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2020年1月31日金曜日

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」―【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」

米国ウィルパー・ロス商務長官

<SARSにアフリカ豚コレラ、新型コロナウイルスと続き、感染症は企業が中国に進出する際の深刻なリスク要因だということがはっきりした、とロスは言う>

アメリカのウィルバー・ロス商務長官は1月30日、インタビューに答えて、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大のおかげで、北米に雇用が戻ってくるかもしれない、と語った。

トランプ政権発足直後から商務長官の職にあるロスは、FOXビジネスの番組で、新型コロナウイルスが中国経済に及ぼす影響について問われた。世界各国は現在、ウイルスの侵入を食い止めるため、中国に出入りする渡航に制限をかけている。

ロスはまず、ウイルスの被害に遭った人たちへの同情を表した。「まず何よりも、アメリカ国民は新型コロナウイルスの犠牲者に対して追悼の気持ちを持たなければならない」

さらに「とても不幸でとても悪質な感染症が、(自分たちに)幸いしたなどとは語りたくはない。しかし事実として、外国企業は部品調達網の見直しを行う際、感染症のリスクを考慮せずにはいられないだろう」と続けた。

「まずはSARS(重症急性呼吸器症候群)、そしてアフリカ豚コレラもあった。今回は新型コロナウイルスで、これは人々が考慮せざるをえない新たなリスク要因だ。結果として、北米への雇用回帰は加速すると思う。アメリカだけでなく、メキシコにも雇用は戻るだろう」と語った。

中国の感染者数は1万人近くにまで増加

今回の新型コロナウイルスは、昨年12月に人口約1100万人の中国湖北省・武漢で発生し、中国本土を中心に世界各国へと拡大している。

米疾病対策センター(CDC)が公表した情報によると、新型ウイルスは肺炎による重度の呼吸器症状を引き起こす可能性がある。当初、感染源は武漢の海鮮市場と言われていたが、市場や、そもそも武漢に行っていない人からも感染者が出始めたことから、今ではウイルスは人から人への感染力を持ったと見られている。

中国当局は、1月24日から30日までの春節(旧正月)の期間に感染が拡大することを恐れていた。春節には、武漢の住民を含む多くの中国人が、故郷に帰ろうと大移動をするからだ。

中国当局の発表によると、31日時点で確認された新型コロナウイルスの中国国内の感染者数は9692人、死亡者数は213人に上っている。また、ウイルス感染はすでに日本を始め、韓国、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど世界約20カ国・地域に拡大している。

【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

ロス長官の見方は、妥当だと思います。無論短期においては、混乱はみられるものの、長期的(3年から5年)のうちには、確かに米国にも雇用が戻ってくることでしょう。

2020年1月28日に、中国中央部の湖北省の武漢の通りに沿って、消毒剤を散布する城管

実際、中国を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車や電子機器メーカーから観光関連企業に至るまで、世界中の企業が供給網や収益への影響について不安を募らせています。

ウイルス流行の中心地となっている中国湖北省武漢は、欧米や日本の自動車メーカーや電子部品メーカーの製造拠点です。ところが各国は現在、自国民を退避させるため航空機を手配しています。

一方、中国当局は、武漢以外の複数の都市でも封鎖などの措置を取っており、数百万人に影響が出ています。1週間の春節(旧正月)休暇が延長される中、企業への負の影響は避けられないです。

■自動車メーカー
自動車大手の米ゼネラル・モーターズや仏PSAグループ、仏ルノー、日産自動車、ホンダなどは武漢周辺を合弁企業の拠点としており、各社は状況を注意深く見守るとしています。

トヨタ自動車は、自社の従業員だけではなく、中国国内の部品メーカーなどの間でも混乱が生じる可能性を考慮し、少なくとも2月9日までは中国での製造を停止すると発表しています。

■電子機器メーカー
台湾の富士康科技集団(フォックスコン)は29日、中国本土の工場を2月中旬まで閉鎖すると発表しました。

同社は、米アップルのiPhone(アイフォーン)や薄型テレビ、ノートパソコンなどさまざまな機器を製造しており、この決定は世界中の取引先企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

アップル自体は28日、2020年1~3月期の売上高について、新型ウイルス流行が及ぼす影響は不透明だとして、異例に広い幅を取った予想を発表しました。

■観光
中国では現在、国外への団体旅行が禁止されています。そのため、高級ブランドや高級小売店が数多くある仏パリや伊ミラノなどの都市は、神経をとがらせています。航空各社も中国行きの便を大幅に減らしています。

オランダ金融大手INGグループの中国経済専門家アイリス・パン氏は、新型ウイルスの流行が中国からアジア各国、欧州、北米へと広がっていることにより、今年の世界全体の旅行者数は昨年比30%減となる見通しを示しました。

■小売りチェーン
米コーヒーチェーン大手スターバックスは、新型ウイルスの流行により状況が目まぐるしく変わっていると述べるにとどめ、売上高についての詳細な見通しは示していません。

中国本土はスターバックスにとって世界で2番目に大きい市場で4000店舗以上を展開していますが、新型ウイルス流行により、現在はその半数が休業しています。

米ファストフードチェーンのマクドナルドと米宅配ピザ大手ドミノ・ピザも、世界全体の売上高に占める割合から見ると同じく中国で大きな存在感を示しています。

一方、スウェーデンの家具大手イケアは29日、中国本土に展開する店舗のほぼ半数に当たる30店舗を一時休業すると発表しました。イケアは先週の段階で武漢の店舗を休業していました。

長引く混乱は今後、他の産業分野にも影響を及ぼす可能性があります。例えば中国は、欧米の製薬会社が多くの救命治療用にリパッケージしている医薬品の有効成分の生産で、世界首位を誇っています。

中国に拠点のある世界中の企業が今や供給網や収益への影響について不安を募らせているのです。

これが、今回だけのことならまだしも、SARSや豚コレラ、アフリカ豚コレラの問題もありました。中国では過去だけではなく、これからもこの種の問題は発生しうると考えられます。

そもそも、これらの問題は一時的なものではなく、中国の構造的な問題に根ざしています。その構造的な問題とは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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NBAのバスケット・ボールの試合中にフリー・チベットの活動をする他人事

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から少し長いですが一部を引用します。
不公正取引で先進諸国に「寄生」した新・悪の帝国 
 現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えている。 
 また、知財を盗むコピペ経済でもある。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛ける。 
 たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。 
 それでも彼らが儲かっているうちはまだいいが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になる。 
 そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊であった。 
 実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国であった。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告している。 
 共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請した。 
 その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できなかった。 
 やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTO(GATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのだから、15年間も交渉したことになる。 
 この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けた。 
 だが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権である。 
 米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じているであろう。
米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。
まさに、 中国に拠点を置く、米国企業や、他国企業もそれでも彼らが儲かっているうちはまだ良いのですが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になります。まさに、新型肺炎でそのような状況になりつつあるのです。

しかも、中国の感染症は、これも社会構造に根ざしたものであり、中国が社会構造変革をしなければ、改善されることはありません。

そうして、これらの企業は、中國の感染症によって、サプライチェーン等が不安定になることを嫌い、中国の拠点を自国に戻すか、中国以外に拠点を移すでしょう。

そうして、この動きは、当初は混乱もあり、世界経済に悪い影響を与えるかもしれませんが、長期的には世界経済に良い影響を与えることになるでしょう。

バーナンキ氏

現在の世界経済は、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したように、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

中国は、自国内だけではなく、一帯一路構想などで、海外でも過剰生産を繰り返しています。結局、中国の企業は国営、国有、民間企業でも政府の厳しい管理下にあり、管理下にあるということは、よほどのことがない限り、倒産することはなく、先進国なら、とうに倒産しているような会社がゾンビ企業となりさらに、過剰生産を繰り返すということになるのです。

この過剰生産が、供給過剰、貯蓄過剰を生み出し、それが先進国では高インフレや高金利が生じなくなった原因です。このような状態になった直後には多くの先進国が、デフレに悩まされましたが、ここ数年では各国がこの状況に気づき、大規模な積極財政や金融緩和に踏み切るようになりました。

そのことにまだ気づいていないのは世界では、日本くらいなものになりました。そのため、日本の財務省は、デフレから抜けきっていないのに、増税をするとか、日銀も物価目標すら達成もしていないのに、イールドカーブコントローなどの抑制的な金融政策を採用する有様です。

いずれにしても、このような中国から各国が拠点を移し、中国国内で減産モードに入ると世界はどうなるかといえば、過剰生産とそれにともなう貯蓄過剰はなくなるわけです。

米国はこのようなことを企図して対中国冷戦で実行しようとしていたのですが、ここにきて中国の新型肺炎問題が起こり、これが加速されることになると考えられます。

これを見越したからこそ、米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」と発言したのてしょう。これは、無論米国だけのことではなく、日本も含めた先進国もそのようなことになるでしょう。

そうして、何よりも世界経済にとって良いことは、世界の国々が過剰生産に悩まされることがなくなることです。無論、中国以外の新興国は、これからも過剰生産を継続するでしょうが、規模的には中国のそれよりもはるかに小さく、世界経済に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。

以前もこのブログで述べたように、中国としては、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、もっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を根本的に変えなければできないことです。

中国が社会構造改革を本気で進めれば、また拠点を中国に戻す企業も出てくるかもしれません。しかし、それにはかなり長い時間を要することでしょう。

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2019年10月5日土曜日

韓国騒然!反文デモに“300万人”集結 「文氏を大統領の座から引きずり下ろす!」声を上げた退役軍人 識者「文政権の実態がバレ始めた」―【私の論評】文在寅政権は早急に雇用を改善しなければ、朴槿恵政権と同じく崩壊!その後の政権も同じ(゚д゚)!


