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2020年2月15日土曜日

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か ―【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

【日本の解き方】景気悪化「台風と暖冬」理由の不可解 消費増税の影響をなぜか無視…財務省やマスコミへの忖度か 

西村康稔経済再生相

 17日に公表される昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値はマイナス成長になるとの見方が出ている。西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」を理由に掲げているが、消費増税を理由にしないのは不可解だ。

 西村再生相は、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要はそんなに大きくはなかったし、その後の落ち込みもそんなに大きくないとみていたが、10月から12月の期間は台風や暖冬の影響がある」と述べたという。

 1月にスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が、「日本経済は昨年第4四半期にマイナス成長に陥った。これは主に2回の台風被害に見舞われたことに起因する」と発言している。

 昨年10~12月期の落ち込みは、各種の経済指標で裏付けられている。総務省が公表している家計調査の2人以上世帯の実質消費支出について、昨年10月で前年同月比5・1%減、11月で2・0%減だった。業界団体の12月のデータでは、全国食品スーパー売上高(既存店ベース)で前年同月比1・0%減、全国コンビニエンスストア売上高(既存店ベース)で前年同月比0・3%減となっている。日銀が発表している消費活動指数でみても消費の落ち込みは明らかだ。

 これらの要因は台風被害ではなく、消費増税であることは誰の目にも明らかであろう。
 経済産業省が発表している鉱工業生産指数の地域別数字でみても、各地域ともに低下している。台風の影響が比較的少なかった近畿も、関東と同じように低下しているので、やはり経済減速を台風のせいとはできないだろう。

 これまで、消費増税は創設時を含めて4回ある。税率は1989年4月に3%、97年4月に5%、2014年4月に8%、19年10月に10%となった。

 このうち89年4月は、個別物品税廃止との引き換えだったので、悪影響は少なかった。しかもバブル景気の最中なので、問題にならなかった。しかし、その後の消費増税は景気に悪いタイミングであるとともに、ネット(純額)での増税だったので、予想通り景気は悪化した。

 こうした予想は、消費増税により可処分所得が減少し消費が落ち込むという標準的な経済学を理解していれば容易に分かることだが、財務省とその走狗(そうく)のエコノミストは「影響は軽微だ」と口をそろえる。消費の減少は「増税前の駆け込み需要の反動減」という説明もなされるが、一面的でしかない。本質的には可処分所得減少による消費の落ち込みであるが、それは説明されない。

 前述の西村再生相の説明も、駆け込み需要の反動減はないというもので、可処分所得減少による消費落ち込みの説明を避けている。

 なぜ、西村再生相や黒田総裁がこのような発言をするのだろうか。筆者の答えは、消費増税の影響を隠したい財務省やマスコミへの「忖度(そんたく)」というものだ。これまでの消費増税と同様に、景気の悪影響があっても、別の理由にされてしまうのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省とその走狗らは、戦中の軍部と同じく資金を隠匿し続ける(゚д゚)!

昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長になったのは、減税したためであるということは明らかです。それを台風と暖冬のせいにするとは、全く笑止千万と言わざるを得ません。

内閣府が昨年11月11日発表した10月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが前月から10.0ポイントの大幅低下となりました。その原因として、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとしています。

さすがに、消費税増税の直後だったので、この落ち込みの原因として、台風だけにするにはどう考えても無理があるので、台風以外に消費税増税もあげたのでしょう。

しかし、今回の昨年10~12月期の国内総生産(GDP)のマイナスなるとの見方が出関して西村康稔経済再生相は「台風や暖冬」だけを理由に掲げました。

しかしおそらく、このような言い訳をするのは十分に予想できました。ただ、何を理由とするのかは、わかりませんでしたが、「台風と暖冬」とは思いもよりませんでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

この記事では、香港の個人消費を例にあげて、まともというか、デフレから脱しきれていないうちに消費税をあげるというような馬鹿マネさえしなければ、SARSの蔓延のような事態があっても、それが終息すると消費が飛躍的に伸びることを主張しています。

であれば、台風や暖冬などがあったにしても、元々それによる被害は日本全体からすればわずかであり、しかも台風などの被害があっても、被災地においては、その後は様々な消費が急激に伸びるはずであり、それが景気に及ぼす影響はほとんど相殺されるはずです。

では、他に何が原因があるかといえば、やはり消費税以外にないのです。

この記事では、台風どころではなく、大東亜戦争のような大きな戦争ですら、経済統計を年度ベースでみていると、後世の歴史家は、大戦争があったことを気づかないかもしれないということを述べました。以下に簡単にまとめてそのことを再掲載します。

これは、日本でも欧州でもそうだったのですが、戦時中の末期に近い頃ですから、欧州でも日本ても、爆撃を受けようが何があろうが、戦争遂行のために兵器などを生産し続けるため、戦争中のGDPは、いかに生活物資が不足し国民が耐乏生活を送っていたとしてもさほど低くはなかったのです。

そうして、戦争が集結すると、戦争に勝とうが負けようが、今度は国民生活に必要な、民需が逼迫して、その解消に向けての大増産が起こり、年ベースの経済統計では、戦争があった年も、なかった年でも、GDPにさほど違いはなく、ほんの少し減ったくらいにしか見えないのです。

だからこそ、第二次世界大戦中の経済統計をみていても、後世の歴史家はそれだけみている限りでは、戦争があったことに気が付かないかもしれないのです。

日本もそのような状態だったのです。実際統計上でみれば、日本は戦争をしても直後には戦争開始時の国富の70%もが温存されていたのです。

ちなみに、国富は再生産可能な生産資産である「在庫」、「有形固定資産(住宅・建物、構築物、機械・設備、耐久消費財など)」、「無形固定資産(コンピュータソフトウェア)」と、「非生産資産(土地、地下資源、漁場など)」を足し合わせたものに「対外純資産」を加減して求められる。国民総資産から総負債を差し引いたものと同じとなります。日本の正味資産としての国富は、この10年ほど概ね3000兆円前後で推移しています。

良く、終戦直後には、日本は全部が焼け野が原になり、すべてがゼロになり、ゼロからのスタートだった等という人もいますが、統計上からみれば、日本の中核都市などは確かに焼けのヶ原になりましたが、地方都市やその他の町や村には、生産設備や田園などが、残り、そこからの出発だったのです。

だから、他のアジアの諸国などから比較すれば、はるかに有利なスタートを切ることができたのです。

大戦争のときですら、このような状況なのですから、ましてや台風や暖冬の被害など微々たるものであり、これがマイナス成長の原因とするのは、甚だしい間違いです。その原因は、はっきりしています。それは、消費増税による個人消費の落ち込みです。

戦争、そうして台風や暖冬などで、消費が落ち込んだとしても、それは一過性のものであり、戦争や台風・暖冬などで、被害があったにしても、それはすぐに回復します。そうして、年ベースでみるとさほどではないのです。

しかし、デフレから回復しきっていない時期での消費増税など、経済政策を間違ってしまえば、その影響は甚大であり、GDPの中で60%以上を占める個人消費を減衰させ、結果としてGDPが落ち込むのです。

そうして、日本ではあがった消費税は二度と下がることはないという固定観念もあり、戦争、新型肺炎などよりさらに悪影響があり、なかなか消費は回復しないのです。

現状の日本にとっては、戦争や新型肺炎よりも、消費税の増税のほうが悪影響をもたらすのです。

ちなみに、先に日本では、戦争直後でも戦前の国富の70%が温存されていて、他のアジア諸国などと比較すれば、ゼロあるいはマイナスからのスタートではなく、かなり有利なスタートきることができたと述べました。

ただし、これには日本ならではの特殊事情がありました。それは、旧軍部等による様々な物資の隠匿でした。旧軍部は、終戦直前に、金塊、医療品、食料、燃料、衣料品など莫大な物資を隠匿したのです。これは、当然のことながら、70%の国富に含まれていました。

