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2019年2月22日金曜日

韓国・文政権と日本の民主党政権は似ている? 無理に最低賃金引き上げた結果…左派なのに雇用創出に失敗 ―【私の論評】文在寅・民主党政権の経済政策は「悪夢」以外の何ものでもない(゚д゚)!


文在寅大統領

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の雇用政策は、驚くほど日本の民主党政権(当時)と共通点がある。その背景は何か。

 先日関西で放送された情報番組『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』で、金明中(キム・ミョンジュン)ニッセイ基礎研究所准主任研究員から興味深いリポートがあった。

 それによれば、韓国の文政権では、最低賃金引き上げと労働時間短縮をやったが、結果として失業率が上がったという。

 この話を聞いていて、筆者は「金融緩和を行って雇用を作る前に、先に賃金を上げてしまうと、結果として雇用が失われる」という典型的な失敗政策だなと思いながら、同時に民主党政権当時の政策を思い出した。

 実は筆者は、アベノミクスの金融政策を説明するため、韓国大使館をしばしば訪問していた時期がある。文政権が誕生する前のことだ。その後、韓国では文政権が誕生した。左派政権である文政権が、民主党政権と同じような失敗をしたのは、きわめて興味深い。

 左派政党の建前は「労働者のための党」というものだ。このため、雇用を重視する。しかし、雇用を作る根本原理が分からないと、目に見えやすい賃金に話が行きがちだ。

金融緩和は一見すると、企業側が有利になるため、短絡的に労働者のためにならないと勘違いする。金利の引き下げは、モノへの設備投資を増やすとともに、人への投資である雇用を増やすことになるのを分からないからだ。その間違いをする人は、金融引き締めで金利を上げることが成長にいいとか言いがちだ。立憲民主党の枝野幸男代表のかつての発言がその典型だ。

 そうした勘違いの末、政策としてやりやすい最低賃金の引き上げになる。

 民主党もこれで失敗した。2010年の最低賃金は引き上げるべきでなかったが、左派政権であることの気負いと経済政策音痴から、前年比で2・4%も最低賃金を引き上げてしまった。前年の失業率が5・1%だったので、それから導かれる無理のない引き上げ率はせいぜい0・3%程度であるのに、民主党はもったいないことをした。

 それが、結果として雇用の悪化につながった。民主党時代、就業者数は30万人程減少したが、第2次安倍晋三政権では300万人以上も増加した。

 大学卒業者の卒業年の就職率について、民主党時代の11年は91%だったが、安倍政権の18年は98%である。社会人になっていない学生は、雇用の既得権もないので、政策による雇用創出の巧拙の影響がもろに出る。

 最近の韓国は、北朝鮮化しており、いわゆる元徴用工判決、レーダー照射事件、慰安婦像問題、天皇陛下への謝罪要求など対日関係はひどすぎる。

 しかし、旧民主党からできた野党はほとんどモノを言わない。似た者同士なので言わないのかと邪推してしまうほどだ。

 野党が政府与党を批判するのは当然だが、2年以上も「モリカケ」をやって結果が出なかった。統計不正問題もまた「モリカケ化」するのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】文在寅・民主党政権の経済政策は「悪夢」以外の何ものでもない(゚д゚)!

2月10日の自民党大会で「悪夢のような民主党政権」と発言した安倍首相に対し、岡田克也元副総理が撤回を求めるなど、激しい論争になっていました。岡田氏にとっては、自分たちの時代を「悪夢」と言われて気のいいものではないことは理解できなくもありません。

一方で、国民にとって民主党政権の3年間は「悪夢」だったのかどうかは、様々な角度から検証されるべきです。

そもそもこの表現は、安倍首相だけが使っているものではありません。1月31日には、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が衆議院代表質問を行い、その冒頭で「あの悪夢の3年間といわれた民主党政権」と発言しています。一国の首相と野党の幹事長では影響力が違うという声もあるでしょうが、首相だけの認識ではないということは、確認しておくべきでしょう。

さて、安倍首相が「悪夢のような民主党政権」と批判したのは、経済政策についてです。民主党政権時代は、安全保障分野では「普天間基地は最低でも県外」と掲げて内外の政策に大混乱を招いたこと、「尖閣諸島での中国漁船と日本の巡視船衝突事件」での中国人船長釈放、福島原発事故での「官邸による人災」など、「悪夢」と呼ぶにふさわしい出来事の連続でした。

鳩山元総理大臣

しかし、ここではあくまで安倍首相が指した民主党時代の経済政策、特に雇用に絞って議論します。

先に雇用以外について述べるなら、民主党政権が行った、震災復興増税の導入はまさに「悪夢」です。100年に一度の大災害が起きた場合、復興費用を捻出するために100年国債を発行するのが経済学の教えである。

これを増税で賄おうとしたことで、震災で大ショックを受けた上に、増税という人災で日本経済がダブルショックを受けることになったのです。地震などの自然災害を増税などで、賄うなどという、常軌を逸したことを行ったのは、古今東西日本の復興増税だけです。

私は、経済政策を評価する際、①雇用、②所得を基準に評価を下します。これは一貫して変わっていません。景気が悪くなれば、まず金融緩和(これに財政出動も加えて)によって有効需要を創出し、雇用を作るのがマクロ経済政策の手順です。

この観点から見れば、民主党時代の経済政策は「悪夢」だったと言えます。働きたい人に仕事がある状況を作るのが政治の大きな責任であり、民主党政権と安倍政権の差は、何より「雇用の創出ができたかどうか」です。

この両政権の差は、金融政策です。金融緩和を行わなかった民主党政権と金融緩和を行った安倍政権の差です。

金融政策がどうして雇用に効くかというと、一般物価の変動を通じて実質金利に作用し、モノへの設備投資とともに、ヒトへの雇用の増大へ影響するからです。他の政策では、個別物価に影響を与えても一般物価には影響を与えられません。これは金融政策がもつ、他の政策にない特徴です。

民主党は、この点の理解がまったくできていませんでした。就業者数を増やすべき時に、賃金を引き上げようとしたのですが、これはまったくの経済政策オンチだったといわざるを得ないです。

民主党議員等の中にも、馬渕氏や金子洋一氏のように、「金融政策は雇用政策であり、もっと金融緩和すれば雇用がよくなり自殺率がさらに低下する」ということを理解している人もいますが、これはほとんど例外的であって、民主党の議員のほとんど、そうして幹部は、皆無でした。これは自民党も似たようなものですが、安倍総理とその側近はこれを理解しています。

金子洋一前参議院議員

このような政策が実現しなかったのは、当時執行部にいた、現立憲民主党党首の枝野幸男氏の影響もあるでしょう。というのも、民主党が政権を取る前、あるテレビ番組で枝野氏は「金融引き締めが高成長につながる」との持論を展開していたからです。

安倍首相は政権を取る前から、金融政策のことを話していたので、やはりこれを理解していたのです。

私は、こうした話は、日本だけの話かと思っていたのですが、ブログ冒頭の記事にもあるように、「金融緩和を行って雇用を作る前に、先に賃金を上げてしまうと、結果として雇用が失われる」という典型的な失敗政策を文在寅大統領が実行して大失敗しているのです。これについては、昨年何度かこのブログにも掲載したことがあります。

実は筆者は、韓国の日本大使館にアベノミクスの説明をするためにしばしば訪問していた時期がある。文政権が誕生する前のことだ。その際、金融政策は雇用政策であることを安倍政権にも民主党政権にも説明したが、実行したのは安倍政権で、結果、雇用の確保に成功したということも説明した。

その後、韓国では文政権が誕生しました。文政権は左派政権ですが、金融緩和策を採らなかったために、民主党政権と同じような失敗をしたのは、きわめて興味深いことです。

このような失敗政策の悪影響は、大学新卒者の就職率に表れます。新卒者は限界的な雇用なので、政策による雇用創出の巧拙の影響がもろにでるからです。実際、いまの韓国で、大学の就職率はかなり悪いです。大卒の就職率は67.7%であり、若者の失業率は10.0%といわれています。

日本でも、大学卒者の卒業年の就職率について、民主党時代の2011年は91%でしたが、安倍政権の2018年は98%でした。社会人のスタートにもついていない学生は、雇用の既得権もありません。そうした若者に、将来の安心をいかに与えることができるかは、政治にとって重要なことです。この意味でも、民主党時代は酷かったと言えます。

これは大学関係者や企業の人事部の人なら誰でも知っていることです。少し前には、どの企業にとっても新卒雇用は買い手市場で、かなり楽だったはずです。しかし、今はその全く逆です。

若い人たちも民主党政権時代に就職状況が悪かったことはよく知っています。若い人の安倍政権政権支持が多いのは、右傾化ではなく、就職ができるようになったからでしょう。

経済政策においては「雇用の創出が先決で、賃金は後からついてくる」が正しいです。ただし、最低賃金をどのように設定すべきか、という問題が残るのは事実です。実は、最低賃金は前年の失業率から無理のない水準にし、賃金は後からついてくるという原則を曲げないようにさえすれば良いのです。

この点、安倍政権はかなり、手練たやり方をしています。雇用を作りつつ、失業率が下がるような環境を作っておき、最低賃金は失業率の低下に合わせて、毎年上がっていくように調整しています。

安倍首相は、このメカニズムを「政治的」に上手く利用しています。前の年の失業率低下から、無理のない最低賃金の引き上げを行うのですが、その際、「政労使会議」を利用し、あたかも安倍首相主導で最低賃金を引き上げたように見せ、政治的なプレゼンスを高めているかのようです。

いってみれば、最低賃金の引き上げは、雇用創出の成果であるが、その果実を安倍政権は政治的に上手く利用しているともいえます。

それは、次の図で明らかです。



民主党は、はじめの年の2010年の最低賃金は引き上げるべきでなかったのです。しかし、左派政権であることの気負いと経済政策音痴から、前年比で2.4%も最低賃金を引き上げてしまいました。前年の失業率が5.1%だったので、それから導かれる無理のない引き上げ率はせいぜい0.3程度であるのにです。

こうした失政は、多くの国民が(少なくとも肌感覚で)わかっているのに、元民主党の関係者は、このことについての反省がないようです。それでは、永遠に次の政権交代は起こらないでしょう。政権交代の選択肢がないということは、国民にとって大きな損失です。

最後に、①雇用と②所得(総所得と賃金)について、民主党政権と安倍政権の成果について、念のために図を掲げておきます。



これらをみれば、日本維新の会の馬場伸幸幹事長でなくても、「悪夢」といいたくなる気持ちがお分かりいただけると思います。

さらに、最近国会で、修正後もわずか0.5%とかその程度しか違わないの統計不正に関して、倒閣に利用しようとする民主党の後継である、立憲民主党等が国会での追求をみていると本当にあの「悪夢」を生み出したのは、「悪魔」ではないかと思ってしまいます。

ただし、不正は不正です。しかし、あの不正は官僚側に100%問題があるのであって、安倍政権側の問題ではありません。もし、あれで政権が崩壊するというのなら、どの政権も不正など発見しなくなってしまいます。

そうして、民主党政権のときにもあの不正はあったということを現在の立憲民主党や、国民民主党などの野党はどう考えているのでしょうか。

やはり、文在寅政権と民主党政権の経済政策は「悪夢」以外の何ものでもないです。

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統計不正も実質賃金も「アベガー」蓮舫さんの妄執に為す術なし?


