2019年3月14日木曜日

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ―【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

景気後退はなぜ起きた? リーマン・ショックや東日本大震災、増税と金融政策で説明可能だ

高橋洋一 日本の解き方

景気動向指数は3カ月連続の悪化となり、基調判断も下方修正された。中国経済減速の影響と解説されているが、国内要因はなかったのか。

 以前の本コラムで、内閣府の景気動向指数研究会(座長=吉川洋・立正大教授)が、2012年12月から続く景気拡大期間がいまなお続いていると判定していることについて、異論があると書いた。正直にいって、景気動向指数(一致指数)のデータを素直に見る限り、14年4月の消費増税の悪影響がその前後ではっきり出ており、そこに景気の「山」があり、16年6月あたりで「谷」がある。

 研究会座長は、消費増税しても景気への影響は軽微だという主旨の発言をしていた。それは結果として間違いだったが、その後の研究会の意見が左右されたようにも思われ、すっきりしない印象だとも書いている。

 景気動向指数(一致系列)は、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業、前年同月比)、商業販売額(卸売業、前年同月比)、営業利益(全産業)、有効求人倍率(除学卒)を採用し、これらから機械的に算出している。景気動向指数研究会のような「解釈」は疑問であるが、景気の動きを素直に客観的にみるにはいい指標だ。

 1月はマイナス2・7ポイント、昨年12月はマイナス1・3ポイント、11月はマイナス1・8ポイントと3カ月連続のマイナスになったので、基調判断は下方修正された。

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 一方、月例経済報告といい、内閣府が資料を作るが、関係閣僚会議に提出された後了承という経過を経て公表される「政府の見解」がある。

 2月の月例経済報告では、基調判断は「景気は、緩やかに回復している」としており、景気動向指数のものと異なっている。月例経済報告は、さまざまな経済指数を分析するとともに指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案した結果であり、機械的な算出ではないからだ。

 筆者は、機械的な算出の景気動向指数をより重視しているが、これまでの動きを見ると、マクロ経済政策(金融政策、財政政策)と外的要因(リーマン・ショックと東日本大震災)で転換点の「山」と「谷」はほぼ説明可能だ。

 中国経済という要因は確かにあるが、17年12月あたりが「山」で、それ以降下降している。これは、効果ラグを考慮すると16年9月のイールドカーブコントロール(長短金利操作)による金融引き締めの結果とも読める。それに最近の中国要因が加味されたとみるほうがいいだろう。これまでの、00年8月のゼロ金利解除、06年3月の量的緩和解除の後、半年~1年半くらいの後に景気の転換点を迎えているからだ。

 国内要因で景気が落ち目になったときの外的ショックは、下り坂で押されるのと同じで、大きく景気が落ち込む悪影響になるので要注意だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】世界情勢と国内景気後退にもかかわらず、消費税増税にひた走る財務省とマスコミの思考回路(゚д゚)!

世界経済の先行き不安が広がりつつあります。中国経済の減速は続いており、米中新冷戦が拍車をかけかねないです。英国のEU(欧州連合)離脱の破壊的衝撃も懸念されます。

日本経済は景気拡大局面を続けてきましたが、国際情勢の懸念もあって足元は弱含みです。こうしたなか、政府は今年10月、消費税率10%への引き上げを断行できるのでしょうか。

永田町には「安倍晋三首相は最終的に増税を回避するのではないか?」と推察する向きも多いです。

総額で初めて100兆円を上回る2019年度予算案の審議が4日、参院予算委員会で始まりました。 当然、消費税も議論になりました。

茂木敏充経済再生相

茂木敏充経済再生相は、野党議員から消費税増税を考え直すように迫られて、「16年後半以後の日本経済は、プラス成長で推移するなか、 財政再建をしっかりやりながら、(人材に投資する)『人づくり革命』などをするためにも消費税率の引き上げは不可欠だ」と語りました。

今年10月の増税は法律で決められている。このため、閣僚は増税を「既定路線」とした答弁を続けています。

ただ、世耕弘成経産相は、増税対策について問われて、「国際経済状況が非常に不透明であることを鑑みながら…」と前置きして、「税率の引き上げ以上に消費を喚起したい」と答弁しました。

世耕弘成経産相

消費増税などやっている場合でないことはあまりにも明らかです。にもかかわらず、絶対に増税すべきという人たちがいます。そういう人たちの思考回路は一体どうなっているのでしょうか。特に財務省とマスコミの思考回路はどうなっているのでしょう。