 「反文在寅政権」を掲げる大規模デモ。ソウル中心部の青瓦台周辺を人の
 波が埋め尽くした=3日クリックすると拡大します

 韓国の首都ソウルで、想像を絶する大規模集会が開かれた。最大野党「自由韓国党」が3日、チョ国(チョ・ググ)法相の辞任や、文在寅(ムン・ジェイン)政権の打倒を訴える集会を開いたところ、「300万人以上」(同党広報室)が集まったというのだ。退役軍人会や、キリスト教団体、大学教授、学生らも参加した。チョ氏周辺のスキャンダルや、韓国経済の危機的現状、北朝鮮主導の「赤化統一」への警戒・拒否感から、文政権への批判が一気に高まっている。識者は「文政権崩壊の時限爆弾に火を付けた」と語る。隣国はまた動乱期に突入した。 


 「むいてもむいても(疑惑が)出てくる『タマネギ(男)』に、法相の資格があるのか!」

 自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表は3日の大規模集会で、チョ氏絡みの疑惑が次々と浮上していることを受け、こう辞任を要求した。

 文政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を一方的に決定したことについても、黄氏は「氏から関心をそらすためだったのではないか」と訴えた。北朝鮮が当日朝、新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射するなど、国民が自国の安全保障に不安を感じていることを踏まえた発言といえる。

 大規模集会は、ソウル中心の光化門(クァンファムン)広場で行われた。韓国の建国記念日「開天節」で祝日だったこともあり、中央日報(日本語版)などによると、光化門からソウル駅まで続く、長さ約2・1キロの10~12車線道路が開放され、「文政権打倒」「チョ法相辞めろ!」などを訴える人々で埋め尽くされたという。

 「300万人」といえば、茨城県(約290万人)や大阪市(約270万人)の人口より多く、実際より過大に見積もったとの見方が大勢だ。ただ、集会の写真を見る限り、日本では考えられない規模なのは確かだ。

 この大規模集会に、元韓国国防省北韓分析官で、拓殖大学主任研究員の高永チョル(コ・ヨンチョル)氏は「退役軍人」として参加した。

 高氏は「地元の左派系テレビは『3000人程度』と報じたが、とんでもない。150万人はいた。全国からバスが連なり、家族ぐるみで参加していた。人々は『文在寅、打倒!』を叫び、大統領府(青瓦台)まで行進した。800人程度が『決死隊』を名乗り、『命をかけて、文氏を大統領の座から引きずり下ろす』と声を上げていた。退役軍人も高齢者ばかりではなく、3分の1は兵役を終えて間もない20~30代だった。現場では『文氏が戒厳令を敷くかもしれない』と噂が流れたほどだ」と振り返る。

◆文政権の実態がバレ始めた

 ソウルでは先月28日、文政権が進める検察改革を支持する左派の大規模集会も開かれた。主催者は当時、参加者を「80万人」と発表した。中央日報は、今回の保守派集会の方が人数が多いと報じている。

 これまで、「反日」が目立った韓国だが最近、デモや集会の様相が変わってきているという。

 これは、文大統領が先月9日、娘の不正入学疑惑や、息子の兵役逃れ疑惑、私募ファンド投資疑惑などが連続炸裂(さくれつ)していたチョ氏を法相に強行任命してからだという。

 先月後半、ソウルのデモ・集会を取材してきたフォトジャーナリストの山本皓一氏は「超学歴中心社会や、兵役制度に苦しんでいる学生や若者たちの神経を逆なでし、激怒させたようだ」「赤化統一を進める文政権の実態もバレ始めた」という。

 山本氏は、ソウルの日本大使館前で、日韓関係の悪化を懸念する70~80人の中年女性によるデモも目撃したという。山本氏が撮影した写真を見ると、女性たちは「文政権は日本政府に謝れ!」と書かれた横断幕を掲げており、参加者が持つ紙には「文在寅は責任をとれ!!」「韓米日三角同盟解体するな」「亡国的反日扇動はもうやめろ」という言葉も踊っていた。

 保守派が3日の大規模集会を成功させたことで韓国は大きく動くのか。

 前出の高氏は「文政権は、今回の大規模集会で相当参ったはずだ。これまで文政権を支持していた人々も、『ウソつき政権』『詐欺政権』と言い出すなど大きく変わってきた。毎週土曜日には『反文』デモ・集会が行われており、今後も勢いを増すだろう。3日の大規模集会は、文政権崩壊の時限爆弾に火を付けたターニングポイントになった。朴槿恵(パク・クネ)前大統領が倒れたときと同じで、国民は『文政権もいずれ崩壊する』と肌で感じた」と語っている。

【私の論評】文在寅政権は早急に雇用を改善しなければ、朴槿恵政権と同じく崩壊!その後の政権も同じ(゚д゚)!

今日このようなことになることは、結構多くの人たちが予め予想していたのではないでしょうか。私もその一人です。実際このブログでも早い時期からそれを予想していました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【韓国新政権】文在寅政権の最重要課題は経済や外交 韓国メディア「対日政策、全般的に見直し」と展望―【私の論評】雇用を創出できない文在寅もスキャンダルに塗れて自滅する(゚д゚)!

大統領に就任したばかりの頃の文在寅氏
この記事は、文在寅氏が大統領選挙に勝利して間もない2017年5月10日のものです。私は、この頃から文在寅氏はいずれスキャンダルに塗れて自滅すると予想していました。

これは、当てずっぽうではありません。なぜそのような予想をしたかといえば、当時発表した文政権の新経済対策を読んだところ、朴槿恵政権時代と変わらず、めぼしい金融緩和政策をしないということとを理解したからです。

金融緩和をしないということは、雇用を拡大しないと宣言しているのと同じです。日本でも、雇用=金融政策ということを理解しない政治家も多いですが、文在寅大統領も同じく全くそれを理解していません。

韓国では朴槿恵政権の頃から雇用がかなり悪化していたわけですから、新政権としては、いちはやく大規模な量的金融緩和を実行すべきでした。そうすれば、雇用は改善されたはずです。

であれば、韓国では根本的な雇用の改善は期待することもできず、結局それを実現できなかった朴槿恵政権といずれ同じ運命をたどるということは、予め予測できました。

ところが、文在寅政権は、その予測をはるかに上回りました。なんと、文在寅大統領は、金融緩和をしないどころか、最低賃金を上げるという政策を始めたのです。これは、さすがの朴槿恵政権も実施しなかったことです。

これは、金融緩和はせずに、再分配を拡大するという、日本でいう立憲民主党代表の枝野氏と同じ政策です。

この政策を実行したため、韓国では、雇用が回復しないどころか、激減してしまいました。こうなることは、最初からわかりきっていました。それについては、このブログでも何度か警告を発しました。

冒頭の記事では、金融政策などについては一言も触れず、今日の事態を招いた原因を、文政権の実態がバレ始めたからとしていますが、私はそのようなことよりも、文政権が雇用政策に大失敗したことが真の原因だと思います。

特に、朴槿恵政権でもみられなかった、金融緩和をせずに最低賃金をあげて、雇用を最悪にしてしまったことが最大の原因だと思います。

韓国では最低賃金そのものは本年も上昇しているが、引上げ率は引き下げざるをえなくなった

上のグラフは、韓国の最低賃金(時給)の推移です。2019年は引き上げ率はマイナスになってますが、最低賃金額そのものは上がっています。

これでは、最悪の事態を招くだけです。本来金融緩和をすれば、最初はパート・アルバイトや新人正社員の雇用が増えるので、最低賃金は下がることになります。韓国では逆になっています。金融緩和をしないというなら、最低賃金を下げたほうが多少は雇用は改善するはずです。

このようなことになるのは、何もマクロ経済理論を持ち出さなくなても、経済状況が何も変わらないのに、最低賃金だけをあげたらどうなるか理解できるでしょう。企業としては、売上を変えずに賃金だけ上げざるを得ないというのなら、何をするかといえば、新規採用を控えたり、リストラするしかなくなります。

日本では、金融緩和をはじめてから少しの間は、賃金が下がったので、立憲民主党の枝野代表などの野党の面々は「最低賃金ガー」などといって大騒ぎしていました。これでは、経済政策は文在寅と同レベルを言わざるを得ません。

いずれの国でも、他の政策がどうであれ、経済政策がうまくいっていれば、大多数の国民は政府を支持します。特に経済政策の中でも、雇用がある程度良い状態にあれば、多くの国民は政府を支持します。

雇用状況が満足できる状況であれば、他の政策が一切駄目でも、政府の成績は60点くらいにはなるでしょう。しかし、逆に雇用が駄目であれば、他の政策がどんなに良くても、国民にとっては落第点しかつけられません。

それは、まともに考えれば誰にでも理解できるはずです。雇用情勢がある程度良ければ、若者は先に希望が持てます。逆に雇用情勢が悪ければ、民主党政権時代の日本のように、悲惨な就職活動でいくら頑張っても内定がとれずに、多くの若者が希望を失ってしまいます。

そうして、このように雇用がかなり悪化していると、多くの人々が他の勢力によって容易に扇動されやすくなります。日本も戦後間もなく、雇用や経済状況が悪い時には、当時のソ連にかなり影響を受けましたが、経済・雇用がよくなってからは、ソ連の勢力は日本から一掃されました。

雇用を改善できなかったために、朴槿恵政権は様々な反朴槿恵勢力(当然北朝鮮の工作員やそのシンパを含まれる)によって崩壊しました。文在寅も雇用を改善しない限りそのような運命が待っているでしょう。