田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 厚生労働省の毎月勤労統計を巡る不正問題に関して、ワイドショーなどでは相変わらず「低レベル」と言っていい報道が続いている。

 毎月勤労統計の不正問題自体は、国の基幹統計と言われる賃金水準の実態を正確に捉えることを怠った問題であり、厚労省の官僚たちを法的に厳しく処罰すべき問題であろう。

 また、厚労省が設置した「特別監察委員会」に関するずさんな対応については、これはデータ不正そのものを生み出した厚労省の「自己都合」で、国民の関心をないがしろにする行為として批判すべき問題である。ただし、どの程度のデータ不正かと言えば、報道や野党、そして一部の識者からは、安倍晋三政権批判の思惑が「ダダ漏れ」で、そのため過度に誇張されたものになっている。

 筆者の周囲でも、ワイドショーから情報を仕入れた人が「統計不正は大変な問題ですね。安倍政権の責任は大きいですね」と尋ねてきた。そこで筆者は、統計の全数調査を怠ったことは重大な「犯罪」だが、抽出調査自体は統計的には適切に実施し、法規に従えば特に大きな問題ではないことを説明した。

 その上で、安倍政権のはるか前から続いていた話が、安倍政権で発覚したに過ぎないことを指摘した。ついでに「ワイドショーなどを見て、その報道につられて、安倍政権が悪いように誤解する見識のない人が増えて、テレビに振り回されていて、かわいそうだ」と返したら、やはりご本人に思い当たることがあるのか、顔色を変えてにらまれてしまった。

 この例でも分かるように、安倍政権の長期化に伴い、これまたテレビの影響で「長く続くからダメ」というような、事実に立脚しないイメージ批判が蔓延(まんえん)している。そのせいで、ワイドショーなどの報道を鵜呑みにする人たちや、何でもかんでも安倍政権のせいにする人たちを、私の周りから遠ざけてしまうことになった。ただでさえ「友達」が少ないから、安倍政権の長期化は困ったものである。



厚生労働省が入る東京・霞が関の中央合同庁舎

 統計調査不正を利用して、安倍政権の経済政策の成果を不当に貶(おとし)める発言も実に多い。別に安倍政権を特に持ち上げる必要はない。だが、安倍政権の経済政策が、雇用面で大きな成果を挙げたことは否定できない事実である。

 マスコミや野党、反安倍的な識者には、この成果を否定したい思惑が広がっていて、それは事実の否定さえも伴っている。確かに、統計不正はいわば事実をないがしろにする行為だ。だが、批判している野党やワイドショーなどのマスコミがまさに雇用改善の事実をないがしろにしているとしたら、悲劇を超えて「喜劇」ですらある。

 例えば、立憲民主党の蓮舫副代表はツイッター上で次のように述べている。

 「アベノミクスの成果の根拠として、去年6月に前年比3・3%としていた賃金上昇率の伸び率が、実は1・4%だった。実質賃金の伸び率で比較すると、2%が実は0・6%と推計されました。昨年1月から11月の平均は、マイナス0・5ではないかと推計もされます。野党ヒアリングで厚労省はおおむね認める発言をしました」

 まず、安倍首相自ら国会で説明している通り、アベノミクスはその成果の根拠としても、政策目的としても、実質賃金の伸び率を重視したことはない。蓮舫氏はこの点で事実誤認している。

 さらに、前年比での実質賃金の伸び率がマイナスなのは、単に17年が18年よりも実質賃金の「水準」が高かったからである。しかも、アベノミクス期間中の賃金指数を、不正データと修正データとを比べると、むしろ上昇している。都合の悪いデータを隠すことは十分考えられるが、都合のいいデータを隠す意図は、さすがに政権側にはないと考えるのが常識的だ。

 もちろん、強固な反安倍主義者の中には、それでも政権への「忖度(そんたく)」があった、と考える人がいるが、もはや事実を提示して納得できるようなレベルの人たちではないだろう。悪意か妄執か、あるいは頑なな政治イデオロギーの持ち主か、いずれにせよ経済学による説得では無理である。

 またアベノミクスの開始当初から、なぜか蓮舫氏のように実質賃金とその伸び率を重視する人たちが多い。その多くが反安倍、反アベノミクス論者である。

立憲民主党の蓮舫副代表兼参院幹事長

    だが、そもそもアベノミクス、その中核であるリフレ政策(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させる政策)は、実質賃金の水準や伸び率の動きをただ上げればいいだけの政策のように、単純な見方はしていない。むしろ、長期停滞からの脱出局面(現時点)では、実質賃金の伸び率が低下することも不可避であると主張してきた。

 リフレ政策が効果を与える停滞脱出期においては、実質賃金の切り下げが生じる。なぜなら、雇用が増加することで、新卒や中途採用、退職者の再雇用といった新たに採用された人たちの賃金は、既に長年働いている人たちの賃金よりも低いことが一般的だ。

 すなわち、雇用される人数が増え、失業率が低下することは、同時に平均的な賃金を低下させることになる。これを「ニューカマー効果」という。

 しかしニューカマー効果では、同時に失業率が改善し、雇用状況の改善(有効求人倍率改善、いわゆる「ブラック企業」の淘汰など)も実現していく。さらに、支払い名目賃金の総額も上昇していくだろう。そうして、経済全体の状況は大きく改善されていくのである。

 実際、安倍政権ではこのニューカマー効果による実質賃金低下と、同時に失業率低下、有効求人倍率の上昇、賃金指数の増加、名目国内総生産(GDP)の増加などが見られる。さらに、雇用安定化の成果で、失職などに伴う経済的要因での自殺者数が激減し、不本意な形で就業しなくてはいけない非正規労働者の数も大きく減少した。これらは、単にアベノミクスによって雇用の量的な改善だけでなく、質的な改善も見られたことを証明している。

 そして失業率が低下していくと、いわゆる「構造的失業」という状態に到達する。その過程で名目賃金の増加だけではなく、労働市場の逼迫(ひっぱく)の度合いに応じて、実質賃金も上昇していく。日本経済は、2014年4月の消費税率8%引き上げの悪影響がなければ、このプロセスが実現していた可能性が大きい。

 このように蓮舫議員に代表されるような「実質賃金低下ガー(問題)」論者は、あまりにも問題を単純に捉えていると言わざるを得ない。実は、実質賃金の低下だけを問題視する人たちは、経済が常に完全雇用の水準にあると思い込んでいる新自由主義者的な人に多い。

 新自由主義的な人からすれば、実質賃金の低下など、単に労働の生産性の低下を示すものでしかないからだ。蓮舫議員を含む立憲民主党や国民民主党などの多くの野党は、確か経済問題を適切な政府介入で是正していく「リベラル」のスタンスであるはずなのに、主張が新自由主義者風なのはなぜだろうか。

 おそらく、野党議員の多くは経済政策のアドバイスを受ける相手を間違えているのであろう。例えば、立命館大の松尾匡(ただす)教授が最近、安倍政権の経済政策に対抗するリフレ政策的な政治キャンペーン「薔薇マークキャンペーン」を始めている。なんでも今度の参院選に立候補する議員に、反緊縮に賛同する候補者と対して「薔薇マーク」の認定を与えるというものだそうだ。

2019年1月、毎月勤労統計の不正調査問題で、厚労省の職員らに質問する野党議員(奥)

 認定候補が野党勢力だけかどうか定かではないが、筆者はこのキャンペーンが与野党の対立構図に乗った政治色の強いものだと考えている。リフレ政策はそういう政治的イデオロギーを超えるべきだと考えているので、この運動自体には賛成できない。

 ただ、蓮舫氏のような反安倍主義者たちが、よりまともな経済政策を構築するには、松尾氏のアドバイスに対して、真剣に耳を傾けることを勧めたい。それが日本の政策議論の底上げにもつながるに違いないからだ。

【私の論評】虚妄に凝り固まる立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、今の韓国のように雇用が激減するだけ(゚д゚)!

