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2020年7月8日水曜日

国際法秩序を無視した中国外交に歯止めを— 【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)


岡崎研究所

6月19日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、「もし中国が米国と良い関係を持ちたいのなら、中国はもっと良い行動をしなければならない」と題する論説を寄せ、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪共産党政治局委員(外交統括)との会談の内容を紹介しつつ、それが実質的には物別れであったと論じている。一部その要旨を紹介する。


 ポンペオ国務長官は、楊潔篪と6月17日ハワイで会談と晩餐のため数時間会った。最近の米中関係で顕著となっている相互非難を抑制する方法を探すため、中国側から今回の会談を要請してきたと言われる。それまでは、習近平がトランプに電話をすれば良かったが、トランプは3月27日の電話会談後、習近平と話すことに興味はないと言っていた。

国務省の声明は、「2人の指導者は意見交換をし、ポンペオは商業、安保、外交の分野で中国が不公正な慣行をやめる必要があると強調した。また、進行中のCOVID-19パンデミックと戦い、将来の大発生の防止のためには完全な透明性と情報共有の必要性があると強調した」と述べている。一方、中国の外務省によると、楊はより良い関係を望んでいるとポンペオに言ったが、香港への国家安全法、台湾への威嚇、新疆でのウイグル人の強制収容などあらゆる争点について、中国の立場を擁護した。

北京のやり方のパターンはよく知られている。北京の悪い行為を批判する人を侮辱または攻撃する。その後、緊張の高い状態を非難し、通常の関係に戻ることを、行動を何一つ変えずに提案する。しかし、今回は通常の関係に戻ることはない。

ロウギンの論説は、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪政治局委員との会談がうまくいかなかったこと、現在の米中関係悪化の傾向に歯止めがかからなかったことを指摘している。

米中外相会談の成果は、今後も話し合おうという合意だけである。中国側はこれまでの行動を擁護し、行動を変えることを拒否したが、そういうことでは再度話し合っても何も出てこないことになろう。

香港への国家安全法制の押し付け、新疆でのウイグル弾圧、台湾への恫喝は内政問題ではない。香港については、1984年の英中共同声明と言う条約に違反している問題であって、条約を守るかどうかの国際的な問題である。ウイグル問題については、国連憲章下で南アのアパルトヘイトなどに関連して積みあがってきた慣行は、人権のひどい侵害は国際的関心事項であるということである。台湾が中国とは異なるエンティティとして存在しているのは、事実である。

中国が台湾は中国の一部と主張していることを理解し、尊重するということは、中国が台湾に武力行使をしていいことを意味しない。

そのほか、インドとの国境紛争、豪州に対する経済制裁、ファーウェイ副社長のカナダでの拘束に絡んでの中国でのカナダ人拘束など、中国の最近のやり方には、国際法秩序を無視した遺憾なものが多い。中国が大きな国際的な反発の対象になり、そのイメージが特に先進国で悪化してきていることは否めない。

中国の緊張を高め、その緩和を申し出、その緩和の代償として相手側に何らかのことを譲らせるやり方は、ソ連、北朝鮮、中国などの共産国が多く使用してきた外交戦術であるが、すでに使われすぎて、相手側に見透かされるものになって来ている。

中国が行動を変えるべきであるとのロウギンの論説は、そういう状況の中で適切な論であると言える。

【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)

国際関係で、中国の最大の問題は中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないことです。例えば南シナ海問題で中国が直面する国際司法環境の厳しさについて政治局常務委員に正しく伝えられたでしょうか。全く伝えられていないと思います。

中国の外交担当トップの「国務委員」は政治局委員どころか、さらに格が下の中央委員でしかありません。中国は、もともと他国のことは無視して、自国の都合で動く傾向のある国であることは、このブログでも何度が掲載したことがありす。それが、国の統治制度にも反映されているのです。

中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員

政策立案権限のない外務省は仲裁裁判所判断を「紙くず」と切り捨てました。担当する国際法に対し最低限の敬意すら払おうとしませんでした。

中共は現在の国際法が「西洋の産物」にすぎないと考えているのか。半世紀近くも国連に加盟し常任理事国の特権を享受しながら、常設仲裁裁判所の判断を否定する中国の態度は自己矛盾以外の何ものでもありません。国際法を完全無視するというのら、本来は国連から脱退すべきです。

そもそも中国には欧米型の「法の支配」という発想がありません。中国は全知全能の神と被造物である不完全な人間との契約(法)に基づく一神教の世界ではありません。日本にも、そのような考え方は、ありませんでしたが、明治以来それを理解しようと努めてきました。

これを日本では、「和魂洋才」として、とにかく西欧の考え方を学んだ上で、西欧列強に国際社会で伍していこうと努力しました。その努力は、最初は英国に認められ、日英同盟に結実しました。そうして、日本は名実ともに、国際社会の一員となりました。これは、後で述べ弁証法的な考え方に、基づいたものとも解釈できます。現在の中共にはそのようなことをするつもりは全くないです、本当に矛盾しています。

無論、様々な不幸な出来事があり、日本はその後、日英同盟も破棄し、大東亜戦争に月すすけわけですが、戦後には国際法を遵守し、国際社会に復帰しました。

その後の日本は、様々な矛盾を抱えつつも国際社会に貢献し、今日を迎えています。現状では、国内では様々な矛盾を抱え、憲法改正もできない有様です。しかし、そうは言っても、中国のように国際法を無視するようなことはありません。

中国の戦国時代に法家が説いた「法治」とは儒家の「徳治」に対する概念であり、法は権力者がつくるものです。被統治者は法の支配ではなく「立法者の支配」を受けて当然と考えます。

その意味で今2016年の中国の南シナ海実効支配に関する、国際司法判断は、人権や法の支配など欧米的概念と中華的法秩序との相克の新局面と見ることも可能です。

それと、今の中国政治指導者には共産主義者がよく用いていた弁証法的発展という考え方が身についていないようです。

弁証法とは、物の考え方の一つの型です。形式論理学では、「AはAである」という同一律を基本に置き、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進むという、運動・発展の姿において考える見方です。

図式的に表せば、定立(「正」「自」とも言う)Aに対しその(自己)否定たる反立(「反」「アンチテーゼ」とも言う)非Aが起こり、この否定・矛盾を通して更に高い立場たる総合(「合」「ジンテーゼ」とも言う)に移る。この総合作用を「アウフヘーベン」(「止揚」「揚棄」と訳す)と言います。
弁証法の極めて理解しやすい事例

今の中国に見られる、ただ圧倒的に強い力関係にあるとき、単純に強行政策をとって力ずくで自らの意思を相手に押し付けるのはいかがなものでしょうか。弁証法的発展とは、自分たちの意思や行動に対する反作用の効能もよく計算に入れながら、その先に生まれる新しい関係性を戦略的に考える、いわゆる正→反→合という考え方です。

「一国二制度」をどのようにして香港住民も納得できる制度にすることができるのか。これを香港市民や当局者などを巻き込んで本格的に討議するならば、「弁証法的発展」の成果が出てくるかもしれないです。

米中対立はそもそもそれほどイデオロギー性の強いものではなく、超大国の座を目指すイニシアティブの争いの側面も強いです。したがってイデオロギー、政治・経済体制、陣営などで争った「米ソ冷戦」とは異なる面が多いです。

イニシアティブの調整さえうまくできれば、難しいことではありますが、米中共存は可能でしょう。そしてその道を探ることと香港「一国二制度」の再生は連動しています。香港に対する国家安全維持法が全人代で可決され、実施されました。

香港問題は米中新冷戦のフロントラインになりつつあります。香港に対する中国の過剰な強硬姿勢は、香港の良さを失わせる「愚策」以外の何ものでありません。

香港と中国との違いに基づき、香港社会にも受け入れ可能な香港政策を作り出す「弁証法的発展」の成果でもあった「一国二制度」は、返還から23年目で中国によって一方的に廃止されてしまいました。

中国の成長を支えた香港を強引に変化させることは、中国自身の「凋落の第一歩」を意味します。

中共は、本来であれば、西欧諸国が作った国際社会秩序を認めた上で、国際社会でビジネスをすべきでした。それと、国内が矛盾するなら、日本の「和魂洋才」ような、弁証法的な考え方で、矛盾を解消すべきでした。

下の写真は、平成11 8 23日発行の日本郵便の切手です。明治維新後、文明開化とともに外国から様々な文化がもたらされ、 当時のファッションもその影響をうけました。ハイカラとは、 当時大いに流行ったシャツの立て衿(ハイカラー)から来ており、 新しく小綺麗でしゃれた物事をハイカラと呼び、 また、そのような人をハイカラさんと呼びました。


これも、「和魂洋才」を示すエピソードの一つと言えます。とにかく当時の日本は、西欧の考え方を理解することが急務だったのです。

しかし、中共のやり方は、様々な矛盾を自国内を弁証法的に変えようとするのではなく、自国外を自国内部に合わせようとしています。その典型例が、最近の香港の「一国二制度」の破壊です。

