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2019年4月23日火曜日

「令和おじさん」菅義偉、そろい始めたポスト安倍の3条件―【私の論評】自民議員のほとんどがマクロ経済を理解しないが故にこれは党内政治において強力な武器に(゚д゚)!

「令和おじさん」菅義偉、そろい始めたポスト安倍の3条件

川上和久(国際医療福祉大学教授)

 「亥(い)年選挙のジンクス」と言われている現象がある。亥年は、春の統一地方選と参院選が12年に1度重なる。統一地方選で地方議員が「選挙疲れ」することで、参院選で地方組織がフル回転せず、自民党が議席を思ったように取れない、というジンクスだ。

 過去の亥年選挙は、比例代表制が初めて実施された1983年の参院選では自民党が68議席を獲得しているものの、95年の参院選では46議席、2007年の参院選では37議席と惨敗している。特に、07年は第1次安倍内閣の下で行われ、安倍晋三首相退陣の引き金ともなった。

 選挙は歴史であり、その時々の政治事情が色濃く反映する。地方組織がフル回転しないで自民党の議席が伸び悩む、という仮説に対しては、「言い過ぎではないか」との批判も寄せられている。

 2019年、統一地方選の前半戦では、41道府県議選で自民党が1158議席を獲得した。過半数に達し、15年の前回選挙の獲得議席を上回った。だが、「大乱の前兆」を感じ取った人も少なくないのではないか。

 統一地方選で、本人が意識していたかどうかはともかくとして、「令和(れいわ)効果」を見せつけたのが菅義偉(よしひで)官房長官だ。11道府県知事選で唯一の与野党激突となった北海道知事選。自らの主導で38歳の鈴木直道前夕張市長を担ぎ出し、反発して他の候補を模索した自民党の道議会議員らをねじ伏せた。結果は鈴木氏が約162万票を獲得し、野党統一候補となった石川知裕元衆院議員に60万票以上の大差をつけた。

 特筆すべきは投票日前日の4月6日、札幌市で行われた演説会に菅氏が登場した時だ。「あ、令和おじさんだ!」と観衆の大注目を浴び、スマートフォンのシャッターがひっきりなしに切られていたという。

 もちろん、官房長官としての在任期間は2012年12月26日に就任してから既に6年半になろうとしており、記者会見でのやりとりがしょっちゅうニュースになる。東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者とのバトルでも、ポーカーフェースで淡々とこなす印象が強かった。

2014年8月1日、閣議前の写真撮影で、安倍首相、麻生副総理らが不在のため、
首相臨時代理として中央に座り、談笑する菅義偉官房長官

 しかし、「令和」発表記者会見での笑顔がそれを一気に覆した。ふだん官房長官の記者会見を見る人の数とは次元が違う。官房長官が「令和」を掲げた写真の号外は奪い合いの人気となり、「令和おじさん」の名前が一気に広がった。

 4月13日に新宿御苑(ぎょえん)で行われた内閣主催の「桜を見る会」でも、菅官房長官との記念撮影のために並ぶ行列がひときわ目立った。

 それにひきかえ、この間、菅氏と並び「岸破義信」と言われたポスト安倍と目される自民党の岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、加藤勝信総務会長は「令和おじさん」の前に、圧倒的に存在感を欠いた。石破氏は「令和には違和感がある」というようなコメントをして、「これだから、『安倍政治ノー』などと言い続けている左派の連中から支持される野党政治家に成り下がったと言われるんだ」と、党内からもさらに顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 一方、菅氏と安倍政権を支える「三羽ガラス」麻生太郎副総理・財務相、二階俊博幹事長はどうか。麻生氏は、自らの地元、福岡県知事選で、現職の小川洋知事の対抗馬として元厚生労働省官僚の武内和久氏をぶつけ、安倍首相に直談判して自民党の推薦までもぎ取った。小川氏には、8年前に自分が主導して知事にしたにもかかわらず、補選の際に自分が立てた候補を応援してくれなかった意趣返しといわんばかりだ。