野党の批判は、結局「実質賃金が下がり、実際に使えるおカネが減って貧しくなった。そのために、個人消費が伸びていない。いまの経済政策は間違っている」ということです。そうして、冒頭の記事で田中秀臣氏が主張するようにこれは明らかに間違いです。

実質賃金とは、皆さんが受け取る賃金(名目賃金)から物価の上昇分を差し引いたものです。

名目賃金が1%しか上がっていない時に物価が2%上がると、実質賃金は1%下がります。あくまで程度の問題ではありますが、「モノやサービスの値段が上がって、以前なら買えていたはずのものが買えなくなった」ことになります。インフレの悪いところです。

一方、名目賃金が2%下がっても、物価が3%下がってくれれば、実質賃金は1%上がります。「給料は減ったけど、以前よりたくさんのモノやサービスが買えるようになった」わけですから、喜ぶ人もいるかもしれません。

この部分だけを切り取って考えると、たしかに「実質賃金を、いますぐ上げろ!下がったのはケシカラン!」という主張は正しいように聞こえます。

しかし、経済は、常に動きつづけている生き物です。短いあいだだけを輪切りにして判断してしまったのでは、一見正しそうな政策が「長期的にはとんでもないこと」を引き起こしかねません。

これから起きるさまざまな変化を、「時間を追って順々に考えていく」というのが経済学的なものの考え方です。俗にいう「風が吹けば桶屋が儲かる」という世界です。

逆にいえば、この思考ができないと経済政策を誤ってしまうことになります。

失業者を減らすことが最優先

少しこみ入った話になるので、経済学でよく使われる需要曲線(赤)と供給曲線(緑)を使ってご説明します。縦軸が実質賃金、横軸が雇用者数です。

<現在>という矢印の指しているところに、いまの日本の雇用市場はあります。

左側の縦軸の「今の実質賃金」というところから水平に線を引く(………)と、「雇いますよ」という需要曲線(赤)とぶつかります。ここから下におろした線の指しているところが、「今、雇用されている人数」です。

先ほどの水平な線をさらに右にいく(………)と、「働きたいです」という供給曲線(緑)とぶつかります。ここから下におろした線が指しているところの人数だけ「今、働きたい人」がいます。

ただ、実際に雇ってもらえるのは、需要曲線(赤)から降りてきたところまでの人数だけです。この差が「失業者」となります。

失業とは、「働きたいのに働けない」ということです。しかも、失業することによって収入がとだえて経済的に困窮するだけでなく、「社会から疎外されている」と感じてしまいがちです。

その結果、非常に残念なことですが、精神的・肉体的に追いつめられて、自殺という手段を選ぶ人が増えてしまいました。日本の失業率と自殺率の相関関係は、OECD諸国の中でも際立って高くなっています。

従って、「失業者をどうやったら減らせるか」「この図の赤い矢印の方向にどうやって進むのか」ということを最も優先して考えなければなりません。

我慢して回り道を

現在の実質賃金の水準で、そのまま点線の上をわたって供給曲線(緑)に到達できれば一番良いのですがそうはいきません。点線の上は、あくまで空間です。右のほうにいきたければ、黄色い矢印が指し示すように「斜め右下方向」に需要曲線(赤)の上を動くことになります。

あくまで「下」ですから、「実質賃金が下がらないと、雇用者数が増える方向には行けない」というのが現実です。これを変えることは、誰にもできません。

では、どうしたら実質賃金は下がるのでしょうか?

先ほどご説明したように、実質賃金は(名目賃金)-(物価の変動)で決まります。

「実質賃金を下げろ」といわれて、まず思いつくのは「名目賃金を下げる」、つまり「賃金カット」でしょう。強欲な経営者が「給料を20%下げることにした!」と叫べば、たちどころに下がって、、、というほど話は簡単ではありません。

名目賃金は、経営者と労働者の交渉で決まります。「交渉」といっても、全員が実際に膝をつきあわせて丁々発止とやる訳ではありません。

「この賃金なら雇いたい」「この賃金なら働こう」という「労働市場での需要と供給から決まる」と考えたほうが自然です。アダム・スミスの「神の見えざる手」は、ちゃんと働いています。

この名目賃金というものは、あまり簡単に上がったり下がったりしません。特に日本では、毎週(週給)や毎日(日給)といった単位で給料が変動する労働者は極めて少数です。大多数の労働者は月給制ですし、しかも年間の支給額が大きく変動することはありません。

「20%下げるぞ」などと宣言したら、翌日の職場はカラになっていることでしょう。

つまり、「名目賃金は、そう簡単には下がらないし下げられない」というのが、本当の話です。

では、「物価を上げる」というのはどうでしょう?

これは何か非常に難しいこと、特に長い間デフレに苦しんだわが国にいると、とんでもなく大変なことのように思えます。

しかし、何らかの政策で「強引に名目賃金を変える」よりも、「金融政策によって物価水準を変えることで、実質賃金を動かす」というほうが世界の経済学や経済政策の世界では一般的です。

たとえば2013年1月に、政府と日銀は「+2%と言う目標を定めて物価を上げる」という共同宣言を発表しました。これは「実質賃金は一時的に下がるものの、まず失業者を減らす政策をとる」ことを示したものであると言い換えることができます。

その後の政策は、よく「異次元の」という形容詞をつけて紹介されますが、「デフレという名の異常事態からの脱却」という局面だったために「異次元の手段」が必要だっただけです。政策そのものは、ごく常識的な経済理論にのっとったものです。

「異次元」ではあっても、「異常」ではありません。

いま「物価が上昇したことで実質賃金が下がっている」のは、この右下がりの黄色い矢印の方向に日本経済が走りだしたということです。実質賃金は下がりましたが、冒頭にご紹介したとおり雇用者数は増加しています。

赤い矢印の方向に動いていることは、間違いありません。

デフレへの逆回転は絶対に阻止

現在の状態を、「実質賃金が下がって貧しくなった」と批判するのは簡単です。しかし、黄色い矢印の方向に行かなければ雇用者数は増加せず、130万もの人が失業したままだった可能性は否定できません。

いまはひとりでも多くの人が働けるようになるために、少し我慢をする時です。

きちんと現在の金融緩和政策をつづけていれば、「完全雇用」と書いた部分を通過し、右側の黄色い矢印が示す「右斜め上」に向かって供給曲線(緑)の上を動いていけるようになります。いよいよステージの転換です。

人手不足により名目賃金が上昇し、実質賃金が上がります。しかも、もらえる給料の額面が増えています。

「もらえる給料は減ったけど、物価はもっと下がっている。だから、実質的に豊かになって幸せだ」などという冷静沈着な計算のできる人が、世の中の多数派だとは思えません。やはり「金額が増えてハッピー」という人のほうが多いですから、消費が増えて経済の好循環が起きます。

しかも右方向に動いていますから、働くことができる人は増えつづけます。もう「社会から疎外された」などと、悲観する必要はありません。

1998年に3万人を超え「世界的にも高水準」と懸念されていた自殺者数は、過去5年連続して減少してきています。大規模な金融緩和に踏み切った2012年以降、減少幅が大きくなっていますが、これがさらに加速していくと期待できます。

実際の経済はこんな簡単な図よりも複雑ですから、まだ「完全雇用」と書いたところに到達しているかどうかはよく分かりません。

しかし、比較的名目賃金が変わりやすい「パートやアルバイトの時給」が、大幅に上がっているのはご存知のとおりです。首都圏のパートやアルバイトの平均時給は1000円を超えました。厚生労働省が先週発表した賃金構造基本統計調査では、女性の賃金が過去40年で最も高くなっています。

さらに総雇用者所得も増えていますから、働いている人全体が受けとる賃金の合計は増えつづけています。

総務省の調査によると、正社員を増やした会社は「人材流出を防ぐため」「採用を優位に進めるため」という理由をあげていました。つまり、「良い待遇を与えないと、働いてもらえなくなった」ということです。これは「完全雇用」状態に近づき、働く人たちの立場のほうが強くなったことに他なりません。

結論は明らかです。「物価が上がったことで実質賃金が下がり、生活が苦しくなった。金融緩和政策をやめて物価を下げろ」と言う主張は、経済政策論的に完全に間違っています。物価が下がったおかげで「実質賃金が上がった」と喜ぶことができるのは、失業する心配のない人達だけです。

もし、そんな経済政策をとってしまうと、この図の青い矢印のように「左斜め上」に動いていくことになります。たしかに実質賃金は上がりますが、多くの人が職を失い苦しむことになります。これこそが、デフレの害悪です。

今の流れを逆回転させるべきではないのです。

なお、上ではニューカマー効果を解説するため、マクロ経済でよく用いられるグラフを使って説明しました。

しかし、このようなグラフを使わなくても常識的に理解できます。

たとえば、ある企業で景気が良くなったので、事業規模を拡大しようとしたとします。事業を拡大するときには、最初は営業店舗や工場などの人員を増やすのが普通です。間違っても、本部の要員や役員などを最初に増やすということはありません。さらに、拡大するとすれば、営業店舗や工場そのものも増やすはずです。

そうなると、営業店舗や工場などには、多くの新人を雇用しなければなりません。新人を多数雇用すればどうなりますか。会社全体としては、事業規模を拡大する前よりも平均賃金は低くなります。さらに、生産性は当初は下がるのが当然です。なにしろ、新人を多く雇い入れれば、最初は新人は普通に仕事ができず、これに対して訓練や教育を施さなければなりません。

これが理解できれば、国単位で実質賃金が下がるということも容易に理解できると思います。さらに時がたつと、事業の規模が拡大し軌道にのれば、本部の人員を増やしたり、給料をあげないとなかなか人を募集できなかったりで、賃金は上昇します。

こんな簡単な理屈も理解できないのか、蓮舫さんをはじめとする野党の議員なのです。

お隣韓国では金融緩和せずに賃金だけあげて大失敗

さらに、野党議員らの考えが間違いであるということはすでに実例があります。お隣韓国では、文大統領が金融緩和をせずに、賃金だげあげる政策をとり、雇用が激減して大失敗しています。

これについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
文在寅大統領誕生に歓喜した韓国の若者、日本へ出稼ぎを検討―【私の論評】枝野理論では駄目!韓国がすぐにやるべきは量的金融緩和!これに尽きる(゚д゚)!
立憲民主党枝野代表

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、枝野氏も、雇用等に関しては蓮舫氏と同じような考えであり、実質賃金ばかりを問題にする傾向があります。以下にそのあたりがわかるような内容の部分のみを引用します。
枝野氏には金融緩和という考えは全くありません。金融緩和をせずに、分配を増やすというのはどういうことかといえば、結局のところ韓国の実施した「金融緩和をせずに最低賃金」をあげるというのと何も変わりません。 
枝野氏をはじめとするリベラルの雇用政策は韓国で実行され、大失敗したということです。 
ブログ冒頭の韓国の若者の悲惨な状況を改善し、日本のように大卒の就職率を良くするには、分配や最低賃金を最初にあげるのではなく、まずは量的金融緩和を実施すべきです。
いずれにせよ、枝野氏も蓮舫氏も虚妄に凝り固まっており、金融緩和などは実施せずに、分配を増やす、最低賃金を増やすなどの破滅的な政策を主張しています。立憲民主党が主張する経済政策を実行すれば、またぞろ大学生の就活が地獄になるのは明らかです。

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2018年9月14日金曜日

人目につかない自民党の小部屋に呼ばれ… 経済政策を議論してわかった「安倍首相は『健全な政治家』」―【私の論評】経済に限らず、虚心坦懐に予測の当たる人の話を聴くべき(゚д゚)!