朴槿恵大統領退任要求の大規模デモ。主催者推定10万人を超える人数が集まり収拾付かなくなった。

それほど雇用は重要なのです。現在日本では、10月1日より消費税があがり、日銀はイールドカーブコントロールを導入して以来、金融引き締め気味ですが、それにしても緩和していることには変わりがなく、雇用情勢は悪化していません。そのためもあってか、安倍政権の支持率は悪化していません。

これからは、どうなるかわかりませんが、少なくとも文在寅政権のように、金融緩和せずに最低賃金だけあげて雇用を破壊するという馬鹿真似はしないでしょうから、文在寅政権や、日本の民主党政権の末期のようなことにはならないでしょう。

もし、文在寅政権が、政権設立直後から、金融緩和策を積極的に推し進めていれば、このようなことにはならなかったと思います。

そうして、今後いかなる政権が樹立されようとも、雇用を改善できない政権であれば、朴槿恵政権や文在寅政権と同じ運命をたどることになります。

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2019年8月30日金曜日

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか―【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか
消費増税の悪影響が断然大きい




8月22日に韓国大統領府が日韓軍事包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことで、歴史問題などをめぐり悪化していた日韓関係はさらに深刻になり、安全保障分野に影響が及ぶことになりました。

この韓国政府の判断が米中を含めアジア地域の地政学動向に将来どのような影響をもたらすかが筆者の最大の関心ですが、これは門外漢の筆者の力量を超えるテーマです。以下では、両国の金融市場、そして経済活動への影響について考えてみます。

日韓関係悪化の市場への影響

金融市場では、通貨ウォン(対ドル)は年初来で約8%安と下落。韓国の株価指数も年初から▲5%と、日本を含めた多くの主要国対比でアンダーパフォームしています。

日韓関係悪化などの韓国における政治リスクは、金融市場である程度反映されているといえます。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、将来の北朝鮮との経済統合を目指すことを見据えるなど、北朝鮮に融和的な外交姿勢を示しており、経済への悪影響だけではなく、朝鮮半島を取り巻く地政学情勢が変わることに伴うリスクが市場で意識されているかもしれません。

それでは、最近の日韓関係悪化によって、日本や韓国経済にどの程度、悪影響が及ぶでしょうか。まず日本は、7月に半導体の材料の一部品目の韓国への輸出に関して審査ルールを変更しました。

これについて、韓国に対して禁輸あるいは輸出規制強化を日本政府が行ったなどと報じられ、日本の対応が韓国政府の軋轢を強めたなどとの見方も散見されます。日韓という微妙な2国間の関係ゆえに、メディアもこれをセンセーショナルに報じたり、さまざまな立場の論者の声も大きくなっているようにみえます。

企業活動に及ぼす悪影響は限定的

実際には、韓国への輸出の取り扱い変更は、安全保障に関わる一部の材料のみが対象です。それらの輸出ができなくなるわけではなく、審査に関するこれまでの優遇措置が取りやめとなり、輸出する際の審査・許可を通常のルールに戻すのが、日本政府の対応です。特別な優遇措置を、他国同様の原則のルールに戻したということです。

輸出品が三国などを経由して問題国へ輸出されるのをしっかり管理することは、安全保障の観点から、どの国も責任を持ってやる必要があります。今回の日本の対応は、安全保障の理由で、どの国も自国の裁量で行うことができる対応です。

また、今回通常の管理対象になったのは半導体の材料になる3品目ですが、管理変更の対象になるのは試作段階のものに限られ、すでに量産されている半導体分の材料については対象外になる、との専門家による指摘もあります。

これらを踏まえれば、今回の韓国への輸出規制変更が、韓国の半導体セクターの生産活動を含めて、日韓の貿易など企業の活動に及ぼす悪影響は限定的といえます。

観光面へのインパクトは大きいが…

一方、政治的な日韓関係の悪化は、観光面については無視できない影響が及ぶでしょう。韓国からの訪日客の2割を占め、すでに7月時点で訪日客数は前年比▲7.6%と減少に転じています。一方、中国などからの訪日客が引き続き大きく伸びているため、訪日客全体は同+5.6%と底堅い伸びが続いています。

韓国からの訪日客は8月からさらに落ち込むとみられ、このまま関係悪化が長期化すれば、前年対比で半分程度まで落ち込む可能性もありえるでしょう。2018年のインバウンド消費は約4.5兆円ですが、約2割の韓国人訪日客が半減すると大胆に仮定すると、約1割訪日客数全体が減るため、単純計算で0.4兆~0.5兆円のインバウンド消費が減る可能性があります。

実際には韓国からの訪日客が減った分は、中国、台湾など他のアジアからの訪日客が増える可能性があるため、これはインパクトを最大限見積もるための仮定ですが、それでも日本のGDP(国内総生産)の0.1%の規模で経済全体への影響ではほぼ誤差といえます。

これまで判明している日韓関係悪化の、日本経済への影響はほぼありません。そして、日本から韓国への観光客も大きく減るため、韓国経済も悪影響を受けるでしょうが、同様に誤差程度の悪影響しか想定されないでしょう。

消費増税は失政になる可能性が高い

むしろ、日本経済全体に影響を及ぼすのは、10月から行われる消費増税です。2014年の消費増税は判断ミスだったと安倍首相は後悔していた、とメディアで報じられました。今回も同様に、失政だったと振り返られる可能性が高い、と筆者は考えています。

消費増税による家計負担増の金額を確認すると、消費増税にともない約4.6兆円の税収負担が増えます。増税によって、幼児教育と高等教育の無償化などの制度が始まりますが、これらによって約2.4兆円が政府から家計に支給されます。このため、今回の増税によって、恒久的な家計負担は約2.2兆円増えます。

この家計負担に対して、政府は平成31年度予算として2兆円規模の臨時の景気対策を行いますが、このうち1.35兆円は防災、国土強靭化政策で、家計の所得負担を直接軽減させることになりません。時限的な対策として、いわゆるポイント還元制度などがありますが、これらは0.66兆円となっています。

これらの予算が実際にすべて政府支出として家計に給付されるかは不明なので、先に挙げた2.2兆円の恒久的な家計負担のごく一部しか相殺されないことになります。

なお、2兆円は家計の可処分所得300兆円の約0.7%に相当します。今回の増税で個人消費がどの程度落ち込むかは見方が分かれますが、名目賃金が1%程度しか伸びていない中で、家計所得に無視できない規模の負担が生じれば、少なくとも個人消費はほぼゼロに失速すると筆者は予想します。消費増税以降、日本経済の成長率はほぼゼロ成長に減速するリスクが大きいと考えています。

日韓関係の悪化が大きなニュースになっていますが、それよりも日本人の生活に直結する問題として、消費増税の影響のほうがかなり大きいことは明らかです。最近の日本の報道では、こうした冷静な視点が欠けていると筆者は感じています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本の昭和末期から平成に至る政治史を振り返ったとき、消費税の導入や消費税の税率引き上げにまつわる動きは「呪われた歴史」といってもいいほど政権を潰し、苦境に追い込んできた。さらにはその都度、景気回復の兆しを迎える日本経済をどん底に突き落とすなど、悲劇的な状況を数々もたらす結果となった。

本来、消費税というのは優れた税制です。脱税がしにくく、徴税コストが安く、安定財源となる税制です。その優れた税制を正しく運営すべきでした。

しかし、その導入において、国民や野党の反対をかわすためだけにあまりにも誤った論理をふりかざし、嘘に嘘を重ね、しかもインボイス制度(適格請求書等保存方式)がない不完全な形で導入してしまいました。
そしてそれ以後、税理論や社会保障理論を歪めてまで、ひたすら消費税の増税こそが正義であるかのように志向してきた歴史が日本にはあります。
このような思惑で消費税の制度が歪めば歪むほど、無理が生じて、呪いにかかったかのように政権が潰され、日本経済にも悪影響を与えてきました。現在の消費増税議論がいかに歪んだものであるかを知るためにも、日本における消費税の歴史を振りかえってみます。

中根蘇康弘氏 首相当時

中曽根康弘首相は1986年7月に大方の意表を突くかたちで解散し(死んだふり解散)、衆参同日選挙に打って出ます。この折には、「国民や自民党員が反対する大型間接税はやりません」「この顔が嘘をつく顔に見えますか」と発言をし、衆院で300議席以上を獲得する大勝利を収めていました。
しかし、同年12月に政府税制調査会と自民党税制調査会が「売上税」を提案し、中曽根内閣は翌1987年2月に「売上税法案」を国会に提出したのです。

売上税はもちろん「大型間接税」ですから、「嘘つき」という批判が満ち満ちることになりました。結局、1987年の地方選挙で敗北をし、売上税は撤回に追い込まれました。大平内閣の挫折と、中曽根内閣の「嘘つき」で、消費税には決定的に悪いイメージが付くことになってしまいました。

1993年6月、野党が当時の宮沢喜一内閣の不信任案を出し、小沢一郎氏たちが造反して野党に賛成した結果、内閣不信任案は成立し、衆院選が行われることになりました。

ここで自民党は衆院での過半数を失い、逆に自民党を飛び出して新生党を結党した小沢氏たちは「非自民」勢力を糾合。かくして、自民党が下野し、八党派連立(日本新党、日本社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合)の細川護熙内閣が成立しました。



その細川首相が1994年2月3日未明に突然、記者会見を開いて「国民福祉税」構想を打ち出しました。税率3%の消費税を廃止して税率7%の福祉目的税にする、というものです。