この物資が国民すべてに、終戦直後から回されていれば、多くの国民は国富70%からのスタートを実感できたでしょう。しかし、そうではなかったため、終戦直後からしばらく、多くの国民は、耐乏どころか衣食住の食でする満足に得られない窮乏生活を強いられたため、ゼロからのスタートというイメージが定着したのです。

物資の隠匿に、多くの軍人も関わったとみられますが、それらは単に命令に従っただけで、多くは旧陸軍省・旧海軍省の高官、すなわち官僚が実行したものです。このあたりは、闇に埋もれてわからないことも多いようですが、是非とも明らかにして欲しいものです。

      NHKスペシャル「東京ブラックホール」で紹介された、1948年
      米軍に発見された日本軍の隠匿物資の夥しい量の金塊

そうして、この記事でも主張したのですが、隠匿という点では、昔の官僚も現在の官僚も変わりません。現在の財務省の官僚は、物資を隠匿はしていませんが、様々な形で資金を隠匿しています。それこそ、いっとき盛んにいわれていた財務省の埋蔵金というものです。

これは、いわゆる特別会計という複雑怪奇で一般の人にはなかなか理解できない、巨大な会計の中に隠蔽されていたりします。それは、戦時中の隠匿物資のように、一般人には見つからないように隠匿されています。

しかし、それは、終戦直後に大多数の国民が窮乏生活を送っていたときに、国富が70%もあったというのと同じく、現在でも統計資料を見ると理解できます。

まずは、政府の負債です。これについては、財務省は1000兆円などとしていますが、これは負債だけをみているわけであり、一方では日本政府はかなりの資産を持っています。これを相殺すると、日本政府の借金はさほどではありません。米英よりも低い水準です。

これについては、このブログにも何度が詳細をのべてきました。詳細を知りたいかたは、その記事をごらんになるか、高橋洋一氏、田中秀臣氏などの記事をご覧になってください。

さらに、もう一つの隠匿手段があります。それは、統合政府ベースの見方です。統合政府とは、政府と日銀などを一つにした見方です。民間企業でいうと、連結決算など連結ペースでみる見方です。

現在では、大企業は連結決算を作成し、公開する義務を追っているのですが、なぜか政府に関する統計では、連結ベースではだされていません。

しかし、統合政府ベースでみると、政府による借金は近年現象傾向にあり、2018年あたりからは、赤字どころか黒字になっているくらいです。

しかし、財務省はそのことは表に出さず、それどころは、政府の資産についても触れず、政府の借金はほとんど問題ないのに、あるように装って、消費税増税などを実行しています。

まさに、戦中の軍部の官僚が夥しい物資を隠匿していたのとそっくりです。結局日本の役人の腐った根性は、戦争中も今も変わらないようです。

日本の一番の問題は、このような腐った官僚の根性を叩き直すこともなく、放置しておいたということかもしれません。

日本の政治家もこのあたりに、そろそろ手を付けてないと、日本はとんでもないことになりそうです。

財務省の走狗?

財務省とその走狗達は、昨年の段階では景気の落ち込みは、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとせざるを得なかったものを、現時点では、西村再生相や黒田総裁が台風のせいとか、暖冬のせいだけにしたのと同じように、今後も続く景気の落ち込み増税とは全く関係ないとし、新型肺炎だけのせいだとするでしょう。

このままでは、いつまでたっても日本ではまともな機動的な財政政策ができなくなります。

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2019年9月9日月曜日

残り3週間!「消費増税で日本沈没」を防ぐ仰天の経済政策がこれだ―【私の論評】消費税増税は財務省の日本国民に対する重大な背信行為(゚д゚)!

残り3週間!「消費増税で日本沈没」を防ぐ仰天の経済政策がこれだ「増税しない」が最善手ではあったが…


財源をひねり出せ

9月11日の内閣改造は、かなり大幅なものになるようだ。麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官を除く17閣僚が交代する見通しとなっている。

政権はその布陣で秋の臨時国会に臨むことになるが、10月からの10%への消費増税が控える中、本コラムでも再三指摘している通り、国際経済は不安定要因ばかりだ。(1)米中貿易戦争、(2)イギリスのEU離脱、(3)日韓関係の悪化、(4)ホルムズ海峡の緊張など目白押しだ。

秋の臨時国会では、当然景気対策のための補正予算が作られるだろう。安倍首相は、消費増税を掲げた今年の参院選後、万全の景気対策を行うと表明した。消費増税分を吐き出してでも、景気を悪化させないということだろう。

こうした国際経済環境の悪化はずっと前から読めていたので、「増税分を使って景気対策する」くらいなら消費増税自体をやめるべきだったが、政治家の心中は複雑だ。

安倍首相は、盟友である麻生氏の顔にこれ以上泥を塗らないために、消費増税を政治的判断で決めた。と同時に、景気悪化をさせないために、増税分を吐き出す覚悟で経済対策を行う。政治と経済の使い分けという芸当だ。

筆者は、政治家がとるこうした「常人には理解しがたい行動」についても想定していたので、消費増税への経済対策として理論的に最も優れているのは、「10%への消費増税と同時に全品目を8%軽減税率の対象とすること」だと、かなり前の国会意見陳述から申し上げてきた。これなら、消費増税をしたい増税勢力、軽減税率を導入したい公明党、景気の悪化を避けたい一般人のいずれも満足させることができる。

もっとも、これは冗談としか受け取られないので、実現可能性は少ない。ただし、消費増税対策としての経済政策を考える際には、このような考え方がベースになるはずだ。

先立つものは財源だ。消費増税分から吐き出すことも可能だが、教育無償化などへの影響を避けつつ景気悪化を避けるためには、別の何らかの財源をひねり出す必要がある。

一番簡単なのが国債費の減額である。2、3兆円の財源なら簡単にひねり出せる。

そのからくりはこうだ。

国債費は、財務省(理財局)が財務省(主計局)に対して概算要求を行う。来年度の国債費要求額24兆9746億円は、本年度予算額23兆5082億円より1兆4664億円多い。その内訳は、債務償還費16兆1112億円、利子及割引料8兆8259億円、国債事務取扱費375億円である。

まず債務償還費は、減債基金への予算繰入だ。減債基金とは、国債を漸次償還し、その残高を減らすために積み立てる基金とされている。そのため、国債残高の1・6%をこの予算に繰り入れると法律で決められている。

ただし、民間会社の社債発行で、減債基金という話は聞かない。減債基金の積立のために、さらに借金をするのはおかしいというのは、誰でもわかる話だ。民間の社債では、借り換えをして余裕が出たときに償還するというのが一般的だ。これは海外の国債でも同じである。海外の先進国では、かつては国債の減債基金が存在していたが、今ではなくなっている。

なので、債務償還費はナシでもまったく困らないが、時代錯誤の法律があり、その改正が必要なので、おそらく減額・廃止されることはないだろう。

なお余談であるが、日本の大学の財政学のテキストには、国債の減債基金の制度やその重要性が説明されている。ただ、海外では制度自体が存在しないということは言及されない。もし学生にその点を質問されたら、大学教員は説明に困るだろう。

財政学の教員はほぼ例外なく財務省のポチであるので、「減債基金は必要なのだ」と、国際的に非常識なことを教えているのではないかと筆者は思っている。

マイナス金利を逆手に取る

次に、利子及割引料。日本の債務残高は1000兆円といわれるが、利子及割引料はその0・8%に相当する。そもそも国債金利はそんなに高かったのか。過去に発行した国債の利払いも必要なので、過去10年間の10年国債金利を調べると、平均で0・5%。このことから考えると、せいぜい利子及割引料は5兆円程度あれば十分だ。