 あげくの果てに、麻生氏の元秘書で麻生派所属の塚田一郎前国土交通副大臣が地元の道路建設をめぐり、安倍首相と麻生氏に「忖度した」と発言し、同5日に副大臣辞任に追い込まれた。

 結果は小川氏が約129万票に対し、武内氏は約35万票とトリプルスコアで惨敗した。これでは、さすがに傲慢(ごうまん)な麻生氏も「自らの不徳の致すところ」と頭を下げざるを得なかった。

 二階幹事長は、統一地方選前半で道府議選で自民党候補が過半数を得た。ところが、地元の和歌山県議選の御坊市選挙区で、鉄壁の当選8期を誇った自らの元秘書の現職が共産党新人の元同市議に敗北するというまさかの結果となった。3年前の御坊市長選で、二階氏が現職に対して長男を立てて敗れたこともあり、地元での対立が共産党候補に敗れるという結果になってしまった。

 それに追い打ちをかけたのが、二階派の櫻田義孝五輪相の失言による辞任だ。岩手県選出の高橋比奈子衆院議員のパーティーのあいさつで、「復興よりも高橋さんが大事」と口を滑らせ、事実上の更迭となった。

 元はといえば、櫻田氏を閣僚に推挙したのは派閥領袖(りょうしゅう)の二階氏だ。安倍首相は「任命責任は私にある」と殊勝に頭を下げたが、櫻田氏を押し込み、かばい立てした挙げ句にしりぬぐいさせられた二階氏への屈託は察するに余りあるものがある。

 麻生、二階の両氏が傷つき、他のポスト安倍候補が存在感を示せない中にあって、菅氏が「令和効果」でダントツのポスト安倍候補に躍り出た。

 それにひきかえ、この間、菅氏と並び「岸破義信」と言われたポスト安倍と目される自民党の岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、加藤勝信総務会長は「令和おじさん」の前に、圧倒的に存在感を欠いた。石破氏は「令和には違和感がある」というようなコメントをして、「これだから、『安倍政治ノー』などと言い続けている左派の連中から支持される野党政治家に成り下がったと言われるんだ」と、党内からもさらに顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 一方、菅氏と安倍政権を支える「三羽ガラス」麻生太郎副総理・財務相、二階俊博幹事長はどうか。麻生氏は、自らの地元、福岡県知事選で、現職の小川洋知事の対抗馬として元厚生労働省官僚の武内和久氏をぶつけ、安倍首相に直談判して自民党の推薦までもぎ取った。小川氏には、8年前に自分が主導して知事にしたにもかかわらず、補選の際に自分が立てた候補を応援してくれなかった意趣返しといわんばかりだ。

 あげくの果てに、麻生氏の元秘書で麻生派所属の塚田一郎前国土交通副大臣が地元の道路建設をめぐり、安倍首相と麻生氏に「忖度した」と発言し、同5日に副大臣辞任に追い込まれた。

 結果は小川氏が約129万票に対し、武内氏は約35万票とトリプルスコアで惨敗した。これでは、さすがに傲慢(ごうまん)な麻生氏も「自らの不徳の致すところ」と頭を下げざるを得なかった。

 二階幹事長は、統一地方選前半で道府議選で自民党候補が過半数を得た。ところが、地元の和歌山県議選の御坊市選挙区で、鉄壁の当選8期を誇った自らの元秘書の現職が共産党新人の元同市議に敗北するというまさかの結果となった。3年前の御坊市長選で、二階氏が現職に対して長男を立てて敗れたこともあり、地元での対立が共産党候補に敗れるという結果になってしまった。

 それに追い打ちをかけたのが、二階派の櫻田義孝五輪相の失言による辞任だ。岩手県選出の高橋比奈子衆院議員のパーティーのあいさつで、「復興よりも高橋さんが大事」と口を滑らせ、事実上の更迭となった。

 元はといえば、櫻田氏を閣僚に推挙したのは派閥領袖(りょうしゅう)の二階氏だ。安倍首相は「任命責任は私にある」と殊勝に頭を下げたが、櫻田氏を押し込み、かばい立てした挙げ句にしりぬぐいさせられた二階氏への屈託は察するに余りあるものがある。

