2019年3月24日日曜日

ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か、モラー報告書、新たな訴追なし―【私の論評】実体なき疑惑という点でよく似た米国の「ロシア疑惑」と日本の「もりかけ問題」(゚д゚)!

ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か、モラー報告書、新たな訴追なし

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

2年近くに及んだモラー特別検察官のロシアゲート捜査が22日終了、報告書が司法省に提出された。内容はまだ不明だが、新たな訴追の勧告はないとされており、「大統領選挙でロシアと共謀した」という疑惑は“灰色”のまま終わりそう。ただ、事件のもみ消しを図ったという司法妨害については「大統領の犯罪」に言及している可能性もあり、報告書の公表に全米の関心が集まっている。

モラー特別検察官

容疑に蓋し逃げ切りか
 モラー特別検察官の捜査は主に、大統領選挙でロシアとトランプ陣営との共謀があったのか、捜査をやめさせようという司法妨害があったのか、の2点が中心。報告書が提出された段階で判明しているのは「新たな訴追の勧告は盛り込まれていなかった」(司法省当局者)ということと、「ロシア共謀疑惑」で起訴された者は誰もいなかったということだ。

 捜査では起訴された者が34人。うち6人はトランプ陣営の幹部らだった。ポール・マナフォート元選対本部長、リック・ゲーツ元選対副本部長、マイケル・フリン大統領補佐官、マイケル・コーエン元個人弁護士、大統領の友人のロジャー・ストーン氏、ジョージ・パパドポロス元外交顧問だ。

 しかし、6人はロシアとの共謀という本筋を問われたのではなく、議会や捜査当局への虚偽証言や脱税、資金洗浄などのいわば別件容疑だ。マナフォート氏は詐欺罪などの容疑で7年半の禁錮刑を受け、コーエン氏も3年の刑で5月から収監される予定だ。6人以外の残りはロシアの情報関係者や軍人らである。

 問題はトランプ大統領の疑惑だ。選挙期間中、トランプ氏がロシア側と直接的に秘密接触していた可能性は薄いと見られており、大統領が長男のジュニア氏も含め、部下に接触を指示していたことが報告書に記されているかが1つの焦点だ。明記されていれば、罪には問われなくても、大統領の道義的、政治的な責任があらためて追及されることになるだろう。

 より可能性があるのは「司法妨害疑惑」だ。大統領は17年2月、コミー連邦捜査局(FBI)長官に対し、フリン大統領補佐官への捜査をやめるよう求めた疑いがかかっており、事実であれば、司法妨害に相当する。報告書がこの点についてどのように判断しているのかが最大の注目点だ。

 だが、報告書に限って言えば、大統領が逃げ切った可能性もある。第一に司法省の指針によると、現職の大統領は訴追されないことになっている。またモラー特別検察官が捜査で大きく依存した大陪審の規則は、実際に当事者が起訴されない限り、大陪審を通して入手した情報の公表を禁じており、大統領が起訴されないのであれば、大統領に関する情報の公開は蓋をされる恐れがある。

ボールはバー司法長官に
 捜査報告書は今後、バー司法長官からその要約が議会へ送られ、事実上公表されることになる。同長官は22日、議会指導者への書簡で、数日内に報告書の要約を送るとし「できる限り透明性を確保する」と述べた。議会下院は先に、報告書の全文を公表するよう求める決議を満場一致で可決している。

 しかし、特別検察官規則によると、報告書の内容をどの程度、要約に盛り込むかは司法長官の裁量に委ねられており、捜査の情報源や方法などの極秘情報が漏洩しないよう、また大陪審での証言が漏れないように配慮することになっている。

 民主党はかつて、長官がトランプ大統領の主張に沿うようなメモを書いていたことなどを念頭に、要約にホワイトハウスの意向が反映されるのではないかと懸念している。民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は共同声明を発表、「公表前に報告書をホワイトハウスに密かに見せないよう」司法長官に警告した。米紙によると、ホワイトハウスは報告書の不都合な部分については、大統領特権を行使して、公表させないことも検討しているようだ。