細川内閣は、赤字国債を発行しないことを公約の一つにしていました。しかも当時、米国が日本の内需拡大を促すために、日本の所得減税を求めていました。

赤字国債を発行せず、所得減税も行うとなれば、消費税を増税するしかない状況でした。ところが、消費増税は、消費税反対を訴えて支持層を広げてきた社会党から受け容れられないことは目に見えていました。

ならば、いっそのこと「消費税」を廃止してしまい、「新税」の衣をまとわせようと考えたのでしょう。袋小路に陥った状況を活かそうと考えた大蔵省と小沢氏が、よく事情をわかっていない細川首相を抱き込み、一気に税制改革も進めてしまおうとしたのではないかと思います。

ところが、これが見事に頓挫します。政治家が目論む「新税」などすぐに見透かされるのであって、大蔵省とすれば、細川首相をうまく取り込んだつもりだったのかもしれませんが、連立政権内でも話し合われておらず、根回しがまったく不十分だったこともあって社会党などは猛反発しました。

たちまち翌4日の連立与党代表者会議で撤回されるに至りました。政権の求心力は急速に失われて、細川内閣は同年4月25日に総辞職しました。

そうして時代は下り、2012年12月の総選挙で、単独過半数を大きく超える294議席を獲得して圧勝した自民党が政権に返り咲き、第二次安倍晋三内閣が誕生しました。

それに先立つ2012年9月の自民党総裁選の際、安倍首相は消費税を上げる前にデフレ解消をする、といいました。安倍首相は消費税の増税には消極的でしたが、法律になったものを無視することはできず、「法律どおり」2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。

せっかくアベノミクスによってデフレ対策が打たれ、2014年4月時点ではインフレ目標達成にかなり近いところまで行っていたのですが、消費税率を上げたことで景気は逆戻り。離陸し始めた状態で安定飛行に入っていなかった景気は、消費税の増税によって急失速してしまいました。

こうした状況を受けて、2015年10月の増税予定は一年半先送りされ、2017年4月の増税予定がさらに2年半先送りに。安倍首相が財務省の意向を退け、かろうじて踏みとどまったかたちでした。

現在、デフレは解消されつつありますが、脱却には至っていません。企業で人手不足の状況が生まれ、雇用回復に次いで当初の狙いである「賃金上昇」がようやく始まる、と思ったところで、政府は事実上の「移民」緩和政策を決めてしまいました。

過去3回の消費増税のうち、3%の税率で導入した1回目(1989年)は、バブル期で景気がよい状況でした。しかも物品税の減税と同時に行なったので、タイミングとしては悪くありませんでした。

しかし、税率が3%から5%に引き上げられた2回目(1997年)、5%から8%に引き上げられた3回目(2014年)の消費増税は最悪でした。いずれもデフレのときに行なったため、景気を大きく冷え込ませる結果となりました。

外国人労働者の流入が日本の賃金を押し下げていることは、このブロクでも過去に説明してきたように、はっきりしています。あまりにもタイミングが悪く、さらに2019年10月に消費増税を実行してしまえば、2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力はすべて水の泡でしょう。

現在のマスコミは、このようなことを知ってか知らずか、増税のことなど忘れてしまったかのように、韓国問題ばかり報道しています。財務省の発表を鵜呑みにした報道ばかりで、おそらく知らないのでしょう。

2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力が水の泡になるとはどういうことでしょう。結局、またデフレ円高に戻るということです。さらに、アベノミクスの大成果でもあった、雇用の改善もまた元に戻ってしまうということです。

再び、就活が最悪の状況に戻るということです。そうしてそれは、何をいみするのでしょうか。人は喉元すぎれば熱さを忘れ、という具合にわずか数年前のことでも忘れてしまいます。以下の動画は2013年に放映されていた東京ガスのCMです。

あまりにもリアルで、生々しい就活の悲惨さが批判の的になって、このCMは放送中止になりました。


以下の動画は、就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"というタイトルです。

ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がおかしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の渦中へと引きずり込まれて行くさまを描いています。 

作成は、「吉田まほ」さんです。2012年度の作品です。


この時代の就活ではいわゆる「コミュニケーション」を重視していました。

デフレの時期にはモノやサービスが売れないので、企業としてはなるべく新規採用を控えて、採用するにしても、デフレ対応型の無難な人材を採用する傾向が強かったものです。

デフレ対応型の無難な人材とは、どういう人材かといえば、「コミュニケーション能力に長けた人材」です。だから、採用の面談においても突飛な質問をするにしても、過去のデフレ期には「コミュニケーション能力」に関するものが多かったものです。

結局のところ、デフレという厳しい環境の中で、顧客や、会社や会社の中で働く人やに共感でき、苦難をともに乗り越えて行く人材が重視されたのです。創造性などは、あったほうが良いということで、最優先の資質ではありませんでした。

いずれかの方面に優れた才能や能力があったとしても、それはデフレの世の中ではなかなか役に立たず、結局そのような才能がなくても、コミュニーけション能力にたけた人間が一番無難だったのです。

デフレはモノ・サービスが売れず、創造性のある人材も登用されなくなるということで、想像以上に企業をかなり毀損してしまうのです。

以下は当時の就職面接を描いた動画です。声の詰まり方とかリアル過ぎてこちらがハラハラする。それにしても、このような面接現在なら考えられません。まさに、買い手市場だったからこそこのような面接になっていたのです。


そうして、このような面接が行われたのは、何も本人が悪いとか、面接官が悪いということではないのです。結局デフレのため、採用側は採用に慎重だったのが理由です。

企業その中でも、まともな企業であれは、デフレだからとっいって、一定期間に極端に採用を減らしていては、将来の管理職や幹部候補を選ぶ段になったときに、候補者がいないという状況になりかねたいため、無理をしてでも採用をしていたのです。

今年の新卒のある男性新入社員に綺譚のないところを聞いてみたところ、なかなか思った就職先に就職できなかったので、「就職浪人したい」との旨を就職担当の先生に伝えたところ、「就職状況は今は良いがいつ悪くなるかわかったものではないから、今からでも頑張って、とにかく就職しろ」と言われ、そこから就活を再開し就職したそうです。

この先生は正しかったようです。今後増税でこのようなことになるのは目に見えています。今後、就職面接でコミュニケーションが重視されることになるでしょう。

私は、安倍政権には、柔軟になっていただきたいと思います。今後、増税によって悪影響が出た場合には、柔軟に対応して、減税も実施していただきたいものです。いよいよになれば、機動的な財政政策と、金融政策を実行して、デフレから完璧脱却していただきいものです。

令和年間は、平成年間のように経済政策を間違い続け、ほとんどの期間がデフレスパイラルの底に沈んでいたというようなことは繰り返さないで欲しいです。

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2019年3月17日日曜日

トランプ大統領が「強すぎるドル」を徹底的に嫌う最大の理由―【私の論評】日本の政治家、官僚、マスコミ、識者は無様なほど雇用を知らない(゚д゚)!

トランプ大統領が「強すぎるドル」を徹底的に嫌う最大の理由

過激な発言の一方で冷静なところも





「アメリカファースト」の中身

 「利上げを好み、量的引き締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB(米連邦準内に1人いる」

 トランプ大統領が3月2日の演説でこう揶揄した人物とは、ほかでもないFRB議長のジェローム・パウエル氏だ。トランプ大統領は中央銀行の金融引き締め策がドル高を招き、米国経済に悪影響を与えていると度々批判している。

FRBは1月、2019年に予定していた2回の追加利上げを見送る方針を示していたが、トランプ大統領はまだおかんむりのようだ。

ジェローム・パウエルFRB議長

 金融引き締めのタイミングについては、アベノミクス以降日本でも最重要課題となっている。日米の経済を単純比較することはできないが、トランプ大統領はなぜFRB批判を繰り返すのか。

 本コラムでは再三述べてきたが、金融政策とは雇用政策であるということは、経済学の基本中の基本だ。

 ペンシルベニア大学ウォートン校卒のトランプ大統領は、政治は素人でも、この基本をよく理解している。彼のよく言う「アメリカファースト」の中身をよく見てみると、雇用の確保が最優先に据えられていることがわかる。

 FRBは雇用最大化と物価の安定の「二重の責務」を担っていると、公式に宣言している。このため、雇用となれば真っ先に矢面に立たされるのがFRBである。これは米国だけでなく欧州でもそうだ。

 ところが日本で雇用はどうするのかとなると、質問が向かうのは日銀ではなく厚生労働省だ。

 物価上昇率が高いときには失業率が低く、物価上昇率が低いときには失業率が高い。物価と雇用の関係は裏腹である。日銀の仕事は物価の安定のみと言っているが、実質的に雇用の確保の責任を持っている。

 もっとも、いくら金融政策を行っても失業率には下限があり、それは各国で異なる。日本では2%台半ば程度、アメリカでは4%程度とされている。一方、その達成のための最小の物価上昇率は先進国で似通っており、だいたい2%だ。これがインフレ目標となっているのをご存じの読者は多いだろう。

 ここで改めて、なぜトランプ大統領が「強すぎるドル」を嫌い、パウエル議長批判を繰り返すのかを考えよう。

トランプ大統領

 為替は二つの通貨の交換比率から成り立っている。もしアメリカが日本よりも金融引き締めを進めると、市場のドルは少なくなり、相対的にドルの価値は上がる(ドル高)。これは輸出減少と輸入増加を招き、結果としてGDPを減少させる要因となる。国際金融理論の実務でも有名な「ソロスチャート」にも示されている相関関係だ。

 トランプ大統領は米国の年間GDP成長率の目標を3%としていたが、'18年はこれをわずかに上回る3・1%という数値に落ち着いた。目標値を下回るかもしれないとあって、トランプ大統領は相当気を揉んでいたはずだ。国際経済学を理解する彼だからこそ、口酸っぱく金融引き締めを批判し、GDP成長率の押し上げを図っている。

 激しい言動が取り沙汰される一方で、意外と理論派なところもあるのがトランプ大統領だ。

 彼が政府の一員と言える中央銀行にどうモノ申すのか、冷静に追っていく必要がある。

『週刊現代』2019年3月23日号より

【私の論評】日本の政治家、官僚、マスコミ、識者は無様なほど雇用を知らない(゚д゚)!