それなのに、なぜ9兆円弱も予算を積んでいるのか。それは、例年秋の臨時国会で補正予算が作られるときのための財源を、本予算に盛り込んでいるせいだ。こうすることで、当初の国債発行額も水ぶくれとなり、財政危機を煽る財務省にとっては一石二鳥なのである。

筆者が現役官僚の時は、査定すべき財務省(主計局)は要求する財務省(理財局)に対し、概算要求を水増しするように言ってきていた。同じ財務省内ならではの馴れ合い話だ。

せいぜい5兆円くらいしか利子及割引料は使われないので、3兆円程度減額しても問題ない。それが補正予算での財源になる。

さらに今年は、これらとはまったく違う財源がある。それは、異様なマイナス金利環境だ。

国債金利は期間ごとにあり、その変化をイールドカーブ(期間別の金利)というが、推移を見てみよう。

8月末時点で、1年▲0.268%、2年▲0.307%、3年▲0.326%、4年▲0.353%、5年▲0.362%、6年▲0.378%、7年▲0.385%、8年▲0.383%。 9年▲0.333%、10年▲0.275%、15年▲0.095、20年0.05。

8月末時点のイールドカーブを過去5年間とると、下図のようになる。



2015年以前、5年ごとで各期間の金利を平均したものを掲げている。1990年代前半、1990年代後半、2000年代前半、2000年代後半、2010年代前半のイールドカーブだ。



これらをみると、現在のマイナス金利が珍しい状態であることがわかる。

投資のチャンスになる

なお、先進国G7と直近時点でも比較してみると以下のとおりだ。



もっとも、今は先進国でも日本と欧州はマイナス金利が常態化している。日本と欧州はマイナス金利であるとともに、長期金利のほうが短期金利より低いという「逆イールド」になっている。

一般論として、長期金利は将来の短期金利の積み合わせになっている。逆イールドは将来の短期金利が現在より低いと予想されるために起こる。低金利は経済活動が盛んでないことを意味するので、不況の前触れという連想になる。国際経済情勢の先行き不安は、逆イールドになる要因だ。

長期金利のマイナスそれ自体は、金融機関の経営にとっては、利ざやが取れず悪影響を及ぼす。

金融機関は、預金で集めたカネを貸出や有価証券で運用して利ざやを稼ぐのが基本だ。一般的に、運用の金利は同じ期間の預金金利に信用スプレッドを加えたものだ。また、預金の期間は運用の期間より短い。このため金融機関の利ざやは、信用スプレッドと長短スプレッドから構成されている。

これまで、日本の金融機関は、信用スプレッドよりも長短スプレッドに依存して利ざやを稼いできた。信用リスク管理をさほど厳格にしないですんだのは、逆イールドの期間がそれほど多くなかったからだ。

その場合、運用金利がマイナスになると、順イールドでも金融機関は利ざやがとれなくなる。というのは、預金のマイナス金利は、預金者が損をするということになるので、まずありえないからだ。

マイナス金利に逆イールドが加わっている現在の状況は、金融機関にとっては最悪ともいえる。しかし、実態経済にとっては、金利負担なしで長期資金が借りられるので、設備投資の絶好のチャンスだ。実際、不動産投資や住宅投資はかなり良好である。

また政府は、この機会にインフラ整備をどんどん行ったほうがいい。長期金利がマイナスということは、金利コストがゼロなので、費用対効果さえ算定すれば、ほぼすべてのインフラ投資が正当化できることを意味する。

東日本大震災以降、日本列島で地震が活発化しているという意見もある。そのリスクに備え、震災被害を事前に最小化するために、将来投資が必要だ。

この将来投資は物的資産が残るので、建設国債になる。建設国債は赤字国債ではないので、そもそも借金問題を気にする必要はなく、必要であればどんどん発行したらいい。国債市場はマイナス金利なので、よほど酷い公共事業でなければ採算があり、将来投資には良好である。

南海トラフ地震や首都直下地震は確実にやってくるので、今の時期に防災対策投資を行うべきだ。

さらに、インフラ整備に限定せず教育、研究開発や国防などについても、政府は国債をもっと多く発行し、将来投資の観点から積極的に行うべきである。

「無制限に国債発行」の可能性

これらは通常時でも考え得る普通の政策であるが、マイナス金利環境をさらに生かそうと思えば、次のような仰天施策もある。

「金利がゼロになるまで無制限に国債を発行し、何も事業をしない」というだけでもいいのだ。

例えば、10年国債金利は▲0・3%程度だ。これは、100兆円発行すると、年間金利負担なしで、しかも103兆円の収入があることを意味する。マイナス金利というのは、毎年金利を払うのではなく「もらえる」わけで、0.3%の10年分の3兆円を発行者の国は「もらえる」のだ。

ここで、「100兆円を国庫に入れて使わず、3兆円だけ使う」とすればいい。もちろん、国債を発行すれば若干金利も高くなり、このような「錬金術」が永遠に続けられるわけではないが、少なくとも金利がゼロになるまで、国としてコストゼロ、リスクゼロで財源作りができる。

この施策が面白いのは、これまで財務省が国債を「悪いもの」として扱ってきたのと発想が真逆なことだ。

既にマイナス金利が顕在化していた今年2月、NHKニュースは財務省のポチらしく「国の借金1100兆円超」と報道し、「政府は新年度予算案で、国債を32兆6000億円余り、新たに発行することにしていて、財政健全化の道のりは険しさを増しています」と国債発行を戒めている(https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/14051.html)。財務省の言うとおりに報じるNHKらしい。

もっとも財務省でも2016年頃までは、財政赤字の弊害として、クラウディングアウト(民間資金締め出し)論から金利上昇の可能性を主張していたが、さすがに現在ではそうした記述を落としている。

財務省がゼロ金利までの無制限国債発行を行うと、日銀が今やっている金融政策とも相乗効果が出てくる。

日銀は、イールドカーブコントロールといい、長期金利がゼロになるように国債買入を行っている。ただし最近の日銀の国債購入は、異次元緩和が始まった当初の年間80兆円ベースから、30兆円ベースまで落ち込んでいる。これは、市場の国債が品不足であるからだ。このため、金融緩和圧力は高くない。



ここで、財務省がゼロ金利まで国債無制限発行に乗り出せば、日銀の金融緩和効果はさらに高められる。しかも、得た財源で景気対策を行えば、まさに財政・金融一体政策となり、目先の消費増税ショックを回避できる可能性も出てくる。しかも、金利正常化で金融機関支援にもなる。

逆にいえば、こうした「美味しい」金利環境を財務省が見過ごし、金利ゼロまでの無制限国債発行を行わないとすれば、それは彼らが増税しか頭にない「無能官庁」であることの証明といえる。

【私の論評】消費税増税は財務省の日本国民に対する重大な背信行為(゚д゚)!

