そして消費者だ。一方で、デメリットになるのが輸入品と競合する国内生産者だ。「自由貿易の恩恵」とは、メリットがデメリットを上回ることを言う。

 これは経済理論だけではなく、定量的にも国際標準の方法で確かめられる。それに基づく政府試算で「おおむね10年間で実質国内総生産(GDP)3兆円増」とされている。これは、「おおむね10年後に今よりGDPが差し引きで3兆円増加し、それが続く」というもので、反対論者が唱えていた「10年間累積で3兆円」ではない。反対論者は経済分析もできずに、意味不明なまま反対していたのだ。

 国家間紛争ルールを定めたISD条項など一般になじみのないものを毒素条項だと脅す反対論者もいた。この条項を利用して、米企業が日本を訴えて日本は負けるというものだ。

 しかし、この条項は、これまでの国際協定ではかならず盛り込まれており、日本が不利益を被ったこともない。法律上の不備があるとまずいが、日本の精緻な法体系ではこれまでやられたことはない。このように、反対論者は無知で、かなりでたらめだった。

 米国がTPPから離脱すると、反対派は一気にトーンダウンしたのだが、TPPから米国がいなくなっても、TPP加盟国の中には米系企業があるので、ISD条項の脅威は同じだ。反対派がいかに感情的で、ロジカルでない意見を言っていたかがここでも分かる。

 米国のおかげで、日本の存在感が高まったのは間違いない。米国がTPPに失望したのは、かつて本コラムで書いたように医薬品などで日本が交渉をうまくやって勝ちすぎたのもある。

 加盟国のバイオ医薬品の独占的に販売を認めるデータ保護期間(製薬会社に独占的に販売を認める期間)が基本は各国の法制度、実質8年間となって日本の主張がほぼ認められた。米国の国内法は12年であり、米国は医薬メーカーのために、独占期間をできるだけ長くと主張していたが、日本などの主張に負けた格好だ。

 こうした交渉にもまして、基本的なスタンスとして、日本は自由貿易のメリットを強調し、粘り強く交渉したのが大きい。経済的な連携は政治や軍事での同盟関係と密接な関係があり、TPPは中国抜きの経済連携として重要であることを日本は一貫して主張した。自由主義圏の日本はその点でぶれないのが、TPPの中でも主導的な役割を果たしている最大の理由だろう。

 中国の国際覇権的な野望が明らかになるにつれて、対中国の関係で、日本に期待する国は少なくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

日米などアジア太平洋地域の12カ国が署名した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から米国が離脱したため、残る11カ国でまとめ直した新協定をTPP11といいます。2018年3月に署名しました。

参加国は日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。6カ国以上が国内手続きを完了すると、60日後に発効します。

この、TPPに参加する11カ国が加盟国拡大に向け、一歩踏み出しました。協定が発効すれば世界の貿易額の15%を占める巨大な自由貿易圏が誕生し、加盟国が増えれば経済効果はさらに高まります。

TPPには中国の「包囲網」の意味合いもあったが今では保護主義に走る米国も同様、自由で公正な貿易を守るためにも加盟国拡大が急がれるところです。

先月19日に閉幕したTPPの首席交渉官会合は、後から加盟したい国が次々と手を挙げました。このような、貿易枠組みは世界初です。参加に意欲を示す6カ国・地域のうち、タイとコロンビアは協定発効直後にも参加の意思を正式に通知してくる可能性があります。

TPPは地域や経済の発展段階が異なる国が集まりますが、知的財産権保護など幅広い分野のルールを定め、企業がビジネスを展開しやすくする質の高い協定です。11カ国は新規加盟国にも高水準のルールを当てはめる方針で、受け入れ側としても準備を急がなければならないです。

ただし、トランプ米政権は11月の中間選挙を意識してか、日本にも自動車や鉄鋼の輸入に関して一方的な要求を突きつけてきました。国際通貨基金(IMF)は事態が激化すれば、世界の国内総生産(GDP)が最大0・5%縮小すると試算しています。

経済政策を重視する安倍晋三首相は「保護主義からは何も生まれない」として、自由貿易体制の維持に取り組みます。今月は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内大筋合意の方向性を打ち出し、欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)にも署名しました。

TPPはEPAの一種でもあり、2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAです。協定名は「パートナーシップ協定」となっています。

このEPA、TPPには中国は参加できません。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
記者会見を終え、トゥスク欧州理事会議長(右)と握手を交わす
ユンケル欧州委員会委員長。中央は安倍晋三首相=7月17日午後、首相官邸
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、中国がEPAやTPPに最初から入ることができない理由を掲載した部分のみ以下に引用します。
中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。
わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。 
以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえば、EPAには入れないのは当然です。
株価が急落したため落ち込む中国の個人投資家
株価が急落すると政府が介入して株式取引を中止することもある
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。

中国にも司法組織なるものが存在するが、
その組織は中国共産党の下に位置している

中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。 

確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。 

その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。  

このような中国は、とても日米をはじめとする先進国と、まともな自由貿易などできません。検討するまでもなく、最初から経済連携協定(EPA)など締結できないのです。
このようなTPPは、中国包囲網となるばかりではなく、保護主義に走りそうな米国に対する大きな牽制ともなります。ただし、首席交渉官会合では関係者によれば、米国の復帰や保護主義への懸念は一切話題にならなかったそうです。