この記事の冒頭の記事には「日本で雇用はどうするのかとなると、質問が向かうのは日銀ではなく厚生労働省だ」という指摘があります。

雇用に関して、雇用枠を拡大することができるのは、日銀だけです。厚生労働省にはこれはできません。厚生労働省が雇用に関して実行しなければならないのは、雇用統計と労務関連施策であって、雇用には直接関係ありません。

これは、世界の常識なのですが、なぜか日本ではこれが、いわゆる大人の常識になっていません。

多くの人が現在でも、雇用=金融政策とか雇用の主務官庁は日銀というと、怪訝な顔をするようです。

これに関しては、このブログでも指摘したことがあります。
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!
当時の就活中の女子大生

この記事は、2012年9月1日土曜日のものです。この当時はまだまだ就職氷河期が続いていおり、就活生の悲惨な状況が報道されていました。この状況はこの年の年末に安倍政権が成立して、金融緩和策を打ち出し、翌年の4月から日銀は異次元の金融緩和策を打ち出しました。そうして、日銀が緩和に転じて、その後雇用状況が良くなり今日に至っています。

上の記事で"「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」。今春まで約8年間、東京都内のハローワークで契約職員として勤務していたある女性は、正規職員の上司が何気なく発した言葉に愕然としたことがある"とありますが、この正規職員の上司の発言は正しいのです。

この記事そのものは、雇用=金融政策という原理原則を知らない人が書いたものなので、そもそも読むに値しませんが、ただし、この正直者の正規職員の上司の発言だけは、日本では雇用の主務官庁は厚生労働省が多いと思い込む人が多いことの証左として、読むに値するかもしれません。

先にも述べたように、厚生労働省およびその下部機関である、ハローワークは失業率などの雇用統計や労務に関わるのであって、雇用そのものには関係ありません。厚生労働省やハローワークがいくら努力をしたとしても雇用は創造できません。当時からそのことは全く理解されていませんでした、それに関わる部分をこの記事から以下に引用します。
アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。 
この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。
当時の就活中の女子大生 当時は特に女子大生の就活は大変だった
このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。
それと、気になるのは、 金融政策により為替の大部分が決まってしまうことも、多くの人が知らないことです。

日本円と米ドルの比較でいえば、日本が金融引き締め政策をとり、円そのものを米国ドルよりも少なくすれば、相対的に円の希少価値があがり、円高になります。逆に日本が金融緩和政策をとり、円そのものを米国ドルより多くすれば、円の希少価値が下がり、米ドルの希少価値があり、円安ドル高になります。

無論、為替レートには様々な要因があり、短期的には為替レートを予測することは不可能です。ただし、長期的には日米政府の金融政策によって為替レートが決まります。

こんなことは、ある物が多くなれば、希少価値が少なくなり、ある物が少なくなれば、希少価値が高くなることを知っている人なら簡単に理解できることだと思うのですが、これも何故か日本ではほとんど理解されてないようです。

そうして、このことが理解できいないがために、日本では通貨戦争などを信奉する人も多いようです。通貨戦争など妄想にすぎません。

考えてみて下さい、仮に日本が円安狙いで徹底的に金融緩和策をやり続けたとします。その結果どうなるでしょうか、際限なく日本円を擦り続けた先には、ハイパーインフレになるだけです。だから、金融緩和するにしても適当なところでやめるのか普通なので、通貨戦争などできないし、妄想に過ぎないのです。

このようなことも理解していないからでしょうか、日本の雇用論議や、為替論議を聴いていると、頓珍漢なものが多いです。

私は、為替レートやGDPなどよりも、雇用が最も重要だと思っています。なぜなら、雇用が確保されていれば、大多数の国民にとっては安心して生活することができます。逆に雇用が確保されなければ、大多数の国民安心して生活できません。

仮に他の経済指数などが良くても、失業率が上がれば、政府はまともに仕事をしているとは言えません。

冒頭のドクターZの記事では、

「国際経済学を理解する彼だからこそ、口酸っぱく金融引き締めを批判し、GDP成長率の押し上げを図っている。

 激しい言動が取り沙汰される一方で、意外と理論派なところもあるのがトランプ大統領だ」。

とトランプ大統領を評価しています。

しかし、これは政治家や、マスコミ(特に経済記者)、識者(特に経済関係の識者)は、最低限知っていなければならないことだと、私は思います。

ましてや、雇用に関しては、細かいことまでは知らなくても、大きな方向性は理解していてしかるべきです。

日本では、これを理解している、政治家、官僚、マスコミ、識者はほんの一部のようです。幸いなことに、安倍総理とその一部のブレーンは知っています。それなのに、彼らの多くは米国のほとんどリベラルで占められている新聞やテレビなどのマスコミ報道を真に受けて、保守派のトランプ大統領をあたかも狂ったピエロであるかのように批判しています。

そうして、トランプ大統領のようにまともにマクロ経済の理解はしようとしません。その意味では、先に掲載した、正直者のハローワークの正規職員の上司よりも始末に負えないです。

そのようなことをする前に、彼らは無様なほど雇用を知らないことを自覚すべきです。そんなことでは、まともな経済論争などできません。顔を洗って出直してこいと言いたいです。

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2019年2月5日火曜日

統計不正も実質賃金も「アベガー」蓮舫さんの妄執に為す術なし?―【私の論評】虚妄に凝り固まる立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、今の韓国のように雇用が激減するだけ(゚д゚)!

統計不正も実質賃金も「アベガー」蓮舫さんの妄執に為す術なし?


田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 厚生労働省の毎月勤労統計を巡る不正問題に関して、ワイドショーなどでは相変わらず「低レベル」と言っていい報道が続いている。

 毎月勤労統計の不正問題自体は、国の基幹統計と言われる賃金水準の実態を正確に捉えることを怠った問題であり、厚労省の官僚たちを法的に厳しく処罰すべき問題であろう。

 また、厚労省が設置した「特別監察委員会」に関するずさんな対応については、これはデータ不正そのものを生み出した厚労省の「自己都合」で、国民の関心をないがしろにする行為として批判すべき問題である。ただし、どの程度のデータ不正かと言えば、報道や野党、そして一部の識者からは、安倍晋三政権批判の思惑が「ダダ漏れ」で、そのため過度に誇張されたものになっている。

 筆者の周囲でも、ワイドショーから情報を仕入れた人が「統計不正は大変な問題ですね。安倍政権の責任は大きいですね」と尋ねてきた。そこで筆者は、統計の全数調査を怠ったことは重大な「犯罪」だが、抽出調査自体は統計的には適切に実施し、法規に従えば特に大きな問題ではないことを説明した。

 その上で、安倍政権のはるか前から続いていた話が、安倍政権で発覚したに過ぎないことを指摘した。ついでに「ワイドショーなどを見て、その報道につられて、安倍政権が悪いように誤解する見識のない人が増えて、テレビに振り回されていて、かわいそうだ」と返したら、やはりご本人に思い当たることがあるのか、顔色を変えてにらまれてしまった。

 この例でも分かるように、安倍政権の長期化に伴い、これまたテレビの影響で「長く続くからダメ」というような、事実に立脚しないイメージ批判が蔓延(まんえん)している。そのせいで、ワイドショーなどの報道を鵜呑みにする人たちや、何でもかんでも安倍政権のせいにする人たちを、私の周りから遠ざけてしまうことになった。ただでさえ「友達」が少ないから、安倍政権の長期化は困ったものである。



厚生労働省が入る東京・霞が関の中央合同庁舎

 統計調査不正を利用して、安倍政権の経済政策の成果を不当に貶(おとし)める発言も実に多い。別に安倍政権を特に持ち上げる必要はない。だが、安倍政権の経済政策が、雇用面で大きな成果を挙げたことは否定できない事実である。

 マスコミや野党、反安倍的な識者には、この成果を否定したい思惑が広がっていて、それは事実の否定さえも伴っている。確かに、統計不正はいわば事実をないがしろにする行為だ。だが、批判している野党やワイドショーなどのマスコミがまさに雇用改善の事実をないがしろにしているとしたら、悲劇を超えて「喜劇」ですらある。

 例えば、立憲民主党の蓮舫副代表はツイッター上で次のように述べている。

 「アベノミクスの成果の根拠として、去年6月に前年比3・3%としていた賃金上昇率の伸び率が、実は1・4%だった。実質賃金の伸び率で比較すると、2%が実は0・6%と推計されました。昨年1月から11月の平均は、マイナス0・5ではないかと推計もされます。野党ヒアリングで厚労省はおおむね認める発言をしました」

 まず、安倍首相自ら国会で説明している通り、アベノミクスはその成果の根拠としても、政策目的としても、実質賃金の伸び率を重視したことはない。蓮舫氏はこの点で事実誤認している。