元々、増税することしか頭にない財務省官僚は、冒頭の記事で高橋洋一氏が提案するような金利ゼロまでの国債発行をするだけの頭があるのなら、最初から増税などしなかったでしょう。

そもそも、日本の財政は基本的には問題ありませんが、資産と負債の圧縮によるスリム化を阻んでいるのは、天下りを狙っている官僚たちといわざるをえません。「借金がこんなに多い」などというのは完全なまやかしであり、政府関係機関を完全民営化すれば、借金は大幅に減らせます。

このブログでも日本の財政状況は問題ないことをいくどか掲載しました。それでもなお「財政健全化が必要だ」と主張するのなら、「消費税の増税」をやるよりも前に、まず「政府の資産で売却するものは売却し、民営化できるものを民営化する」ことによって、政府のスリム化をすべきです。「財政健全化のために消費増税をする」のはそれからのことでしょう。

財務官僚以外の誰が考えても、順番がおかしいといわざるをえないです。民間企業ならば、最初にくるのが資産の圧縮のはずです。財務省が民間企業だとして、財務官僚がやっていることは、資産圧縮などせずに、賃金の引き下げばかりやっているようなものです。

このブログの過去の記事には、日本政府の貸借対照表(BS、バランスシート)を何度か掲載したことがあります。そこで日本政府だけが資産、負債とも突出して多いことを指摘しました。



日本政府は極端に資産が多いです。財務省は「国家運営上、このくらいの資産は必要だ」という考えなのようですが、これだけ資産を膨大にもっている国はほかにはあまりありません。他国は資産が日本政府ほどなくてても国家運営ができているのです。

資産と負債の圧縮は簡単です。政府関係機関を完全民営化すれば、出資金を回収できて関係機関への貸付金も必要なくなるため、負債を減らして資産、負債ともに小さくすることが可能です。

小泉改革で郵政民営化を行なったあと、経済財政諮問会議で資産圧縮の方針を出したところ、財務省だけでなく、各省庁が大騒ぎになりました。

各省庁は、政府関係機関の保有は政策目的だ、といっていました。しかし政策目的は他国にもあるから、この論法が正しければ海外にも同様の政府関係機関があるはずです。

ところが現実には、日本のような国はありません。幹部は「郵政民営化までは許すが、これだけは駄目だ」といいました。残念ながら、結果として政府関係機関の民営化はほぼすべて潰されました。

これほど抵抗が強いのは、各省庁が政府関係機関をコントロールし続けたいということで、天下りの生命線でもあるからです。

普通の国であれば、負債が大きくならないように資産を売って負債を返し、資産と負債の両方を圧縮していく。これがスタンダードな考え方です。これは、民間企業もそうです。それをしない財務部は何もしていないと謗られても致し方ありません。

ところが財務省は、資産も負債も膨張したままで、資産に手をつけようとしないのです。日本の純資産は「資産220% - 負債238%」=「対GDP比マイナス18%」。ドイツ、カナダ、アメリカよりは純資産額が少ないですが、フランス、英国、イタリアよりは純資産額が多いです。

であれば、「まず資産を売って負債を減らす」のがバランスシートを保つための優先策のはずです。

では、なぜ日本の財務省の常識は違うのでしょうか。財務官僚が愚かで、会計の基本に気付かないからではありません。何よりも財務省が「資産」を抱え込むことが、同省の官僚に大きなメリットをもたらしているからです。

そのメリットは、「天下り先の確保」です。政府資産の大半は金融資産で、天下りに使われているものです。したがって資産の売却は天下り先を減らし、官僚の人生設計に狂いを生じさせます。彼らは自分の再就職先を守るため、「資産は売れない」と異を唱えているのです。

もちろん表向きの説明は、政府関係機関は政策目的のためにあるので、必要な資金を出しているだけだと理由付けています。

ただ、出資先には日本政策投資銀行、商工中金など、諸外国では民間会社になっている業種も多く、政策目的とは口実で、天下り確保と思えるものも少なくないです。実際、出資先リストをみれば、財務省に限らず各省からの天下り役員が多くいます。

債務返済のためには、まずは資産売却してバランスシートをスリム化することが先決です。これは、企業の債務整理や諸外国でもしばしば用いられる手法です。

たとえば英国では、これまで財政危機といわれるたびに資産売却を行ってきました。オークションサイトでは、軍艦まで出品されたこともあります。英国政府を訪問すると、部署によっては所在地が変わっていることもよくあります。政府所有ビルではなく、政府が民間から借り上げているからです。

ギリシャでも、財政問題になるたびに政府保有資産を売却しています。ギリシャはこれまで200年間で100年近くデフォルト(債務不履行)状態になっているなどデフォルト常習国なので、売却された資産は多いです。2010年頃のギリシャ危機の際、国営郵便局・電気ガス民営化等で債務残高の15%の国有資産が売却されました。

ちなみに、国際通貨基金(IMF)の報告書によれば、ギリシャと英国のネット負債残高対国内総生産(GDP)比はそれぞれ90%、110%程度と世界の中で最悪の部類です。

逆にいえば、日本はそこまで財政状況が悪くなく、資産売却まで追い込まれていないわけで、天下り先確保に支障が生じていないともいえます。なお、借金を借り換えれば資産売却は不要です。

各省からは自分の所管の政府関係機関だけに天下りますが、財務省はすべての機関に天下ることができます。これは財務省の特権であり、手放したくないはずです。 

逆にいえば、その特権のために、消費税増税が性懲りもなく行われるわけであり、これは、国民に対する重大な背信行為といわざるをえません。民間企業で財務部が、資産をためこみ、それを自分たちの都合の良いようつかえば、当然会社に対する背信行為であり、法律違反です。

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2019年8月30日金曜日

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか―【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本のメディアは日韓関係悪化ばかり報じている場合なのか
消費増税の悪影響が断然大きい




8月22日に韓国大統領府が日韓軍事包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことで、歴史問題などをめぐり悪化していた日韓関係はさらに深刻になり、安全保障分野に影響が及ぶことになりました。

この韓国政府の判断が米中を含めアジア地域の地政学動向に将来どのような影響をもたらすかが筆者の最大の関心ですが、これは門外漢の筆者の力量を超えるテーマです。以下では、両国の金融市場、そして経済活動への影響について考えてみます。

日韓関係悪化の市場への影響

金融市場では、通貨ウォン(対ドル)は年初来で約8%安と下落。韓国の株価指数も年初から▲5%と、日本を含めた多くの主要国対比でアンダーパフォームしています。

日韓関係悪化などの韓国における政治リスクは、金融市場である程度反映されているといえます。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、将来の北朝鮮との経済統合を目指すことを見据えるなど、北朝鮮に融和的な外交姿勢を示しており、経済への悪影響だけではなく、朝鮮半島を取り巻く地政学情勢が変わることに伴うリスクが市場で意識されているかもしれません。

それでは、最近の日韓関係悪化によって、日本や韓国経済にどの程度、悪影響が及ぶでしょうか。まず日本は、7月に半導体の材料の一部品目の韓国への輸出に関して審査ルールを変更しました。

これについて、韓国に対して禁輸あるいは輸出規制強化を日本政府が行ったなどと報じられ、日本の対応が韓国政府の軋轢を強めたなどとの見方も散見されます。日韓という微妙な2国間の関係ゆえに、メディアもこれをセンセーショナルに報じたり、さまざまな立場の論者の声も大きくなっているようにみえます。

企業活動に及ぼす悪影響は限定的

実際には、韓国への輸出の取り扱い変更は、安全保障に関わる一部の材料のみが対象です。それらの輸出ができなくなるわけではなく、審査に関するこれまでの優遇措置が取りやめとなり、輸出する際の審査・許可を通常のルールに戻すのが、日本政府の対応です。特別な優遇措置を、他国同様の原則のルールに戻したということです。

輸出品が三国などを経由して問題国へ輸出されるのをしっかり管理することは、安全保障の観点から、どの国も責任を持ってやる必要があります。今回の日本の対応は、安全保障の理由で、どの国も自国の裁量で行うことができる対応です。

また、今回通常の管理対象になったのは半導体の材料になる3品目ですが、管理変更の対象になるのは試作段階のものに限られ、すでに量産されている半導体分の材料については対象外になる、との専門家による指摘もあります。

これらを踏まえれば、今回の韓国への輸出規制変更が、韓国の半導体セクターの生産活動を含めて、日韓の貿易など企業の活動に及ぼす悪影響は限定的といえます。

観光面へのインパクトは大きいが…

一方、政治的な日韓関係の悪化は、観光面については無視できない影響が及ぶでしょう。韓国からの訪日客の2割を占め、すでに7月時点で訪日客数は前年比▲7.6%と減少に転じています。一方、中国などからの訪日客が引き続き大きく伸びているため、訪日客全体は同+5.6%と底堅い伸びが続いています。

