2019年4月18日木曜日

アメリカの株高と金利安定は長期化しそうだ  日本は消費増税を取りやめたほうがいい―【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!


東洋経済オンライン / 2019年4月17日 7時40分

NYダウは16日の時点では回復している


アメリカ株の回復が続いている。ニューヨークダウ平均などは最高値圏まであと一歩のところまで上昇している。

筆者が2月に執筆したコラム「アメリカ株は『もう上がらない』と言い切れるか」(2月12日配信)では、早期バランスシート縮小停止などFRB(連邦準備制度理事会)による緩和政策が、新興国を含めた世界経済の安定をもたらし、一部で高値警戒感がささやかれていたアメリカ株を中心に、リスク資産の上昇をもたらす、との見通しを示した。

■「FRBの豹変」は2016年と似ている

その後実際に、FRBは「政策スタンスのハト派化」を強めた。3月半ばのFOMC(連邦公開市場委員会)において、多くのメンバーが政策金利を当面据え置くことを示し、そしてバランスシート縮小を9月早々に停止するとした。

FRBの政策判断の背景には、成長率、インフレが下振れるリスクが高まっていることがある。しかし、2018年後半のアメリカを震源地とした株式市場の大幅な下落は、FRBの判断ミスに対する懸念が主たる要因だった。FRBの政策については、従来からドナルド・トランプ大統領がたびたび批判するなど、混乱している状況をどうみるか、考え方はさまざまだろう。

実際には、インフレ率が2%前後で安定しているにもかかわらず、FRBが政策金利を3%台へ利上げすることへの懸念は、トランプ大統領だけではなく多くの投資家に共有されていた。昨年末から年初早々にジェローム・パウエル議長などが利上げ見送りのメッセージを早々に示し大きく方針転換を行い、金融市場が発するリスクシグナルに柔軟に配慮した、アグレッシブな政策変更は妥当と筆者はみている。

このFRBの豹変は、金融市場が動揺した後に路線変更を行った2016年初と似ている。当時も、2016年初に1年間に4回の利上げを想定していたFRBは、あっさりと利上げを見送り、その後の景気回復と株高をもたらした。2016年と2019年の共通点を指摘する声は増えているが、年初から筆者自身はこの点を強く意識していた。

依然、欧州などの経済指標は停滞している。だが、下落していたグローバル製造業景況感指数は、3月に下げ止まりの兆しがみられる。金融市場で悲観論が強まった2016年初に世界経済が下げ止まったが、この点でも2019年と2016年は似てきている。年初から株高のピッチが速いため多少のスピード調整はありうるが、筆者は「2019年は金利安定とリスク資産上昇が併存し続ける可能性が高い」とみている。

日本の経済メディアでは、筆者からすれば根拠が曖昧にしか思えない「金融緩和の弊害」が強調され、また金融政策の役割や効果を軽視する論調が目立つ。実際には、一足早く成長率が高まり、中央銀行が利上げを始めたアメリカでも、金融緩和的な状況を保つことが重要である構図は、2019年になっても変わっていない。

主要な先進国、さらには多くの新興国で経済成長率が2000年代よりも高まらない中で、中銀が経済を浮上させる景気刺激的な総需要安定化政策を継続することが必要ということである。

また、労働市場において、アメリカや日本などで大幅な失業率の低下がみられている。失業率低下が、賃金やサービスインフレの上昇につながっていないことには、さまざまな議論があるが、筆者は依然として日米ともに失業率には低下余地があると考えている。

もはや10年以上も経過するが、2008年の世界的な金融危機による経済ショックが極めて大きかったが故に、表面的な失業率の改善などが示すよりも経済全体にはなおスラック(余剰)が残っており、それが低インフレの長期化をもたらしているとみている。

■「消費増税」=「緊縮財政政策」への危機感が薄すぎる

FRBも、2019年初からのハト派方向への転換に加えて、6月は大規模な会議を開催する予定だ。そこでは、これまでFOMC等で議論してきた、次の景気後退に備えた政策枠組みなどが話し合われる見込みだ。

国民の経済厚生を高めるための金融政策の在り方などについて、重鎮の経済学者なども参加する予定であり、具体的な、インフレ目標の引き上げなどを含めた金融政策のフレームワークなどもテーマになるという。経済安定、低インフレが長期化する中で、インフレ上振れを許容するアグレッシブな金融政策の妥当性が議論されるのではないか。

アメリカでこうした議論が活発になっていることには、低インフレ、低金利が長期化していることがある。これは、主要国経済の「日本化」ともいえるが、この状況に経済学者やエコノミストが強い危機感を感じていることが、政策議論が活発になっている要因の背景となっている。

本来であれば2%インフレの目標実現に一番遠い位置にある日本において、こうした議論がより真剣に行われる必要があるはずだ。ただ、実際には反対のことが起きている。日本銀行の金融政策運営は、2018年からは、利上げバイアスが強い事務方の影響が増している。根拠が曖昧な「金融緩和の弊害」が強調されるなど、金融政策に関する議論について、日本では2012年以前のように、アメリカなどとの対比でかなり低調になっているようにみえる。

一方、2019年10月予定の消費増税については、景気指標の下振れを受けて見送られる可能性がやや高まっているが、可能性は五分五分だろうか。もし増税が実現すればGDPを0.5%前後押し下げるマイナス効果があり、日本経済は主要先進国の中で最も緊縮的な状況に直面する、とみている。だが、日本の経済学者などは、緊縮財政政策への危機感が薄いままである。

こうした状況では、これまでも連載で繰り返し述べてきたが、「アメリカ株>日本株」、のパフォーマンス格差が続く可能性は依然として高いとみる。こうした構図が変わるには、日本銀行による金融緩和徹底は言うまでもないが、消費増税の取りやめ、あるいは家計部門への負担を相殺する追加的な財政政策の発動が必要だろう。

村上 尚己:エコノミスト

【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!