 さらに、前年比での実質賃金の伸び率がマイナスなのは、単に17年が18年よりも実質賃金の「水準」が高かったからである。しかも、アベノミクス期間中の賃金指数を、不正データと修正データとを比べると、むしろ上昇している。都合の悪いデータを隠すことは十分考えられるが、都合のいいデータを隠す意図は、さすがに政権側にはないと考えるのが常識的だ。

 もちろん、強固な反安倍主義者の中には、それでも政権への「忖度(そんたく)」があった、と考える人がいるが、もはや事実を提示して納得できるようなレベルの人たちではないだろう。悪意か妄執か、あるいは頑なな政治イデオロギーの持ち主か、いずれにせよ経済学による説得では無理である。

 またアベノミクスの開始当初から、なぜか蓮舫氏のように実質賃金とその伸び率を重視する人たちが多い。その多くが反安倍、反アベノミクス論者である。

立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長

    だが、そもそもアベノミクス、その中核であるリフレ政策(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させる政策)は、実質賃金の水準や伸び率の動きをただ上げればいいだけの政策のように、単純な見方はしていない。むしろ、長期停滞からの脱出局面(現時点)では、実質賃金の伸び率が低下することも不可避であると主張してきた。

 リフレ政策が効果を与える停滞脱出期においては、実質賃金の切り下げが生じる。なぜなら、雇用が増加することで、新卒や中途採用、退職者の再雇用といった新たに採用された人たちの賃金は、既に長年働いている人たちの賃金よりも低いことが一般的だ。

 すなわち、雇用される人数が増え、失業率が低下することは、同時に平均的な賃金を低下させることになる。これを「ニューカマー効果」という。

 しかしニューカマー効果では、同時に失業率が改善し、雇用状況の改善(有効求人倍率改善、いわゆる「ブラック企業」の淘汰など)も実現していく。さらに、支払い名目賃金の総額も上昇していくだろう。そうして、経済全体の状況は大きく改善されていくのである。

 実際、安倍政権ではこのニューカマー効果による実質賃金低下と、同時に失業率低下、有効求人倍率の上昇、賃金指数の増加、名目国内総生産(GDP)の増加などが見られる。さらに、雇用安定化の成果で、失職などに伴う経済的要因での自殺者数が激減し、不本意な形で就業しなくてはいけない非正規労働者の数も大きく減少した。これらは、単にアベノミクスによって雇用の量的な改善だけでなく、質的な改善も見られたことを証明している。

 そして失業率が低下していくと、いわゆる「構造的失業」という状態に到達する。その過程で名目賃金の増加だけではなく、労働市場の逼迫(ひっぱく)の度合いに応じて、実質賃金も上昇していく。日本経済は、2014年4月の消費税率8%引き上げの悪影響がなければ、このプロセスが実現していた可能性が大きい。

 このように蓮舫議員に代表されるような「実質賃金低下ガー(問題)」論者は、あまりにも問題を単純に捉えていると言わざるを得ない。実は、実質賃金の低下だけを問題視する人たちは、経済が常に完全雇用の水準にあると思い込んでいる新自由主義者的な人に多い。

 新自由主義的な人からすれば、実質賃金の低下など、単に労働の生産性の低下を示すものでしかないからだ。蓮舫議員を含む立憲民主党や国民民主党などの多くの野党は、確か経済問題を適切な政府介入で是正していく「リベラル」のスタンスであるはずなのに、主張が新自由主義者風なのはなぜだろうか。

 おそらく、野党議員の多くは経済政策のアドバイスを受ける相手を間違えているのであろう。例えば、立命館大の松尾匡(ただす)教授が最近、安倍政権の経済政策に対抗するリフレ政策的な政治キャンペーン「薔薇マークキャンペーン」を始めている。なんでも今度の参院選に立候補する議員に、反緊縮に賛同する候補者と対して「薔薇マーク」の認定を与えるというものだそうだ。

2019年1月、毎月勤労統計の不正調査問題で、厚労省の職員らに質問する野党議員(奥)

 認定候補が野党勢力だけかどうか定かではないが、筆者はこのキャンペーンが与野党の対立構図に乗った政治色の強いものだと考えている。リフレ政策はそういう政治的イデオロギーを超えるべきだと考えているので、この運動自体には賛成できない。

 ただ、蓮舫氏のような反安倍主義者たちが、よりまともな経済政策を構築するには、松尾氏のアドバイスに対して、真剣に耳を傾けることを勧めたい。それが日本の政策議論の底上げにもつながるに違いないからだ。

【私の論評】虚妄に凝り固まる立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、今の韓国のように雇用が激減するだけ(゚д゚)!

野党の批判は、結局「実質賃金が下がり、実際に使えるおカネが減って貧しくなった。そのために、個人消費が伸びていない。いまの経済政策は間違っている」ということです。そうして、冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するようにこれは明らかに間違いです。

実質賃金とは、皆さんが受け取る賃金(名目賃金)から物価の上昇分を差し引いたものです。

名目賃金が1%しか上がっていない時に物価が2%上がると、実質賃金は1%下がります。あくまで程度の問題ではありますが、「モノやサービスの値段が上がって、以前なら買えていたはずのものが買えなくなった」ことになります。インフレの悪いところです。

一方、名目賃金が2%下がっても、物価が3%下がってくれれば、実質賃金は1%上がります。「給料は減ったけど、以前よりたくさんのモノやサービスが買えるようになった」わけですから、喜ぶ人もいるかもしれません。

この部分だけを切り取って考えると、たしかに「実質賃金を、いますぐ上げろ!下がったのはケシカラン!」という主張は正しいように聞こえます。

しかし、経済は、常に動きつづけている生き物です。短いあいだだけを輪切りにして判断してしまったのでは、一見正しそうな政策が「長期的にはとんでもないこと」を引き起こしかねません。

これから起きるさまざまな変化を、「時間を追って順々に考えていく」というのが経済学的なものの考え方です。俗にいう「風が吹けば桶屋が儲かる」という世界です。

逆にいえば、この思考ができないと経済政策を誤ってしまうことになります。

失業者を減らすことが最優先

少しこみ入った話になるので、経済学でよく使われる需要曲線(赤)と供給曲線(緑)を使ってご説明します。縦軸が実質賃金、横軸が雇用者数です。

<現在>という矢印の指しているところに、いまの日本の雇用市場はあります。

左側の縦軸の「今の実質賃金」というところから水平に線を引く(………)と、「雇いますよ」という需要曲線(赤)とぶつかります。ここから下におろした線の指しているところが、「今、雇用されている人数」です。

先ほどの水平な線をさらに右にいく(………)と、「働きたいです」という供給曲線(緑)とぶつかります。ここから下におろした線が指しているところの人数だけ「今、働きたい人」がいます。

ただ、実際に雇ってもらえるのは、需要曲線(赤)から降りてきたところまでの人数だけです。この差が「失業者」となります。

失業とは、「働きたいのに働けない」ということです。しかも、失業することによって収入がとだえて経済的に困窮するだけでなく、「社会から疎外されている」と感じてしまいがちです。

その結果、非常に残念なことですが、精神的・肉体的に追いつめられて、自殺という手段を選ぶ人が増えてしまいました。日本の失業率と自殺率の相関関係は、OECD諸国の中でも際立って高くなっています。

従って、「失業者をどうやったら減らせるか」「この図の赤い矢印の方向にどうやって進むのか」ということを最も優先して考えなければなりません。

我慢して回り道を

現在の実質賃金の水準で、そのまま点線の上をわたって供給曲線(緑)に到達できれば一番良いのですがそうはいきません。点線の上は、あくまで空間です。右のほうにいきたければ、黄色い矢印が指し示すように「斜め右下方向」に需要曲線(赤)の上を動くことになります。

あくまで「下」ですから、「実質賃金が下がらないと、雇用者数が増える方向には行けない」というのが現実です。これを変えることは、誰にもできません。

では、どうしたら実質賃金は下がるのでしょうか?

先ほどご説明したように、実質賃金は(名目賃金)-(物価の変動)で決まります。

「実質賃金を下げろ」といわれて、まず思いつくのは「名目賃金を下げる」、つまり「賃金カット」でしょう。強欲な経営者が「給料を20%下げることにした!」と叫べば、たちどころに下がって、、、というほど話は簡単ではありません。

名目賃金は、経営者と労働者の交渉で決まります。「交渉」といっても、全員が実際に膝をつきあわせて丁々発止とやる訳ではありません。

「この賃金なら雇いたい」「この賃金なら働こう」という「労働市場での需要と供給から決まる」と考えたほうが自然です。アダム・スミスの「神の見えざる手」は、ちゃんと働いています。

この名目賃金というものは、あまり簡単に上がったり下がったりしません。特に日本では、毎週(週給)や毎日(日給)といった単位で給料が変動する労働者は極めて少数です。大多数の労働者は月給制ですし、しかも年間の支給額が大きく変動することはありません。

「20%下げるぞ」などと宣言したら、翌日の職場はカラになっていることでしょう。

つまり、「名目賃金は、そう簡単には下がらないし下げられない」というのが、本当の話です。

では、「物価を上げる」というのはどうでしょう?