韓国からの訪日客は8月からさらに落ち込むとみられ、このまま関係悪化が長期化すれば、前年対比で半分程度まで落ち込む可能性もありえるでしょう。2018年のインバウンド消費は約4.5兆円ですが、約2割の韓国人訪日客が半減すると大胆に仮定すると、約1割訪日客数全体が減るため、単純計算で0.4兆~0.5兆円のインバウンド消費が減る可能性があります。

実際には韓国からの訪日客が減った分は、中国、台湾など他のアジアからの訪日客が増える可能性があるため、これはインパクトを最大限見積もるための仮定ですが、それでも日本のGDP(国内総生産)の0.1%の規模で経済全体への影響ではほぼ誤差といえます。

これまで判明している日韓関係悪化の、日本経済への影響はほぼありません。そして、日本から韓国への観光客も大きく減るため、韓国経済も悪影響を受けるでしょうが、同様に誤差程度の悪影響しか想定されないでしょう。

消費増税は失政になる可能性が高い

むしろ、日本経済全体に影響を及ぼすのは、10月から行われる消費増税です。2014年の消費増税は判断ミスだったと安倍首相は後悔していた、とメディアで報じられました。今回も同様に、失政だったと振り返られる可能性が高い、と筆者は考えています。

消費増税による家計負担増の金額を確認すると、消費増税にともない約4.6兆円の税収負担が増えます。増税によって、幼児教育と高等教育の無償化などの制度が始まりますが、これらによって約2.4兆円が政府から家計に支給されます。このため、今回の増税によって、恒久的な家計負担は約2.2兆円増えます。

この家計負担に対して、政府は平成31年度予算として2兆円規模の臨時の景気対策を行いますが、このうち1.35兆円は防災、国土強靭化政策で、家計の所得負担を直接軽減させることになりません。時限的な対策として、いわゆるポイント還元制度などがありますが、これらは0.66兆円となっています。

これらの予算が実際にすべて政府支出として家計に給付されるかは不明なので、先に挙げた2.2兆円の恒久的な家計負担のごく一部しか相殺されないことになります。

なお、2兆円は家計の可処分所得300兆円の約0.7%に相当します。今回の増税で個人消費がどの程度落ち込むかは見方が分かれますが、名目賃金が1%程度しか伸びていない中で、家計所得に無視できない規模の負担が生じれば、少なくとも個人消費はほぼゼロに失速すると筆者は予想します。消費増税以降、日本経済の成長率はほぼゼロ成長に減速するリスクが大きいと考えています。

日韓関係の悪化が大きなニュースになっていますが、それよりも日本人の生活に直結する問題として、消費増税の影響のほうがかなり大きいことは明らかです。最近の日本の報道では、こうした冷静な視点が欠けていると筆者は感じています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

【私の論評】増税で7年間に及ぶアベノミクスは帳消しになる。特に雇用は最悪に(゚д゚)!

日本の昭和末期から平成に至る政治史を振り返ったとき、消費税の導入や消費税の税率引き上げにまつわる動きは「呪われた歴史」といってもいいほど政権を潰し、苦境に追い込んできた。さらにはその都度、景気回復の兆しを迎える日本経済をどん底に突き落とすなど、悲劇的な状況を数々もたらす結果となった。

本来、消費税というのは優れた税制です。脱税がしにくく、徴税コストが安く、安定財源となる税制です。その優れた税制を正しく運営すべきでした。

しかし、その導入において、国民や野党の反対をかわすためだけにあまりにも誤った論理をふりかざし、嘘に嘘を重ね、しかもインボイス制度(適格請求書等保存方式)がない不完全な形で導入してしまいました。
そしてそれ以後、税理論や社会保障理論を歪めてまで、ひたすら消費税の増税こそが正義であるかのように志向してきた歴史が日本にはあります。
このような思惑で消費税の制度が歪めば歪むほど、無理が生じて、呪いにかかったかのように政権が潰され、日本経済にも悪影響を与えてきました。現在の消費増税議論がいかに歪んだものであるかを知るためにも、日本における消費税の歴史を振りかえってみます。

中根蘇康弘氏 首相当時

中曽根康弘首相は1986年7月に大方の意表を突くかたちで解散し(死んだふり解散)、衆参同日選挙に打って出ます。この折には、「国民や自民党員が反対する大型間接税はやりません」「この顔が嘘をつく顔に見えますか」と発言をし、衆院で300議席以上を獲得する大勝利を収めていました。
しかし、同年12月に政府税制調査会と自民党税制調査会が「売上税」を提案し、中曽根内閣は翌1987年2月に「売上税法案」を国会に提出したのです。

売上税はもちろん「大型間接税」ですから、「嘘つき」という批判が満ち満ちることになりました。結局、1987年の地方選挙で敗北をし、売上税は撤回に追い込まれました。大平内閣の挫折と、中曽根内閣の「嘘つき」で、消費税には決定的に悪いイメージが付くことになってしまいました。

1993年6月、野党が当時の宮沢喜一内閣の不信任案を出し、小沢一郎氏たちが造反して野党に賛成した結果、内閣不信任案は成立し、衆院選が行われることになりました。

ここで自民党は衆院での過半数を失い、逆に自民党を飛び出して新生党を結党した小沢氏たちは「非自民」勢力を糾合。かくして、自民党が下野し、八党派連立(日本新党、日本社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合)の細川護熙内閣が成立しました。



その細川首相が1994年2月3日未明に突然、記者会見を開いて「国民福祉税」構想を打ち出しました。税率3%の消費税を廃止して税率7%の福祉目的税にする、というものです。

細川内閣は、赤字国債を発行しないことを公約の一つにしていました。しかも当時、米国が日本の内需拡大を促すために、日本の所得減税を求めていました。

赤字国債を発行せず、所得減税も行うとなれば、消費税を増税するしかない状況でした。ところが、消費増税は、消費税反対を訴えて支持層を広げてきた社会党から受け容れられないことは目に見えていました。

ならば、いっそのこと「消費税」を廃止してしまい、「新税」の衣をまとわせようと考えたのでしょう。袋小路に陥った状況を活かそうと考えた大蔵省と小沢氏が、よく事情をわかっていない細川首相を抱き込み、一気に税制改革も進めてしまおうとしたのではないかと思います。

ところが、これが見事に頓挫します。政治家が目論む「新税」などすぐに見透かされるのであって、大蔵省とすれば、細川首相をうまく取り込んだつもりだったのかもしれませんが、連立政権内でも話し合われておらず、根回しがまったく不十分だったこともあって社会党などは猛反発しました。

たちまち翌4日の連立与党代表者会議で撤回されるに至りました。政権の求心力は急速に失われて、細川内閣は同年4月25日に総辞職しました。

そうして時代は下り、2012年12月の総選挙で、単独過半数を大きく超える294議席を獲得して圧勝した自民党が政権に返り咲き、第二次安倍晋三内閣が誕生しました。

それに先立つ2012年9月の自民党総裁選の際、安倍首相は消費税を上げる前にデフレ解消をする、といいました。安倍首相は消費税の増税には消極的でしたが、法律になったものを無視することはできず、「法律どおり」2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。

せっかくアベノミクスによってデフレ対策が打たれ、2014年4月時点ではインフレ目標達成にかなり近いところまで行っていたのですが、消費税率を上げたことで景気は逆戻り。離陸し始めた状態で安定飛行に入っていなかった景気は、消費税の増税によって急失速してしまいました。

こうした状況を受けて、2015年10月の増税予定は一年半先送りされ、2017年4月の増税予定がさらに2年半先送りに。安倍首相が財務省の意向を退け、かろうじて踏みとどまったかたちでした。

現在、デフレは解消されつつありますが、脱却には至っていません。企業で人手不足の状況が生まれ、雇用回復に次いで当初の狙いである「賃金上昇」がようやく始まる、と思ったところで、政府は事実上の「移民」緩和政策を決めてしまいました。