また、新規加盟の可能性がある国・地域もさまざまな事情を抱えています。英国はEU離脱の行方が定まらないです。韓国や台湾も、日本や米国、中国との関係に影響が出ないように情勢を見極める可能性があります。米国と強固な同盟関係を結ぶ日本の重要性が、ひときわ高まってきました。

日本が自由貿易に邁進することが、世界の安定に寄与することは間違いないです。米国が中国に対して、金融などの分野での市場開放や人民元の完璧な自由相場にすることを迫ったり、知的財産権の保護を迫ったりすうちは良いですが、その範疇を超えて他国にまで保護主義的になることは、絶対に防がなければなりません。

これに関しては、やはりTPPが強力な武器になることは言うまでもありません。TPPにより域内が発展し、これに乗り遅れた米国が脅威に感じるくらいに域内を発展させていくべきです。

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2018年3月3日土曜日

韓国の盗作イチゴ、日本の被害額は220億円… 農林水産相も指摘―【私の論評】中国・韓国がTPPに参加できないのはまさにこれが理由(゚д゚)!



カーリング女子日本代表「LS北見」が食べていたことで、一躍世間の注目を集めた韓国産のイチゴ。メンバーからは「びっくりするぐらいおいしくてお気に入りでした!」との発言も飛び出すが、その一方、この発言に頭を抱える面々も。3月2日の会見で斎藤健・農林水産相が「日本から流出した品種をもとに韓国で交配されたものが主だ」と指摘したように、根深い“盗作イチゴ”問題が存在するのだ。

 ***

 「残念です! 彼女たちが食べたのは本当に韓国のイチゴだったのでしょうか」

 と悔しがるのは、「とちおとめ」「スカイベリー」などで出荷量、販売額ともに全国1位で、“イチゴ王国”を標榜する栃木県農政部経営技術課普及情報担当である。

 「ゲームの最中から、あの“もぐもぐタイム”でイチゴを召し上がる率が高かったので気になっていたんです。もちろん『とちおとめ』や『スカイベリー』なら言うことなしですが、韓国から近い九州産のイチゴかな、などと思っていました。でも、鈴木夕湖選手から『韓国のイチゴ』と明言されてしまって……残念です」

 韓国で開催されている平昌(ピョンチャン)五輪なんだし、メダルも取れたんだから、堅いことを言うな、という向きもあるだろう。ハーフタイムに彼女たちが食べて、売り切れ状態になったチーズケーキ「赤いサイロ」に続きたいと思っているわけではない。イチゴ農家関係者には看過できない、とても「そだねー」などと言っていられない事情があるのだ。社会部記者がいう。

 「昨年6月、農林水産省は、日本のイチゴが韓国に流出したことで、日本産イチゴの輸出機会が奪われ、5年間で最大220億円の損失。また、およそ1300億円といわれる韓国のイチゴ市場からのロイヤリティの損失は、年間16億円になるとの試算をまとめたのです」

9割以上が日本産
 農水省に聞いてみよう。

 「そうですね、現在の韓国のイチゴ栽培面積の9割以上が流出した日本の品種をもとに開発された品種なのです。例えば、韓国で開発された『クムヒャン(錦香)』は日本の『章姫(あきひめ)』と『とちおとめ』を交配に用いていますし、『ソルヒャン(雪香)』は日本の『章姫』と『レッドパール』といったものです。これらの日本の品種は韓国へ流出してしまったものなのです。それらの日本の品種が、韓国で育成者権を取得できていれば、現在もロイヤリティは入ってきたわけです。また韓国はこうした品種のイチゴをアジア各国に輸出もしておりますので、日本が流出を防げていれば、アジアへの輸出は日本産で代替できていただろうという試算なのです」(農林水産省食料産業局知的財産課種苗企画班)

 流出といえば穏やかだが、平たくいえば盗まれたのである。

 「1993年に開発され国内産だけだったはずの『とちおとめ』が、東京の青果市場に“輸入”されたのは2001年のことでした。市場関係者から、韓国産が出ていると連絡が入ったのです。ええ、堂々と『とちおとめ』を名乗っていたから、連絡が来たんでしょうね。韓国名で出荷すればわからなかったと思うのですが、当時はそれほど知的財産の意識も低かったんでしょう」(前出の栃木県農政部経営技術課普及情報担当)

韓国内で日本の種苗が盗まれる

 愛媛県宇和島市のイチゴ農家、西田朝美さん(故人)が3年をかけて交配し開発された『レッドパール』は、韓国人から種苗を分けてくれと日参され、何度も断ったが、根負けして品種を分けたという。それが韓国内で盗まれたのだ。西田さんと共に韓国に招かれ、栽培の講師を務めたという赤松保孝さんが振り返る。

「西田さんと何度も韓国へ行って、各地で栽培の仕方を教えたんだ。韓国の人が喜んでくれればと思ってね。一時は韓国のイチゴの6割は『レッドパール』になったそうだけど、そのうちの3分の2は盗まれた種苗だったそうだ。220億円? 最近の話はわからないけど、ちゃんと売れていたら西田さんが生きていたら大金持ちになっていたかもしれないね。当時は韓国で種苗法が通らなかったから……」