先日もこのブログで述べたように、香港住民でない外国人までを「香港国家安全法」の適用対象とした習近平政権はもはや、世界の主人となって世界中の人々を支配てしまおうとするような狂気にとられているようです。

これは、とてつもないことです。個人でも、自分を変えずに、世界を変えることは困難です。それに比較して、まず自分を変えれば、世界が変わって見えてくるものであり、その世界で、自分の価値観を反映した何事かを実現することもできるようになります。

しかし、自分を全く変えないで、世界を変えようとだけすれば、ほとんどの場合失敗します。それどころか、どこまでもそれを推し進めようとすれば、精神に異常をきたしかねません。国も同じことです。

中国は、まさにその道を進んでいるようです。

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2020年7月3日金曜日

専門家会議廃止めぐる「誤解」…助言の役割無視する報道も 政権の重い責任は変わらず ―【私の論評】意思決定等の基本原則を知らずにモノを考えるのは、時間の無駄、人生の無駄(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

西村経済再生相

西村康稔経済再生相が、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」)を廃止し、新たな組織に衣替えすると発表した。その背景や力学は何か、今後のコロナ対策に影響が出る可能性はどうか。

 政府の新型インフルエンザ等対策会議には、特別措置法に基づく新型コロナウイルス感染症対策本部が1月30日に設置された。本部長は総理大臣、副本部長は官房長官、厚生労働大臣、措置法事務担当大臣(西村大臣)、本部員はその他の国務大臣だ。ここがコロナ対策の意思決定機関だ。

 専門家会議は、新型コロナウイルス感染症対策本部の下、医学的な見地から対策本部に助言するために、2月14日に設置された。構成員については、座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長は尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長、その他構成員は医学関係者が10人ほどいる。

 構成員は一応決まっているが、座長は、必要に応じその他関係者の出席を求めることができるので、メンバー限定というわけではない。この専門家会議の役割はあくまで本部に助言することであり、意思決定機関ではない。

 一部のマスコミ報道は、対策本部が意思決定機関、専門家会議は助言機関という役割分担を明確に書かずに、専門家会議があたかも意思決定機関であるかのように書いてきた。「専門家会議は議事録で発言者が特定されていない」「対策本部は専門家会議の助言内容そのままでなく、一部書き換えている」などと批判しているのもその証拠だ。

 助言機関では、発言者の特定はそれほど意味はない。むしろ特定の発言者が個別業種の休業を助言した場合、関係業界から突き上げをくらうなどの不利益を被ることもある。マスコミは取材したいからといって、発言者が特定されていないことを一方的に批判するのは筋違いだ。

コロナ対策専門家会議
また、専門家会議は助言機関に過ぎないので、対策本部の決定事項と一言一句同じになるはずがない。極端に言えば、意思決定権者は助言を無視しても構わない。ただし、意思決定にはそれなりの責任が伴うだけだ。

 一部マスコミが専門家会議をあたかも意思決定機関のように報道し、その誤解の上で、コロナ対策を一部野党が批判するという「共同作業」のやり口も見え透いている。

 そもそも専門家会議は、メンバー限定ではないので、廃止し衣替えとせずに、メンバーを適宜入れ替えて運営する手もあったはずだ。

 西村経済再生相は専門家会議を「廃止」と言わずに、もう少し狡猾(こうかつ)に対応するべきだった。専門家会議の位置づけは、対策本部の一存でどうにでもできるので、廃止という手順が間違っているとは思わないが、一部マスコミの術中にはまった感がある。

 そもそも助言者を選ぶのは、意思決定権者なので、衣替えがあっても今後のコロナ対策に影響があるとも思えない。安倍晋三政権のコロナ対策の責任が大きいことにも変わりはない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】意思決定等の基本原則を知らずにモノを考えるのは、時間の無駄、人生の無駄(゚д゚)!

ドラッカー氏の意思決定に関する原則に関しては、このブログにも何度か掲載してきました。この意思決定の原則を知らない人は、専門家会議の意味や意義などについて何も理解していないのかもしれません。

経営学の大家ドラッカーは意思決定について以下のように語っています。
成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)
ドラッカーは、意思決定の過程では意見の不一致が必要だといいます。理由は三つあります。
ドラッカーの意思決定に関する原理・原則のマインド・マップです
クリックすると拡大してします

第一に、組織の囚人になることを防ぐためです。組織では、あらゆる者が、あらゆる決定から何かを得ようとします。特別のものを欲し、善意の下に、都合のよい決定を得ようとするのです。

そのようなことでは、小さな利害だけで決定が行なわれることになります。問題の理解抜きでのそのような決定の仕方は、きわめて危険です。

政権の幹部が政局などだけを中心に、コロナ対策を考えていては大変なことになります。だから、そのようなことにならないために、経験内で多くの人がコロナ対策に関与するのです。それだけでも、偏ることがあるので、専門家会議を設けて、これも異なる見方をする専門家複数で協議をしてもらい、政局などの利害だけで決定が行われることを防ぐのです。

感染症の専門家が同時に意思決定を行うのも間違いです。これは、会社などの組織を例にとってみればわかります。普通の会社では、財務部長や経理部長が、営業部長が意思決定を行うということはありません。会社の最高意思決定機関は、取締役会です。

専門家会議がコロナ対策の意思決定を行うということは、会社で言えば、財務部長や経理部長、営業部長が会社の意思決定を行うのに等しいです。部長クラスは、決められた会社の方針に従い、それぞれ専門の立場から、専門分野に関係する部分を専門家の分野から方法を選ぶことくらいです。会社の方針は定められません。

しかし、これと同じようなことをして大失敗したのが、財務省であり日銀です。財務も金融政策も本来は政府がその方針を定め、その方針に従い、財務省や日銀が専門家的な立場から、方法を選ぶというのが、正しいあり方です。

財務省は国税庁という実動部隊等と、企画をする部隊が一体となっている、不思議な組織です。会社で言えば営業部と、財務部が一緒になったような異様な組織です。企業ではありえない組織です。このまま、この組織を放置しておけば、さらに腐敗するのは目に見えています。

本来の正しいあり方から逸脱したため、日本経済の実情とは関係なし、財務省は緊縮財政を、日銀は金融引き締めを繰り返し、平成年間のほとんどの期間日本はデフレでした。

コロナ対策も、専門家会議が意思決定するか実質それに近いことをしていたら、とんでもないことになったかもしれません。

第二に、選択肢、つまり代案を得るためです。決定には、常に間違う危険が伴います。

最初から間違っていることもあれば、状況の変化によって間違うこともあります。決定のプロセスにおいて他の選択肢を考えてあれば、次に頼るべきものとして、十分に考えたもの、検討ずみのもの、理解ずみのものを持つことができます。

逆に、全員一致で決めていたのでは、その決められたものしか案がないことになります。時の政権が決めたとすれば、そうなりがちです。それ以外にも代替案を得るためにも、専門家会議が必要なのです。専門家会議があるからこそ、政府は常に複数代替案を持ちながら、ことにあたることができたのです。

逆に、専門家会議と、政府の意見が何から何まで、同じであれば、専門家会議を設置した意味はありません。

第三に、想像力を刺激するためです。理論づけられ、検討し尽くされ、かつ裏づけられている反対意見こそ、想像力にとって最も効果的な刺激剤となります。すばらしい案も生まれます。

明らかに間違った結論に達している者は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいているに違いないと考えなければなりません。

もし、彼の意見が知的かつ合理的であるとするならば、彼はどのような現実を見ているのかを考えなければならないです。意見の不一致こそが宝の山です。意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれます。

いかなる問題であれ、意見の不一致が皆無などということは、奇跡です。いわんや、四六時中奇跡を起こしているなどありえないと心得るべきです。それでは、社長が一人いればよいことになります。政府なら、総理大臣が一人いればよいことになります。

後で不祥事となった行動の多くが、ろくに議論もされずに決められていることは偶然ではないのです。
成果をあげる者は、何よりも問題の理解に関心をもつ。(『経営者の条件)
問題の理解をするためにも、専門家会議は必要だったのです。そうして、専門家会議があるからこそ、政府も刺激を受け、様々な案を考えることができたのです。

そうして、結果が全てです。米国は、本日は1日で50万人を超える感染者を出しています。これには、米国の特殊事情もあるでしょうが、どう考えてみても、米国の対策は失敗したとしか言えません。 日本は、成功したと言って良いです。

そうして、専門家会議は、責任負う組織ではありません。日本のコロナ感染対策が成功しようが、失敗しようが、専門家会議自体は責任を持つものではありません。責任はあくまで政府にあります。

新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議について、西村経済再生担当大臣は記者会見で、廃止したうえで、メンバーを拡充するなどして、政府内に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として改めて設置する考えを明らかにしています。

この分科会も、従来の専門家会議と同じ役割を果たすのです。第二波、第三波の到来を恐る人もいるようですが、第一波の到来により、かなりの新たな知見が得られています。油断してはいけないですが、それにしても、私自身は第二波、三波が、第一波をおおきく上回ることはないと思います。