高橋洋一 日本の解き方

安倍晋三首相

自民党総裁選では経済政策も争点の一つだ。そこで、安倍晋三首相が金融緩和を軸としたアベノミクスにどのように出合い、学んで自らのものとしたのかという原点について、あらためて振り返ってみよう。

 ある月刊誌に、総裁選に臨む安倍首相の特別寄稿があり、その中で、アベノミクスについて、浜田宏一内閣参与、本田悦朗前参与、岩田規久男前日銀副総裁とともに、筆者から教えてもらったと書かれていた。他の方々は政府役職だが、筆者はそうしたものと無縁にもかかわらず名前を出してもらい光栄だ。

 振り返ると、筆者が小泉純一郎政権時代の竹中平蔵総務大臣補佐官の時、当時官房長官であった安倍氏とよく話をしていた。小泉政権では、「CPU(Communication and Policy Unit)」という首相側近グループの会合が週末に開かれ、安倍氏や竹中氏らが参加しており、その前後に筆者が安倍氏にレクチャーすることがあった。

 そのときは金融政策に割ける時間は少なかったが、「2000年8月のゼロ金利解除はどうだったのか」などマニアックな質問もあって驚いた。そのほかにも「金融政策について聞きたい」と、人目につかない自民党の小部屋に呼ばれ、筆者は「中央銀行の独立性には『目標の独立性』と『手段の独立性』があるが、世界の標準は『手段の独立性』だ」と説明した。安倍氏は、それは政治家に好都合だと言っていた。

 06年3月、日銀が量的緩和を解除する際にも、いろいろと説明した。政府・与党内では、筆者の周りの竹中大臣や中川秀直政調会長が解除に反対だった。その理由は、消費者物価上昇率は見かけ上プラスになったが、物価統計の上方バイアス(実態より高い数字が出やすいこと)を考慮すると、まだマイナスであるという筆者の分析だった。

高橋洋一氏

 一方、政府・与党内では与謝野馨経済財政担当相が量的緩和解除を強硬に主張するなど大勢を占めていた。しかし、その後の消費者物価統計の改定によって筆者の意見が正しかったことが分かった。

 安倍氏はこうした議論をよく見ていた。筆者には「日銀が量的緩和を解除したら経済はどうなるか」と聞いてきた。筆者は、量的緩和解除の半年程度後から景気は徐々に落ち込むと予測した。これは金融政策に関する一般的な効果ラグ(時間のずれ)である。これも筆者の見立て通りだった。

 06年9月に第1次安倍政権が発足した。小泉政権で退職するつもりだった筆者は官邸にいてくれと頼まれ、残ることとなった。ただし、第1次政権は安倍氏の体調不良もあって残念ながら短命だった。

 その後、筆者も時間に余裕があったので、経済政策、特に金融政策についてしばしば安倍氏と議論した。筆者の主張は「金融政策は雇用政策」という左派顔負けのものだったので、保守の安倍氏に受け入れられるか気がかりだったが、心配無用だった。安倍氏は「学者の議論は分からないが、結果が当たる人と当たらない人は分かる」と言っており、当たる人の意見を聞くという意味で健全な政治家だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】経済に限らず、虚心坦懐に予測の当たる人の話を聴け(゚д゚)!

アベノミクスについて、安倍総理利は、浜田宏一内閣参与、本田悦朗前参与、岩田規久男前日銀副総裁とともに、高橋洋一氏らから教えてもらったとしていますが、これは非常に妥当な判断だと思います。

なぜなら、これらの人々、いわゆるリフレ派の経済予測は大体当たっていたからです。特に、2014年の4月に実施された8%への消費税増税は、日本経済に甚大な悪影響を与えるという予測はしっかりと当たりました。

一方東大を頂点とする、日本の経済学の主流派である人々の予測はほとんどが外れました。新聞などのマスコミの予測なども外れました。彼らは、「8%への消費税の増税が、日本経済に与える影響は軽微」としていました。

しかし、8%増税の悪影響は甚大なものであり、個人消費が落ち込み、未だに日本のGDPの伸び率は他国に比較して低い状態にありますし、GDPデフレーターでみると、日本経済はいつまたデフレに戻っても不思議ではないくらい低調です。


単純にはデフレーターの値がプラスなら経済はインフレ、マイナスならデフレの方向にあると判断できます。このグラフでみると、日本経済は、2014年は完璧にデフレ方向に向いたことがわかります。

1997年にイレギュラー的な動きを示した以外は、1995年以降概してGDPデフレータは減少し続けている≒デフレを示していた。2014年では1998年以来10年以上ぶりに、今世紀に入ってからは初めて前年比で増加を示し≒インフレとなり、それが直近の2016年まで継続している。まさにデフレ脱却の兆しが確認できる。ただし直近年では前年から大きく落ち込みを示しており、インフレ政策の不足感を覚えさせる。

これ一つをとってみても、いわゆるリフレ派の予測は正しく、日本経済学の主流派といわれね人々の予測は完璧に間違っていることがはっきりしました。

これは、たまたま2014年、8%増税について掲載しましたが、その他のことについてもリフレ派の予測ばあたりますが、主流派経済学者らや、マスコミの予測など一度も当たったためしはありません。

一方金融緩和はどうなったか、といえば、高橋洋一氏が「金融政策は雇用政策」と語っていたので、以下に失業率のグラフを掲載します。


これは、劇的に改善しています。失業率が大幅に減っています。これは、2013年から日銀が金融緩和に転じて以来、かなり良くなっています。これらも、リフレ派の予測の通りでした。

私自身も、安倍総理と同じくリフレ派の言うことを信じています。私自身は、安倍総理が信じる前から、リフレ派の言うことを信じていました。

その理由は簡単です、安倍総理の語るように以前から、リフレ派の言うことは当たっていたからです。それ以外の人々の予測は当たっていなかったからです。

その時からリフレ派の書いた経済記事など読んで、参考にしたり、自分でもノーベル経済学賞受賞した経済学者のクルーグマン氏マクロ経済の書籍などを読んてある程度勉強もしたので、経済学者のように厳密にマクロ経済について理解しているわけではありませんが、それにしてもある程度の経済センスは身につけたと思います。

そうして、安倍総理がリフレ派になる前は、安倍氏はすでに過去の人と思っていました。実際このブロクでも過去の記事では「過去の人」と掲載しています。

しかし、あるときから安倍氏がリフレ派のようなことを言い出したので注目しだし、安倍政権が発足してからは、安倍政権を支持し、「過去の人」なる表現はやめました。

予測が当たる人の話を信用するというのは、当たり前のど真ん中の話であり、企業の中でも、予測があたる人の話を信用するのが普通だと思います。総理といえば、会社でいえば、経営者のようなものです。

以下経営学の大家ドラッカー氏の経営者の情報に関する心得などをまとめておきます。

現代では、自分達の仕事にとって真にカギとなる原点、かつ基本資源である情報を入手し、それを巧みにまとめる方法を学ぶのが企業経営です。さらに、その際に大事なこととして、データに詳しくなることと、情報に精通するのではなく、本当に自分にとって必要な情報を必要なとき必要な量を得る必要があります。

1つは、企業経営者としていかなる情報を必要とするか、もう1つは、自分個人としていかなる情報を必要とするか、です。

そうして、これらの問いに的確に答えるには、次の3つの点を真剣に考え抜かなければならないです。

第1点は、自分の職務とその本質は一体、何なのか、そして本来どうあるべきか。第2点は、自分が寄与貢献できるのは何であり、また何であるべきか。そして第3点は、自分の関わっている組織の基礎(ファンダメンタルズ)をつくる事柄は一体、何かです。

以上の3点に関する、それぞれ異なった型の情報が必要であり、それらを別個に、独自のコンセプトでもってバックアップしておかなければならないのです。

それには外部の情報、内部の情報、そして組織を超えた情報、この3つを押さえることが重要です。

さらには、組織としての成功も、自分個人としての成功も、すべてこの3問に的確に答え得るかにかかっていると言っても過言ではありません。

「単なるデータ」に詳しいことから、「本当に必要な情報」に詳しくなるためには、上記の3つの問いに十分答えられるようにすることが必要不可欠であり、21世紀のマネジメントの真のあり方だとして、ドラッカーは重視しています。

そうして、会社の内外の人々に自分は、あなたからいつどのタイミングでどのような情報が欲しいのかを普段から周知徹底しておく必要があります。これなしに情報は入ってきません。

政治家たるものは、このような情報の重要性を理解しなければ、つとまらないはずです。安倍総理は、自分個人としていかなる情報が必要かを考え抜き、リフレ派の情報も取り入れたということです。そうして、それは正しいことです。

しかし、未だにリフレ派というと、色眼鏡で見る人も多いですし、リフレ派に反対するという趣旨で、反対派が「金融緩和するとハイパーインフレになる」、「金融緩和すると国債が暴落する」、「金融緩和しても何も変わらない」、「金融緩和しても株価があがるだけで、一般人の生活は楽にならない」、「景気が良くなっても実質賃金が上がらない」、「雇用が改善しても生産性は上がっていない」、「近年エンゲル係数があがったのはアヘノミクスのせい」などなど、様々な難癖をつけてきましたが、これはすべて事実ではありませんでした。

経済のことに限らずまた、政治家や企業経営者に限らず、虚心坦懐に予測の当たる人の話を聴くという姿勢は失いたくないものです。そうでないと、間違ったことを平気で、もっともらしく語る大馬鹿詐欺師か、財務・日銀官僚の太鼓持ちになるだけです。


それは、元総理大臣だった鳩山氏のことをみていてもはっきりとわかります。それにしても、いわゆるリベラル・左派は、リフレ派の話などに全く耳を傾ける気配は全くありません。

このブログでも紹介したように、枝野氏の経済理論は、韓国で文在寅大統領によって、実行され、大失敗して、雇用が激減しました。本当に、予測の当たる人の話を聴けない人には困ったものです。

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2018年5月12日土曜日

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ ―【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

【日本の解き方】野党「18連休」と国民民主党 立民と「左派連立」目指すも、経済政策の無理解が問題だ 

野党合同ヒアリングで関係各省庁の職員から聞き取り
を行う野党議員(奥列)=8日午後、国会内

民進党と希望の党が合流した新党「国民民主党」が誕生したが、離党者も数多く出て、衆院で野党第1党になれなかった。今後、立憲民主党との違いを打ち出すことができるのだろうか。

日本維新の会を除く野党6党は、大型連休の間、本職であるべき国会審議を拒否し、連休明けを含めなんと18連休だった。その間、辞任要求をしていた麻生太郎財務相が国会に出ているのに、目の前のクビを取るための質問を国会でしなかった。