 そう、韓国には法律がなかったのだ。社会部記者が言う。

 「国際的には、育成者権を守る国内法整備を進める『ユポフ(UPOV)条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)』があり、日本は82年に批准しています。その後、91年に、育成者権の存続期間を延長した新条約に改正され、韓国が加わったのは2002年のこと。それでようやく韓国もイチゴを権利対象にすることを検討し始めたのですが、イチゴを保護対象から外してしまったのです。その期間はユポフ条約の延長期間の限界である10年間、つまり12年まででした」

 ユポフ条約では、海外への譲渡開始後4年以内でなければ、海外での品種登録はできない。それゆえ、「とちおとめ」も「レッドパール」も韓国で品種登録することはできなかった。その代わり、12年に登録されたのが“ウリジナル(韓国オリジナル)”の「錦香」や「雪香」というわけである。

 余談だが、韓国では「イチゴ大福」をめぐり、2店が“元祖”の争いをしたこともあるという。勝手にやってろ!と言いたいところだが……、

北海道産の「白いんげん」も流出

 農水省は、今年度予算を組み、東アジアでの流出の実態をつまびらかにしていくという。

 「すでに流出してしまったものに関しては、対策の取りようがありません。しかし、新たな品種に関しては権利化を進めていきます。え? カーリングですか。ええ、ああ、話は聞いていますが……それについてはコメントいたしかねます」(前出の農林水産省食料産業局知的財産課種苗企画班)

 日本ブランドの流出はイチゴに限らない。LS北見の故郷・北海道北見市でも育てられている白いんげん「雪手亡(ゆきてぼう)」の種苗は、中国に盗まれ、収穫されて日本に輸出されたこともある。

雪手亡

「雪手亡」は和菓子の白あんにも使われる。LS北見の選手たち、“もぐもぐタイム”には、国産をご賞味あれ。

【私の論評】中国・韓国がTPPに参加できないのはまさにこれが理由(゚д゚)!

韓国が過去に日本のいちごの種苗を盗んでいたということが話題になっていますが、いちごでこの有様ですから、他の農産物や、工業製品などはどのようなことになっているか推して知るべしというところです。

このようなことをしていると、一見得したとか、濡れ手に粟で儲けたようにも思えるかも知れません。しかし、世の中そのように単純ではありません。このようなことばかりしている国は、自由貿易などはできません。実際、韓国はTPPに参加できません。

2018年3月1日、韓国・毎日経済は「米国のスティーヴン・マヌーチン財務長官が日本主導のTPP(環太平洋連携協定)への再加入に関するハイレベル協議が始まったことに初めて言及した」と伝えました。 

米国のスティーヴン・マヌーチン財務長官


記事によると、マヌーチン財務長官は現地時間の先月27日に開催された米国商工会議所主催の投資説明会で、TPPに関するハイレベル協議に言及し「ドナルド・トランプ大統領は(TPPへの再加入を)再び検討するだろう」と述べました。マヌーチン財務長官は「今のところ優先的な内容ではない」と前提をつけたといいますが、記事は「米国の利益のためにTPP再加入の可能性があることを示唆したとみられる」と伝えています。

また、「韓国は現在、トランプ大統領からかつてないほど強い圧力を受けている」とし、「ソーラーパネルと洗濯機へのセーフガード(緊急輸入制限措置)に続き、鉄鋼への53%の関税賦課決定も目前に迫っている」と説明。「このような状況の中、アジア地域で日米を中心とした貿易同盟の議論が急進展したら韓国が孤立してしまうと懸念する声が高まっている」と伝えています。

最後に「米国の一方的な保護貿易措置に続き、TPP問題にも直面している韓国の選択肢は限られている」と指摘。仁荷大学のジョン・インギョ対外副総長の「韓国が今TPPに参加する場合は既存の立場をそのまま受け入れなければならないが、それは国内的にかなり難しい。しかし、もう少し積極的に関心を表明することは必要だ」とのコメントを紹介しています。

この報道を受け、韓国のネットユーザーからは「これでも文在寅(ムン・ジェイン大統領)を外交の天才と言える?」「文大統領が韓国に災いをもたらしている」「現政府は北朝鮮と中国にすり寄っている。それで米国からの関心を失った。さらに日本からも無視されている。韓国を属国のように扱う中国にこびを売った結果、今の経済状況になってしまった。韓国経済の未来は暗い」など、文大統領への批判の声が寄せられています。

また「韓米関係が最悪という事実をやっと悟ったようだな」「韓国は1人ぼっちだ」など、孤立する韓国についてため息交じりの意見も見られました。

どうやら、韓国のネットユーザーもなぜ韓国がTPPに加入できないのか、その根本的な理由を理解していないようです。

中国もTPPには加入できません。それは、現在の中国は、民主化、経済と政治の分離、法治国家が十分なされてないというところが問題になるからです。これらが、ある程度進まいないとTPPには入れません。

