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過激な発言の一方で冷静なところも
「利上げを好み、量的引き締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB(米連邦準内に1人いる」
トランプ大統領が3月2日の演説でこう揶揄した人物とは、ほかでもないFRB議長のジェローム・パウエル氏だ。トランプ大統領は中央銀行の金融引き締め策がドル高を招き、米国経済に悪影響を与えていると度々批判している。
FRBは1月、2019年に予定していた2回の追加利上げを見送る方針を示していたが、トランプ大統領はまだおかんむりのようだ。
FRBは1月、2019年に予定していた2回の追加利上げを見送る方針を示していたが、トランプ大統領はまだおかんむりのようだ。
ジェローム・パウエルFRB議長 |
金融引き締めのタイミングについては、アベノミクス以降日本でも最重要課題となっている。日米の経済を単純比較することはできないが、トランプ大統領はなぜFRB批判を繰り返すのか。
本コラムでは再三述べてきたが、金融政策とは雇用政策であるということは、経済学の基本中の基本だ。
ペンシルベニア大学ウォートン校卒のトランプ大統領は、政治は素人でも、この基本をよく理解している。彼のよく言う「アメリカファースト」の中身をよく見てみると、雇用の確保が最優先に据えられていることがわかる。
FRBは雇用最大化と物価の安定の「二重の責務」を担っていると、公式に宣言している。このため、雇用となれば真っ先に矢面に立たされるのがFRBである。これは米国だけでなく欧州でもそうだ。
ところが日本で雇用はどうするのかとなると、質問が向かうのは日銀ではなく厚生労働省だ。
物価上昇率が高いときには失業率が低く、物価上昇率が低いときには失業率が高い。物価と雇用の関係は裏腹である。日銀の仕事は物価の安定のみと言っているが、実質的に雇用の確保の責任を持っている。
もっとも、いくら金融政策を行っても失業率には下限があり、それは各国で異なる。日本では2%台半ば程度、アメリカでは4%程度とされている。一方、その達成のための最小の物価上昇率は先進国で似通っており、だいたい2%だ。これがインフレ目標となっているのをご存じの読者は多いだろう。
ここで改めて、なぜトランプ大統領が「強すぎるドル」を嫌い、パウエル議長批判を繰り返すのかを考えよう。
本コラムでは再三述べてきたが、金融政策とは雇用政策であるということは、経済学の基本中の基本だ。
ペンシルベニア大学ウォートン校卒のトランプ大統領は、政治は素人でも、この基本をよく理解している。彼のよく言う「アメリカファースト」の中身をよく見てみると、雇用の確保が最優先に据えられていることがわかる。
FRBは雇用最大化と物価の安定の「二重の責務」を担っていると、公式に宣言している。このため、雇用となれば真っ先に矢面に立たされるのがFRBである。これは米国だけでなく欧州でもそうだ。
ところが日本で雇用はどうするのかとなると、質問が向かうのは日銀ではなく厚生労働省だ。
物価上昇率が高いときには失業率が低く、物価上昇率が低いときには失業率が高い。物価と雇用の関係は裏腹である。日銀の仕事は物価の安定のみと言っているが、実質的に雇用の確保の責任を持っている。
もっとも、いくら金融政策を行っても失業率には下限があり、それは各国で異なる。日本では2%台半ば程度、アメリカでは4%程度とされている。一方、その達成のための最小の物価上昇率は先進国で似通っており、だいたい2%だ。これがインフレ目標となっているのをご存じの読者は多いだろう。
ここで改めて、なぜトランプ大統領が「強すぎるドル」を嫌い、パウエル議長批判を繰り返すのかを考えよう。
トランプ大統領 |
為替は二つの通貨の交換比率から成り立っている。もしアメリカが日本よりも金融引き締めを進めると、市場のドルは少なくなり、相対的にドルの価値は上がる(ドル高)。これは輸出減少と輸入増加を招き、結果としてGDPを減少させる要因となる。国際金融理論の実務でも有名な「ソロスチャート」にも示されている相関関係だ。