一方で、国会外で「野党合同ヒアリング」と称して、国会答弁もできない下っ端官僚をつるし上げていた。これは、ある意味でパワハラだ。答弁能力のない下っ端官僚が同じ答弁を繰り返すたびに、一部野党の議員に怒鳴り上げられ、さすがに気の毒だった。


動画はブログ管理人挿入

これには6野党支持者からも批判が出て、8日から国会審議を再開せざるを得なくなった。

そして「連休」明けの7日、野党の18連休の最後の日に、国民民主党の結党大会が開かれた。

民進党は53人、希望の党は54人だったので、本来なら合流した国民民主党は107人になって衆参両院ともに野党第1党になるはずだった。しかし、実際に参加したのは衆院議員39人、参院議員23人の計62人。約4割が新党に参加しなかったことからも、その期待度がうかがえる。新党は今の状態より良くなるために参加するのが通例だが、機を見るに敏な国会議員も見限っているのだ。

希望の党からの参加者は、現実的な安全保障や憲法改正への賛成など、旧民主党時代の曖昧な安全保障・憲法改正論議から大きく舵を切っていた人も少なくなかった。国民民主党ではそうした大きな国の方向性は議論しないらしいので、再び旧民主党時代に戻ったかのようだ。

国民民主党は旧民主党の中ではやや右の中道路線だが、立憲民主党は旧民主党の左派である。国民民主党は、旧民主党のように大きな問題の議論を避けるが、立憲民主党は左派路線そのものを隠そうとしない。

この意味で、コアな左派は立憲民主党のほうに魅力を感じるだろう。国民民主党は、リアルな安全保障や憲法改正の主張をすると、自民党との差別ができなくなってしまうジレンマがある。

この点から、立憲民主党の方から合流を申し入れることはなさそうなので、国民民主党が立憲民主党と合流して、旧民主党が復活するようなことは当面ないだろう。両党は広い意味での左派政党を目指しているが、旧民主党が分裂してできた経緯から、合流することはなく、両党が合わせて過半数を取ったときには連立政権を組むのだろう。保守系の自民党と公明党のように、政党は違うが連立パートナーになるという腹づもりのようだ。

しかし、問題は、本コラムで何回も繰り返しているように、両党ともに、雇用を増やすマクロ経済政策や金融政策について勉強不足であることだ。とても左派政党を名乗る資格はない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たない(゚д゚)!

最近さらに、雇用情勢が改善されています。それは統計数字だけではなく様々な現場にも反映されています。たとえば、最近日本郵便が法人向けの郵便物の集荷サービスを6月末に廃止する方針を固めました。

人手不足の日本郵政は法人の郵便物の集荷を廃止する

宅配便「ゆうパック」の取扱量増加で人手不足が常態化する中、無料で実施してきた法人の郵便物の集荷を継続するのは困難と判断したのです。同社は既に年明けから、集荷を利用してきた法人顧客にサービス廃止の通知を出していますが、顧客から不満も出そうです。

昨年はヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは4月、健全な労働環境を守ることを理由に27年ぶりの運賃値上げの方針を発表しました。

昨年はクロネコヤマトの運賃が値上げに

2年続けて、物流に関連する大手企業が運賃をあげたり、サービスを停止したりする状況に追い込まれています。これは、明らかに2013年度から継続してきた金融緩和による雇用増による人手不足によるものです。

このような状況になっても、高橋洋一氏がブログ冒頭の記事で掲載しているように、立憲民主党も国民民主党も、雇用を増やすマクロ政策や金融政策について理解していないようです。特に金融政策に関する理解は最悪のようです。

経済理論など理解しなくても、もう現在の人手不足の状況は理解できるはずです。そうして、この人手不足は金融緩和策による雇用の改善であることも理解できるはずです。

さらに、もっと目利きなら、難しい経済理論など理解していなくても、クロネコヤマトや日本郵便がここしばらく現場の人の採用を多めに行ってきたことにより何が起こったのかも、肌で感じることができるはずです。

クロネコヤマトも、日本郵便でも、まずは現場の人間を増やすのは当然のことです。管理職や、役員を増やすよりも、まずは現場のパート・アルバイトなどを増やすはずです。そうなると、何がおこるのか、会社単位でも平均賃金は下がります。

国レベルで全産業でこれがおこれば、当然実質賃金は下がります。実質賃金は平均値でみるからです。しかし、野党は実質賃金が下がったことを「実質賃金ガー」といって安倍政権を批判するばかりでした。

金融緩和策による雇用の改善は、労働者の雇用を改善するということで、世界中の左派政党や、労働組合などが賛成している政策です。野党は、良く女性の議員や閣僚数などを日本と比較するということなどで、良く海外のことを調べるのですが、金融政策についてはなぜか全く比較もせず、調査もしていないようです。

この世界中の左派政党や、労働組合が賛成している金融緩和策を安倍総理は2012年の政権交代選挙で公約として選挙に勝利し、2013年4月から日銀は大規模な量的金融緩和に踏切りました。それから5年間、途中で8%増税がありましたが、継続して量的緩和を行ってきた結果が今日の雇用情勢の過去にないほどの改善と、人手不足です。

保守派の安倍総理が金融政策で雇用を改善したにも関わらず、国民民主党も立憲民主党も金融緩和政策についてほとんど理解を示していません。

彼らは、元々経済がよくわかっておらず、「 政権や権力と戦うのが自分たちの使命」と思いこんでおり、とにかく「安倍には反対」という姿勢に凝り固まり、安倍総理の実施する金融緩和にまで反対してしまったというのが真相だと思います。

そうして、国民経済を良くするために、左派的な手法でも過去に十分にその効果が確認されている金融緩和策を導入する保守派の安倍総理と、安倍総理が実行している政策であるから反対という左派政党のどちらが国民にとって良いかといえば、無論安倍総理のほうが良いに決まっています。

国民のことを考える政治家と、自分たちの都合しか考えない政治家のどちらが国民に支持されるのかといえば、当然のことながら国民のことを考える政治家です。しかし、そのことに国民民主党も立憲民主党も含めた日本の野党は、何度選挙で惨敗しても理解できないようです。

そうして、選挙で惨敗し続け、少数派の支持しか受けていない野党に肩入れするマスコミもこのことを理解できないようです。

↑ 主要全国紙の朝刊販売数変移(万部)

実際、主要全国紙の朝刊販売数は都市を経るごとの減少しています。この減少は無論インターネットの普及という面もありますが、新聞の報道姿勢が国民の多数派の意見や考えを無視しているということも多いに影響していると思います。

朝朝日新聞は不動産事業で儲けているから、部数が減っても問題ないとよくいわれます。しかし、過去5年の朝日新聞社の財務諸表を徹底分析すると驚くべきことがわかっています。

年5%の部数減で、朝日は倒産の危機に陥るというのです。去年のデータでは40万部減、すでに5%以上部数を減らしています。「朝日廃刊」はもう荒唐無稽の話ではありません

国民民主党や立憲民主党を含む野党は、自ら多数国民を無視して、少数派になる道を選び続ける一方、新聞などのマスコミも少数派である野党にばかり肩入れしています。

少数派であることや、少数派にばかり肩入れすることに固執すれば、やがて自らも少数派になり滅んでいくのは自明の理だと思います。

無論少数派の意見や考えを無視しろと言っているわけではありません。彼らの意見も尊重すべきです。しかし、多数派の意見や考えを無視しては、政治もマスコミも成り立たないのは自明の理です。野党や、マスコミはこれをどう見ているのでしょうか。

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2017年10月23日月曜日

大勝をおさめた安倍政権が「まずやるべき」経済政策はコレだ―【私の論評】戦後最低議席数の野党第一党立憲民主党誕生(゚д゚)!

大勝をおさめた安倍政権が「まずやるべき」経済政策はコレだ
選挙後の課題は積みだから 

高橋洋一

    リベラルは弱体化したのか

 22日投開票の衆院選。台風の直撃を受けて投票率は散々であったが、結果は予想通り、与党の勝利であった。前回筆者が示した予想と比べると、希望の党がさらに失速して、その代わりに立憲民主党が躍進したが、与党勝利には変わりがなかった。

(投開票前に新聞各社が大量の人員と多額の予算をつぎ込んで選挙予測をしているが、筆者は公開資料を加工するだけでほとんど人員もコストをかけていないにもかかわらず、新聞各紙の予測精度と遜色がなかった。)

 さて、選挙を振り返ろう。希望の党の失速の原因は、先週の本コラムで書いたように、9月末に小池代表の口からでた「排除」発言である。

 希望の党としては、風を起こすことができない残念な結果であったが、憲法の改正に曖昧な態度であった民進党が分裂して、改憲に前向きと後ろ向きな党にしっかり分かれたのは、国民にとって今後の議論を分かりやすくするだろう。もちろん、改憲は今後の国会で行われる議論次第であるし、最終的に改正するかどうかは国民投票によるのだが。

 今回の選挙では、「リベラル」という言葉がマスコミを中心によく使われたのも象徴的だ。小池氏も結党時の会見で「リベラルを排除する」と言っていた。

 『広辞苑』によると、「リベラル」とは、「個人の自由、個性を重んずるさま。自由主義的」とのことであるが、この定義なら、日本のほとんどの政党はまず否定しないだろう。

 ただ、政治で使うときには、右の「保守主義」と左の「社会・共産主義」の中間、中道を指す言葉である。英国では自由党がこれにあたり、市場経済重視、身分差別反対、非宗教的などを基調としている。アメリカなら民主党が代表例で、社会福祉、人権、宗教平等などの推進・充実を特徴としている。

 左派系政党の掲げる重要な政策として、雇用重視がある。これまで何度も述べてきたが、雇用を改善するための標準的な政策は、金融政策である。が、これを主張する左派政党はすくない。一方、リベラルは左と右の中道なので、「金融政策で雇用を作る」という政策も主張する。

 アメリカでは右系の共和党から、FRBの廃止、または金本位制の復活など、現在の金融政策を否定するドラスティックな政策が出てくることもある。もちろん、今の時代では金本位制が採用されることはないが、大統領予備選では共和党候補の誰かから必ず提案される定番のアイデアだ。

  オズの魔法使いと金融政策と

 ちょっと脱線するが、現実の大統領選挙で、金融政策を巡って、金融緊縮気味になる「金本位制」で行うか、金融緩和気味になる「金銀複本位制」で行うかが争われた歴史もある。