なぜなら、このへんが良くできていない国がTPPに入ると、自由貿易を阻害することになるからです。はっきりいえば、このような国では不当に低賃金で労働者が働かされたり、品質が守られなかったりで、結局のところ自由貿易によって、その国のブラック的なものが、様々な農産物や製品に上乗せされた形で輸出(不当に低価格だったり、不当に品質が低いということ)されてしまい、自由貿易を阻害するからです。

ちなみに、ベトナムはTPPに参加するために、国営企業の改革を行います。TPPに入るというのなら、中国もそれこそ、国内の構造改革をしなければならなくなります、それは到底無理なことです。だからこそ、中国は入れないのです。

そうして、中国が入らないということは、反対の側面からみれば、中国に対する環太平洋諸国による包囲網の構築にもなります。最近米国が参加を打診しているのは、このような側面もあるからです。


韓国もブログ冒頭の記事の「いちご」などの種苗を盗むようなことが横行している国であり、そもそも知的財産権などを守るという意識が希薄な国ですから、そもそも最初からTPPの対象ではなかったのです。

離脱した米国を除く11カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に韓国が関心を示し、参加に向け交渉を主導する日本政府に事務レベルで接触していることが先月23日、分かりました。合意した11カ国によるTPP11に乗り遅れれば、アジア太平洋地域の成長を自国に取り込めないとの危機感が韓国側にはあるとみられます。これに対しTPP参加国は2019年の早い時期の発効を目指しており、日本政府もまずは11カ国での発効を優先させる方針です。

複数の日本政府関係者が明らかにした。このほど韓国から問い合わせを受けたといいいます。韓国側は協定の詳細を確認し、参加の可否を探っているとみられます。

TPPには韓国のほかコロンビアや英国など複数の国・地域が関心を寄せています。米国も1月下旬、トランプ大統領が再交渉を条件にTPPへの復帰を示唆しました。TPP11の協定文は「ほかの国の加入を歓迎する」と明記し門戸を開いています。

ただ、日本政府はTPP11について「ガラス細工のようなもので、変更することは考えていない」(安倍晋三首相)との立場です。一部を修正すると“玉突き”で変更が必要となり、収拾がつかなくなるからです。このため、まずはTPP11を発効させた上で、参加国を増やす構えで、韓国を含む参加国の拡大も発効後に検討することになりそうです。

韓国などがTPP11に関心を高めているのは、貿易・投資を高いレベルで自由化した経済圏が、アジア太平洋地域に誕生することが確実になったからです。

TPP11参加国の合計の経済規模は世界の国内総生産(GDP)の約14%。米国の離脱で一時は漂流も懸念されたましたが、1月に協定文が確定し、3月8日にチリで署名式を開きます。

一方、韓国は米国などと2国間の自由貿易協定(FTA)を軸に通商戦略を進めていましたが、日本が2013年7月にTPP交渉に入ると方針転換し、同年11月にTPP参加国と協議する方針を表明しました。しかし、昨年1月、米トランプ政権がTPP離脱を表明して以降は、参加国との本格的な交渉が途絶えていました。

それにしても、先に述べたように、いちごの種苗にみられるように、知的財産権を軽視するような国は、TPPには入れません。韓国も、抜本的な構造改革が必要になるわけです。

しかし、私としては、このブログにも以前書いたように、韓国はそんなことを考えよりも先似、量的金融緩和をして、雇用、特に若者雇用を改善すべきです。その後、グローバル化の美名のもとに伸ばすことのなかった、内需を拡大するべきです。

TPPに加入するなどのことは、これが終わってからにすはべきです。雇用改善、内需拡大をしないうちに、TPPに加入して、仮に自由貿易ができるようになったにしても、一部のグローバル企業が潤うだけであって、雇用や家計への打撃は解消されることなく、放置されることになってしまいます。

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2016年11月30日水曜日

安倍首相と米露のバトル口火 TPPは“トランプ版”に衣替え、北方領土はプーチン氏と論戦に―【私の論評】日米は、中国の現体制と、ロシアの中のソ連を叩き潰せ(゚д゚)!


TPP離脱を明言したトランプ次期米大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
トランプ次期米大統領はビデオ演説で、大統領就任初日にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を離脱すると明言した。一方、ロシアは北方領土にミサイルを配備するなど、12月の安倍晋三首相とプーチン大統領との会談の成果を危惧する声もあがっている。

 まず、TPPであるが、今のままでの成立は無理な状況になった。TPP諸国の国内総生産(GDP)の6割は米国であるので、米国抜きのTPPはありえない。

 まずTPPの性格をおさらいしておこう。TPPは、(1)自由貿易(2)知的所有権保護や国営企業規制が含まれることから、中国除外という性格(3)多国間協定-という3つの要素がある。

 一方、トランプ氏は、共和党であり、米国議会の上下院はともに共和党が取っている。トランプ氏は選挙期間中は共和党の重鎮と反目していたが、ここは議会の共和党と組んで政権運営する可能性が高いと筆者は見ている。

 というのも、共和党政権は8年ぶりであり、政権運営の妙味を味わいたいと考えるのが自然だ。このため、トランプ氏と議会共和党は妥協し合い、ウィン-ウィンの関係になるはずだ。共和党は伝統的に自由貿易を指向している。また、民主党のクリントン氏が中国利権と近いとされたこともあって、対中姿勢は毅然としたものとなる可能性もある。