 大統領弾劾の手続き上の出発点になる下院司法委員会のナドラー委員長(民主党)は、現職の大統領が訴追されないという指針を犯罪のもみ消しに使われかねないと指摘、司法長官とホワイトハウスをけん制した。しかし、ペロシ下院議長は勢いづく大統領弾劾論に距離を置き、「トランプ氏は弾劾に値しない」と慎重姿勢を示しており、弾劾をめぐる動きは流動的といえるだろう。

際立つ強気

 週末をフロリダの別荘で過ごしているトランプ大統領は、ロシア疑惑で起訴される者が誰もいないことを予想していたのか、強気ぶりを際立たせている。報告書が提出される前、モラー氏の捜査を「魔女狩り」「政治的なでっち上げ」と非難する一方で、「国民は報告書の内容を知りたがっている。公表されるべきだ。共謀など何もなかったことが分かる」と胸を張った。

 報告書がロシア疑惑で明確な犯罪性を指摘できなければ、トランプ大統領は自らの無実を正当化する動きに拍車を掛けるだろう。しかし、一連の捜査でトランプ氏や側近らのロシアとのうさんくさい関係が浮き彫りになったのは紛れもない事実。その目的は大統領選挙で勝利するため、対立候補のクリントン氏に不利な情報を入手しようとしたことだった。ロシアと接触した側近らは18人、頻度は100回以上に及んだことは決して見過ごされないだろう。

 モラー氏の捜査がロシアゲートを立件はできないにせよ、大統領の不倫口止め料支払いなど、捜査の過程で浮かび上がったさまざまな疑惑は今後、議会や州の司法当局の調査でさらに追及されることとなる。「捜査の終わりではなく、始まりだ」(アナリスト)という声が強まる中、報告書の公表が待たれる。

【私の論評】実体なき疑惑という点でよく似た米国の「ロシア疑惑」と日本の「もりかけ問題」(゚д゚)!

日本のモリカケ問題と米国のロシアゲートは「争点隠し」という点でよく似ています。加計学園による獣医学部新設は岩盤規制の打破が真の争点ですが、安倍晋三首相の「えこひいき疑惑」に話がそらされ倒閣運動に利用されました。

冒頭の記事を書かれた方は、あくまでリベラル派の視点から書かれたようであり、「容疑に蓋し逃げ切りか」とか「際立つ強気」などという言葉づかいからもそれがうかがえます。

はっきりいえば、米国のリベラル派のメディアの垂れ流す報道を鵜呑みした上で、トランプ大統領を評価しているという、日本のメディアと同次元のものであり、とても現実を見据えたものとはいえないと思います。

では、ロシアゲートはどうかといえば、米国内でほぼ事実と認定されているのは次の2点でした。
(1)2016年米大統領選に際し、ロシア情報機関によって民主党陣営のメールがハッキングされ、ネット上で公開された 
(2)投票機器の操作などはなかった-。
(1)にトランプ陣営が関与したのでは、というのが反政権側の追及する「疑惑」ですが、今に至っても確たる証拠は出ていません。

ところで、なぜメールの流出がヒラリー陣営に打撃となったのでしょうか。ここにリベラル派が目を背ける「不都合な真実」があり、真の争点があります。最も問題となった2つのメールを見てみましょう。

ボデスタ氏

1つは、民主党エリートを代表するポデスタ選対本部長(クリントン政権で大統領首席補佐官)がヒラリー氏に宛てた、副大統領候補選定に関するメールです。

ポデスタ氏はまず、候補者を「食品群」(food groups)に分けたと軽口を叩(たた)き、女性、黒人、白人、ヒスパニック、巨額献金者などに分類、最後に「特殊食品」として予備選のライバルだったサンダース議員を挙げました。

ここに見られるのは、アイデンティティー・ポリティクス(差別強調政治。警察対黒人、富裕層対貧困層、男対女、保守派対LGBT=性的少数者=などの対立図式を強調し、被差別弱者の側に立つと主張する政治)を推進してきた中心人物における、冷笑的で功利主義的な態度です。素朴な有権者の間に嫌悪感が広まったのも無理はないです。

もう1つは、民主党全国委員会(予備選の公正な実施が職務)の幹部間で交わされた「サンダース(ユダヤ教徒)は無神論者」との噂を広めて、宗教色の強い南部での支持率を落とすべきだ、などとした謀議メールです。