トランプ大統領は米国の年間GDP成長率の目標を3%としていたが、'18年はこれをわずかに上回る3・1%という数値に落ち着いた。目標値を下回るかもしれないとあって、トランプ大統領は相当気を揉んでいたはずだ。国際経済学を理解する彼だからこそ、口酸っぱく金融引き締めを批判し、GDP成長率の押し上げを図っている。
激しい言動が取り沙汰される一方で、意外と理論派なところもあるのがトランプ大統領だ。
彼が政府の一員と言える中央銀行にどうモノ申すのか、冷静に追っていく必要がある。
『週刊現代』2019年3月23日号より
この記事の冒頭の記事には「日本で雇用はどうするのかとなると、質問が向かうのは日銀ではなく厚生労働省だ」という指摘があります。
雇用に関して、雇用枠を拡大することができるのは、日銀だけです。厚生労働省にはこれはできません。厚生労働省が雇用に関して実行しなければならないのは、雇用統計と労務関連施策であって、雇用には直接関係ありません。
これは、世界の常識なのですが、なぜか日本ではこれが、いわゆる大人の常識になっていません。
多くの人が現在でも、雇用=金融政策とか雇用の主務官庁は日銀というと、怪訝な顔をするようです。
これに関しては、このブログでも指摘したことがあります。
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!
当時の就活中の女子大生 |
この記事は、2012年9月1日土曜日のものです。この当時はまだまだ就職氷河期が続いていおり、就活生の悲惨な状況が報道されていました。この状況はこの年の年末に安倍政権が成立して、金融緩和策を打ち出し、翌年の4月から日銀は異次元の金融緩和策を打ち出しました。そうして、日銀が緩和に転じて、その後雇用状況が良くなり今日に至っています。
上の記事で"「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」。今春まで約8年間、東京都内のハローワークで契約職員として勤務していたある女性は、正規職員の上司が何気なく発した言葉に愕然としたことがある"とありますが、この正規職員の上司の発言は正しいのです。
この記事そのものは、雇用=金融政策という原理原則を知らない人が書いたものなので、そもそも読むに値しませんが、ただし、この正直者の正規職員の上司の発言だけは、日本では雇用の主務官庁は厚生労働省が多いと思い込む人が多いことの証左として、読むに値するかもしれません。
先にも述べたように、厚生労働省およびその下部機関である、ハローワークは失業率などの雇用統計や労務に関わるのであって、雇用そのものには関係ありません。厚生労働省やハローワークがいくら努力をしたとしても雇用は創造できません。当時からそのことは全く理解されていませんでした、それに関わる部分をこの記事から以下に引用します。
日本円と米ドルの比較でいえば、日本が金融引き締め政策をとり、円そのものを米国ドルよりも少なくすれば、相対的に円の希少価値があがり、円高になります。逆に日本が金融緩和政策をとり、円そのものを米国ドルより多くすれば、円の希少価値が下がり、米ドルの希少価値があり、円安ドル高になります。
無論、為替レートには様々な要因があり、短期的には為替レートを予測することは不可能です。ただし、長期的には日米政府の金融政策によって為替レートが決まります。
こんなことは、ある物が多くなれば、希少価値が少なくなり、ある物が少なくなれば、希少価値が高くなることを知っている人なら簡単に理解できることだと思うのですが、これも何故か日本ではほとんど理解されてないようです。
そうして、このことが理解できいないがために、日本では通貨戦争などを信奉する人も多いようです。通貨戦争など妄想にすぎません。
考えてみて下さい、仮に日本が円安狙いで徹底的に金融緩和策をやり続けたとします。その結果どうなるでしょうか、際限なく日本円を擦り続けた先には、ハイパーインフレになるだけです。だから、金融緩和するにしても適当なところでやめるのか普通なので、通貨戦争などできないし、妄想に過ぎないのです。
このようなことも理解していないからでしょうか、日本の雇用論議や、為替論議を聴いていると、頓珍漢なものが多いです。
私は、為替レートやGDPなどよりも、雇用が最も重要だと思っています。なぜなら、雇用が確保されていれば、大多数の国民にとっては安心して生活することができます。逆に雇用が確保されなければ、大多数の国民安心して生活できません。