 時は1896年、当時の米国はデフレの真っ最中で、東部の産業資本からの借金で未開の地を開拓していた西部の農民は、デフレによる債務の実質的増加に苦しんでいた。そのため大統領選の大きな争点としてデフレ対策が浮上し、民主党候補のブライアンは金本位制から金銀複本位制への移行による通貨の増大を主張していた。

 「人々を金の十字架にはりつけてはならない」というブライアンの演説は、アメリカ政治史上でも有名である。一方、共和党候補マッキンリーは、あくまでも金本位制にとどまることを主張した。保守の共和党より、リベラルの民主党の方が金融緩和政策を好んだのだ。

 実は、この政治論争がベースになって、かの有名な『オズの魔法使い』が書かれたことをご存じだろうか。オズ=OZは金オンスの略号、主人公ドロシーは伝統的なアメリカ人の価値観を表しており、脳のない案山子は農民、心のないブリキ人形は産業資本、そして勇気のないライオンはブライアン候補のメタファーだとされる。黄色い煉瓦道は金本位制だ。共和党候補のマッキンリーは西の悪い魔女として登場している。

 帰り道を探すドロシーは、黄色い煉瓦道を単純に辿るのではダメだと知る。そして、魔法使いオズが役に立たず、その代わり自分の「銀の靴」に魔力があることに気づく。要するに作者のボームは、共和党が主張する金本位制よりも、民主党の金銀本位制を支持していたという解釈だ。

 ちなみに、実際の大統領選では共和党候補が勝利。金本位制は維持されたものの、1898年にアラスカで金鉱が発見され、さらに南アフリカからも金が流入した結果、デフレは解消された。

  自民党は一番リベラル…?

 「リベラル」に話を戻すと、日本のマスコミでは、「左派・リベラル」と一緒に書くことがしばしばだ。はっきりいえば世界を見渡してみると、左の社会・共産主義は、お隣の中国・北朝鮮以外は、ソ連崩壊以降はあまり見られない絶滅種である。

 ここで、左は「絶滅危惧種化」を避けるために、「リベラル」にならざるを得なかったのだ。もっとも、日本のマスコミの中にも、もともと左系志向で、表向きは転向を余儀なくされたが、実質的には左を捨てきれずに偽装している者も少なくない。そのような気持ちが、「左派・リベラル」という標記に現れているのだろう。世界ではほぼ、左派は消え去っているにもかかわらずだ。

 そこで、本稿では、「リベラルか保守か」という対立軸と、「既得権か非既得権か」というもう一つの対立軸によって、自民、立憲民主、希望の政治的スタンスを見てみよう。


 この図を見て、「自民はリベラルではないだろう」という人もいるかもしれない。そうした人は、日本的な「リベラル」の特殊性が頭の中に張り付いているのだろう。

 日本的「リベラル」とは、つまるところリベラル=護憲、というイメージのことだ。本来であれば、憲法改正は左か右かに無関係である。

 たとえば中国は、共産党の下に憲法もあるが、5年ごとに開催される中国共産党全国代表大会に対応して、ほぼ5~6年ごとに改正されている。つまり、左派=護憲は中国でも成立していない。日本に特有のものだ。

 憲法改正自体、ほとんどの国で改正されており、筆者の知る限り、戦後一回も改正されていない日本だけが特殊であるのだ。これは、日本国憲法が世界で一番改正しにくいように作られているからだ(2015年5月4日「憲法改正へ、自民党が国民の支持を得るためのベスト戦略とは何か?」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43221)。

では、自民党がリベラルかどうか。

  立憲民主党、これから大変だよ

 「リベラル」という言葉を、護憲ではなく、欧米のリベラル系政党が標準的に掲げる、「金融政策による雇用重視」「社会福祉」「市場経済重視」「身分差別反対」「非宗教的」等の政策基準でみてみると、いまの安倍政権は(欧米基準でみれば)かなり「リベラル」な政策を採っている。ひょっとして、今日本で一番「リベラル」なのは、安倍首相かもしれない。

 立憲民主の枝野代表は、かつて筆者とテレ朝の「朝生」で議論したことがあるが、金利引き上げによって経済成長を目指すんだという「トンでも政策」を主張して、頑として譲らなかったのを覚えている。

 金利引き上げは、雇用を最も作れない政策であることは明らかで、それを主張することは、(雇用重視」という点では)とても欧米基準では「リベラル」といえない。

 立憲民主は、希望の党の失速もあって躍進したが、やはり雇用=金融政策であることを理解しないと、雇用の実績を作れないので、安倍政権にはかなわないだろう。なにより、リベラルを名乗れないだろう。

 金融政策は雇用を作るとともに、株価を押し上げる。雇用と株価の二つをとっても安倍政権の実績はいいので、立憲民主がこれを凌駕するには、よほどの努力が必要だろう。



さて衆院選の結果を受けて、安倍政権は外交、内政、経済でどのような課題に直面するだろうか。

  北朝鮮との対話の可能性も…?

   今回の総選挙は、北朝鮮対応をどうするか、といういわば「有事解散」であった。これは安全保障を問う解散だったと言い換えてもいい。先日ある情報番組に出演して、外国人コメンテーターから、日本では「戦争」について語ることがタブー化されている、という発言を聞いた。まさにそのとおりだ。

   筆者は昔からそのことを痛感していたので、米プリンストン大に留学する機会をもらった時、平和論・国際関係論を勉強した。これは、過去に本コラムでも紹介したが、戦争の発生条件を冷静に、数量的に分析して、どのようにしたら戦争になる確率を減少させるかを研究するものだ。

    日本の左派論者は、「集団的自衛権をもつと、日本は戦争をする国になる」という主張をするが、実は過去の戦争データを分析すれば、集団的自衛権を認めることは、戦争になる確率を減少させる方策であるのだ。
    こうした視点に立てば、同盟関係で圧力をかけるのは、戦争確率を減少させる効果的な手段だ(圧力は対話を引き出すためのものであることを忘れてはいけない)。

    小泉政権の時に、小泉首相が北朝鮮訪問し、拉致問題を北朝鮮が認めて謝罪した。これがうまく行えたのは、ブッシュ政権が北朝鮮に圧力をかけていたなかで、北朝鮮がその圧力を軽減するために、日本の拉致問題を持ち出したからだ。

   今の北朝鮮問題にあてはめれば、11月に日米首脳会談、米中首脳会談がある。また、APECでの各国首脳会談には、ロシアも出てくるだろう。それらの国際会議では、北朝鮮問題が話し合われる。これらは、北朝鮮版「ヤルタ会談」ともいうべきものだが、そうした国際的な圧力が高まる裏で、日本と北朝鮮との和解交渉が行われる可能性がないわけではない。

    ところで最近、北朝鮮がおとなしい。先日まで中国で共産党全国代表大会があったため、北朝鮮も自重していたのだろうが。ここに来て、ようやく北朝鮮が自国のおかれた立場を理解してきたのかもしれない。

    これまでの中国に対する度重なる非礼を許してもらい、挑発行動をとらずに、制裁に耐える道を選んだのかしれない。そうであれば、年内ともいわれていた国連軍あるいは多国籍軍による対北朝鮮の軍事オプションも遠のく可能性はある。

    いずれにしても、トランプ米大統領、習中国国家主席、プーチン露大統領など互角に渡り合えるために、どのような準備を日本のリーダーがすべきか。まさに日本の国家としての命運がかかっている。

  こうした外交・安全保障に気を払いながら、内政を同時並行的にやることが求められる。


     経済としては、デフレを完全に脱却する必要がある。そして、早く完全雇用の状態を作らなければならない。本コラムで書いたように、インフレ目標2%、失業率2%台半ばを達成するためには、有効需要であと25兆円ほど必要である。そのために、来年の通常国会の冒頭での大型補正が必要である。

    そのときには、ひょっとして朝鮮半島が有事になっている可能性もある。そうなれば経済に大きなショックを与えることが予想されるので、そうした事態を見越して、年初の大型補正の準備は直ちに取りかかるべきだろう。

    ところで、安倍首相が「リーマンショック級のことが起これば、消費増税はしない」と発言し、各方面で話題になっているが、安全保障の環境や経済状況を考えないで経済政策があるはずなく、常識的な意見であるということを、最後に付け加えておきたい。

【私の論評】戦後最低議席数の野党第一党立憲民主党誕生(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事て、高橋洋一氏は、日本の“リベラル”は、世界標準の“リベラリズム”とは別モノであるとしています。

4年ほど前、特定秘密保護法が話題だった頃に「香山リカ」が「私たちリベラル派は嫌われている」と発言して話題になったことがありました。

香山リカは、リベラル派の人物が反対を唱えるだけで「あいつらが反対してるならいい法律なんだろう」と判断されるレベルでリベラルが嫌われている、という告発をしていたのです。その後「香山リカ」を名乗る人物はどうやらそのことを「リベラルじゃダメですか?」本にしていました。

香山リカ
これだけ嫌われてるリベラルとは一体何なのでしょうか。

自由と平等を掲げるのは近代国家としては普通のことであり、我が国も自由主義国家の一つです。厳密には議論があるでしょうが、日本の憲法は自由と平等、そして自由主義の根幹でもある個人の国家や宗教からの自由、つまりは基本的人権を掲げている点で自由主義国家です。

社会自由主義とも言われるいわゆる中道左派は、近代国家の目指すところとしては実にありきたりなものです。

もちろんこの中道左派には反対する人たちも多いのですが、自由主義国家が現代においてある程度利害調整をしてまともな経済政策をとっていくと、結局は中道左派路線になってしまうものではないでしょうか。どう考えてもリベラルではない日本の自民党も、結局のところブログ冒頭の高橋洋一氏の記事でも指摘されているように、中道左派的経済政策を実行しています。

では日本における「リベラル」とは一体何なのでしょうか。

おそらく現代日本において「リベラル派」とされてる人たちのことは本当は、「新左翼」「ニューレフト」と呼ぶべきなのです。従来の意味での新左翼は学生運動や成田闘争といったものに代表されるように、暴力的革命運動をする人々でした。

「言葉の暴力」という概念を持ち込むと、現代日本において「リベラル派」と呼ばれる人たちを新左翼と呼ぶのに値することに気づきます。

彼らのネットの活動を見ていると「あべしね」というワードがちらほら出てきます。今の総理大臣安倍晋三氏に対して「死ね」という言葉を投げつけているのです。それに衆院選では、「安倍政治を許さない」「お前が国難」というプカードを掲げていました。これは、言葉の暴言です。