 こうしたトランプ政権と議会の関係を考えると、TPPは仕切り直しになって、中国抜きの自由貿易を二国間で締結するスタイルが基本となるだろう。

 となると、まったく白紙から交渉するのでは時間がかかるので、日本としては、既にまとまったTPPを原案として、米国との二国間交渉をすることもあり得る。

 二国間交渉であるので、日本にとっては厳しいものになるが、この方式がうまくいけば、日本以外のTPP参加国も同様な方法で米国と二国間交渉すれば、それが事実上、「トランプ版TPP」となる。

 一方、北方領土交渉は難しい。戦後70年間も解決できなかった問題なので、今回簡単に解決できると甘く考えないほうがいい。ロシアは、巨額収賄の容疑でウリュカエフ経済発展相の身柄を拘束し、捜査に乗り出したと発表した。同氏は、日本側の窓口を務める世耕弘成経済産業相のカウンターパートであり、これまで日本の対ロシア経済協力計画のロシア側窓口だった。

ウリュカエフ経済発展相
 ミサイル配備や担当大臣拘束という一連の動きが、北方領土・日露平和条約交渉を妨害しようという意図の表れなのか、日本側の期待値のハードルを下げるロシア側からのサインなのか、よくわからない。いずれにしても、12月の安倍・プーチン会談はガチンコで両国国益のぶつかり合いになるだろう。

 トランプ氏が次期大統領になったので、対ロシア制裁が緩んでいくという見通しをプーチン大統領が持っているなら、ロシアにとって北方領土問題の優先順位は低くなる。一筋縄ではいかないのは当然だが、安倍首相はトランプ次期大統領を巻き込みながら、対ロシア戦略を練っているだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日米は、中国の現体制と、ロシアの中のソ連を叩き潰せ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、概ね同意です。日米二国間交渉は、日本にとっては厳しいものになるのは明らかです。しかし、ここで負けてはせっかくのTPP交渉での、粘りが無駄になります。おそらく、TPP交渉以上に難航し、時間もかかることでしょう。

そうして今回は、日米二国間だけの問題ではなく、二国間交渉によって実質上のトランプ版TPPを創設しようというのですから、日本としては、TPP加盟国の応援もうけつつ、米国との交渉を成功させる必要があります。日本が下手に米国に折れれば、他国の信頼を失うことになります。

さて、米国との交渉についてはこのようなところですが、ロシアのとの北方領土交渉は高橋洋一氏も指摘するように更に困難を極めることでしょう。

私たちは、ロシアとの北方領土交渉に関することを述べる前に、ロシアとはどういう国なのかを知っておく必要があります。

現代ロシアを理解するうえで大切なことは、ロシアとソ連は宿敵だということです。ロシアを乗っ取ってできた国がソ連なのですから、両者を一緒くたに考えるべきではありません。

エリツィンは現在では単なる酔っ払いとしか評価されていないのですが、間違いなくロシアの愛国者でした。そのエリツィンから大統領の地位を禅譲されたプーチンがやっていることは、ソ連邦の復活であり、ロシアに対する独裁です。

ロシアの愛国者エリツィン氏
プーチンが日本文化に詳しいから交渉しやすいなどという甘い幻想は捨て去るべきです。ロシアはそれほど単純な国ではありません。例えば、2002年にアレクサンダー・レベジというロシアの政治家が死にました。

彼はロシアの自由化を進め、チェチェン紛争の凍結にも尽力した人物です。NATOや日米同盟にも融和的でした。何より、近代文明とは何かを理解し、実行しようとしました。

ロシア史のなかでも、一番の真人間と言っていい存在です。しかし、彼の末路はヘリコプター事故死です。ロシアではなぜか、プーチンの政敵が『謎の事故死』を繰り返します。このレベジについてなんら言及せず、『プーチンは親日家だから』などと平気で言っているような輩は、間違いなく馬鹿かロシアスパイです。

アレクサンダー・レベジ
しかし、無論プーチンに限らず誰にも様々な面があります。どんな物事にも良い面もあれば悪い面もあります。『誰が善玉で誰が悪玉か』という子どものような区別の仕方はすべきではありません。

ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定跡が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
北方領土へのミサイル配備や担当大臣拘束という一連の動きは、北方領土・日露平和条約交渉を妨害しようというプーチンの意図の表れです。

日本としては、米国と貿易交渉で徹底的にケンカをして、ロシアのプーチン幻想など捨て去り、米国と共同しつつ、何十年かけてもロシアの中のソ連をぶっ潰す、中国の現体制をぶっ潰すことを念頭においた外交を展開すべきです。

まさに、これから安倍首相と米露のバトルが口火切つて落とされるわけです。

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2016年11月12日土曜日

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に―【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

蓮舫氏「トランプ氏に失礼」でまたもブーメラン 本来の立場忘れ、本末転倒の攻撃材料に

蓮舫氏
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案などをめぐり、米大統領選でTPP脱退を明言するトランプ氏が勝利したことを受け、民進党執行部から承認案の即時撤回を求めるような発言が相次いでいる。そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣だ。自由貿易体制を重視する本来の立場を忘れ、トランプ氏を安倍晋三政権の攻撃材料にするのは本末転倒でないか。