仮に他の経済指数などが良くても、失業率が上がれば、政府はまともに仕事をしているとは言えません。
冒頭のドクターZの記事では、
「国際経済学を理解する彼だからこそ、口酸っぱく金融引き締めを批判し、GDP成長率の押し上げを図っている。
激しい言動が取り沙汰される一方で、意外と理論派なところもあるのがトランプ大統領だ」。
とトランプ大統領を評価しています。
アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。
この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。
当時の就活中の女子大生 当時は特に女子大生の就活は大変だった |
このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。それと、気になるのは、 金融政策により為替の大部分が決まってしまうことも、多くの人が知らないことです。
日本円と米ドルの比較でいえば、日本が金融引き締め政策をとり、円そのものを米国ドルよりも少なくすれば、相対的に円の希少価値があがり、円高になります。逆に日本が金融緩和政策をとり、円そのものを米国ドルより多くすれば、円の希少価値が下がり、米ドルの希少価値があり、円安ドル高になります。
無論、為替レートには様々な要因があり、短期的には為替レートを予測することは不可能です。ただし、長期的には日米政府の金融政策によって為替レートが決まります。
こんなことは、ある物が多くなれば、希少価値が少なくなり、ある物が少なくなれば、希少価値が高くなることを知っている人なら簡単に理解できることだと思うのですが、これも何故か日本ではほとんど理解されてないようです。
そうして、このことが理解できいないがために、日本では通貨戦争などを信奉する人も多いようです。通貨戦争など妄想にすぎません。
考えてみて下さい、仮に日本が円安狙いで徹底的に金融緩和策をやり続けたとします。その結果どうなるでしょうか、際限なく日本円を擦り続けた先には、ハイパーインフレになるだけです。だから、金融緩和するにしても適当なところでやめるのか普通なので、通貨戦争などできないし、妄想に過ぎないのです。
このようなことも理解していないからでしょうか、日本の雇用論議や、為替論議を聴いていると、頓珍漢なものが多いです。
私は、為替レートやGDPなどよりも、雇用が最も重要だと思っています。なぜなら、雇用が確保されていれば、大多数の国民にとっては安心して生活することができます。逆に雇用が確保されなければ、大多数の国民安心して生活できません。
仮に他の経済指数などが良くても、失業率が上がれば、政府はまともに仕事をしているとは言えません。
冒頭のドクターZの記事では、
「国際経済学を理解する彼だからこそ、口酸っぱく金融引き締めを批判し、GDP成長率の押し上げを図っている。
激しい言動が取り沙汰される一方で、意外と理論派なところもあるのがトランプ大統領だ」。
とトランプ大統領を評価しています。
しかし、これは政治家や、マスコミ(特に経済記者)、識者(特に経済関係の識者)は、最低限知っていなければならないことだと、私は思います。
ましてや、雇用に関しては、細かいことまでは知らなくても、大きな方向性は理解していてしかるべきです。
日本では、これを理解している、政治家、官僚、マスコミ、識者はほんの一部のようです。幸いなことに、安倍総理とその一部のブレーンは知っています。それなのに、彼らの多くは米国のほとんどリベラルで占められている新聞やテレビなどのマスコミ報道を真に受けて、保守派のトランプ大統領をあたかも狂ったピエロであるかのように批判しています。
そうして、トランプ大統領のようにまともにマクロ経済の理解はしようとしません。その意味では、先に掲載した、正直者のハローワークの正規職員の上司よりも始末に負えないです。
そのようなことをする前に、彼らは無様なほど雇用を知らないことを自覚すべきです。そんなことでは、まともな経済論争などできません。顔を洗って出直してこいと言いたいです。
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