これは何か非常に難しいこと、特に長い間デフレに苦しんだわが国にいると、とんでもなく大変なことのように思えます。

しかし、何らかの政策で「強引に名目賃金を変える」よりも、「金融政策によって物価水準を変えることで、実質賃金を動かす」というほうが世界の経済学や経済政策の世界では一般的です。

たとえば2013年1月に、政府と日銀は「+2%と言う目標を定めて物価を上げる」という共同宣言を発表しました。これは「実質賃金は一時的に下がるものの、まず失業者を減らす政策をとる」ことを示したものであると言い換えることができます。

その後の政策は、よく「異次元の」という形容詞をつけて紹介されますが、「デフレという名の異常事態からの脱却」という局面だったために「異次元の手段」が必要だっただけです。政策そのものは、ごく常識的な経済理論にのっとったものです。

「異次元」ではあっても、「異常」ではありません。

いま「物価が上昇したことで実質賃金が下がっている」のは、この右下がりの黄色い矢印の方向に日本経済が走りだしたということです。実質賃金は下がりましたが、冒頭にご紹介したとおり雇用者数は増加しています。

赤い矢印の方向に動いていることは、間違いありません。

デフレへの逆回転は絶対に阻止

現在の状態を、「実質賃金が下がって貧しくなった」と批判するのは簡単です。しかし、黄色い矢印の方向に行かなければ雇用者数は増加せず、130万もの人が失業したままだった可能性は否定できません。

いまはひとりでも多くの人が働けるようになるために、少し我慢をする時です。

きちんと現在の金融緩和政策をつづけていれば、「完全雇用」と書いた部分を通過し、右側の黄色い矢印が示す「右斜め上」に向かって供給曲線(緑)の上を動いていけるようになります。いよいよステージの転換です。

人手不足により名目賃金が上昇し、実質賃金が上がります。しかも、もらえる給料の額面が増えています。

「もらえる給料は減ったけど、物価はもっと下がっている。だから、実質的に豊かになって幸せだ」などという冷静沈着な計算のできる人が、世の中の多数派だとは思えません。やはり「金額が増えてハッピー」という人のほうが多いですから、消費が増えて経済の好循環が起きます。

しかも右方向に動いていますから、働くことができる人は増えつづけます。もう「社会から疎外された」などと、悲観する必要はありません。

1998年に3万人を超え「世界的にも高水準」と懸念されていた自殺者数は、過去5年連続して減少してきています。大規模な金融緩和に踏み切った2012年以降、減少幅が大きくなっていますが、これがさらに加速していくと期待できます。

実際の経済はこんな簡単な図よりも複雑ですから、まだ「完全雇用」と書いたところに到達しているかどうかはよく分かりません。

しかし、比較的名目賃金が変わりやすい「パートやアルバイトの時給」が、大幅に上がっているのはご存知のとおりです。首都圏のパートやアルバイトの平均時給は1000円を超えました。厚生労働省が先週発表した賃金構造基本統計調査では、女性の賃金が過去40年で最も高くなっています。

さらに総雇用者所得も増えていますから、働いている人全体が受けとる賃金の合計は増えつづけています。

総務省の調査によると、正社員を増やした会社は「人材流出を防ぐため」「採用を優位に進めるため」という理由をあげていました。つまり、「良い待遇を与えないと、働いてもらえなくなった」ということです。これは「完全雇用」状態に近づき、働く人たちの立場のほうが強くなったことに他なりません。

結論は明らかです。「物価が上がったことで実質賃金が下がり、生活が苦しくなった。金融緩和政策をやめて物価を下げろ」と言う主張は、経済政策論的に完全に間違っています。物価が下がったおかげで「実質賃金が上がった」と喜ぶことができるのは、失業する心配のない人達だけです。

もし、そんな経済政策をとってしまうと、この図の青い矢印のように「左斜め上」に動いていくことになります。たしかに実質賃金は上がりますが、多くの人が職を失い苦しむことになります。これこそが、デフレの害悪です。

今の流れを逆回転させるべきではないのです。

なお、上ではニューカマー効果を解説するため、マクロ経済でよく用いられるグラフを使って説明しました。

しかし、このようなグラフを使わなくても常識的に理解できます。

たとえば、ある企業で景気が良くなったので、事業規模を拡大しようとしたとします。事業を拡大するときには、最初は営業店舗や工場などの人員を増やすのが普通です。間違っても、本部の要員や役員などを最初に増やすということはありません。さらに、拡大するとすれば、営業店舗や工場そのものも増やすはずです。

そうなると、営業店舗や工場などには、多くの新人を雇用しなければなりません。新人を多数雇用すればどうなりますか。会社全体としては、事業規模を拡大する前よりも平均賃金は低くなります。さらに、生産性は当初は下がるのが当然です。なにしろ、新人を多く雇い入れれば、最初は新人は普通に仕事ができず、これに対して訓練や教育を施さなければなりません。

これが理解できれば、国単位で実質賃金が下がるということも容易に理解できると思います。さらに時がたつと、事業の規模が拡大し軌道にのれば、本部の人員を増やしたり、給料をあげないとなかなか人を募集できなかったりで、賃金は上昇します。

こんな簡単な理屈も理解できないのか、蓮舫さんをはじめとする野党の議員なのです。

お隣韓国では金融緩和せずに賃金だけあげて大失敗

さらに、野党議員らの考えが間違いであるということはすでに実例があります。お隣韓国では、文大統領が金融緩和をせずに、賃金だげあげる政策をとり、雇用が激減して大失敗しています。

これについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
文在寅大統領誕生に歓喜した韓国の若者、日本へ出稼ぎを検討―【私の論評】枝野理論では駄目!韓国がすぐにやるべきは量的金融緩和!これに尽きる(゚д゚)!
立憲民主党枝野代表

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、枝野氏も、雇用等に関しては蓮舫氏と同じような考えであり、実質賃金ばかりを問題にする傾向があります。以下にそのあたりがわかるような内容の部分のみを引用します。
枝野氏には金融緩和という考えは全くありません。金融緩和をせずに、分配を増やすというのはどういうことかといえば、結局のところ韓国の実施した「金融緩和をせずに最低賃金」をあげるというのと何も変わりません。 
枝野氏をはじめとするリベラルの雇用政策は韓国で実行され、大失敗したということです。 
ブログ冒頭の韓国の若者の悲惨な状況を改善し、日本のように大卒の就職率を良くするには、分配や最低賃金を最初にあげるのではなく、まずは量的金融緩和を実施すべきです。
いずれにせよ、枝野氏も蓮舫氏も虚妄に凝り固まっており、金融緩和などは実施せずに、分配を増やす、最低賃金を増やすなどの破滅的な政策を主張しています。立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、またぞろ大学生の就活が地獄になるのは明らかです。

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2018年11月6日火曜日

各国で「右派」が躍進する理由… 経済苦境と雇用悪化を招いた左派に対し、国民に「刺さる」政策で支持得る―【私の論評】雇用は他のどの指標よりも重要!ティラー・スウィフト効果は僅少!中間選挙は雇用をかなり良くしたトランプ共和党が断然有利(゚д゚)!

各国で「右派」が躍進する理由… 経済苦境と雇用悪化を招いた左派に対し、国民に「刺さる」政策で支持得る

ブラジル大統領選で勝利したボルソナロ下院議員

 ブラジル大統領選で、右派のボルソナロ下院議員が勝利した。このところ、各国で右派政治家が選挙で勝利しているのが目立つ。米国のトランプ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、ハンガリーのオルバン首相などだ。

 ドイツの地方議会選では、メルケル首相が党首を務める中道のキリスト教民主同盟が敗れたが、これも極右勢力と極左勢力の台頭によるものだ。

 主要7カ国(G7)でみると、米国のトランプ大統領、英国のメイ首相、日本の安倍晋三首相が右派、フランスのマクロン首相、ドイツのメルケル首相、イタリアのコンテ首相、カナダのトルドー首相が中道といったところではないだろうか。

 ブラジルの政治事情をみると、ボルソナロ氏の前は、左派・労働党の人物が大統領を長年務めていたが、国民の拒否感が強かったようだ。背景には深刻な不況があり、2015~17年はマイナス成長だった。不況に加えて政治汚職などのスキャンダルが、今回の右派大統領の誕生につながっている。

 フィリピンではドゥテルテ大統領が国内の治安問題への対処で高い支持率を得ている。

 ハンガリーは反移民の強硬策が国民の人気を博し、10年からオルバン首相の長期政権になっている。同じ欧州で、オルバン首相の強権政治と対極といわれていたのが、ドイツのメルケル首相だが、寛容な移民政策のために地方選挙で相次いで敗北し、キリスト教民主同盟党首を辞任することになった。首相は続けるが、レームダック化は避けられない。

 欧州では、移民政策への対応によって、それに反対する右派が勢いを増しているようだ。

 ハンガリーでは、経済成長率も10年の0・7%から上昇傾向で、17年には4・0%になった。一方、ドイツでの成長率は10年に4・1%だったが、その後はあまり振るわず17年は2・2%にとどまった。

 こうしてみると、右派は、左派の経済低迷を背景に、国民に「刺さる」政策で支持を得たときにできやすいようだ。

 経済苦境とも表裏一体であるが、左派政権下の雇用悪化を受けて右派政権が誕生し、雇用で一定の結果を出している国も多い。

 ブラジルは、11%を超える失業率を記録している。本来なら雇用がうたい文句のはずの左派政権では情けない数字で、右派政権ができても不思議ではない。

 米国もトランプ政権になってから雇用が好調で、失業率は4%とほぼ完全雇用状態である。フィリピンの失業率は5・4%で、ドゥテルテ大統領就任時より改善している。ハンガリーはオルバン政権になってから一貫して失業率が低下しており、今では3・7%と発足時の11・2%とは段違いの雇用環境だ。

 日本でも、第2次安倍政権が発足して以降、雇用が格段に良くなっているのは説明するまでもないだろう。

 左派政権が雇用を確保できないときに、右派が左派のお株を奪っているという現象が世界的に起きているのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】雇用は他のどの指標よりも重要!ティラー・スウィフト効果は僅少!中間選挙は雇用をかなり良くしたトランプ共和党が断然有利(゚д゚)!