蓮舫代表「新大統領に対して失礼にあたるのではないかとも思い、懸念している」

野田幹事長「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」

 蓮舫、野田両氏はトランプ氏が勝利した9日、承認案などの衆院採決を急ぐ政府・与党を批判した。

民進党野田幹事長
 民進党は「今回の交渉で農産物重要5項目の聖域が守れなかった」ことなどを理由に承認案に反対しているが、TPPの理念は否定しない立場。7月の参院選で発表した「民進党政策集2016」にも「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現をめざし、その道筋となっているTPPなどの経済連携を推進します」と明記している。

トランプ氏はTPPを「米製造業の致命傷になる」と批判するなど保護主義的な姿勢を示してきた。民進党の考えるべき道は、TPPの理念まで消え去りかねない危機への対応であり、「トランプ氏に失礼」などと肩を持つことではないはずだ。(水内茂幸)

【私の論評】TPPは頓挫していない!政治家、マスコミ、官僚も米大統領選のように判断を誤る可能性が(゚д゚)!

そもそもTPP交渉参加に向けた協議入りを決断したのは、平成23年の旧民主党・野田佳彦内閣であることは間違いありません。その当時の新聞記事のリンクを以下に掲載します。これは朝日新聞のものです。
野田首相、TPP交渉参加の方針表明
2011年11月11日23時11分

 野田佳彦首相は11日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べ、参加国との事前協議から始まる交渉プロセスに参加する方針を表明した。首相は12日からハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、オバマ米大統領らTPPの関係各国首脳と会談し、交渉参加の方針を伝える。 
 TPP交渉に正式参加するには、すでに交渉入りした米国など9カ国と事前協議を行い、それぞれ承認を得る必要がある。日本が各国と本格交渉を始めるのは、早くても来年春以降とみられる。首相が「交渉参加に向けた協議」と表現し、事前協議を強調したのは、民主党内の反対派に配慮した面もある。 
 首相は会見で、農業や医療などの分野でTPP参加に反対する声が強いことを念頭に「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村、そうしたものは断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」と強調。こうした懸念に配慮する姿勢をみせた。 
 一方で「貿易立国として活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかねばならない」と述べ、交渉参加の意義を訴えた。その上で、首相は「関係各国との協議を開始し、さらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上でTPPについての結論を得ていく」と強調した。 
 また、首相は農業対策について、10月に政権がまとめた農林漁業の再生に向けた基本方針・行動計画を踏まえて「規模の集約化や6次産業化などを5年間で集中的に行っていく。それに基づいて必要な予算を措置する」と述べ、交渉参加と農業再生の両立を図る考えを示した。 
 首相は関係国との協議について「国益を最大限実現するプロセスの第一歩だ」と主張。昨年11月に菅前政権が「情報収集のための協議」としたTPP参加国との交流について、首相は「さらに歩みを前に出す」と位置づけた。 
 一方、慎重派の鹿野道彦農林水産相は11日夜、記者団に「総理は『参加表明』とはおっしゃらなかった。交渉参加を前提とするものではないと理解している」と指摘。首相の表明が交渉参加にはつながらないとの認識を示した。
この当時の私は、TPPそのものについては自由貿易を推進するということで反対ではないものの、野田政権というより財務省に簡単に御せられてしまう、交渉力の弱い民主党政権のときにはTPP交渉に入るのは日本の国益を損ねる危険性もあると考えていたので、一応反対はしていました。そのため、ブログには以下の様な野田氏を揶揄するような画像も掲載しました。


この記事は、2011年11月11日のものであり、今から5年前の記事です。野田氏は5年前に、自らTPP交渉参加に向けた協議入りを決断しておきながら、「新しい大統領にケンカを売るような話にもなりかねない」と発言しているわけです。

これは、非常に奇異です。ケンカのきっかけは自分が作ったにもかかわらず、自分にはもう全く関係ないかのような発言です。このような発言をするのなら、まずはきっかけを作った自分が謝罪すべきではないでしょうか。

それに、蓮舫氏の「新大統領に対して失礼にあたる」というのも本当に奇異です。蓮舫氏は、自らの二重国政問題で自らの意見を何度も何度も翻し国民を愚弄したその挙句、今でも二重国籍であるかどうかさえはっきりさせていません。国民に対してあれだけ、失礼なことをしておきながら、それは全く顧みずに、筋違いの政府批判をしています。

これらの発言から読み取れるのは、政治を考える上で、二人ともせいぜい1〜2年期間で物事を考えて発言しているとしか思えないのと、とにかく筋が通ろうが通るまいが、論理的であろうが、なかろうが、現政権を批判することしか頭にないことです。

このような発言は、無責任と断定せざるを得ません。そうは言っても、この二人にはそのようなことは全く気にもかけないでしょう。だからこそ、このような発言ができるのです。

この二人が、民進党の代表と、幹事長というのですから、情けない限りです。

それにしても、トランプ氏が大統領選に勝ってからいろいろなことが明るみに出ました。

まずは、メディアは日米ともに、最後の最後まで、クリントン優勢と報道したことからもわかるように、米国の国民の声や、考えを全く反映していなかったことが明るみに出ました。