このような意思決定の本質を知っていれば、上の記事で高橋洋一が語っているように、「安倍晋三政権のコロナ対策の責任が大きいことにも変わりはない」ことなど理解できそうですが、マスコミなどは違うようです。

安倍総理は、今ままでもこれからも、日本政府のコロナ対策の最高責任者
とにかく、物を知らなさ過ぎです。意思決定でも、コミュニケーションにもマネジメントには、原則があります、それもあらゆる組織に当てはまる基本原則があります。日本の政治家や、ジャーナリストには、この原則を知らずに、その時々の目の前のことを浅く、軽く考えて、直感的に判断をする人があまり多いようです。これは、はっきり言います。時間と、人生の無駄です。

マネジメントや、経済、軍事に関しても、先達は様々なこと考え、その上で原理・原則としてまとめています。そうして、社会に起きているほとんどの現象が、その原理・原則に当てはまるものです。当てはまらないものは、ほんのわずかです。それも知らずに、何でも最初から自分で考え、原理・原則から離れた、自分だけの考えで、人に意見したりするのは、本人にとっても、意見された人にとっても、時間と人生の無駄です。

原理原則に当てはまらないことを見出した人で、自分の頭で考えて、それを解決できれば、それは、おそらくノーベル賞を受賞できるかもしれません。そこまでいかなくても、本格的な研究の端緒となり、新たな学問や、科学の誕生になるかもしれません。ある事象や、出来事について、自分の頭だけで考えるということはそういうことです。

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2020年2月15日土曜日

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か ―【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か 

西村康稔経済再生相

 17日に公表される昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値はマイナス成長になるとの見方が出ている。西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」を理由に掲げているが、消費増税を理由にしないのは不可解だ。

 西村再生相は、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要はそんなに大きくはなかったし、その後の落ち込みもそんなに大きくないとみていたが、10月から12月の期間は台風や暖冬の影響がある」と述べたという。

 1月にスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が、「日本経済は昨年第4四半期にマイナス成長に陥った。これは主に2回の台風被害に見舞われたことに起因する」と発言している。

 昨年10~12月期の落ち込みは、各種の経済指標で裏付けられている。総務省が公表している家計調査の2人以上世帯の実質消費支出について、昨年10月で前年同月比5・1%減、11月で2・0%減だった。業界団体の12月のデータでは、全国食品スーパー売上高(既存店ベース)で前年同月比1・0%減、全国コンビニエンスストア売上高(既存店ベース)で前年同月比0・3%減となっている。日銀が発表している消費活動指数でみても消費の落ち込みは明らかだ。

 これらの要因は台風被害ではなく、消費増税であることは誰の目にも明らかであろう。
 経済産業省が発表している鉱工業生産指数の地域別数字でみても、各地域ともに低下している。台風の影響が比較的少なかった近畿も、関東と同じように低下しているので、やはり経済減速を台風のせいとはできないだろう。

 これまで、消費増税は創設時を含めて4回ある。税率は1989年4月に3%、97年4月に5%、2014年4月に8%、19年10月に10%となった。

 このうち89年4月は、個別物品税廃止との引き換えだったので、悪影響は少なかった。しかもバブル景気の最中なので、問題にならなかった。しかし、その後の消費増税は景気に悪いタイミングであるとともに、ネット(純額)での増税だったので、予想通り景気は悪化した。

 こうした予想は、消費増税により可処分所得が減少し消費が落ち込むという標準的な経済学を理解していれば容易に分かることだが、財務省とその走狗(そうく)のエコノミストは「影響は軽微だ」と口をそろえる。消費の減少は「増税前の駆け込み需要の反動減」という説明もなされるが、一面的でしかない。本質的には可処分所得減少による消費の落ち込みであるが、それは説明されない。

 前述の西村再生相の説明も、駆け込み需要の反動減はないというもので、可処分所得減少による消費落ち込みの説明を避けている。

 なぜ、西村再生相や黒田総裁がこのような発言をするのだろうか。筆者の答えは、消費増税の影響を隠したい財務省やマスコミへの「忖度(そんたく)」というものだ。これまでの消費増税と同様に、景気の悪影響があっても、別の理由にされてしまうのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長になったのは、減税したためであるということは明らかです。それを台風と暖冬のせいにするとは、全く笑止千万と言わざるを得ません。

内閣府が昨年11月11日発表した10月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが前月から10.0ポイントの大幅低下となりました。その原因として、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとしています。

さすがに、消費税増税の直後だったので、この落ち込みの原因として、台風だけにするにはどう考えても無理があるので、台風以外に消費税増税もあげたのでしょう。

しかし、今回の昨年10~12月期の国内総生産(GDP)のマイナスなるとの見方が出関して西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」だけを理由に掲げました。

しかしおそらく、このような言い訳をするのは十分に予想できました。ただ、何を理由とするのかは、わかりませんでしたが、「台風と暖冬」とは思いもよりませんでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

この記事では、香港の個人消費を例にあげて、まともというか、デフレから脱しきれていないうちに消費税をあげるというような馬鹿マネさえしなければ、SARSの蔓延のような事態があっても、それが終息すると消費が飛躍的に伸びることを主張しています。

であれば、台風や暖冬などがあったにしても、元々それによる被害は日本全体からすればわずかであり、しかも台風などの被害があっても、被災地においては、その後は様々な消費が急激に伸びるはずであり、それが景気に及ぼす影響はほとんど相殺されるはずです。

では、他に何が原因があるかといえば、やはり消費税以外にないのです。

この記事では、台風どころではなく、大東亜戦争のような大きな戦争ですら、経済統計を年度ベースでみていると、後世の歴史家は、大戦争があったことを気づかないかもしれないということを述べました。以下に簡単にまとめてそのことを再掲載します。

これは、日本でも欧州でもそうだったのですが、戦時中の末期に近い頃ですから、欧州でも日本ても、爆撃を受けようが何があろうが、戦争遂行のために兵器などを生産し続けるため、戦争中のGDPは、いかに生活物資が不足し国民が耐乏生活を送っていたとしてもさほど低くはなかったのです。

そうして、戦争が集結すると、戦争に勝とうが負けようが、今度は国民生活に必要な、民需が逼迫して、その解消に向けての大増産が起こり、年ベースの経済統計では、戦争があった年も、なかった年でも、GDPにさほど違いはなく、ほんの少し減ったくらいにしか見えないのです。

だからこそ、第二次世界大戦中の経済統計をみていても、後世の歴史家はそれだけみている限りでは、戦争があったことに気が付かないかもしれないのです。

日本もそのような状態だったのです。実際統計上でみれば、日本は戦争をしても直後には戦争開始時の国富の70%もが温存されていたのです。

ちなみに、国富は再生産可能な生産資産である「在庫」、「有形固定資産(住宅・建物、構築物、機械・設備、耐久消費財など)」、「無形固定資産(コンピュータソフトウェア)」と、「非生産資産(土地、地下資源、漁場など)」を足し合わせたものに「対外純資産」を加減して求められる。国民総資産から総負債を差し引いたものと同じとなります。日本の正味資産としての国富は、この10年ほど概ね3000兆円前後で推移しています。

良く、終戦直後には、日本は全部が焼け野が原になり、すべてがゼロになり、ゼロからのスタートだった等という人もいますが、統計上からみれば、日本の中核都市などは確かに焼けのヶ原になりましたが、地方都市やその他の町や村には、生産設備や田園などが、残り、そこからの出発だったのです。

だから、他のアジアの諸国などから比較すれば、はるかに有利なスタートを切ることができたのです。

大戦争のときですら、このような状況なのですから、ましてや台風や暖冬の被害など微々たるものであり、これがマイナス成長の原因とするのは、甚だしい間違いです。その原因は、はっきりしています。それは、消費増税による個人消費の落ち込みです。

戦争、そうして台風や暖冬などで、消費が落ち込んだとしても、それは一過性のものであり、戦争や台風・暖冬などで、被害があったにしても、それはすぐに回復します。そうして、年ベースでみるとさほどではないのです。

しかし、デフレから回復しきっていない時期での消費増税など、経済政策を間違ってしまえば、その影響は甚大であり、GDPの中で60%以上を占める個人消費を減衰させ、結果としてGDPが落ち込むのです。

そうして、日本ではあがった消費税は二度と下がることはないという固定観念もあり、戦争、新型肺炎などよりさらに悪影響があり、なかなか消費は回復しないのです。

現状の日本にとっては、戦争や新型肺炎よりも、消費税の増税のほうが悪影響をもたらすのです。

ちなみに、先に日本では、戦争直後でも戦前の国富の70%が温存されていて、他のアジア諸国などと比較すれば、ゼロあるいはマイナスからのスタートではなく、かなり有利なスタートきることができたと述べました。

ただし、これには日本ならではの特殊事情がありました。それは、旧軍部等による様々な物資の隠匿でした。旧軍部は、終戦直前に、金塊、医療品、食料、燃料、衣料品など莫大な物資を隠匿したのです。これは、当然のことながら、70%の国富に含まれていました。