 麻生、二階の両氏が傷つき、他のポスト安倍候補が存在感を示せない中にあって、菅氏が「令和効果」でダントツのポスト安倍候補に躍り出た。

2013年10月、衆院予算委員会に臨み、二階俊博委員長(右)に話しかける麻生太郎
副総理・財務金融相

 産経新聞社とFNNが2019年4月に実施した合同世論調査では、次期首相にふさわしいとして、菅氏が5・8%の支持を集めた。自民党の小泉進次郎厚生労働部会長の25・9%、石破氏の20・7%らに次ぐ4位に浮上した。昨年10月の調査では、菅氏への支持は2・7%で、全体の6位にすぎなかった。しかも、自民党支持層に限ると、菅氏は9・4%の支持を集めている。

 そこで思い起こされるのが、長く官房長官を務めて、首相に駆け上がった福田康夫氏の例だ。福田氏は、2000年10月27日から04年5月7日まで、森喜朗内閣、小泉純一郎内閣の二つの内閣にまたがって1289日間官房長官を務め、第1次内閣での安倍首相の退陣に伴って首相となった。

 官房長官は基本的に、首相官邸から離れることがほとんどできない。したがって、外務大臣のように、外交で華々しい脚光を浴びることもないし、幹事長のように、選挙を仕切って党内からその実力を認められることも難しい。最低限、三つの条件がかみ合わないと、たとえ官房長官を長く務めても、首相になるのは至難の業だ。

 その三つの条件は「前職が、かなり急な形で首相の座を降りる形になった」「前職の首相の後を継ぐ政治家として、適材がいない」「官房長官としての手腕を認められており、幹事長経験や重要閣僚の経験がなくても、周囲がその手腕で政権を運営することを期待される」というものだ。

 菅氏は5月9日から異例の訪米を行う。もちろん、安倍首相の指示による訪米だが、「安倍首相は、自分が万が一のときに備え、米国に『この政治家もよろしく』とサインを送っている」との見立てもある。当然、米国も菅氏が自らの国益に合致する人材かどうかを徹底的にマークし始めるだろう。

 ポスト安倍として実績を伴う存在感がある政治家はいないし、菅氏は官僚への抑えも効いている。第2、第3の条件は整っていると見ていいだろう。そこに、「亥年ジンクス」で自民党の参院選大敗、安倍首相の退陣などという事態になれば、野党支持層に人気の高い石破氏などに絶対に政権は渡せない、という思いが安倍首相にはあろう。

 菅氏は秋田県湯沢市の出身だ。これまでの歴代首相の中で、東北出身の首相は岩手県に偏っている。原敬(第19代)、斎藤実(第30代)、米内光政(第37代)、鈴木善幸(第70代)と4人の東北出身の首相はいずれも岩手県出身だ。

 「秋田県から初の首相を」という期待は地元ではいやがうえにも高まっている。令和への改元効果と統一地方選による実力者の蹉跌(さてつ)で、菅氏の存在感は高まるばかりだ。

 だが、当の菅氏は「絶対にない」とポーカーフェースを貫いている。おそらく、安倍首相が首相である限りは安倍首相を支え続ける、というスタンスを貫き続けながら、ここまで支えてくれた菅官房長官なら、自分の政治を引き継いでくれる、と思ってくれるような安倍首相との信頼関係を何より大事にしているのだろう。

2018年3月31日、衆院予算委で自らの携帯電話を楽しそうに安倍晋三首相(左)に
見せる菅義偉官房長官

 天の時、地の利、人の和。「令和おじさん」への大きな流れができつつある。後継首相として解散・総選挙を打っても、「令和おじさん」のプラスのイメージは計り知れないだろう。選挙に強い、となれば、自分が落選したくない議員たちはますます「令和おじさん」に右に倣(なら)えとなる。

【私の論評】自民議員のほとんどがマクロ経済を理解しないが故に、これは党内政治において強力な武器に(゚д゚)!