まずは、このブログで何度か掲載してきたように、アメリカのメディアはアメリカにおそらく、半分くらいは存在していると考えられる保守派や保守派に親和性のある人々を完全に無視してきたこと、そうして日本のメディアも米国メディアの論調を鵜呑みにして、アメリカの半分の声に対してノータッチであったことが明るみに出ました。

それに、TPPに関しても、「TPPで日本は亡国になる!」と語っていた連中も大勢いましたが、トランプ氏はTPPには反対しています。亡国論者たちはTPPはアメリカの日本支配の巨大な陰謀などと語っていました。しかし、大統領選挙前からアメリカが拒否し、さらにトランプ氏も反対しています。結局、自称「保守系」経済評論家と呼ばれる人たちは、根拠の薄弱な恐怖を煽ったということで無責任であったことがはっきりしてしまいました。


しかし、TPPについては、トランプ氏が反対であることから、頓挫するのではないかというのが、日本のマスコミなどのほとんどの反応ですが、私は今のところは、完璧に頓挫したとは思っていません。

なぜそのように思うかというと、三点ばかり根拠があります。一点目は、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

二点目としては、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。

継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

今回のTPPに関しては、これを推進しようとしたのは元々アメリカです。これを今から完全廃止するとなると、アメリカ国内だけではなく、日本を含めた他の多くの国々に混乱をもたらします。これがかなりのマイナスとなると判断すれば、政治の継続性の原則から、混乱を招かないために、従来通り現政権もTPPを推進する事になる可能性は十分あります。

三点目としては、TPPには中国は参加しません。その意味で、TPPは中国への経済的な対抗策でもあります。トランプ氏は対中国恐慌派と目されていますから、これを理解すれば、TPPを推進するほうに立ち位置を変える可能性は十分にあります。

日本のメディアは、もうTPPは頓挫したかのように報道しているところが多いです。しかし、もっと趨勢を見極めないと、政治家、マスコミ、官僚もまたアメリカ大統領選挙の時のように、判断をまったく誤ることになるかもしれません。

アメリカの大統領がトランプ氏と決まったことを契機これからも、いろいろなことが明るみに出てくると思います。そのようなことを発見した場合、またこのブログに掲載しようと思います。

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2016年1月14日木曜日

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP―【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP

夕刊フジ

かつて世界の工場と呼ばれた中国だが・・・・
 中国が「世界の工場」と呼ばれた時代は完全に終わった。輸出と輸入を合わせた2015年の貿易総額が前年比8・0%減の3兆9586億ドル(約468兆円)とリーマン・ショック後の09年以来の前年割れ。16年以降もさらなる下振れが予想されている。

15年の輸出は2・8%減。原材料や部品を輸入して安価に組み立て大量輸出する加工貿易で急成長してきた中国だが、人件費高騰や労使紛争の頻発などで競争力が失われ、繊維や衣料品、機械・電子部品など外資系の工場が相次いで中国から撤退した。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば有望な輸出拠点となるベトナムなどへのシフトが加速するとみられ、中国の輸出産業は地盤沈下が止まらない。

輸入に至っては14・1%減の1兆6820億ドルと落ち込んだ。不動産市況や株式市場の低迷で内需が低迷、人民元安で輸入価格も上昇した。

輸入の動きは国内総生産(GDP)と連動するといわれ、19日に発表される15年の中国のGDPでは統計数字の信憑(しんぴょう)性も問われている。

貿易失速を受けて、13日の上海株式市場で、総合指数の終値は2015年8月下旬以来、約4カ月半ぶりに終値が3000を下回った。

過去30年間で中国の貿易総額がマイナスとなるのは、アジア通貨危機のあった1998年とリーマン・ショックの影響を受けた2009年の2回しかない。

政府系の中国社会科学院も16年の輸出は前年比0・6%減、輸入は3・0%減と予想しており、中国経済はさらに沈みそうだ。

【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

昨年は、ホンダ が新型原付スクーター「ジョルノ」の生産を中国から日本の熊本製作所に移しました。ホンダのような大手に限らず、中小の日系工場でも、日本生産回帰や東南アジアへの進出など中国生産縮小の動きが進行しつつあります。特に人件費の安さを理由に進出した労働集約型や、中国国内での販売を考慮していない輸出専業型の場合は、撤退さえ選択肢に入れていることでしょう。


食料品、繊維製品など生活必需品の対日輸出に強い、山東省の最低賃金を見てみましょう。この数値が初めて発表されたのは1994年でした。このとき月例の賃金はわずか170元でした。それが2015年3月の改定では1600元となりました。20年で約10倍の上昇です。

しかし、実際にはこの最低賃金で労働者を雇うことは難しいです。外資系なら2000~3000元は必要でしょう。上海、深センでは最低賃金が2000元の大台を初めて超えました。この間、日本市場はデフレが続いており、店頭販売価格はむしろ下落していました。労働コスト的にはとっくに限界に達していたのですが、2012年まで続いていた日本の円高が延命治療の役割を果たしていました。

