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2016年11月30日水曜日

安倍首相と米露のバトル口火 TPPは“トランプ版”に衣替え、北方領土はプーチン氏と論戦に―【私の論評】日米は、中国の現体制と、ロシアの中のソ連を叩き潰せ(゚д゚)!


TPP離脱を明言したトランプ次期米大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
トランプ次期米大統領はビデオ演説で、大統領就任初日にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を離脱すると明言した。一方、ロシアは北方領土にミサイルを配備するなど、12月の安倍晋三首相とプーチン大統領との会談の成果を危惧する声もあがっている。

 まず、TPPであるが、今のままでの成立は無理な状況になった。TPP諸国の国内総生産(GDP)の6割は米国であるので、米国抜きのTPPはありえない。

 まずTPPの性格をおさらいしておこう。TPPは、(1)自由貿易(2)知的所有権保護や国営企業規制が含まれることから、中国除外という性格(3)多国間協定-という3つの要素がある。

 一方、トランプ氏は、共和党であり、米国議会の上下院はともに共和党が取っている。トランプ氏は選挙期間中は共和党の重鎮と反目していたが、ここは議会の共和党と組んで政権運営する可能性が高いと筆者は見ている。

 というのも、共和党政権は8年ぶりであり、政権運営の妙味を味わいたいと考えるのが自然だ。このため、トランプ氏と議会共和党は妥協し合い、ウィン-ウィンの関係になるはずだ。共和党は伝統的に自由貿易を指向している。また、民主党のクリントン氏が中国利権と近いとされたこともあって、対中姿勢は毅然としたものとなる可能性もある。

 こうしたトランプ政権と議会の関係を考えると、TPPは仕切り直しになって、中国抜きの自由貿易を二国間で締結するスタイルが基本となるだろう。

 となると、まったく白紙から交渉するのでは時間がかかるので、日本としては、既にまとまったTPPを原案として、米国との二国間交渉をすることもあり得る。

 二国間交渉であるので、日本にとっては厳しいものになるが、この方式がうまくいけば、日本以外のTPP参加国も同様な方法で米国と二国間交渉すれば、それが事実上、「トランプ版TPP」となる。

 一方、北方領土交渉は難しい。戦後70年間も解決できなかった問題なので、今回簡単に解決できると甘く考えないほうがいい。ロシアは、巨額収賄の容疑でウリュカエフ経済発展相の身柄を拘束し、捜査に乗り出したと発表した。同氏は、日本側の窓口を務める世耕弘成経済産業相のカウンターパートであり、これまで日本の対ロシア経済協力計画のロシア側窓口だった。

ウリュカエフ経済発展相
 ミサイル配備や担当大臣拘束という一連の動きが、北方領土・日露平和条約交渉を妨害しようという意図の表れなのか、日本側の期待値のハードルを下げるロシア側からのサインなのか、よくわからない。いずれにしても、12月の安倍・プーチン会談はガチンコで両国国益のぶつかり合いになるだろう。

 トランプ氏が次期大統領になったので、対ロシア制裁が緩んでいくという見通しをプーチン大統領が持っているなら、ロシアにとって北方領土問題の優先順位は低くなる。一筋縄ではいかないのは当然だが、安倍首相はトランプ次期大統領を巻き込みながら、対ロシア戦略を練っているだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日米は、中国の現体制と、ロシアの中のソ連を叩き潰せ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事、概ね同意です。日米二国間交渉は、日本にとっては厳しいものになるのは明らかです。しかし、ここで負けてはせっかくのTPP交渉での、粘りが無駄になります。おそらく、TPP交渉以上に難航し、時間もかかることでしょう。

そうして今回は、日米二国間だけの問題ではなく、二国間交渉によって実質上のトランプ版TPPを創設しようというのですから、日本としては、TPP加盟国の応援もうけつつ、米国との交渉を成功させる必要があります。日本が下手に米国に折れれば、他国の信頼を失うことになります。

さて、米国との交渉についてはこのようなところですが、ロシアのとの北方領土交渉は高橋洋一氏も指摘するように更に困難を極めることでしょう。

私たちは、ロシアとの北方領土交渉に関することを述べる前に、ロシアとはどういう国なのかを知っておく必要があります。

現代ロシアを理解するうえで大切なことは、ロシアとソ連は宿敵だということです。ロシアを乗っ取ってできた国がソ連なのですから、両者を一緒くたに考えるべきではありません。

エリツィンは現在では単なる酔っ払いとしか評価されていないのですが、間違いなくロシアの愛国者でした。そのエリツィンから大統領の地位を禅譲されたプーチンがやっていることは、ソ連邦の復活であり、ロシアに対する独裁です。

ロシアの愛国者エリツィン氏
プーチンが日本文化に詳しいから交渉しやすいなどという甘い幻想は捨て去るべきです。ロシアはそれほど単純な国ではありません。例えば、2002年にアレクサンダー・レベジというロシアの政治家が死にました。

彼はロシアの自由化を進め、チェチェン紛争の凍結にも尽力した人物です。NATOや日米同盟にも融和的でした。何より、近代文明とは何かを理解し、実行しようとしました。

ロシア史のなかでも、一番の真人間と言っていい存在です。しかし、彼の末路はヘリコプター事故死です。ロシアではなぜか、プーチンの政敵が『謎の事故死』を繰り返します。このレベジについてなんら言及せず、『プーチンは親日家だから』などと平気で言っているような輩は、間違いなく馬鹿かロシアスパイです。

アレクサンダー・レベジ
しかし、無論プーチンに限らず誰にも様々な面があります。どんな物事にも良い面もあれば悪い面もあります。『誰が善玉で誰が悪玉か』という子どものような区別の仕方はすべきではありません。

ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定跡が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
北方領土へのミサイル配備や担当大臣拘束という一連の動きは、北方領土・日露平和条約交渉を妨害しようというプーチンの意図の表れです。

日本としては、米国と貿易交渉で徹底的にケンカをして、ロシアのプーチン幻想など捨て去り、米国と共同しつつ、何十年かけてもロシアの中のソ連をぶっ潰す、中国の現体制をぶっ潰すことを念頭においた外交を展開すべきです。

まさに、これから安倍首相と米露のバトルが口火切つて落とされるわけです。

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