過去において、平成おじさんだった小渕恵三は、後に総理大臣となっています。だから、令和おじさんの菅氏が総理大臣になることは十分にあり得ると思います。

冒頭の記事では、最低限、三つの条件がかみ合わないと、たとえ官房長官を長く務めても、首相になるのは至難の業だとしています。

その三つの条件は「前職が、かなり急な形で首相の座を降りる形になった」「前職の首相の後を継ぐ政治家として、適材がいない」「官房長官としての手腕を認められており、幹事長経験や重要閣僚の経験がなくても、周囲がその手腕で政権を運営することを期待される」というものです。

私自身としては、安倍総裁四選の声もでている昨今、菅官房長官がすぐにこの三条件を満たして、安倍総理が現在の任期を終えたときにすぐに総理大臣になることもあながちあり得ないことではないと思います。

また、安倍総理はこの「三条件」の他に、次の総理大臣になるにはもう一つの重要な条件が必要と考えていると思います。

それは、マクロ経済への理解ではないかと思います。無論マクロ経済への理解とはいっても、経済学者のように緻密に理解しなければならないということではなく、その時々の経済情勢にあわせて、どのような財政政策と金融政策を取ればよいのか、その方向性を理解できるくらいの能力は必要と考えているのではないかと思います。

あわせて、専門家の意見を聞いて、どの人物の意見が、実体経済に即したマクロ経済的な政策を提言できるのかを判断できる能力が必要と考えていると思います。

なぜそのようなことがいえるかといえば、安倍晋三氏が、第一次安倍政権が崩壊して退陣して、第二次安倍政権が成立する直前まで、何をしていたかを知れば、理解できると思います。

安倍首相といえば、安全保障や歴史認識などの保守的なイメージが強かったのですが、この間に経済・金融政策に興味を持つようになりました。

メディアでは安倍さんは経済が苦手だとしていましたが、安倍氏はもともと細かい産業政策などチマチマした話に興味がなかったようです。安倍氏は一段高いもっと大きなことをやるべきだと考えていて、実は前政権時代から「マクロ経済に興味がある」といっていたそうです。それを第一次安倍政権が崩壊した直後5年ほど、勉強し続けていたようです。

安倍さんは東北震災後からデフレ・円高解消の勉強会をやろうと言い出し、議連をつくりました。当時から、人集めに動き出していたのです。

その後、与野党いっしょに「デフレ脱却議連」をつくりました。超党派の議連で、会長をどうするかということになって、山本幸三・衆院議員に頼まれて会長まで引き受けたのです。

そのくらいマクロ経済や金融政策に関心があったし、その頃から多数派工作も考えていたんだと思います。

安倍氏は、世界標準、グローバルスタンダードにこだわっています。金融でも規制緩和でも、それから国防軍という名前まで世界標準に合わせようとしているのです。

こういう姿勢はブレていないというより、DNAのようです。細かいところに目が行く人と、そうでない人がいます。安倍氏は、大きなことに目が行くDNAなのだと思います。そうして、これは政治家として重要です。

過去の日本の例が示すしように、マクロ経済政策が失敗している最中に、ミクロ経済政策をいろいろやってもことごとく失敗します。特に、ミクロ経済政策に関しては、企業努力でもなんとかなるところがありますが、マクロ経済政策に関しては、政治家が頑張らないと、特に政権が頑張らないとどうしようもありません。

政治家によるマクロ経済の理解がなけば、経済政策はことごとく失敗してしまいます。そのため、実際平成年間の経済政策はことごとく失敗して、平成年間のほとんど時期日本は、デフレスパイラルのどん底に沈んでいました。

平成年間の末期に安倍政権ができあがり、当初はまともなマクロ経済政策で雇用も経済も順調に伸びたのですが、2014年の消費税増税でまた経済が落ち込んでしまいました。安倍総理としては、財務省や多くの政治家、エコノミストまでが「増税しても日本経済への影響は軽微」という主張に抗えず、増税してしまったものの、その悪影響は甚大で、日本経済はデフレ基調にもどってしまいました。