しかし、アベノミクスによる急速な円安がこのそれ以前の麻薬漬け状態を外した格好になり、東南アジアへの産地移動が急加速しました。続いて日本回帰の動きも始まりました。

この麻薬漬け状態の中国については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年11月4日のものです。まだ、民主党政権だった頃です。この直後に衆院選があり、安倍自民党政権が圧勝しました。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の麻薬漬け状態に関する部分に関する部分のみ以下にコピペします。
中国を支えているのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものだ。からくりはこうだ。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入している。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっているのだ。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになる。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたらいいか。答えは簡単だ。日銀にデフレ政策をいますぐやめさせることである。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。 
やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
日銀の中国麻薬漬け政策により、金融・経済が過度に蝕まれた中国は、麻薬が切れた今とんでもないことになっています。実体経済は悪化、株安、金融の空洞化と、とんでもない状況です。

そうして以前、中国への進出コンサルタントをしていた連中が、今や中国撤退コンサルタントをしているという有様です。

こんな状況では、もはや中国は世界の工場でいられるわけもありません。

中国の経済モデルはもともと非常に高い貯蓄と非常に低い消費の特徴を持っていました。中国のGDPに占める個人消費の割合は35%に過ぎません。日本をはじめとする先進国は、60%台が普通です。アメリカに至っては、70%台です。

これは中国が非都市部に不完全就業者労働力  の膨大な貯えをもっていた時には可能でした。しかしこの状況は最早一変していて、 中国はいま、 不況に陥ることなく相当大きく成長率を引き下げた体勢に移行するという綱渡りのような課題に直面しています。

合理的に考え得る戦略としては、金融緩和とインフラ支出で時間を稼ぎつつ、一般世帯の購買力を強化する方向に経済改革を進めて行くという方針があったはずでしたが、残念ながら中国が実行したのは同戦略の前半部分だけでした。その結果、一方では負債が急増し、 その多くを保有しているのは規制の杜撰な 『影の銀行』です。 他方で金融崩壊の恐れも出てきました。

そうするとやはり中国の状況は予断を許さぬもののようです。

しかし、中国が世界各国から購入する 「財やサービス」 は、毎年2兆ドルを超えています。とはいいながら、世界は広いです。各国国内総生産合計は、中国のそれを除いても、60兆ドルを超えています。中国の輸入が劇的な落ち込みをみせたとしても、世界全体の支出への衝撃はさほどのことはないと思います。

日本もその例外ではありません。日本の対中輸出はGDPの2.7%程度であり、これが劇的に低下したとしても、あまり大きな影響があるとは考えられません。以下に、各国の対中輸出・輸入がGDPに占める割合のグラフを掲載します。


この程度であれば、日本の内需が拡大したり、他国への輸出に振り向けることにより、たとえ中国の経済が停滞してもその影響は軽微だと考えられます。

金融関係については、どうかといえば、 中国は資本規制を敷いています。そのため株価が急落し、或いは中国内国債のデフォルトが生じた場合でも、直接的な波及効果は極めて小さいです。

だから、中国経済の長期にわたる不振が続いたにしても、さらには、中国の金融がさらに空洞化したにしても、世界に及ぼす影響や、日本に対する影響も軽微で終わることでしょう。日本を含めた、世界の先進国などが、困ることは中国に変わる世界の工場を探すことくらいのものだと思います。

ただし、日本に関しては、一つだけ条件があります。それは、現在日本に厳然として存在する10兆円のデフレギャップを早期に解消するということです。

金融緩和をしたことにより、このギャップも縮まる傾向にはあるのですが、それにしても、このギャップを無視して、8%増税をしてしまった結果、このギャップは縮まることなく温存されたままです。

これを、早目に解消するには、10%増税などとんでもないです。まずは、10%増税は絶対にしないことが、中国の経済悪化を軽微にすることの最低条件です。

そうして、できうれば、3兆円などとチマチマしたことをせずに、10兆円規模の財政政策を早期に打てば、中国経済悪化の悪影響など、なきが如しの程度で済んでしまうことでしょう。

このあたりについて、以前このブログにも詳しく掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている〜データが語る「第二のリーマン・ショック」―【私の論評】中国経済の悪化をだしに、日本の積極財政を推進せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく来年からの10%増税などという馬鹿なことは、絶対にやめるべぎてす。そうすれば、中国の経済悪化の影響など日本にとっては軽微なものになるはずです。

しかし、増税してしまい、さらに中国経済がさらに悪化すれば、またリーマン・ショックのように、日本が一人負けになることは必定です。リーマン・ショックのときは、日本だけが、緩和をしなかっのですが、他国は大規模な金融緩和を行ったため、本来ほんど影響がなかったはずの日本が、震源地のアメリカや、サブプラム・ローンの悪影響をかなり受けたEUなどよりも立ち直りが遅く、一番長くその影響を被ってしまいました。

今回の中国経済の悪化に対しても、他国はこの時期を狙ってわざわざ増税するなどという愚策は絶対しませんから、日本だけが実行するということにでもなれば、またまた、日本がひとり負けという状況になり、震源地の中国よりも回復が遅れる馬鹿げたことにもなりかねません。

私としては、安倍政権はそのような愚策を実行するとはとても思えませんので、先の私の中国経済の悪化が日本に及ぼす影響は軽微という予測が是非ともあたって欲しいものと思っています。




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