冒頭の高橋氏の記事には、米国ではトランプ政権になってから雇用がよくなっているとありますが、確かにそのとおりです。以下に、直近(10月)はどうであったかを示します。

米国ではトランプ政権になってから毎月雇用が
増えているが10月は25万人の雇用が増えた

米労働省が発表した10月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が25万人増となり、市場予想の19万人増を上回りました。失業率は労働参加率の上昇にもかかわらず49年ぶりの低水準となる3.7%を維持したほか、賃金の伸びは9年半ぶりの高水準となりました。労働市場の一段の引き締まりが示されたことで米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げを実施するとの観測が一段と裏付けられました。



トランプ大統領は雇用統計を歓迎し、ツイッターに「これらは信じられない数字だ」とつづりました。


10月はハリケーン「フローレンス」の影響で停滞したレジャー・接客部門の雇用が回復。製造、建設、専門職などの部門でも雇用は大きく拡大しました。

労働省は10月半ばにフロリダ州を直撃したハリケーン「マイケル」による10月の統計への影響は軽微だったとしています。

ただ9月分は11万8000人増と、13万4000人増から下方修正されました。

時間当たり平均賃金は5セント(0.2%)増加。前年比では3.1%増と、前月の2.8%増から加速し、2009年4月以来の高い伸びとなりました。

10月は週平均労働時間が34.5時間と、前月の34.4時間から増加しました。賃金の上昇は他の経済指標でも示されており、インフレ率が当面はFRBが目標としている2.0%近辺で推移するとの見方を裏付けるものとなります。

FRBは来週の連邦公開市場委員会(FOMC)では政策を据え置くとの見方が大勢となっていますが、エコノミストの間では、10月の労働市場関連の経済指標が力強かったことで12月のFOMCでは利上げに動くとの見方が濃厚になっています。FRBは9月に今年に入ってから3回目となる利上げを実施しています。

過去3カ月間の毎月の雇用増の平均は21万8000人。労働人口の増加に対応するためには毎月10万人前後の雇用増が必要とされていますが、この水準を倍以上上回っています。

10月の労働参加率は62.9%と、前月から0.2%ポイント上昇。現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.4%と、前月の7.5%から低下しました。

雇用率は60.6%と0.2%ポイント上昇し、09年1月以来の高水準となりました。

業種別ではレジャー・接客が4万2000人増加。小売は増加したものの2400人増にとどまりました。経営破綻した小売り大手シアーズ・ホールディングス(SHLDQ.PK)の店舗閉鎖などが影響した可能性があります。

建設は3万人増、製造は3万2000人増となりました。製造業は前月の1万8000人に続く増加。トランプ米政権は保護主義的な貿易政策を打ち出していますが、これまでのところ米製造業に対する雇用面での影響は顕在化していません。

この雇用の改善は、当然のことなが本日開票される、米国中間選挙には有利です。オバマ前大統領は、「米国の経済は、前民主党政権自体から良くなっていた」と中間選挙の応援演説で述べていました。確かにそのようなことはあります。ただし、雇用に関してはオバマ大統領のときも改善しつつありましたがが、トランプ大統領になってからは明らかにかなり改善しています。

今年6月11日のニューヨーク・タイムズには、「雇用の数字がどれほど良いものか表現する言葉がもうない」と題された、コラムが掲載されました。以下にその内容の日本語訳を掲載します。
「雇用の数字がどれほど良いものか表現する言葉がもうない」

ニール・アーウィン著
ニューヨーク・タイムズ「The Upshot」
2018年6月1日1日に発表された5月の雇用の数字を分析する時に本当に疑問となるのは、それを的確に表現するために『良い』の同義語がネットの類語辞典に十分存在するかどうかという点だ。 
例えば、「splendid(輝かしい)」や「excellent(卓越した)」といった言葉が当てはまる。そのような言葉が適切となるのは、米国経済で増加に至るまで9年間かかったにもかかわらず、1カ月に22万3千の雇用が追加された場合や、失業率が18年で最低の3.8パーセントに落ちた場合のことだ。 
「salubriousな(健康的)」「salutary(有益な)」「healthy(健全な)」は、平均時給が0.3パーセント上昇したことを表現する言葉として使える。しかもそれは、昨年全体で2.7パーセントの上昇であった・・・。

また広義の失業率には、失望から職探しを諦めてしまった人も含まれるが、それが7.6パーセントに低下した。アフリカ系アメリカ人の失業率は5.9パーセントに低下し、最低記録となった。「great(偉大な・すばらしい)」と見なすべきものだろう。

類語辞典には、雇用の数字に言及する際には通常使用しない同義語も他にあるが、この月に対しては適切だ。例えば様々なレポートが互いに合致しているという意味で、「congruous(適合する・調和する)」というものがある。つまり、雇用主がより多くの雇用を生み出して、より多くの人が仕事に就き失業者が少なくなるようにしており、給与が上昇することへつながっている。

5月の数字から引き出せることは、アメリカの景気が安定したペースで好調を続けており、仕事に就く人が増え賃金も徐々に上昇しているということだ。
出典:https://www.nytimes.com/2018/06/01/upshot/we-ran-out-of-words-to-describe-how-good-the-jobs-numbers-are.html 

このようなコラムがニューヨーク・タイムズに掲載されたわけですから、最近の雇用の回線はトランプ政権によるもの以外には考えられないといえると思います。

そうして、これは今回の中間選挙で決定的な追い風となることでしょう。この中間選挙については、昨日も掲載しました。
米中間選挙情勢 接戦6州が焦点 6日投開票―【私の論評】トランプ共和党は確実に過半数を維持する(゚д゚)!

さて、詳細はこの記事をご覧いただくものとして、このブログでは、カバノー最高裁判事の任命を巡って民主党が露骨な妨害をしたこと、中米から数千人の移民キャラバンが米国国境を目指していることが米国民の危機感をあおり、移民に寛容な民主党にとって不利な材料になっていること、さらにいわゆる「隠れトランプ共和党支持者」が大統領選挙のときよりも増えていることから、共和党は上院・下院とも過半数を維持するであろと予測しました。

ただし、一つ掲載し忘れていたことがあります。それが、雇用状況に大幅な改善です。これは、当たり前のことのようですが、雇用が良くなければ、他の何が良くても不利になります。

雇用が良ければ、かなりの追い風になります。経済指標は雇用も含めて様々なものがあります。その中で最も重要なのは雇用です。GDPも重要ではありますが、GDPが良くなっても雇用がまずければ、多くの国民は経済がよくなったとは実感できません。

多くの人がたとえ、経済が悪くなったとして、最悪解雇されたにしても、雇用情勢が良ければ、すぐに就職することができます。それだけ希望を持ち、希望を失わないで生活てきます。しかし、GDPや他の指標がいくら良くても、雇用が悪化すれば、その逆になります。希望が失われ、大きな社会不安がまきおこされることになります。

特に日本以外の国々では新卒一括採用などという制度はありません。あくまで、必要なとき募集します。そうなると、雇用が悪くなるとまず誰より見若者を直撃します。

雇用状況が良くなれば、若者も採用されやすくなります。最近、テイラー・スウィフトが民主党支持を表明しました、これを大きく評価するむきもありますが、私はそうではないと思います。

テイラー・スウィフト

これだけ雇用が改善されているて、ティラー・スウィフトが民主党を応援したとしても、それに新たに引きずられる若者はそう多くなるとは考えられません。

それだけ、雇用は重要なのです。どの国であれ、雇用が良くなったり、良さを維持できていれば、その時の政権は安定します。そうでない政権は逆に不安定になります。

最近は、韓国の文在寅大統領の退陣の危機もささやかれています。それについては、以下の記事をご覧になってください。
韓国内で非難炸裂!文大統領に“退陣”危機 『従北』傾斜に外交官OBら異例の緊急声明「文政権の国家安保蹂躙を弾劾する」

文在寅大統領

この記事には、雇用のことは書かれていませんが、文在寅大統領は、金融緩和せずに最低賃金をあげるという、マクロ経済的にはあり得ない政策を実行し、雇用が激減して大失敗しました。ちなみに、これは経済成長も金融緩和もしないで、再分配を強化するという、立憲民主党の枝野の氏の理論と全く同じです。

韓国の大統領、日本の野党第一党のリーダーがともに左翼系であり、その両者とも金融機緩和に関心がなく、よって雇用を状況良くすることができないのです。

私自身は、韓国があれだけ雇用が悪くなれば、文政権もおしまいになるのではないかと思っていたのですが、さすがにその気配がでてきたようです。実際は、どうなのかはわかりませんが、少なくとも雇用が良くなっていれば、若者を中心に大きな支持を得て、大統領退陣などということは全くありえなかったでしょう。

しかし、あれだけ雇用が不安が大きいと、国民情緒法なるものがある国柄ですから、弾劾ということもあり得るかもしれません。ちなみに、朴槿恵前大統領も、金融緩和をしなかったため、雇用がかなり悪化していました。そうして、あのようなことになりました。

韓国では、大統領になった人が金融緩和をしないと今後とも、雇用が悪化し続けて、国民の支持を失い続けると思います。反日などやっている場合ではないと思います。まずは、金融緩和をして雇用を改善すべきです。

いずれの国のリーダーも雇用を安定化させなけば、政権が不安定になるし、雇用を安定化できれば、政権も安定するということです。

以上のことを考えると、雇用は他のどの指標よりも重要であり、ティラー・スウィフト効果はこれに比較すれば僅少であり、やはり雇用をかなり良くしたトランプ共和党が両院ともに過半数を維持するのではないでしょうか。

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