過去3回の消費増税のうち、3%の税率で導入した1回目(1989年)は、バブル期で景気がよい状況でした。しかも物品税の減税と同時に行なったので、タイミングとしては悪くありませんでした。

しかし、税率が3%から5%に引き上げられた2回目(1997年)、5%から8%に引き上げられた3回目(2014年)の消費増税は最悪でした。いずれもデフレのときに行なったため、景気を大きく冷え込ませる結果となりました。

外国人労働者の流入が日本の賃金を押し下げていることは、このブロクでも過去に説明してきたように、はっきりしています。あまりにもタイミングが悪く、さらに2019年10月に消費増税を実行してしまえば、2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力はすべて水の泡でしょう。

現在のマスコミは、このようなことを知ってか知らずか、増税のことなど忘れてしまったかのように、韓国問題ばかり報道しています。財務省の発表を鵜呑みにした報道ばかりで、おそらく知らないのでしょう。

2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力が水の泡になるとはどういうことでしょう。結局、またデフレ円高に戻るということです。さらに、アベノミクスの大成果でもあった、雇用の改善もまた元に戻ってしまうということです。

再び、就活が最悪の状況に戻るということです。そうしてそれは、何をいみするのでしょうか。人は喉元すぎれば熱さを忘れ、という具合にわずか数年前のことでも忘れてしまいます。以下の動画は2013年に放映されていた東京ガスのCMです。

あまりにもリアルで、生々しい就活の悲惨さが批判の的になって、このCMは放送中止になりました。


以下の動画は、就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"というタイトルです。

ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がおかしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の渦中へと引きずり込まれて行くさまを描いています。 

作成は、「吉田まほ」さんです。2012年度の作品です。


この時代の就活ではいわゆる「コミュニケーション」を重視していました。

デフレの時期にはモノやサービスが売れないので、企業としてはなるべく新規採用を控えて、採用するにしても、デフレ対応型の無難な人材を採用する傾向が強かったものです。

デフレ対応型の無難な人材とは、どういう人材かといえば、「コミュニケーション能力に長けた人材」です。だから、採用の面談においても突飛な質問をするにしても、過去のデフレ期には「コミュニケーション能力」に関するものが多かったものです。

結局のところ、デフレという厳しい環境の中で、顧客や、会社や会社の中で働く人やに共感でき、苦難をともに乗り越えて行く人材が重視されたのです。創造性などは、あったほうが良いということで、最優先の資質ではありませんでした。

いずれかの方面に優れた才能や能力があったとしても、それはデフレの世の中ではなかなか役に立たず、結局そのような才能がなくても、コミュニーけション能力にたけた人間が一番無難だったのです。

デフレはモノ・サービスが売れず、創造性のある人材も登用されなくなるということで、想像以上に企業をかなり毀損してしまうのです。

以下は当時の就職面接を描いた動画です。声の詰まり方とかリアル過ぎてこちらがハラハラする。それにしても、このような面接現在なら考えられません。まさに、買い手市場だったからこそこのような面接になっていたのです。


そうして、このような面接が行われたのは、何も本人が悪いとか、面接官が悪いということではないのです。結局デフレのため、採用側は採用に慎重だったのが理由です。

企業その中でも、まともな企業であれは、デフレだからとっいって、一定期間に極端に採用を減らしていては、将来の管理職や幹部候補を選ぶ段になったときに、候補者がいないという状況になりかねたいため、無理をしてでも採用をしていたのです。

今年の新卒のある男性新入社員に綺譚のないところを聞いてみたところ、なかなか思った就職先に就職できなかったので、「就職浪人したい」との旨を就職担当の先生に伝えたところ、「就職状況は今は良いがいつ悪くなるかわかったものではないから、今からでも頑張って、とにかく就職しろ」と言われ、そこから就活を再開し就職したそうです。

この先生は正しかったようです。今後増税でこのようなことになるのは目に見えています。今後、就職面接でコミュニケーションが重視されることになるでしょう。

私は、安倍政権には、柔軟になっていただきたいと思います。今後、増税によって悪影響が出た場合には、柔軟に対応して、減税も実施していただきたいものです。いよいよになれば、機動的な財政政策と、金融政策を実行して、デフレから完璧脱却していただきいものです。

令和年間は、平成年間のように経済政策を間違い続け、ほとんどの期間がデフレスパイラルの底に沈んでいたというようなことは繰り返さないで欲しいです。

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2019年7月31日水曜日

五輪まで1年で何が起きるか? 消費増税で大規模景気対策へ、金正恩氏訪日の仰天展開も―【私の論評】景気の低迷で、ちゃぶ台返しの5%減税の仰天展開も(゚д゚)!


2020年東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場

 東京五輪・パラリンピックまで1年を切った。開幕までに政治、経済でどのようなことが焦点になるだろうか。

 まず、政治日程を確認しておこう。9月17日から30日までニューヨークで国連総会がある。その直後、10月1日から消費税率が10%へ引き上げられる。同22日は即位礼正殿の儀がある。同31日は英国の欧州連合(EU)離脱の期限だ。秋のどこかのタイミングで臨時国会が開かれ、世界経済の情勢や消費増税の影響を考慮し、補正予算・景気対策となるだろう。

 来年1月からは通常国会が開かれ、3月までは来年度予算が審議される。そして7月24日から8月9日まで東京五輪、同25日から9月6日までパラリンピックが開催される。

 その間の7月30日には小池百合子都知事が任期満了を迎え、る。五輪前のドタバタであるが、特例法でも制定されない限り、五輪直前に都知事選が実施されることになる。

 安倍晋三政権は、現在歴代3位の長期政権だ。今年8月に佐藤栄作、11月に桂太郎を抜き歴代最長になる見通しだ。

 長期政権の利点は外交で存在感を高められることだ。外交といえば、あと1年で北朝鮮との関係がどうなるのかに関心が寄せられている。

 この意味で注目すべきは、まず9月の国連総会だ。例年であれば、ここで日米首脳会談が開かれる。トランプ米大統領は、先日、板門店(パンムンジョム)で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談し、再会談する意向を示したが、今度は正恩氏が訪米する番だ。その場として、国連総会は好都合である。

 その際、トランプ大統領の計らいで日朝首脳会談もありえる。その後、来年7~8月の東京五輪に正恩氏の訪日という仰天の展開もあるかもしれない。

 内政については、憲法改正が重要課題になる。カギを握るのは国民民主党だ。先日、玉木雄一郎代表がインターネット番組の「文化人放送局」において憲法改正を議論すると明言していた。筆者はたまたまその場にいたが、野党の中で埋没しないためにも、安倍首相が秋波を寄せている今が好機と判断しているのだろう。

 国民民主党の成り立ちからみても改憲勢力のはずだし、ここでしっかり意見を出さないと、草刈り場になるか、立憲民主党にのみ込まれる結果になってしまうだろう。秋の臨時国会での国民投票法改正、来年通常国会での憲法改正発議までいけるかどうかが注目だ。

 経済では、やはり10月の消費増税が心配だ。安倍首相は、経済対策の用意があると明言している。米中貿易戦争を受けた中国経済の減速、英国のEU離脱を受けた欧州経済の低迷、中東での偶発的な紛争の恐れなど、火種がたくさんある。

 安倍首相は、政治的に消費増税は不可避だが、増収分を吐き出して景気対策に使えばいいと考えている節がある。たしかに政治家らしい発想だ。

 秋に衆院解散との見方もあるが、消費増税後なのでやりにくい。となると、来年の衆院解散に向けて各党がどう動くのかが注目点だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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オリンピックまでの後1年ということで、今後一年は確かに高橋洋一氏の予想の通りになる確率が高いと思います。

ただし、増税の悪影響は、思ってもみなかったこともおこることが考えられます。やはり消費税への10%増税はかなりの悪影響を及ぼす可能性が大きいです。これについては、以前もロンドンオリンピックの例をあげて解説したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」―【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!
このまま増税すると大変なことになる。安倍総理の決断は?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。まずは、以下に英国の税収動向のグラフをあげておきます。