         マクロ経済政策の間違いにより平成年間(1989年1月8日から2019年4月30日まで)
         のほとんどはデフレだった

その後も、消費税増税をすべきという風潮がありましたが、安倍総理は二度も増税を見送りました。私は、このブログでも掲載したように、今年10月の増税を見送り、国民の信を問うため、衆院を解散し、衆参同時選挙を実行すると思います。

マクロ経済学を理解している国会議員(候補)リストをあげると、 安倍総理、 菅官房長官 、渡辺よしみ、 馬淵澄夫、金子洋一(もと参議院議員)くらいなものです。山本幸三氏は財務省の影響が強すぎるのて、このリストには掲載できないと思います。

自民党の議員は、残念ながら次期総裁候補と見られる人々の中にも、ただの一人もマクロ経済理解者が存在しません。

そうなると、安倍総理は菅官房長官を次期、総理にと考えるのは当然のことだと思います。

ただし、二階氏が「安倍四選もあり得る」と発言していること、さらには菅氏の年齢が70歳と高齢なことから、私自身は、安倍総理が四選後に、マクロ経済政策を理解している総裁候補者が現れない限りにおいて、菅氏に白羽の矢が当たることは十分あり得るシナリオだと思います。

安倍総理が四選した場合、安倍総理は、菅氏を外務大臣もしくは幹事長などの要職につけ、総裁候補として経験を積ませるのではないかと思います。

今回の参院選(もしくは衆参同時選挙)で、自民党がボロ負けすれば、菅氏が急遽総理大臣になるというシナリオも十分あり得ると思います。

本当は、ポスト安倍の有力候補が、マクロ経済政策を理解してくれれば、このようなことにはならのでしょうが、残念ながらそうはならないのが、現実です。

自民党議員の皆さんの中で本当にマクロ経済政策を理解する人が現れ、そうして、財務省に籠絡されることなく、うまく扱える能力を身につければ、誰もが総裁候補になり得ると思います。安倍総理が再び不死鳥のように総理に返り咲くことができたのは、一重にマクロ経済の理解によるものだと思います。そうでなれば、返り咲きはあり得なかったでしょう。

安倍氏がマクロ経済を理解しているので、市場がこれを好感し、安倍氏が自民党の総裁になった途端に、まだ総理大臣にもなっておらず日本経済が円高、デフレから脱していない頃から株価が上昇しはじめたことを忘れるべきではありません。

菅官房長官が、総理大臣になったとしたら、これも、無論菅氏人柄によるところも否定できませんが、何よりもマクロ経済の理解によるものと思います。

菅氏を除くポスト安倍の候補者らが、生彩を欠くのは、やはりマクロ経済を理解していなからでしょう。彼らは、そのことを理解できないので、頓珍漢な行動をしたり、生彩を欠く結果になっていますが、なぜそうなるのかその理由を理解できないようです。

自民党の議員は、国民のためにも自分のためにも、一日もはやくマクロ経済を理解すべきです。ほとんどの自民議員がマクロ経済を理解しないが故にこれは党内政治においても強力な武器になると思います。より高いポストを得るためにも、これからは、マクロ経済の理解は欠かせないです。いくら、党内政治でうまく立ち回ろうとしても、これを欠けば、総理大臣のポストは永遠にまわつてこないと考えるべきです。

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2018年8月8日水曜日

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 ―【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

いつの間にか「日本主導」のTPP 自由主義圏の「対中連携」に期待 デタラメと無知露呈の反対派 

TPPにはかつて、世界中で反対運動が巻き起こった
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 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては根強い反対論があったが、現状では英国の参加支援などでも日本が中心的役割を担っているようにみえる。

 TPPのメリットは自由貿易の恩恵だ。これは約200年の経済学の歴史で最も確実な理論だといえる。ただ、自由貿易でメリットを受けるのは輸出者、そして消費者だ。一方で、デメリットになるのが輸入品と競合する国内生産者だ。「自由貿易の恩恵」とは、メリットがデメリットを上回ることを言う。