この物資が国民すべてに、終戦直後から回されていれば、多くの国民は国富70%からのスタートを実感できたでしょう。しかし、そうではなかったため、終戦直後からしばらく、多くの国民は、耐乏どころか衣食住の食でする満足に得られない窮乏生活を強いられたため、ゼロからのスタートというイメージが定着したのです。

物資の隠匿に、多くの軍人も関わったとみられますが、それらは単に命令に従っただけで、多くは旧陸軍省・旧海軍省の高官、すなわち官僚が実行したものです。このあたりは、闇に埋もれてわからないことも多いようですが、是非とも明らかにして欲しいものです。

      NHKスペシャル「東京ブラックホール」で紹介された、1948年
      米軍に発見された日本軍の隠匿物資の夥しい量の金塊

そうして、この記事でも主張したのですが、隠匿という点では、昔の官僚も現在の官僚も変わりません。現在の財務省の官僚は、物資を隠匿はしていませんが、様々な形で資金を隠匿しています。それこそ、いっとき盛んにいわれていた財務省の埋蔵金というものです。

これは、いわゆる特別会計という複雑怪奇で一般の人にはなかなか理解できない、巨大な会計の中に隠蔽されていたりします。それは、戦時中の隠匿物資のように、一般人には見つからないように隠匿されています。

しかし、それは、終戦直後に大多数の国民が窮乏生活を送っていたときに、国富が70%もあったというのと同じく、現在でも統計資料を見ると理解できます。

まずは、政府の負債です。これについては、財務省は1000兆円などとしていますが、これは負債だけをみているわけであり、一方では日本政府はかなりの資産を持っています。これを相殺すると、日本政府の借金はさほどではありません。米英よりも低い水準です。

これについては、このブログにも何度が詳細をのべてきました。詳細を知りたいかたは、その記事をごらんになるか、高橋洋一氏、田中秀臣氏などの記事をご覧になってください。

さらに、もう一つの隠匿手段があります。それは、統合政府ベースの見方です。統合政府とは、政府と日銀などを一つにした見方です。民間企業でいうと、連結決算など連結ペースでみる見方です。

現在では、大企業は連結決算を作成し、公開する義務を追っているのですが、なぜか政府に関する統計では、連結ベースではだされていません。

しかし、統合政府ベースでみると、政府による借金は近年現象傾向にあり、2018年あたりからは、赤字どころか黒字になっているくらいです。

しかし、財務省はそのことは表に出さず、それどころは、政府の資産についても触れず、政府の借金はほとんど問題ないのに、あるように装って、消費税増税などを実行しています。

まさに、戦中の軍部の官僚が夥しい物資を隠匿していたのとそっくりです。結局日本の役人の腐った根性は、戦争中も今も変わらないようです。

日本の一番の問題は、このような腐った官僚の根性を叩き直すこともなく、放置しておいたということかもしれません。

日本の政治家もこのあたりに、そろそろ手を付けてないと、日本はとんでもないことになりそうです。

財務省の走狗?

財務省とその走狗達は、昨年の段階では景気の落ち込みは、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとせざるを得なかったものを、現時点では、西村再生相や黒田総裁が台風のせいとか、暖冬のせいだけにしたのと同じように、今後も続く景気の落ち込み増税とは全く関係ないとし、新型肺炎だけのせいだとするでしょう。

このままでは、いつまでたっても日本ではまともな機動的な財政政策ができなくなります。

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新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか―【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

2019年9月13日金曜日

韓国のタリバン、文大統領を一刀両断―【私の論評】経済的に無意味になり、安全保障上では空き地になる韓国、対処法は簡単!無視(゚д゚)!

韓国のタリバン、文大統領を一刀両断

イェン・ア・ジョ氏


曺国氏を法務長官にしたいわけ

「韓国のタリバン」とまで言われている反日原理主義者、文在寅大統領が不正疑惑だらけの腹心曺国(チョ・グク)前民情首席補佐官*1を予定通り、法務長官に任命した。

*1=民情首席補佐官とは、大統領の側近中の側近が就くポスト。国内の情報・世論対策、国政全般の情報活動総括、政府高官の監督・司法警察組織の統括で大統領を直接補佐する。文在寅氏もかって廬武鉉大統領の民情首席補佐官だった。

 米国で言えば、不正疑惑の大統領首席補佐官だった人物を「司法の番人」にしたようなものだ。

 不正疑惑だらけのドナルド・トランプ大統領には慣れっこになっている米国民にとっても「文在寅とかいう容共大統領は何を考えているのか」という反応だ。

 ワシントンの「コリア・ハンド」(韓国通)はこう見ている。

 「この人事は文在寅氏にとっては最大の賭けだ。失敗すれば政権は崩壊する。政権の終わりの始まりになるかもしれない」

 なぜ、文在寅大統領が曺国氏の任命に固執したか。この韓国通は続ける。
曺国(チョゴク)氏

 「歴代大統領は、絶対的権限を持った検察を使って反対政党の前任者を刑務所に送り込んできた。汚職や収賄は韓国社会ではつきもの。誰でも叩けば埃は出る」

  「現職大統領が検察に目配りすれば、大統領経験者でも刑務所送りにできる」

 「文在寅政権の後に保守政権が出てくれば、文在寅氏も同じような目に遭うのは必至。それを防ぐには法律で絶対的権限を持つ検察当局の権限を弱める司法改革が必要になってくる」

 「司法改革を実現するキーパーソンが腹心の曺国氏。不正疑惑に遭おうが遭うまいがどうしても法務長官につかせたかったのだろう」

 「文在寅大統領は、この賭けに勝っても負けてもそう長くはなくなった」

文氏と共に一掃される「386世代」

 かってハーバード大学客員研究員だったこともある朝鮮情勢に詳しい研究者は筆者にこう指摘している。
 「文在寅政権は、左翼・反日・反米の『386世代』*2が牛耳る政権だということを忘れてはならない。彼らは青瓦台で文大統領、李洛淵・国務総理、蘆英敏・大統領秘書室長の周囲を固めている」

 「南北に分かれた民族同胞が一つになる、つまり南北朝鮮統一こそが最優先課題だと考えている」
 「北朝鮮の核廃絶には熱心ではない。文大統領が北朝鮮の非核化よりも南北の関係改善に重きを置いているのはそのためだ」

 「南北朝鮮統一が実現できるのであれば、北の核の存続も厭わない。それどころか『核つき南北統一朝鮮』をも目論んでいるかもしれない」

*2=全斗煥政権を倒す原動力となった民主化運動若年層。1960年代生まれで当時30代、80年代には大学生だった世代のこと。90年代にできた造語。当時売れていたインテルの32ビットマイクロプロセッサー「Intel 386」をもじっている。

https://www.straitstimes.com/asia/east-asia/moon-jae-in-should-listen-to-the-2030-generation-the-korea-herald-columnist

http://www.koreatimes.co.kr/www/opinion/2019/07/164_272924.html

 裏を返せば、この「386世代」が去らない限り、ここまで拗れた日韓関係の改善はあり得ないということだ。反日のみならず反米志向は今後ますます強まっていくだろう。

次期政権で美人学者が中枢を担う?

 そうした中で今米国のアジア問題専門家の間で注目されている論文がある。

 この論文を読んだ元米外交官の一人は、「彼女は文在寅が政権を去った後には韓国政府の中枢で働く存在になる」とまで褒めちぎっている。

 論文のタイトルは『Moon's Failed Balancing Act』(失敗した文在寅のバランス政策)

http://www.theasanforum.org/moons-failed-balancing-act/

 執筆者は在米のイエン・ア・ジョ氏。現在コーネル大学博士号課程にいる若手女性国際政治学者だ。

 写真をご覧になればお分かりの通り、なかなかチャーミングな女性だ。

 オランダの名門ユトレッチ大学を経て、オックスフォード大学院で国際政治学で修士号を取得、コーネル大学大学院に進んでいる。

 これまで韓国国連代表部軍縮担当顧問などを歴任。現在は峨山政策研究所*3発行の英文『峨山フォーラム』副編集長を兼務している。英語が堪能なイエン氏は編集責任を任される一方、随時健筆を振るっている。

*3=2008年に韓国の現代財閥を築いた鄭周英氏の6男で現代重工業の大株主、鄭夢準氏が設立した韓国有数の超党派シンクタンク。鄭夢準氏は元国会議員。ジョンズ・ホプキンズ大学で国際政治学博士号を取得。

 イエン氏は韓国生まれだが、韓国では高等教育を受けていないようだ。略歴には英語と朝鮮語のバイリンガル、フランス語は日常会話ができると記されている。

 この論文は6600字。公表されたのは8月28日だ。

 韓国情報と米国情報を読み解き、しかもソウルではなく、ニューヨーク・イサカ(コーネル大学所在地)で米研究者たちの助言を得て書き上げた論文は「岡目八目的」視点に満ちあふれている。