この他、デモ活動における暴力的な言語表現などなどを見るに、「火炎瓶やゲバ棒を言葉の暴力に持ち替えた新左翼」と呼んで差し支えないのではないでしょうか。

この新左翼らは、従来は単なる暴力を、現在では言葉の暴力で何ら生産的な活動をしていないようにみえます。

しかし、左翼の源流をたどれば、それが事実がどうかは別にして、本来の「左翼」は搾取され虐げられた民衆のためにある勢力であることを標榜していました。

緊縮政策に苦しめられてきた民衆が望んでいるのは、政府が民衆のために潤沢におカネを使い、まともに雇用をつくりだすことです。その資金は、おカネのあるところから取ればいいし、それでも足りなければ無からつくれば良いのです。それが今、左翼の世界標準として熱狂的に支持されている政策です。

そう考えれば、立憲民主党などの、野党側が掲げるべき政策は明らかです。日銀がお金をどんどん出して、それを政府が民衆のために使うことです。

それをまさに、安倍政権が実行しています。いわゆる「アベノミクス」の「第一の矢」と「第二の矢」です。しかし、これらは「そんなことしたらハイパーインフレになる」「財政破綻する」「庶民の生活はよくならない」などと言われた、日本の左派・リベラル派の間では印象が悪い政策です。

しかし、世界の大物左派・リベラル派論客らが、「アベノミクス」を高く評価する発言をしていました。アメリカのリベラル派ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏やジョセフ・スティグリッツ氏、インド出身のノーベル賞経済学者アマルティア・セン氏、フランスの人口学者エマニュエル・トッド氏。『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)がベストセラーになったトマ・ピケティ氏も、「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい」と言っています。

ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏(左)とジョセフ・スティグリッツ氏(右)
ただし、これらの論客の誰も、「第三の矢」の規制緩和路線や、消費税増税を評価しているわけではありません。「第二の矢」の財政政策も評価していません。これらの論客が支持しているのは、金融緩和政策と、金融政策と政府支出の組み合わせという枠組みについて評価しています。

アベノミクスは、それなりの評価を受けていますが、まだまだ改善の余地があります。そこに、リベラル派が付け入る隙は十分にあります。

しかし、そもそも金融政策などを評価しない、現状の日本の「リベラル」はリベラルなどとはとても呼べる代物ではないのです。

経済に関する考え方を変え、安全保障や憲法についても、ただ反対するだけではなく、代案を出すべきです。そうでなければ、日本のリベラル≒新左翼は、これからどんどん衰退するばかりです。

今回の衆院選で、立憲民主党は躍進して野党第一党とマスコミは報道していますが、これは戦後最低議席数の野党第一党誕生という事実が見逃されているようです。

当選確実を示す印がない候補者ボードの前で頭を下げる野田佳彦首相=2012年12月
16日午後11時20分 この衆院選挙では民主党獲得議席は57、自公は325議席だった
議席数54は、2012年の民主党大惨敗時総選挙の議席数57を下回りました。今後、希望の党や、無所属で立候補して当選した人たちの立憲民主党への合流も考えられますが、それにしても、この規模では大きな勢力にはなり得ません。

以下に過去の衆院選での議席数と今回の結果を掲載します。







今回の衆院選の結果
これは、本当に象徴的な出来事でした。「かけもり問題」のフェイクニュースの嵐の中という、あれだけの逆風の中で、自公が圧勝です。日本のいわゆるリベラルそのものも、衰退一途をたどっているのでしょう。この傾向はますます、加速されることでしょう。民進党崩壊の次は、立憲民主党崩壊です。

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2016年1月16日土曜日

【日本の解き方】民主党が主張する経済政策はブラック企業と既得権益者を利するだけだ ―【私の論評】ブラック政党に成り果てた民主党には今年の夏にとてつもない危機が(゚д゚)!


今年の夏には過酷な運命が待っている民主党。枝野氏はそれを知る由もない。

8日、衆院予算委員会で民主党の枝野幸男幹事長が質問に立ち、物価の変動を考慮した実質賃金について、民主党時代は高かったが、安倍晋三政権で低くなっていると批判した。

まず、事実を確認しておこう。実質賃金については、枝野氏のいうとおりだが、就業者数では民主党時代には30万人程度減少し、安倍政権では100万人以上増加している。

次に、雇用の経済学を復習しよう。名目賃金は物価より硬直的だが、金融政策は物価に影響を与えられる。このため、金融緩和すると実質賃金は低下し、就業者数が増加する。さらに金融緩和を継続すると、ほぼ失業がなくなる完全雇用の状態となる。そうなると今度は実質賃金も上昇に転じてくる。

経済の拡大によって就業者数は増加するが、逆に金融引き締めを行うと、実質賃金が高くなり、就業者数が減少。完全雇用からほど遠くなる。

民主党政権と安倍政権の実質賃金と就業者数のデータは、民主党政権では事実上の金融引き締め、安倍政権では金融緩和が実施され、その通りの効果が現れてきたことを示しているわけで、雇用政策から見れば、安倍政権の方が優れている。

民主党政権時代に就業者数の減少を招いたにもかかわらず、実質賃金の高さを誇るのは、雇用政策からみれば滑稽だ。就業者数が減り、実質賃金が上昇することで喜ぶのは「既得権雇用者」たちだ。つまり、既得権者保護の政治を民主党は公言していることになる。非正規雇用者、新卒者、失業者という「非既得権雇用者」の利益は考えていない、ということだ。

国際的な基準からみれば、金融引き締めをした民主党政権は、金融緩和をした安倍政権より「右派」で労働者に厳しい。民主党はすべての労働者の権利を守ろうとする「左派」政党とは思えない。この見解が間違っていると思うなら、欧州の左派政党に意見照会してみればいい。

ブラック企業の経営者は、金融引き締めに賛成しがちである。その方が、失業が多くなり、賃金を安く設定して労働者を買いたたけるので、多少のデフレには対応できるからだ。

民主党も、金融緩和に否定的で、金融引き締めを求めるところは、くしくもブラック企業の経営者と共通点がある。

そういえば、枝野氏は以前、テレビ朝日系の討論番組『朝まで生テレビ!』で、「金利を上げれば景気がよくなる」という趣旨の珍説を披露したこともある。それは、どのような経済学の教科書を読んでも分かるように、間違いである。

ブラック企業の経営者が、労働者を買いたたいたことで手元の資金を膨らませているために、金利収入を増やそうとして金利を引き上げよと主張することがある。この点でも、民主党はブラック経営者と似たような発想になっている。

民主党には経済政策で頑張ってもらわないと、国会がつまらなすぎて国民のためにならない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ブラック政党に成り果てた民主党には今年の夏にとてつもない危機が(゚д゚)!

民主党の国会での安倍総理などに対する質問は、衆院の枝野幹事長のものは無論のこと、他の衆院の質問も、参院での質問も、本当にマクロ経済や雇用のことが理解していないので、全く奇妙奇天烈で頓珍漢なものばかりでした。

この枝野氏は昨年2月、民主党は政権交代可能な政党であると述べていました。その動画を以下に掲載します。



この動画、動画が削除されてしまう場合もあるので、そのの音声を文章にしたものを以下に、掲載しておきます。
民主党の枝野幹事長は、安倍総理大臣を引き合いに出して、民主党が政権交代可能な政党だという考えを示し、政権復帰に全力を挙げる姿勢を強調しました。 
 民主党・枝野幹事長:「あの安倍総理でさえ、1回目は政権回せなくてごちゃごちゃだったのが、さすがに2度目は、やっている中身は僕は問題だと思いますけれども、うまいよねと、政権運営については」 
 枝野氏は、安倍総理が2度目の総理就任後、安定した政権運営を行っていることを引き合いに出しました。そのうえで、「我々も3年3カ月の政権の経験を積ませて頂いたなかで、経験ノウハウは十分得させて頂いた」と述べて、民主党が政権交代可能な政党の1つだと強調しました。 
さらに枝野氏は、「もう1つの柱としてしっかり立っていく。そのために党一丸となって頑張っていこうと決意した」と述べて、岡田代表のもとで、民主党の政権復帰に全力を挙げる考えを強調しました。民主党は29日、岡田代表就任後初めての党大会を開き、政権交代に向けて今年が「党再生の重要な年」と位置付ける活動方針を確認する予定です。
もし民主党が、3年3ヶ月で経験を積んだというのであれば、国会審議でもっとまともな議論、国の進路に関する論戦を戦わせることができるはずです。しかし、昨年毎日報道を賑わせていた民主党の国会審議は、政治とカネと安保法制審議における安直な「戦争法案」というレッテル貼りでした。

政治とカネは、野党の立場として取り上げるのは、ある程度はやむを得ないことだとは思います。ですが正直なところ、たとえば昨年のはじめころのNHK会長のハイヤー代など、私には、国の喫緊課題を議論する予算委員会に持ち出したこと自体が非常識であるとすら思えました。この問題など、もう大多数の国民が記憶の彼方にすっかり消え去っていると思います。


恐らく、安保法制に関しても、党内をまとめることができなかったため、真っ向勝負を挑めず、「戦争法案」一点張りで終始したのだと思います。そのため、国会ではほとんどまともな審議できませんでした。マスコミは、それがあたかも安倍民主党政権に責任があるかのような報道ぶりでしたが、それは全く違います。それは、民主党をはじめとする野党の側にこそ大きな責任があります。

「戦争法案廃案!強行採決反対!7.14大集会」で民主党を代表してあいさつする枝野氏
安倍政権とて、ひとたび支持率が落ちるようなことがあれば、自民党のような政党はすぐさま安倍降ろしにかかることでしょう。安倍総理が2度目で概ね成功し、長期政権の道を開きつつあるのは、経済、外交、安全保障等の政策、政治理念等々が、国民に一定の理解を得ているからでしょう。

誰もが2度目に成功するわけではありません。枝野氏の思考は度し難いほど単純ですが、それは「ほとぼりが冷めれば国民はまた騙せる」と考えているからではないでしょうか。

民主党にとっての3年3ヶ月の政権の経験とは、国民にとっては不満、ストレスと怒りの経験でしかありません。民主党に2度目の政権運営などないし、そんな機会は与えるべきではないです。