 これは経済理論だけではなく、定量的にも国際標準の方法で確かめられる。それに基づく政府試算で「おおむね10年間で実質国内総生産(GDP)3兆円増」とされている。これは、「おおむね10年後に今よりGDPが差し引きで3兆円増加し、それが続く」というもので、反対論者が唱えていた「10年間累積で3兆円」ではない。反対論者は経済分析もできずに、意味不明なまま反対していたのだ。

 国家間紛争ルールを定めたISD条項など一般になじみのないものを毒素条項だと脅す反対論者もいた。この条項を利用して、米企業が日本を訴えて日本は負けるというものだ。

 しかし、この条項は、これまでの国際協定ではかならず盛り込まれており、日本が不利益を被ったこともない。法律上の不備があるとまずいが、日本の精緻な法体系ではこれまでやられたことはない。このように、反対論者は無知で、かなりでたらめだった。

 米国がTPPから離脱すると、反対派は一気にトーンダウンしたのだが、TPPから米国がいなくなっても、TPP加盟国の中には米系企業があるので、ISD条項の脅威は同じだ。反対派がいかに感情的で、ロジカルでない意見を言っていたかがここでも分かる。

 米国のおかげで、日本の存在感が高まったのは間違いない。米国がTPPに失望したのは、かつて本コラムで書いたように医薬品などで日本が交渉をうまくやって勝ちすぎたのもある。

 加盟国のバイオ医薬品の独占的に販売を認めるデータ保護期間(製薬会社に独占的に販売を認める期間)が基本は各国の法制度、実質8年間となって日本の主張がほぼ認められた。米国の国内法は12年であり、米国は医薬メーカーのために、独占期間をできるだけ長くと主張していたが、日本などの主張に負けた格好だ。

 こうした交渉にもまして、基本的なスタンスとして、日本は自由貿易のメリットを強調し、粘り強く交渉したのが大きい。経済的な連携は政治や軍事での同盟関係と密接な関係があり、TPPは中国抜きの経済連携として重要であることを日本は一貫して主張した。自由主義圏の日本はその点でぶれないのが、TPPの中でも主導的な役割を果たしている最大の理由だろう。

 中国の国際覇権的な野望が明らかになるにつれて、対中国の関係で、日本に期待する国は少なくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】TPPは加入できない中国と、保護主義に走りそうな米国の両方を牽制する強力な武器(゚д゚)!

日米などアジア太平洋地域の12カ国が署名した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から米国が離脱したため、残る11カ国でまとめ直した新協定をTPP11といいます。2018年3月に署名しました。

参加国は日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。6カ国以上が国内手続きを完了すると、60日後に発効します。

この、TPPに参加する11カ国が加盟国拡大に向け、一歩踏み出しました。協定が発効すれば世界の貿易額の15%を占める巨大な自由貿易圏が誕生し、加盟国が増えれば経済効果はさらに高まります。

TPPには中国の「包囲網」の意味合いもあったが今では保護主義に走る米国も同様、自由で公正な貿易を守るためにも加盟国拡大が急がれるところです。

先月19日に閉幕したTPPの首席交渉官会合は、後から加盟したい国が次々と手を挙げました。このような、貿易枠組みは世界初です。参加に意欲を示す6カ国・地域のうち、タイとコロンビアは協定発効直後にも参加の意思を正式に通知してくる可能性があります。

TPPは地域や経済の発展段階が異なる国が集まりますが、知的財産権保護など幅広い分野のルールを定め、企業がビジネスを展開しやすくする質の高い協定です。11カ国は新規加盟国にも高水準のルールを当てはめる方針で、受け入れ側としても準備を急がなければならないです。

ただし、トランプ米政権は11月の中間選挙を意識してか、日本にも自動車や鉄鋼の輸入に関して一方的な要求を突きつけてきました。国際通貨基金(IMF)は事態が激化すれば、世界の国内総生産(GDP)が最大0・5%縮小すると試算しています。

経済政策を重視する安倍晋三首相は「保護主義からは何も生まれない」として、自由貿易体制の維持に取り組みます。今月は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内大筋合意の方向性を打ち出し、欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)にも署名しました。