 文在寅大統領の二国間、多国間外交の現状を記述する中で、韓国が外交的チャレンジにどう対処するか――進歩派(与党)と保守派(野党)との分裂が拡大している点を強調している。

 与党と野党は、米朝関係、日韓関係、米中貿易戦争でことごとく対立している。イエン氏は、日韓関係を巡る韓国内分裂についてこう分析している。

 「今韓国内で起こっている論争は、なぜ日韓関係はここまでこじれてしまったのか、誰の責任なのか、そしていかに対処するかを巡っての論争だ。保守派の主張はこうだ」

 「日韓関係の亀裂を生じさせた責任は、状況に効果的に対処できず、日本に貿易面で攻勢を仕かける引き金を引かせた文政権にある」

 「その理由ははっきりした計略も計画もないままに、警戒すべき兆候を無視し、戦略的には何らの対処策も講じなかった」

 「一方、進歩派の主張はこうだ」

 「文政権が非論理的で非生産的だったからこうした現状を招いたという批判は全く当たらない。悪いのは日本だ」

 「韓国の最高裁判決をタテに貿易面で報復措置に出た。日本の報復措置は分別ある外交においては非民主的戦術以外の何物でもない」

 現状打開に向けて韓国はどう行動すべきか。イエン氏はここでも韓国内は分裂していると指摘している。

 「保守派は『目には目を的な報復行為は避け、米国が仲介する外交的決着を進めるべきだ』と主張している。一方、進歩派は米国の仲介には難色を示している」

 「米国の仲介は韓国にとっては好ましい結果を生みそうにないという理由からだ」

 「進歩派はこう見ている」

 「日米は今や戦略的諸問題では米韓とは比較にならないほど近い関係にある。米国が打ち出しているインド太平洋戦略構想、対北朝鮮制裁、中国大企業ファーウェイ問題でも日米は完全に一致している」

「それに比べて韓国はこの3点では米国の主張を受け入れるのには消極的だ」

脱線した「ツートラック戦略」

 イエン氏は文在寅大統領がなぜ反日スタンスをとり続けているかについてこう指摘している。

 「文在寅大統領は当初、対日政策では『ツートラック戦略』の実施を考えていた。つまり、歴史認識問題と通商・安全保障問題とを分けて行おうとした」

 「だが前政権が日本政府との間に交わした慰安婦合意を精査するよう命じたところからおかしくなってきた」

 「合意には瑕疵があると結論づけた。同合意の修正や日本との再交渉には言及しなかったが、結局同合意で設置された半官半民の『和解・いやし財団』は解散させてしまった」

 「それに加えて文在寅大統領は徴用工問題の再検討を言い出した。安倍晋三政権はすべて解決済みの問題だと反発。その結果、歴史認識問題は貿易問題と絡み合ってしまった」

 「文在寅大統領の刺々しいトリックは、植民地時代の行動を悔い改めようとしない日本の強情さに対する韓国民の反発に火をつけてしまった」

 「世論調査では韓国民の50%が日本は友好国ではないと答え、80%が安倍首相を嫌いだと言い、75%が日本人は信用できないと答えた。82%が日韓関係は悪いと答えた」

 イエン氏はこうした韓国内の状況を詳細に記述。これを受けて韓国政府がどう対応したかに触れている。

 「文在寅政権は日本の動きに対抗するため国力を総動員した。だが世界貿易機関(WTO)や東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大首脳会議などの場で対日批判をしたが他の国々は韓国の主張を支持しなかった」

 「米国に仲介役を要請したが米国は日韓のいざこざには関心を示そうとしなかった」

米中を天秤にかけた外交

 イエン氏によれば、文在寅大統領の外交方針は、「Balanced Diplomacy」(均衡の取れた外交)だ。米国との同盟関係を堅持しつつ、中国に接近する外交である。

 「文在寅大統領は2017年にこう発言している」

 「韓国にとって中国との関係は、ただ単に経済協力面だけではなく、戦略的協力面でもより重要になってきた。北朝鮮の核を平和裏に廃棄するうえで中国との関係は重要だからだ。そのため我が政権は米中との均衡のとれた外交関係を追求するのだ」

 「ところが2019年の6月から8月にかけての2か月間は、韓国にとっては全身麻痺の混乱状態に陥った」

 「中国の習近平国家主席は北朝鮮の平壌を訪問し、金正日朝鮮労働党委員長が喉から手が出るほど欲しがっていた外交的お墨付きを与えた。文在寅大統領の再度の訪韓要請は断っているにもかかわらずだ」

 「トランプ大統領は板門店で第3回目の会談を行ったが、両首脳はそこにいた文在寅大統領を無視、その後、金正恩委員長は文大統領を公然と非難している」

 「安倍首相は大阪で開かれたG20(金融・世界経済に関する首脳会合)出席のため訪日した文大統領との首脳会談を拒否。日本は韓国の半導体製造に不可欠な3品目の対韓輸出管理体制を強化した」

 「折からの米中貿易戦争のあおりを受けて米中からの対韓プレッシャーは強まり、米中は韓国にどちらにつくかと迫ってきている」

 「まさに文在寅大統領を取り巻く国際環境は、日韓関係のみならず、米中との関係でも厳しさを増している」

 「文在寅大統領の「均衡のとれた外交」が言うは易く、行うは難しであることを実証してしまった」

 「警戒警報を見落としていた」

 だが、文在寅大統領が辞めるとすれば、この「均衡のとれた外交」が失敗したからではない。曺国人事への国民世論に火がつき、反文在寅機運が燎原の火のように韓国全土に広がった時だろう。

 それを受けて来年4月の議会選挙で与党が惨敗した時かもしれない。弾劾の動きも出てくるかもしれない。

 その時、政権の座に返り咲いた保守党は「均衡のとれた外交」に代わるどのような外交を展開するのか。

 イエン氏は新政権の出方に直接、言及してはいない。しかし、現状を保守派の政治家や識者がどう見ているかを指摘することで文在寅大統領政権に取って代わる保守党がどのような外交を展開するかを示唆している。

 「保守派もまた日本政府の対応が均衡を欠く(Disproportionate)であるとは見ている。だが保守派は、文政権は日本に貿易面で引き金を引くのを止めさせるだけの効果的措置を採るのを怠った、と指摘している」

 「対日関係の悪化状況を示す警戒警報を無視、状況が悪化し、取り返しのつかない事態になるのを放置していたわけだ」

 日韓関係を正常に戻すために保守派はどうするか。

 「保守派はいかなる形式による日韓同士の『売り言葉に買い言葉』(Tit-for-tat)には反対だ。やはり米国に仲介役を演じてもらう外交的解決しかないと見ている」

 「保守派は米国の仲介が韓国にとって都合の良いものではないかもしれない。今や日本と米国との距離は韓国とは比べ物にならないほど親密だからだ」

 「米国に(公正な)仲介役を頼むうえで韓国に必要なことは、例えば今注目を集めているホルムズ海峡を航行する船舶を守る有志連合に参加し、米国の同盟国であることを強調することだ」

 日韓関係を正常化させるにはやはり米国の仲介役、つまり助けが必要。そのためには米国との同盟国をここで明確に示せ――が保守党の外交方針というわけだ。

 つまり「均衡のとれた外交」から「米韓同盟強化」への転換ということになる。

 だが、米中を天秤にかける文在寅大統領の「均衡の取れた外交」「朝鮮民族第一主義」の熱に酔いしれてきた韓国の「衆愚」がおいそれと米韓同盟強化についていけるかどうか。米韓日三角同盟に回帰できるかどうか。

 このあたりは予見しがたい。いずれにせよ、イエン氏の論文が米国のアジア通に注目されている理由が分かるような気がする。


筆者:高濱 賛
特に、戦略的な分析という点からは、物足りない感じがしました。なぜそのように私が感じるのかといえば、世界屈指の戦略家であるルトワック氏の著書『自滅する中国』(2012年出版)を読んでいたからだと思います。

エドワード・ルトワック氏
●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。 
●彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。 
●韓国における中国と中国人への尊敬の念は明の時代にまでさかのぼることができる。その一番の担い手は、知的エリートとしての官僚である両班だ。 
●面白いことに、中国文化の影響が非難されるのは北朝鮮。北では漢字は事実上禁止され、ハングルの使用だけが許されているほど。 
●韓国では教育水準が高ければ高いほど反米の傾向が強まる。しかも最近はアメリカが衰退していると考えられているために、中国の重要性のほうが相対的に高まっている。個人で中国でビジネスを行っている人が多いという事情もある。 
●極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても(死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。 
●つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する従属者となってしまっている。米国には全面戦争への抑止力、そして中国には一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。 
●ところがこれは、米国にとって満足できる状況ではない。韓国を北朝鮮から庇護するコストとリスクを、米国は独力で背負わなければならないからだ。 
●その上、韓国への影響力は中国と折半しなければならない。中国は北朝鮮への統制を中止すると脅かすことで、常に韓国政府を締め上げることができるからだ。今のところ韓国が中国に声を上げることはない。 
●米韓同盟を形成しているものが何であれ、そこには共通の「価値観」は含まれていない。なぜなら韓国はダライラマの入国を中国に気兼ねして堂々とビザ発給を拒否しているからだ。 
●現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員となることを模索しているのかもしれない。韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。 
●このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている。ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。
いかがでしょう。このルトワックの分析の要点をさらに簡潔にまとめれば、 
1.米国に従属している韓国は、同時に中国にもすり寄っていこうとしている。 
2.その大きな理由は二つ:歴史的・文化的な面での尊敬と、ビジネスのチャンスだ。 
3.安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして全面戦争の抑止は米国に依存。 
4.その責任逃れの憂さ晴らしとして、日本にたいする情熱的な敵対心を展開。