年が開けてからは、先に示したように、枝野氏をはじめとする、民主党の国会での質問は、マクロ経済を根本から理解してないため、奇妙奇天烈、頓珍漢の域を出ないものばかりでした。

枝野氏は、実質賃金も実質金利も引き上げよといっている点で、皮肉にも見事に整合性がとれています。ただし、残念ながら、二つともに経済成長のためには誤りです。これは、景気が過熱したときに、沈静化するには役立つでしょうが、景気を浮揚はさせません。

二つともに、既得権雇用者、資産家に有利な政策です。非既得権雇用者や資産を持たない挑戦者には全く優しくないです。特に若者にとっては、厳しい政策です。

雇用確保と倒産予防は、ともに政府の最も重要な仕事です。この二つを提示されると、枝野氏は「都合のいい数字を出す」と国会で厳しく追及します。枝野氏は、この二つが国民にとって最重要であることを全く理解していないようです。

考え方の根本が間違っていれば、弁舌爽やかに語っても意味がなくなる!
この重要な施策について、民主党は完全に安倍政権に完璧に負けています。これは、金融政策を正しく理解しているかいないか、という問題です。特に、金融政策が、雇用と不可分に結びつているという常識を知らないようです。これでは、民主党が政権の座につけば、再び雇用が悪化し、ブラック企業が跋扈することになります。多くの人々、特に若者に途端の苦しみをもたらす意味では、民主党こそブラック政党といえるかもしれません。

民主党が自民党に正しく対抗するための策は、安倍政権が掲げるインフレ目標2%ではなく、左翼政党としてのグローバル・スタンダードでもある、当面インフレ目標4%の金融緩和を行い、雇用確保と倒産予防をもっと強化してやっていくとともに、財政政策も増税という緊縮財政を捨てて、大規模な積極財政というものであるべき姿のはずです。

これが、労働者の雇用を安定させる一里塚のはずです。しかし、民主党はほんの一握りの、金子洋一参議院議員のような例外は別として、大方の議員がそのようなことには無頓着だし、真面目に勉強をしようという気もないようです。

自民党の議員にもそのような議員が多いですし、幹部でもそのような人がいますが、少なくとも安倍総理大臣とそのブレーンはそうではありません。党としても、安倍晋三氏が総理大臣であるかぎりは、あるいは安倍晋三氏の考えを引き継ぐ総理大臣がでてくれば、これからも財務省などに幻惑されることなく、正しい経済政策をとり続けるでしょう。

この基本がわからないようでは、民主党は政権交代どころか、今年7月の参院選、場合によってダブル選で、大敗北し、旧社会党のように存続の危機に見舞われることでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連図書】

日本経済に関する書籍二冊を以下にあげました。これをご覧いただくと、いかに民主党の経済政策が出鱈目かよく理解できます。さらに、政治家に関する書籍を一冊あげていただきました。これをごらんいただくと、いかに民主党政権が酷かったのか再確認いただけると思います。

Japan's Great Stagnation and Abenomics: Lessons for the World
Masazumi Wakatabe
Palgrave Macmillan
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世界が日本経済をうらやむ日
浜田宏一 安達誠司
幻冬舎
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2013年7月8日月曜日

自民党の公約のボロも攻めきれず!?アベノミクス批判で二極化する各党の経済政策を検証する―【私の論評】常軌を逸する野党のデフレのど真ん中での金融緩和、財政出動への批判!!アベノミクスを批判するなら、これらには賛成して、順番や具体的なやり方、目標を批判すべき(゚д゚)!

自民党の公約のボロも攻めきれず!?アベノミクス批判で二極化する各党の経済政策を検証する

参院選に向けての党首討論

参院選の争点は、経済政策でアベノミクスの是非になっている。

自民党公約の経済政策について、「アベノミクスの「3本の矢」を一体的に推進するとともに、「経済再生と財政健全化の両立」に向けた取組みを通じて、デフレからの早期脱却とともに、持続的成長への道筋を確かなものにします」、「今後10年間の平均で、名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の成長実現を目指します」と書かれている。

連立の公明党は、具体的な数字を上げていないものの、アベノミクス推進の立場である。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】常軌を逸する野党のデフレのど真ん中での金融緩和、財政出動への批判!!アベノミクスを批判するなら、これらには賛成して、順番や具体的なやり方、目標を批判すべき(゚д゚)!

上の記事、さすが高橋氏です。特に金融緩和については余すところなく掲載されているので、私の拙い説明など一切掲載しません。ただし、気になるところ3点だけピックアップします。
1.野党のうち労働者の立場に立つべき、民主党、共産党、社民党などの政党が、金融政策に反対するというのは世界中を見ても日本だけだろう。欧州の労働・社会主義政党は、雇用の確保のために金融政策を活用すべきとの主張を歴史的にしてきている。というのは、インフレ率と失業率の逆相関を示す「フィリップス曲線」が示すように、金融緩和は失業率の低下をもたらし、労働者のためになるからだ。
これについては、有名な事実であり、野党の勉強不足が目立ちます。アベノミクスを批判するにしても、金融緩和、財政出動に関しては、賛成すべきであって、そのやり方とか、順番とか、数値目標に対して異議を唱えるというのなら、わかりますが、金融緩和そのもの、財政出動に反対するような発言をする政党は、はっきりいって問題外です。
2.「名目3%、実質2%」の公約は、「名目4%、実質2%」の誤り
一方、自民党の掲げた数字、名目3%、実質2%という数字も情けない。これは、民主党時代の2012年8月31日に出された「経済財政の中長期試算」での成長シナリオと同じ数字だ。
アベノミクスと民主党とでは、金融政策について「異次元」の違いがあるはずだ。ところが、それが数字にでていない。インフレ目標2%に向けて、黒田日銀は金融緩和している。
「マネーの効果」によれば、マネーストックの増加率は2年後のインフレ率と密接な関係がある。今のペースで行くと、マネーストックを7%程度増加することになって、2年後にインフレ率2%程度になるだろう。また、マネーストックの増加率は2年後の名目GDP成長率とも密接な関係がある。マネーストック増加率7%程度は名目GDP成長率4%程度になる。さらに、各種の規制緩和が行われれば、名目成長率は4~5%程度になっても不思議でない。
これは、本来つきどころ満点であり、ここを突けば、自民党の間違いを指摘することになり、自民党よりも、野党のほうが、良い経済対策ができるかもしれないと、有権者にアピールすることができるはずなのに、ほとんとの野党が指摘しないですし、指摘しても、非常に甘いです。そうして、今の段階では、このあたりを突かないことが、野党の経済音痴ぶりを披瀝することになっています。
3.第一の矢の金融政策、第二の矢の財政政策が2年以内に効果が出るのに対して、第三の矢は法案提出・成立に2年かかり、その効果が発揮されるのはさらに場合によっては5年、10年もかかる政策だ。この意味で、各政党の目指すべき経済観が表れている。
第三の矢に関しては、私は、自民党の公約のなかで、一番疑問に感じているところです。これに関しては、以前にもこのブログに掲載したことがあります。そのURLを以下に掲載します。
【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとて、市場主義経済では、優秀な企業でさえ、将来を見過ことがおおいにあることをノキアと、アップルを例にとってあげました。何と、ノキアは、アップルがiPhoneや、iPadを市場に投入する前に、同じようなものをすでに開発していたのです。しかし、ノキアは市場に投入する時期を間違え、アップルに先をこされてしまったのです。


その後、どうなったかは、皆さんご存知のように、アップルは成長し、ノキアは限界的な存在になってしまいました。この例では、アップルがたまたま成功していますが、アップルだって、いつも成功するとは限らないのです。サイトを探せば、アップルの失敗作も数多くあることがよく理解できます。

これについては、新しいところでは、SNSのPingがありました。私も使ってみたのですが、あまりピンとこなく、結局すぐに使うのをやめてしまいました。未だに、あのSNSの意味がわかりません。

Pingの発表をするジョブズ氏
アップルの失敗作については、以下のNAVERのまとめを御覧ください。
成功の影に失敗あり! 偉大なアップルの失敗作まとめ
資本主義の自由主義市場では、多くの企業が競い合って、いろいろな製品を出して、どこかの企業が成功すれば、それが市場で大きな位置を占めます。誰も、どの製品が売れるかなどわかりません。それを決めるの、性能でも、革新性でもありません。結局のところ、顧客です。企業が自らが、どんなに素晴らしいと思っても、顧客に受け入れられるとはかぎりません。

こんな自由主義市場が機能している、資本主義の世界では、どんなに優秀な企業でも、経営者でも失敗することがあり得るわけです。そうして、顧客に選ばれた企業が勝利を収めます。だれも、最初から、何が成功するのか、何が市場を席巻するのかなどわかりません。評価はあくまで、後付であって、最初から判るのだったら、誰もがすぐに大成功です。

だから、成長戦略として、政府主導で何かをやっても、成功する確率はかなり低いです。もし、これが成功するというのなら、優秀な官僚が、計画経済を立案して、実行した共産主義もうまくいったはずです。しかし、そんなことはなく、共産主義はことごとく失敗してしまいました。

だから、政府主導の成長戦略などは実施すべきではありません。政府はあくまで、黒子に徹して、企業が成長しやすい環境づくりのみに徹するべきです。それに、成長戦略の背後には、いわゆる「日本ダメ論」というのがあるだと思います。

この日本駄目論は、そもそも、古今東西みたことがない、空前絶後のデフレが15年も続いたことを無視して、そもそも日本は駄目なんたという思い込みが背後にあります。日本は、決して駄目な国ではありません。デフレを日本の常態だと考え、それを前提に新たな成長戦略を生み出さないと、本格的な成長はあり得ないというのは単なる思い込みです。私は、政府が実施するのは、金融緩和と財政出動で十分と思っています。そういて、自民党にかぎらず、成長戦略を強調する政党に関しては、いかがなものかと思います。

こういう観点から、自民党の成長戦略には、賛成できません。しかし、だからといって、自民党に反対であるというわけではありませせん。上記のように、他党と比較すれば、自民党のやり方の一つが気に入らないから、反対という立場はとりません。次の選挙でも、自民党を応援します。

そうして、これに関しては、下の動画の主張が素晴らしいと思ったので、掲載させていただきました。


この動画秀逸です。何か一つでも、自分の主張と違えば、支持しないなどということであれば、そもそも、支持する政党などなくなります。

それにしても、野党の主張はお粗末です。これでは、参院選ではボロ負けする確率が高いです。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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