当時のキャメロン政権は「緊縮財政路線」を決め、ロンドンオリンピックの前の年の1月に「付加価値税率(日本の消費税にあたる)」を17.5%から20%へ引き上げました。その結果、どうなったかといえば、税収は増えるどころか、付加価値税の税収はかなり減りました。
窮余の一策が、中央銀行であるイングランド銀行(BOE)による継続的かつ大量の紙幣の増刷(量的緩和)政策でした。BOEといえば、世界で初めて金(きん)の裏付けのない紙幣を発行し、フランスなどとの戦争費用を政府に提供した中央銀行であり、その大胆さは世界でもずぬけています。 
BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込んでいました。BOEはリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切ったのですが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。 
インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっていられず、12年5月にはリーマン前の3.7倍にまでマネタリーベース(MB)を増やしました。幸い、インフレ率は需要減退とともに同年5月には2.8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。
英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。 
その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。 
この増税により、雇用がかなり悪化しました。特に若者の雇用が悪化しました。皆さんの中には、テレビなどの報道で英国で若者の過激なデモがしょっちゅう報道されていたのを覚えているかもしまれません。

その後、英国の保守政権は、緊縮財政を繰り返しましたが、最近登場したボリス・ジョンソン新首相は積極財政に転じることを国民に約束しています。

この記事にも書いたとおり、積極財政に転じる、英国は、ブレグジットの悪影響をおさえこみ、ソフトランディングに成功するかもしれません。

その後、増税に転じた日本は、どちらかというと、イールドカーブ・コントロールで抑制敵な緩和をする日銀の金融政策ともあいまって、かなり経済が悪化することが予想されます。

ただし、経済が悪くなることははっかりしています。悪くなるのはわかりきっているのですが、どの程度になるかが問題です。

今回の増税は、2014年の8%からさらに10%にあげるというものです。10%というと、かなり切りがよく、誰もがすぐに消費税の計算をできますから、これはかなり個人消費が落ち込むことが予想できます。

さらに、日銀は現在物価目標を達成していないにもかかわらず、抑制敵な金融政策をしていることから、イングランド銀行のような積極果敢な緩和を行うとは考えられず。そうなると、かなり景気が落ち込むことが予想できます。これは、他ならぬ安倍総理が一番了解しているでしょう。

上の高橋洋一氏の記事では、「安倍首相は、政治的に消費増税は不可避だが、増収分を吐き出して景気対策に使えばいいと考えている節がある」としていますが、景気対策の規模にもよりますが、たいていの経済対策は一時的なものであり、これで景気を支え続けるのは至難の技です。だからよほど大型の景気対策を長期にわたって打たなければ経済がかなり悪化することが予想されます。

安倍総理は昨年の9月以下のような発言をしています。

「私もできれば上げたくありません。それは本当にそうなんですが、昨年の衆院選で約束した幼児教育の無償化を来年10月から始め、再来年、高等教育の無償化をスタートするには、やはり消費税を上げなければなりません」
産経ニュース 9月30日

これは安倍首相が9月19日に党のインターネット番組に出演した際の発言です。消費税増税はこれまで2度にわたって延期されてきました。
今回も「再々延期」に踏み切るのではないかという憶測もありましたが、結局増税に踏み切ることになりました。昨年の衆院選で自民党は消費税増収分を幼児教育の無償化などに充てると公約して勝利したので、「再々延期」すると公約違反となり、さらに安倍首相自身が「アベノミクス」の失敗を認める形になりかねないためです。
増税による税収の一部を教育無償化の財源にするのは衆院選の公約ですが、消費税増税中止を訴える産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員の田村秀男氏は、それを「方便同然」と批判しています。「消費税増税によって中低所得層を最も痛めつけておいて、子弟の教育費負担を軽減するというなら、増税せずに景気を拡大させ、それによる税収増を無償化に充当するのが合理的というものだ」としています(産経ニュース 9月23日)。

増税による悪影響が、かつの英国のように甚大となっても、財務省は大型景気対策に二の足を踏み、日銀も抑制敵な緩和から抜け出す気配がないなどのことになれば、次の衆院選挙では負ける可能性も濃厚です。安倍総理の宿願でもある憲法改正ははるかに遠のくことになります。安倍総理危機感を募らせることになるでしょう。

安倍総理としては、それは何よりも避けたいところです。そうなると、金正恩氏訪日の仰天展開よりも、さらに大きな仰天展開も考えられます。それは、消費税減税です。

麻生太郎・副総理兼財務相らは増税断行を目指してきたのですが、4月16日から始まった日米貿易交渉で風向きが変わっていました。トランプ政権は消費税の輸出戻し税を自動車などへの「輸出補助金」と批判し、10月からの消費増税を問題視したのです。

安倍総理と麻生財務大臣

もともと、日本経済は悪化する傾向が顕著でした。2019年以降、トランプ政権による対中国冷戦の強化、中国経済や欧州経済の悪化、残業規制の強化、2014年の消費税増税による個人消費の悪化の継続など内外の様々な下振れリスクがありました。これが、新たなの消費税造成で顕在化した場合、日本の実質GDPは最大で数%程度減少する可能性もあります。

これは、おそらくリーマンショック当時のGDPマイナス3.7%に匹敵する事態です。逆に舵を切れば、景気減速を防ぎ、選挙にも有利、米国の圧力もかわす一石三鳥になります。それが「サプライズ減税」もあり得るとの噂となりました。結局のところ、安倍総理は増税を決めたのですが、この状況は今でも変わっていません。

今後、かなり経済が落ち込み、憲法改正が遠のき、選挙でも負けそうな事態となれば、安倍総理が減税に踏み切るという展開も考えられます。それも、8%に戻すというのではなく、5%にするという仰天展開もあり得ると思います。そうなれば、まさに安倍総理のちゃぶ台返しです。

そうなれば、麻生財務大臣は自ら辞任するか、それ以前の内閣改造で安倍総理が入閣させないか、入閣させたとしても財務大臣からはずということも考えられます。

いずれにせよ、今後1年間はどんな仰天展開が起こるか、注目していきたいです。

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2019年6月11日火曜日

迫ってきた消費増税の判断時期 「参院選公約」と「骨太方針」がカギ! 景気対策は補正予算で対応へ ―【私の論評】令和年間を平成年間とは対照的に、全世代にとって希望に満ちた年間にすべき(゚д゚)!

迫ってきた消費増税の判断時期 「参院選公約」と「骨太方針」がカギ! 景気対策は補正予算で対応へ 

政府が今月策定する経済財政運営の指針「骨太方針」の原案が判明したと報じられている。



 それぞれ報道によって扱いが微妙に異なる点が興味深い。ある報道では、骨太方針原案のポイントとして「就職氷河期世代の約100万人を集中支援し、今後3年間で正規雇用者を30万人増やす」との数値目標が掲載されている。また、「社会保障制度改革を進めて年金・介護は法改正も視野に、2019年末までに結論」とされている。

 これについては、アベノミクスによる雇用の成果をさらに40歳前後の就職氷河期世代にまで行き渡らせようとする点は評価できるだろう。

 そのほか、「景気次第で機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行」ともされ、景気優先を強調し、米中貿易摩擦などの悪影響が波及した場合に追加経済対策を講じる姿勢としている。

 本コラムでも、米中貿易戦争や英国のブレグジット(EU離脱)などはリーマン・ショック級の経済変動を起こしうるという見方を示しているが、加えて、国内景気もぱっとしない。

 7月以降に予定されている参院選の前にも、安倍晋三政権は景気対策を検討しているとも噂されているので、消費増税による景気腰折れを懸念し、その対策を抜かりのないようにするとの見方は当然ありうるだろう。