まず、非核化した北朝鮮がアメリカの戦略的な保護の下で、経済的に発展するというシナリオ、いわゆる「ベトナム・モデル」です。この「北朝鮮のベトナム化」は、日本にとっても最善の選択肢といえます。

次の選択肢は、意外にも「現状維持」だといいます。金正恩の独裁体制が続き、もし米国による先制攻撃などによって強制的な非核化が実現しても、ダメージを受けた北朝鮮の政権が生き残る可能性はあります。それでも、第三の道、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島が中国の支配下に入るよりは遥かにマシなのです。

北朝鮮の核兵器は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。ところが、戦略面では日本にとってポジティブな要素なのです。なぜなら、それが北朝鮮の中国からの戦略的な独立を保障し、中国による朝鮮半島の支配を防いでいるからです。北京が平壌を制御できる状態になれば、韓国も支配下にされる可能性があります。

なぜなら韓国内には中国の冊封体制を受け入れたい勢力があるからです。換言すれば、平壌は中国から朝鮮半島の独立を実際に保障しているのですが、韓国政府、文在寅はその独立にまったく貢献していません。日本にとって核武装した北朝鮮は最悪ですが、中国に支配された朝鮮半島は、さらに最悪の安全保障上の脅威となります。

ソウルは一度敵の手に落ちたのだか、米国再三の要求にもかかわらす、未だに移転していない

ここで問題となるのは、韓国という国の戦略的な脆弱さです。ソウルは北との国境線である非武装地帯から近く、対空防衛システムや防空シェルターなども十分ではないという脆弱性を晒しており、韓国の軍隊は自国をまったく守れない状態にありました。というのが40年前の状況でしたが、実は今も全く同じなのです。

政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。

40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく在韓米軍司令官にあります。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けています。さらに韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは全く見せていません。

ルトワック氏は韓国を強く批判し、次のように述べています。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
もう、韓国の未来などはっきりしすぎています。韓国は元々の基本方針である、「小中華」の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員となることを模索しつづけるのでしょうが、それは大失敗に終わります。これは、文在寅の失敗というよりは、韓国の失敗とみるべきでしょう。

そうして、韓国のこの基本的なスタンスは、文在寅が大統領を辞任したとしても、ほとんど変わらないでしょう。無論、実際韓国という国は、朝鮮戦争終了時の時から何も変わっていません。その国が政権が変わったからといって突然変わるということはありません。

最悪のシナリオとしては、このブログにも過去に何度か掲載したように在韓米軍が撤退する間際に、米国とその同盟国による韓国の経済焦土化が実施され、韓国は経済的にも安全保障的にも無意味な存在となりでしょう。

そうなると、いきなり軍事バランスが崩れると考える人もいるでしょう。ただ、そうはならないでしょう。韓国は日米の信頼を失っているわけですが、それでは中国や北朝鮮の信頼を得られかといえば、そんなことはないからです。

将来の韓国は、経済的には取るに足らない国となり、安全保障的には空き地のような存在になるでしょう。北朝鮮は38度線の防備を固め、韓国人難民などが越境させないようにするでしょう。

金王朝を継続させることを最大の任務と考える、金正恩はチュチェ思想とは無縁の韓国人が北朝鮮領内に入ることは到底許容できません。彼の頭の中には、当面南北統一などの考えはないのです。

それでは、一時でも、文在寅の南北統一呼びかけに関心を示したかのように振る舞ったかといえば、まずは、米国との間をとりもってほしかったのと、継続する制裁をなんとか終わりにするか、韓国による制裁破りを期待したからです。

しかし、金正恩は自ら、米国と直接交渉できるようになったので、米国交渉して、金王朝の継続をトランプに認めさせ、そのひきかえとして、制裁をやめてもらうなどのことは自分で直接交渉できるわけで、韓国に頼る必要など全くなくなったのです。

こうなると、中国に有利で、中国はすぐに朝鮮半島一帯を傘下におさめてしまうという人もいるかもしれません。

しかし、そうはならないでしょう。なぜなら金正恩は、中国の干渉を極度に嫌っているからです。結果として、北朝鮮ならびにその核は、中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いできましたし、韓国から在韓米軍が撤退したとしても、すぐ近くの日本で、在日米軍が目を光らせています。

さらに、金正恩は金王朝に何の敬意ももたない韓国人が北朝鮮領内に入るのを拒み続けるでしょう。この状況は変わらず、結局韓国は周辺国にとって、安全保障上の空き地のような存在になるでしょう。

最悪のシナリオになったにしても、現在の状況は変わらず、結局韓国だけが、経済的に取るに足りない国になり、安全保障的には空き地のような存在になってしまうでしょう。

だかこそ、日本にとって韓国はルトワック氏のいうように、無視すべき国なのです。

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2019年5月31日金曜日

【有本香の以毒制毒】「安倍・トランプ叩き」に興じる愚か者は無視! いまこそ“朝鮮半島危機”に備えよ―【私の論評】日米首脳会談で本当は相当追い詰められた中国・北・韓国(゚д゚)!

【有本香の以毒制毒】「安倍・トランプ叩き」に興じる愚か者は無視! いまこそ“朝鮮半島危機”に備えよ

安倍総理が米国でゴルフをしたときは、トランプ大統領がカートを運転したので、今回は安倍首相が
運転するのが当たり前だが、多くマスコミはトランプの運転手安倍総理ということで揶揄していた

 ドナルド・トランプ米大統領が訪日日程を終えて帰国してもまだ、「安倍晋三首相はトランプ氏を接待しすぎ」だ何だと騒ぐ一団がいる。

 やれ、「見返りはないのか」だの、「米国一辺倒の外交はいけない」だの、「安倍首相もトランプ氏も自分の選挙のことしか頭にない」だのと、ウルサイことウルサイこと。

 賢明な夕刊フジ読者の皆さまにおかれては、マスメディア、特にテレビ文化人らがたれ流すこの種の騒音の類いは丸っと無視していただきたく思う。

 その代わりに、いま私たちが本気で考えるべき重大事は何かといえば、最近ジリジリとステージが上がってきている「朝鮮半島危機」への備えだ。

 え? 安倍首相は日朝首脳会談に前向きだから、いま北朝鮮とは雪解けムードなんじゃないの? と思う人もいるかもしれない。だが、残念ながらその認識は誤っている。

 なぜか日本のマスメディアが熱心に取り上げないが、注目すべき情報を1つ挙げよう。

 今月9日、米司法省は対北朝鮮制裁に違反して同国から石炭を輸送しようとしたとして、北朝鮮の船舶を拿捕(だほ)したことを明らかにした。

 この船は北朝鮮への重機輸送にも利用されたもので、実は、昨年インドネシアによっても拿捕されたが、それを北朝鮮に返却されないよう、米国が押さえて自国領へ運んだとの報道である。

 最近の日本メディアでは、北朝鮮の困窮はよく伝えられるが、その裏でいま、米国が何をしているかはあまり伝えられない。そして、なぜか浅薄な反トランプ的見解ばかりが重宝されている。

 実際、米国は、北朝鮮の瀬取りや、制裁をかいくぐる術が巧妙化する動きを本気で阻止しようとしている。この米国の動きに国際社会も同調連携しているのだ。

 この連携の動きに反するかのような姿勢を見せているのが、本来、最も真剣な参加者であってよいはずの韓国と、日本の一部マスメディアである。このタイミングであえて、日米首脳の「蜜月」アピールを嘲笑し、日米離間を薦めるかのような報道に勤しむのは、どう見ても異常だ。

 最近、古い資料を漁っていて、たまさか25年前のある報道に目が留まった。1994年4月、ソウルで行われた南北協議の場で、北朝鮮代表が「ソウルが火の海になる可能性もある」と発言したことに対し、当時の柿澤弘治外相が「集団的自衛権の行使を違憲とする従来の憲法解釈を再検討する必要」に言及した件である。

 柿澤氏はこのとき、「従来の解釈で日米安保条約が機能するのか、有事に対応できるのか、国民的議論をしてほしい」と発言した。

 これを日本のメディアが袋だたきにして、外相の発言を撤回させた。

 もし25年前に、安全保障についての「国民的議論」ができていたら、いま日本はどうだっただろうか。考えると虚しいものがあるが、四半世紀前のこのメディアの罪はいまあらためて問われてしかるべきだろう。同時に、一部メディアの論調に流されて、自国の行くべき方向を見誤る愚を二度と繰り返さないよう、肝に銘ずるべきである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】日米首脳会談で本当は相当追い詰められた中国・北・韓国(゚д゚)!