彼らが、政治家やマスコミの増税論を主導する理由は、表向きには、いわゆるエコノミストらが正当化する増税の必要性です。ここでは、その必要性に関しては、マクロ経済的に見てあまりにもバカバカしいので、詳細は掲載しません。しかし、なぜそのような"必要性"を持ち出してまで、増税をしたいのでしょうか。

こうした疑問に対して、元財務官僚の経験を元に、財務省の批判をしている冒頭の記事を書かれている経済学者・高橋洋一氏は、著書でこう語っています。

「財務省では、せいぜい向こう三年間か普通は一年間という短期的な視野でしか経済を考えない。財務官僚の頭を支配しているのは、目先の財政収支の均衡なのである」「財政収支の均衡をはかるために最も確実で、手っ取り早いのは増税である。責任問題から見ても、増税のほうが心理的に楽である」(高橋洋一著『消費税「増税」はいらない!』)

高橋洋一氏
つまり、財務省は「増税が財政再建につながらない」ことを知りながら国民を偽っているというより、本気で「財政再建するなら増税がいい」と信じている部分があるのです。

「最も確実で、手っ取り早いのは増税」「増税のほうが心理的に楽」という指摘も、興味深いです。「税率を上げると、税収が下がる」という理論も、当事者にしてみれば怖い話なのかもしれません。

「想い人を追いすぎると、想い人が離れていく」ことが、当人には分からない……ようなものかもしれません。「想い人を追わないなんて、それこそ、離れていきそうな気がして不安……」。そんな気分なのでしょうか。

財務省が増税したい動機については、他にも「増税することで、一部業界への税率を軽減する権限が増える」という"悪代官"路線もあります。とにかく、財務省としては権限を増すことは省益につながると考えているようです。

次に、マスコミの多くが表立って増税に反対しない動機について触れてみます。

マスコミ、特に経済記者には、財務省に決して嫌われてはいけない理由があります。それは、「経済の特ダネは財務省が握っている」ということです。

経済情報という面で、財務省に勝てる存在は日本にいません。財務省は、全国の家計や企業のお金のやり取りを把握し、税金を徴収しています。

つまり、全国の経済活動に関わる膨大な情報が、霞ヶ関に集まってくるのです。一方、巨大マスコミである日経新聞がどんなに頑張っても、GDP(国内総生産)ひとつ計算できません。

特ダネを狙うことで出世競争をする新聞記者にとって、最強の情報源である財務官僚を、敵に回すわけにいかないのです。むしろ、心を開いてもらい、官僚の仕事に後押しになるような記事を書くくらい、"ずぶずぶ"の関係にならなければ、大事な情報は得られないのです。

これについては、元日経新聞のエリート記者であり今は産経新聞で増税の大批判をしている田村秀男氏は、自身が書いた記事について、財務官僚から「それでいいんでしょうかねえ、田村さん……」と何度も言われたり、幹部が財務省OBに「おタクの田村はひどいな」とささやかれたという話を告白しています(田村秀男著『日経新聞の真実』)。

田村秀男氏

ただし、財務省は客観的な経済統計データを発表する義務があります。そのデータを分析すれば、財務省が何を言おうと、あるいは何も教えてもらえなくても、日本の実体経済を理解することができますが、現在の大手新聞の経済記者の能力があまりにも低く、それがほとんどできないというのが実体です。

私の実感では、一部の例外を除いておそらくほとんどの大手経済記者の頭の中には、高校の「経済社会」で学ぶ経済知識すらないのではないかと思います。

信じがたいことですが、現在まともにデータと理論にもとづき分析できる大手新聞の経済記者は田村秀男氏を含めて数人しかいないでしょう。そのため、現在大手新聞の経済欄はほとんどが、財務省の発表もしくは増税派の識者の発言などを取材したものになっています。

また、役人が報道発表を「ハトの豆まき」と呼んでいたことがあったそうです。私も幼いころは、鳩の前に豆を並べて、歩かせたいルートを歩かせて遊んだこともありましたが、官僚は情報を与える対価として、メディアを思うように動かすこともできるわけです。

現在本当に消費税増税をしてしまえば、日本発の不況が世界を悩ますことにもなりかねません。このような消費税増税は絶対反対すべきではありません。

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