増税などすべきでない理由は、このブログでも何度か掲載してきました。私としては、ぞ増税しないのがごく当然であり、増税するのは異常であるとしか思えません。

特に、14年4月に増税したあとのことを考えれば、10月に再度増税するということは狂気の沙汰としか思えません。

しかし、財務省の増税キャンペーンに煽られたのか、多くの頭の悪い政治家や、マスコミ、それに追随する識者など、あたかも増税は既定路線であるかのような口ぶりで、増税を語っています。

しかし、そうとばかりはいえないことが言えないような事態も生じています。

10月に実施予定の消費増税について、自民党の萩生田光一幹事長代行は本日、日本銀行が7月に発表する6月の企業短期経済観測調査(短観)などで示される経済情勢次第で延期もあり得るとの認識を示しています。

同党幹部が具体的な判断材料を示して増税延期に言及したのは初めてです。市場は反応薄でしたが、夏の参院選を控え、与党幹部から同様の発言が続けば波乱要因となる可能性もあります。

萩生田氏は18日のインターネット番組「虎ノ門ニュース」のジャーナリスト、有森香氏の番組で、10月の8%から10%への消費税率引き上げに関し、「景気が回復傾向にあったが、ここに来て日銀短観含めて落ちている。6月はよくみないといけない」と指摘しました。

その上で、「本当にこの先、危ないぞというのがみえてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない。そこはまた違う展開があると思う」と語りました。同氏は党総裁特別補佐、官房副長官などを歴任しており、安倍晋三首相の側近として知られます。

萩生田光一氏

夏には参院選も予定されています。萩生田氏は増税を「やめるとなれば、国民の了解を得なければならないから信を問うということになる」としましたが、衆参同日選の可能性については「ダブル選挙というのはなかなか日程的に難しい。G20(20カ国・地域)サミットもある」と否定的な見方を示しました。

以下に萩生田氏の上記発言の部分を含む動画を掲載します。下の動画は、消費税の話題から始まるように設定しています。




消費増税を巡り、政府は世界的な経済危機や大震災などリーマンショック級の出来事がない限り、予定通り実施する方針を示しています。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、政府の考え方は「全く変わらない」と語りました。

日銀が4月1日に発表した3月調査の短観では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス12と、昨年12月の前回調査から7ポイント悪化しました。悪化は2四半期ぶりで、悪化幅は2012年12月調査(9ポイント悪化)以来の大きさでした。6月調査は月末に開かれるG20サミット終了後の7月1日に発表の予定です。

消費増税を巡っては、同党の西田昌司参院議員も18日のインタビューで、完全にデフレ脱却という状況ではなく、景気回復が実感できないとの声も多いため、現在の経済状況を「事実として受け止めれば消費増税という選択肢はあり得ない」と指摘しました。

増税延期論者は実際は党内にも「それなりにいると思う」と付け加えました。10月からの幼児教育の無償化は消費増税分が財源だが、延期の場合は「国債発行する以外にはない」と述べました。ただし、以前も指摘したように、日本政府の借金など、負債だけではなく資産も加味すれば、ゼロであり、米英よりもはるかに財務は良い状況にあります。

さらに、日銀が金融緩和で、市場から国債を買い取ってきたため、市場では国債が少ない状況にあるうえ、国債の金利もご存知のようにあがっていません。この状況では、国債をある程度刷り増ししたところで、何の支障もありません。というより、国債を発行することがすべて悪であるかのような考えは全くの間違いです。

西田昌司参院議員

このような主張がでてきたということは、無論自民党内でそのような意見の人が一定以上存在することを示していると考えられます。

ただし、安倍総理も現状では、予定通り増税するとしていることから表だってはっきりとはいえない雰囲気があるものと考えられます。安倍総理やその側近たちは、財務省や増税賛成の他の大勢の自民党の議員の議員らの手前、本当は増税などやりたくないにもかかわらず、はっきり言える状況ではなく、その機会を伺っているのではないかと思います。

このブログでは、最近は経済が停滞する傾向がみられつつあると掲載したことがあります。ただし5月には元号が変わり、平成から令和と変わり、祝賀ムードがあり、さらには27日から始まるゴールデンウイークの10連休があります。そのため、景気が目立って落ち込むことはないと思います。

ただし、その反動と経済の停滞が、連休後に顕著になり、5月から6月上旬ぐらいにかけて、それが誰の目に見えて明らかになり、首相が『こんな景気の状況じゃ消費増税できません』と言って、通常国会会期末に消費増税凍結を信を問うと言って、衆参同日選挙を7月に実施と宣言する可能性があると思います。

自民党の中には、憲法改正の国民投票を成功させるため、自民党内に増税の先送りを後押しに利用すべきだと主張する人はある一定数以上は存在するでしょう。もし、5月から6月にかけて、経済の停滞が明らかになった場合、10%への引き上げに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施しても、景気の落ち込みは破滅的となり、世論の不興は避けられないでしょう。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期しかないと考えられます。

まさに、萩生田氏はそれを想定しているのではないかと思います。そうして、6月になっても増税を阻止してみせるという財務省に対する牽制でもあるのではないかと思います。そうして、6月になってからでも、増税凍結の判断を実行に移す方法があるということを意味しているのだと思います。


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