米空母ワスプ1942年9月15日、大日本帝国海軍の伊19潜水艦の雷撃を受けて沈没しました。その名前を引き継いだのが現在の強襲揚陸艦ワスプです。

強襲揚陸艦「ワスプ」

一方加賀は加賀は、大日本帝国海軍の航空母艦。1942年6月のミッドウェー海戦で沈没。この空母加賀は真珠湾攻撃に参加した空母でもあります。その名前を引き継いだのが現在のヘリコプター搭載護衛艦「かが」です。

ヘリコプター搭載護衛艦「かが」

来日したトランプ米大統領は、27日米軍の強襲揚陸艦「ワスプ」で訓示を行いました。
米国時間27日はメモリアルデー(戦没者追悼記念日)にあたります。

戦没将兵追悼記念日とは、アメリカ合衆国の連邦政府の定めた祝日で、5月の最終月曜日です。この祝日は、兵役中に亡くなったアメリカ合衆国の男女を追悼する日です。最初は南北戦争で亡くなった北軍兵士を称えるために始められました。

第一次世界大戦の後、あらゆる戦争、軍事行動で亡くなったアメリカ合衆国の兵士を含むように拡大されました。無論、大東亜戦争でなくなった米軍将兵を称える日でもあります。

これに先立つ27日午前9時過ぎ、アメリカのドナルド・トランプ大統領(72才)は、天皇陛下即位後最初の国賓として、皇居・宮殿「竹の間」で会見を行いました。

さらに、ランプ米大統領は28日、神奈川県横須賀市で、安倍晋三首相とともに、海上自衛隊のいずも型護衛艦「かが」を視察しました。

様々な背景を知った上で、トランプ大統領のこれら一連の行動は何を意味するのかは、明らかです。それは、戦後はじめて、米国の大統領が大東亜戦争(米では太平洋戦争)の清算を日本で行ったということです。

そうして、これは大東亜戦争のわだかまりを捨てた日米関係のさらなる強化を意味します。そうして、これは中国・北・韓国にとって、大きな脅威です。

中国は貿易問題で米国と激しく対立しています。トランプ政権の制裁強化に対し、中国はすぐさま報復に出ましたが、どう見ても中国に勝ち目はないです。そもそも、中国の米国からの輸入量が米国の輸入量に比べて4分の1程度しかないのに加えて、米国からみれば、多くの中国製品は他国製品で代替可能だからです。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月、年内に「3回目の米朝首脳会談に応じる用意がある」との声明を出しました。ところが、一方で5月に入ると、短距離の弾道ミサイルを2度、発射しました。

それだけでは、国内強行派をなだめることがでなかったのか、2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑したとの報道もされています。

金革哲(キム・ヒョクチョル)氏

しかしこれでは、米国は痛くもかゆくもないです。国内の強硬派をなだめるために、何かせざるを得ないが、「これくらいなら大統領を怒らせないだろう」という中途半端な中途半端な短距離弾道ミサイルの発射です。逆に言えば「私も困っている。どうか、私ともう一度会ってください」というラブコールにほかならならなかったようです。

それでも、国内強行派はおさまらず、金革哲氏らを処刑せざるを得なかったのでしょう。米国との交渉の顔だった金革哲氏のような人々を処刑あるいは完全に排除することは、協議したことの全面否定を示唆することにもなり、米国に非常に悪いシグナルを送ることになりかねません。それでも、処刑せざるを得ないかったのは、金正恩がかなり追い詰められているということです。

一言で言えば、中国も北朝鮮も「八方塞がり」に陥っているのです。トランプ政権は相手が制裁に音を上げて動くのを待っていればいいだけです。北朝鮮による日本人拉致問題では、安倍首相も相手の出方待ちでしょう。無条件で正恩氏との会談に応じる姿勢を示しているのは、呼び水です

日米首脳会談により双方が基本認識を確認したので、中国と北朝鮮に対して、「ボールはそちら側にある」と対応を迫るかたちなりました。

本当は、中国の干渉を嫌う北朝鮮に籠絡された上、中国に従属しようとする韓国も、中国や北よりもさらに、「八方塞がり」に陥っています。文在寅は、米国と中国のバランスをとっているつもりのようですが、結果として、米国からも中国からも見放されています。

マスコミは、以上のような状況に全く対処できないのでしょう。これが、習近平や文在寅、金正恩などが来日して、首脳会談をして大歓迎ということであれば、大絶賛したのでしょう。なにやら、見出しが踊るのが目に見えるようです。残念ながら、そのような機会は永遠に来ないでしょう。ご愁傷様といいたいです。

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2019年2月14日木曜日

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?―【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?

天皇陛下に対する「戦争犯罪の主犯の息子」との発言が日本側に問題視されるや「戦時の日本の国王の息子という意味」と釈明も、インタビューを行なった通信社に音声データを公開されて言い逃れができない状況に追い込まれた韓国国会議長。2012年にも当時の韓国大統領・李明博氏が天皇に土下座を求め日本が強く反発したことが記憶に新しいですが、なぜこのような発言が繰り返されるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその理由について詳しく記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年2月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

黄文雄氏

【韓国】「日本に国王を奪われた」と嘘の主張で天皇侮辱を正当化する韓国


韓国国会議長「戦争犯罪の主犯の息子、天皇が謝罪を」発言に河野外相「発言には気をつけて」

韓国の文喜相国会議長が、ブルームバーグのインタビューに対して、現在の明仁天皇を「戦争犯罪の主犯の息子ではないか」とし、「天皇が一度おばあさんの手を握って『本当に申し訳なかった』と一言いえば(問題が)すっきり解消される」と話したことに対して、日本の河野太郎外相が「発言に気をつけてほしい」と批判しました。

さらに2月12日の国会答弁では、安倍首相がこの韓国国会議長発言に対して、謝罪と撤回を要求したと述べました。それほど日本人の虎の尾を踏むような内容だったということです。

【速報】韓国国会議長発言の謝罪・撤回要求 安倍首相が国会答弁

文議長は「戦争犯罪の主犯の息子」とは言っていないと反論していますが、いずれにせよ天皇に対して謝罪を求めるという非礼な態度には変わりがありません。

米ブルームバーグが“証拠”突きつけ 韓国・文議長「天皇は戦争犯罪の主犯の息子」音声公開

もちろん文氏は、天皇ではなく、「日王」という表現を使っていました。

この文喜相国会議長は、文在寅政権が誕生したときに特使として日本を訪問し、慰安婦合意について「世論が反対している」と伝えた人物です。日韓議連でもありますが、たびたび反日的な言動をしています。
天皇は日本人にとって「日本統合の象徴」であり、天皇を侮辱されることに対して強い拒否感があります。2012年には、李明博大統領が竹島に上陸したうえで、「日王が韓国を訪れたければ、日本が犯した悪行と蛮行に対して土下座して謝罪しなければならない」などと発言し、日本の世論が強く反発したことがありました。

竹島に上陸した李明博大統領(当時)

韓国が日本の皇室をたびたび侮辱するのは、理由があります。韓国は、日本が朝鮮半島から七つのものを奪ったという「七奪」の一つとして、「韓国の王族を日本が奪った」と主張しているからです。日韓併合(合邦)によって李氏朝鮮の王家を滅ぼしたというのです。

しかし、それは全くの歴史の捏造です。日本は日韓合邦時、朝鮮王朝の王家に皇族に準じる地位を与え、さらに皇族である梨本宮家の方子女王を、李氏朝鮮国王かつ大韓帝国初代皇帝・高宗の世子である李垠(イウン)へ嫁がせました。

日本が韓国を植民地にしたというなら、皇族を植民地の王に嫁がせるなどということは、ありえないことです。イギリスはビルマ王朝の男子を処刑、女子は兵士に与えて王朝を滅亡させましたし、1,000年以上も宗主国であった中華王朝にしても、皇帝の親族を朝鮮王朝に嫁がせたということはありませんでした。親族になるということは、同等の地位になることを意味しますから、属国や植民地の王族に嫁がせるなどということは、宗主国にとってありえないことなのです。

梨本宮家の方子女王(当時)

ところが日本はこうした国々と異なり、朝鮮半島に気を使って王族を残し、しかも皇族に準じる地位とし、親戚関係まで築いたのです。李垠の父・高宗は、日本に抵抗する意味で1897年に国号を李氏朝鮮から大韓帝国に改め、さらに自ら皇帝となりました。1907年にはオランダのハーグで開催されている万国平和会議に密使を送り、国際社会に対して日本批判とともに自国の外交権回復を訴えるという暴挙に出ています。しかし、東アジアのトラブルメーカーであり、財政的にも実質的に破綻していた大韓帝国の外交自主権を停止し、日本が保護国化するというのは、国際社会が望んでいたことであり、高宗の訴えは完全に無視されたのです。