TPPはEPAの一種でもあり、2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAです。協定名は「パートナーシップ協定」となっています。

このEPA、TPPには中国は参加できません。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国は入れない日欧EPA 中国に“取り込まれる”ドイツを牽制した安倍外交 ―【私の論評】「ぶったるみドイツ」に二連発パンチを喰らわした日米(゚д゚)!
記者会見を終え、トゥスク欧州理事会議長(右)と握手を交わす
ユンケル欧州委員会委員長。中央は安倍晋三首相=7月17日午後、首相官邸
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、中国がEPAやTPPに最初から入ることができない理由を掲載した部分のみ以下に引用します。
中国においては、そもそも民主化、政治と経済の分離、法治国家がなされていません。
わかりやすい事例をだすと、たとえば戸籍です。すべての中国人の戸籍は、農村戸籍(農業戸籍)と都市戸籍(非農業戸籍)に分けられています。農村戸籍が約6割、都市戸籍が約4割で、1950年代後半に、都市住民の食糧供給を安定させ、社会保障を充実させるために導入さました。 
以来、中国では農村から都市への移動は厳しく制限されていて、日本人のように自分の意思で勝手に引っ越ししたりはできないです。ちなみに都市で働く農民工、いわゆる出稼ぎ労働者がいるではないか、と思われるでしょうが、彼らは農村戸籍のまま都市で働くので、都市では都市住民と同じ社会保障は受けられません。これでは、民主的とはいえば、EPAには入れないのは当然です。
株価が急落したため落ち込む中国の個人投資家
株価が急落すると政府が介入して株式取引を中止することもある
さらに、中国は国家資本主義ともいわれるように、政治と経済が不可分に結びついており、先進国にみられるような、政府による経済の規制という範疇など超えて、政府が経済に直接関与することができます。実際中国の株式市場で株価が下落したときに、政府が介入して株式を売買できないようにしたこともあります。

中国にも司法組織なるものが存在するが、
その組織は中国共産党の下に位置している

中国は30年にわたる「改革開放」政策により、著しい経済発展を成し遂げました。ところが、依然として法治国家ではなく「人治国家」であるとの批判が多いです。それに対して中国政府はこれまでの30年間の法整備を理由に、「法制建設」が著しく進んでいると主張しています。 

確かに30年前に比べると、中国の「法制」(法律の制定)は進んでおり、現在は憲法、民法、刑法などの基本法制に加え、物権法、担保法、独占禁止法などの専門法制も制定されています。それによって、人々が日常生活の中で依拠することのできる法的根拠ができてはいます。 

その一方で、それを効率的に施行するための施行細則は大幅に遅れています。何よりも、行政、立法、司法の三権分立が導入されていないため、法の執行が不十分と言わざるを得ないです。中国では、裁判所は全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。  

このような中国は、とても日米をはじめとする先進国と、まともな自由貿易などできません。検討するまでもなく、最初から経済連携協定(EPA)など締結できないのです。
このようなTPPは、中国包囲網となるばかりではなく、保護主義に走りそうな米国に対する大きな牽制ともなります。ただし、首席交渉官会合では関係者によれば、米国の復帰や保護主義への懸念は一切話題にならなかったそうです。

また、新規加盟の可能性がある国・地域もさまざまな事情を抱えています。英国はEU離脱の行方が定まらないです。韓国や台湾も、日本や米国、中国との関係に影響が出ないように情勢を見極める可能性があります。米国と強固な同盟関係を結ぶ日本の重要性が、ひときわ高まってきました。

日本が自由貿易に邁進することが、世界の安定に寄与することは間違いないです。米国が中国に対して、金融などの分野での市場開放や人民元の完璧な自由相場にすることを迫ったり、知的財産権の保護を迫ったりすうちは良いですが、その範疇を超えて他国にまで保護主義的になることは、絶対に防がなければなりません。

これに関しては、やはりTPPが強力な武器になることは言うまでもありません。TPPにより域内が発展し、これに乗り遅れた米国が脅威に感じるくらいに域内を発展させていくべきです。

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