政治と宗教の峻別(しゅんべつ)、無神論者への配慮(公立学校で「神」に言及しないなど)を高らかに掲げてきた民主党エリートにおける、これまた冷笑的かつ露骨な背信行為でした。サンダース氏支持者は当然激怒し、ヒラリー氏に近い全国委員長は辞任に追い込まれました。

サンダース氏

要するに、ロシアの干渉と言っても、買収工作や怪文書拡散があったわけではなく、民主党幹部の“素の姿”を明らかにしたにすぎないのです。

メールが流出しても中身が卑猥(ひわい)な冗談程度なら一時のゴシップで終わります。ヒラリー陣営の真の敗因は、差別強調政治の裏にある偽善性と陰謀体質が白日の下に晒されたことにありました。そして、そこを誰よりも峻烈に突いたのがトランプ氏でした。

新聞は全部、テレビはFOXTVを除いて全部が、リベラル派で湿られている米主流メディアのロシアゲート報道は、この民主党エリートにとっての不都合な真実から目をそらし、トランプ陣営関係者の脱税や性的スキャンダル、失言のみを追う形で進められていました。本質的に党派的かつフェイクといわれても仕方ないでしょう。

では実体なき「疑惑」の追及がなぜ終息しなかったのでしょうか。ここでもモリカケに似た構造があります。国会における野党の追及が誤答弁や官僚の資料操作につながり「疑惑をさらに深めた」のと同様、アメリカでは特別検察官がしばしば無から有を作り出す働きをしました。

犯罪事実がなくとも事情聴取に不正確に答えれば偽証、提出を求められたメールを一部でも削除すれば捜査妨害でいずれも訴追対象となりました。メディアは「疑惑が深まった」と報道しました。終わりの見えない特別検察官の動きに、トランプ大統領のみならず政権支持派が怒りを募らせるのも無理はありませんでした。



ニューヨーク・タイムズやCNNを見てトランプ氏の弾劾は近いと考えるのは、朝日新聞を見て安倍政権が倒れるのは近いと考えるのと同じだったのです。

草の根保守に強い影響力を持つトークラジオの3大人気ホスト、リンボー氏、ハニティ氏、レビン氏はいずれも、トランプ氏は左派の捏造(ねつぞう)攻撃に堂々と反撃し、規制緩和、保守的判事指名、「中共」(ChiComs)圧迫など公約を次々に実行していると、支持の姿勢を強めています。

大統領弾劾は、検察役の下院が過半数で訴追し、陪審役の上院が3分の2以上で可決して成立します。ハードルは非常に高いです。過去に唯一弾劾が見えたニクソン大統領(実際は手続き途中で辞任)の場合、支持基盤である保守層が、価格統制、デタントなど内外政策でのニクソンの「裏切り」に不満を募らせていたことが大きかったです。今はそうした状況にありません。

「ヒラリーには大統領に必要な巨大なスタミナはない」。3年前の大統領候補討論会でトランプ氏が発した言葉です。特に中国との長期にわたる戦略的攻防を考えれば、政治家の評価でますます重要になるポイントでしょう。

いずにせよ、「もりかけ問題」も「ロシア疑惑」ももし実体のある疑惑であれば、もうすでに何らかの物的証拠が明るみにでいてるべきです。物証がないものに対して、ああだこうだと言っても徒労に終わるだけです。

私自身は、これに近いようなことは以前もこのブログに掲載しました。この事実を知っていれば、もう「ロシア疑惑」などというフェイク情報に踊らされ、テレビをみたり、記事を読んだりして時間を無駄にするということはないでしょう。

すでに奪われた時間については、もう取替しようがないですが、テレビや新聞などに不満をぶつけるということも考えられるかもしれません。ただし、そんなことをしても、彼らは一切とりあないでしょうが・・・・・・

それにしても、モリカケで時間と精力を無駄にした日本の野党は、政策論争はおろか、政局でも与党に負けています。次の選挙でも、従来と同じような結果となるだけでしょう。何かあったにしても若干議席数を増やすことができるだけでしょう。

それに比較して、米国の民主党は「ロシア疑惑」によって最初に被った悪いイメージは一連のイメージコントロール払拭できたのでしょうか。それは次の大統領選挙でまたわかることでしょう。

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