このように、高宗は日本に対して敵対的な行動を取っていたものの、日本は朝鮮王室を断絶させることなく、李垠が皇太子となることを認め、さらに日本の皇室と親戚関係になって庇護したわけです。

しかし日本敗戦後、韓国大統領となった李承晩は、日本に留学していた李垠の帰国を認めませんでした。王室が復活し、政治の実権を握ることを恐れたからです。李垠は朴正熙の時代の1960年代になってようやく韓国へ帰国できましたが、王室が復活することはありませんでした。要するに、韓国国民が王室復活を望まなかったわけです。

ですから、韓国から国王を奪ったのは日本ではなく、李承晩であり、韓国国民なのです。ところがそのことは全く無視して責任を日本になすりつけ、「国王を奪われた恨み」として、天皇を「天皇」と呼ばず、わざわざ「日王」と呼んで軽んじているわけです。

もちろん、2000年以上も事大主義(大国に仕える)を続けてきた小中華の韓国にとって、「皇帝」とは中華帝国に君臨する存在であって、日本の「天皇」を認めていないという潜在意識もあるのだと思います。

李垠のお付き武官に安秉範(アン・ビョンボム)大佐という軍人がいましたが、彼は戦後、韓国で首都防衛を任されました。ところが朝鮮戦争が勃発、北朝鮮軍の猛攻撃によってソウルは陥落、安秉範はその責任を取って割腹自殺を果たします。

朝鮮戦争では李承晩大統領が真っ先にソウルから逃げ出し、しかも敵が追いつけないように橋を爆破、そのために逃げ遅れた多くのソウル市民が犠牲となりました。軍のトップが早々に敵前逃亡した一方で、旧帝国軍人だった安秉範は最後まで自分の任務を遂行したわけですが、現在の韓国では旧日本軍で大佐まで昇格したことから、「親日名簿事典」にその名が刻まれ、売国奴扱いされています。



また、旧日本軍時代に多くの軍功を立て、戦後は北朝鮮の侵攻を予知していた武人に、金錫源将軍がいます。その勇名は北朝鮮軍にも聞こえていたため、彼と対戦することを北朝鮮軍は非常に恐れていたといいます。日本刀を振りかざして前線で指揮する姿は軍神そのもので、朝鮮戦争では彼の名を慕って、かつての戦友である朝鮮人軍人が多く集まったといいます。まさに「救国の士」ですが、そんな金錫源も現在では、「親日名簿事典」に入れられています。

かつて日本の皇軍で働いた過去のある人物は、たとえ戦後に救国戦士だったとしても、売国奴扱いされるのが韓国です。その一方で、日本と敵対した人物は、徹底的に義人扱いします。

最近では、閔妃(びんひ)(明成皇后)が「悲劇の王妃」として、ドラマなどで美化されているようです。1895年10月、日本の三浦梧楼を首謀者とする一団が王宮になだれ込み、反日派だった閔妃を殺害したと言われていますが、その実態はよくわかっていません。

一説では、閔妃と嫁舅の争いを続けていた興宣大院君が暗殺の黒幕だったと言われていますが、いずれにせよ、閔妃は王宮内で政争に明け暮れ、浪費によって李氏朝鮮の財政を破綻状態にまで追い込んだ張本人として、つい最近までは韓国でも「悪女」の代名詞のような存在でしたが、「日本に殺された」ということから、悲劇的なストーリーがでっち上げられ、「国母」のような扱いを受けるようになりました。

閔妃

このように、現在の韓国の歴史はすべて「反日」が基本となっているのです。強盗殺人を犯した過去があり、多くの同士をテロで葬った金九などは、三・一運動失敗後、上海で大韓民国臨時政府主席に就任して日本に宣戦布告を行ったものの、国際的にまったく認められませんでした。にもかかわらず、現在では「抗日活動家だった」という理由から、義人として顕彰されています。盧武鉉(ノ・ムヒョン)などは、リンカーンと並び称しているほどです。

文国会議長が「天皇が謝罪すれば、慰安婦問題はすぐ解決する」というのは、まったくの嘘です。もしもそのようなことがあれば、さらなる日本批判の道具にすることは目に見えています。

もともと慰安婦問題からして、韓国側から「強制性があったことを言ってくれれば、問題は一区切りできる、未来志向の関係が築ける」と言われ、慰安婦証言の裏付けも取らないまま、「河野談話」を発表してしまったことが、「慰安婦問題」を現在まで続く大問題にまで発展させてしまったのです。そのことは、2014年4月2日に国会で行われた、石原信雄元官房副長官の証言でも明らかです。

河野談話の作成時「韓国から要望」 石原元副長官

韓国側の「こうしてくれれば問題は解決する」という提言は、決して信じてはいけないのです。「泣く子は餅を一つ多くもらえる」ということわざがある国です。一つの要求に応じれば、それを既成事実としてさらなる要求をしてくるのが韓国という国であることを、日本人は忘れてはいけません。

かつて李明博大統領は「日本はかつてほど強くない」という発言をしましたが、事大(強国に仕える)の国からすると、弱い国に対しては徹底的に嫌がらせをするのが普通のことなのです。

【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

上の黄文雄の語るようことは、おそらく80歳以上の日本人や韓国人なら、周知の事実だったと思います。実際、私も亡くなった祖父などから聴いて、上記のようなことは知っています。

しかし、日韓の両方で、まともな歴史教育をしなかったので、上記のような事実があたかも闇にでも葬られたかのように、多くの人々の記憶から消えたのです。それ以前は、両国の年配の人々の記憶に残っていたものが、これらの人々の人数が少なくなるとともに、日本では過去の歴史が正しく伝承されることなく、韓国では反日という形で歴史が歪められてしまいました。しかも、それが本格的に行われたのは1990年代になってからです。

上記のような内容は、日本人も韓国人の歴史上の事実として知っておくべきです。

さて、あくまで中国へ従属しようとする韓国は、現在の日米にとっても、かなり厄介な存在です。



最近エドワード・ルトワック著・奥山真司訳の『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』を読みました。北朝鮮の非核化は現実に可能なのでしょうか。ルトワック氏によれば、現時点で、北朝鮮が進む道は三つあるといいます。

まず、非核化した北朝鮮がアメリカの戦略的な保護の下で、経済的に発展するというシナリオ、いわゆる「ベトナム・モデル」です。この「北朝鮮のベトナム化」は、日本にとっても最善の選択肢といえます。

次の選択肢は、意外にも「現状維持」だといいます。金正恩の独裁体制が続き、もし米国による先制攻撃などによって強制的な非核化が実現しても、ダメージを受けた北朝鮮の政権が生き残る可能性はあります。それでも、第三の道、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島が中国の支配下に入るよりは遥かにマシなのです。

北朝鮮の核兵器は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。ところが、戦略面では日本にとってポジティブな要素なのです。なぜなら、それが北朝鮮の中国からの戦略的な独立を保障し、中国による朝鮮半島の支配を防いでいるからです。北京が平壌を制御できる状態になれば、韓国も支配下にされる可能性があります。

なぜなら韓国内には中国の冊封体制を受け入れたい勢力があるからです。換言すれば、平壌は中国から朝鮮半島の独立を実際に保障しているのですが、韓国政府、文在寅はその独立にまったく貢献していません。日本にとって核武装した北朝鮮は最悪ですが、中国に支配された朝鮮半島は、さらに最悪の安全保障上の脅威となります。

ここで問題となるのは、韓国という国の戦略的な脆弱さです。ソウルは北との国境線である非武装地帯から近く、対空防衛システムや防空シェルターなども十分ではないという脆弱性を晒しており、韓国の軍隊は自国をまったく守れない状態にありました。というのが40年前の状況でしたが、実は今も全く同じなのです。

政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。

40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく在韓米軍司令官にあります。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けています。さらに韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは全く見せていません。

ルトワック氏は韓国を強く批判し、次のように述べています。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
確かに、韓国は放っておいても日本にとって実害はほとんどないですし、静観するのが最も賢明な選択といえます。ただし、静観、ルトワック氏の言葉を借りれば、無視するにしても、日本としては韓国が日本に関する歴史の修正をすれば、それが事実ではないこと国際社会に訴えつつ、直接韓国と関わることはなるべく避けるべきです。
日米にとっては、たとえ韓国が中国に従属しようとしているにしても、そこに独立国として存在し、さらにその北に北朝鮮が存在し、核で中国も威嚇しているという状態は、決して最悪の状態ではないのです。
この状況のなかでは、韓国は日米にとって安全保障上は空地のような存在ではありますが、それでもこの空地があるという状態は決して悪い状況ではないのです。
最悪の状況は、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島全体が中国の支配下に入ることです。こうなると、38度線は、対馬海峡になることになります。これだけは、避けるべきでしょう。韓国には何も期待できないですが、そこに安全保障上の空地があるということが重要なのです。
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