 他方、骨太方針原案に「(消費税率10%への)引き上げを予定している」と明記する方針で、その後、与党内の調整で、6月下旬に閣議決定するという報道もある。

 その報道では、幼児教育や低所得者世帯対策は消費増税が前提であるとし、いまさら増税の撤回は困難であるとしている。

 たしかに消費増税を予定通りやらざるを得ないということは、今年度予算において10月からの消費増税が織り込まれ、それを前提とした予算が成立した3月末からいわれている。

 しかし、消費増税なしの補正予算を提出すれば、予算が成立しているからというのは理由にならなくなる。

 特に参院選で景気対策という話になれば補正予算は必要になってくるので、その中身として消費増税なしという選択肢もありえる。

 こうしたなか、自民党は7日に参院選での公約を発表し、「10月に消費税率を10%に引き上げる」と明記した。

 一方、安倍首相は、連日エコノミストとの非公式な会合を持っている。多くのエコノミストは、これまで消費増税について「影響は軽微である」と予想し、外してきた。

 こうした事実を安倍首相はよく知っているはずだが、最終的にどのような結論を出すにせよ、一応話を聞いておかないとまずいと思ったのだろう。

 6月末の大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議でも、世界経済は当然、主要課題になる。

 世界の中で、日本経済としてできることを踏まえ、同時に参院選(ひょっとしたら衆参ダブル選)を占う意味でも、骨太方針の行方には要注意である。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】令和年間を平成年間とは対照的に、全世代にとって希望に満ちた年間にすべき(゚д゚)!

2012年12月に発足した安倍政権は、金融政策と財政政策、成長戦略を「3本の矢」とする経済政策の推進を表明。日銀は13年1月の政府との共同声明で2%の物価安定目標を掲げました。足元では物価下落が継続するという意味でのデフレではない状況となったものの、2%目標の達成には程遠いです。日銀の最新の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、21年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比見通しは1.6%上昇にとどまります。

  3本の矢は着実に行われたわけではない、第二の矢は、増税で逆をやってしまった。
  第一の矢はイールドカーブコントロールを導入して以来十分ではない。

先月20日に発表された1-3月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は小幅のマイナス成長の市場予想に反して前期比年率2.1%増となりましたが、民需の弱さを背景とした輸入の減少が成長率を押し上げました。デフレを脱却する途中に増税したことによって、相当GDPに対する押し下げ効果は大きいです。リーマンショックが発生した08年度の実質GDP成長率(前年度比3.4%減)と同程度のショックが起こる可能性は十分あります。

冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるように、消費増税に対する安倍首相の最終判断は、6月末の20カ国・地域(G20)首脳会合(大阪サミット)のプロセスのどこかで下されることになるでしよう。伊勢志摩サミットのG7のときのように、

安倍首相や麻生太郎財務相らはリーマンショック級の出来事が起こらない限り、予定通り10月に消費増税に踏み切る方針を繰り返し表明しています。増税による悪影響によりリーマン級の不況が訪れる可能性は大です。

リーマンショックという言葉は和製英語であり、震源地である欧米は日本よりもはるかに立ち直りがははやいものでした。なぜそのようなことになったかといえば、リーマンブラザースの破綻に端を発した不況に対して各国の中央銀行は迅速に大規模金融緩和を実施したにもかかわらず、日銀だけがそうしなかったためです。

リーマン・ブラザーズ破綻後の不況に各国は大規模な金融緩和を行ったが、日銀だけは実行しなかった

そのため、震源地であるはずの欧米が不況からすばやく立ち上がり、日本だけが一人負けの状態になりました。だからこそ、欧米ではリーマンショックなる言葉は生まれなかったのでしょうが、一人負けの日本にだけ「リーマンショック」という言葉があるわけです。

そのため私は、このブログでは「リーマンショック」とは呼ばずに「日銀ショック」と呼んでいます。そのほうが実体をあらわしています。他国の銀行が大規模な金融緩和を行っているときに、日銀だけがそれを行わなければ、デフレがさらに進化し、円高になるのは当然の帰結です。

もし今回日本が増税して不況になっても、日銀がさらなる量的緩和に踏み切らなかつた場合、日本はふたたびり破滅の底に沈むことになります。

金融政策だけでデフレ脱却を図ることについては限界があります。それを打開するために財政の力が必要です。教育無償化など所得再分配政策について消費税のような逆進性の強い税目を充てるべきではなく、教育国債を発行し、日銀が市場から国債を買い取る形で、人材育成と量的緩和を同時に進めるべきです。マネタイゼーションという言葉は悪いイメージがありますが、デフレから脱却するときには必要です。

デフレは、資本主義にとって『死に至る病』ですが、国民にとって非常に分かりにくい病です。デフレ下では個々人にとって正しい貯蓄などの行動が、経済全体を破壊してしまうという意味で、「不思議の国のアリス」の状態から一刻も早く脱却し、「普通の国のアリス」にいかに戻すかが課題です。

昨日は、このブログで「老後に2000万円不足」という金融庁のレポートについて掲載しました。金融庁のこのレポートは老後の2000万円不足を補うために、運用をすすめています。しかし、昨日も指摘したように、欧米に比較すると、投資に不慣れな日本人は、運用よりも貯蓄に走ってしまう可能性のほうが高いと思います。

人々がこぞって貯金をするということは、一見良いようにも見えますが、消費が落ち、内需が縮小することに直結します。そんなことになれば、国内景気が悪くなり、税収が減ります。そうなれば、また財務省は国民などおかまいなしに、増税するのでしょう。

いくつかの政策のミスが重なれば、本来順調に回復するはずの日本経済が奈落の底に沈む可能性も十分あります。

増税して、景気が落ち込めば、骨太の方針の「就職氷河期世代の約100万人を集中支援し、今後3年間で正規雇用者を30万人増やす」という目標も、絵に描いた餅に終わってしまいます。



そのようなことよりも、中国や韓国、欧米などとは異なり、現在世界で一番潜在可能性の高いとみられる日本は、財政・金融政策でデフレから脱出するというアベノミクスを成功させ、政策によりデフレを脱却する世界初のモデルを構築すべきです。

それによって、令和年間を平成年間とは対照的に、次世代を担う現在の若者にとっても、ロスジェネや他の世代の人々にとっても、希望に満ちた年間にすべきです。

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2019年6月10日月曜日

「老後に2000万円不足」金融庁レポートと消費増税の不穏な関係―【私の論評】財務省も金融庁も国民のことは二の次で自らの利益のため国政を操っている(゚д゚)!

「老後に2000万円不足」金融庁レポートと消費増税の不穏な関係

財務省が、ほくそ笑んでいる




老後資金「2000万円不足」は本当か?

先週末ごろから、「7月の選挙は衆参ダブル選ではなく、10月の消費増税は予定通りに行われる」という観測記事が出始めた。

7月の参院選における自民党の公約に、「本年10月に消費税率を10%に引き上げる」と書かれていることが判明した、というのがその根拠である。

これまで安倍総理も「消費増税は予定通り」と公言してきたので、既定路線に変更なしということなのだろう。たしかに、7月の参院選公約をそろそろ確定しないと、もろもろの作業が間に合わなくなるころだ。

自民党の参院選公約と同時並行で策定されるのが、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」である。この原案でも、「消費増税は予定通り」となっている。これが政府の正式案として閣議決定されるのは6月中下旬である。

自民党の公約、政府の骨太方針ともに、これから政府与党内プロセスを経て正式決定されるが、報道によれば、現状の案のまま決定される見込みという。

「べき論」からいうと、今の時期に消費増税を実施すべきではないのは、筆者のこれまでの本コラムを読んでもらえばわかるだろう。

筆者は単に(1)景気論から消費増税に反対しているのではなく、(2)財政論(今の日本の財政は健全で、消費増税を行う必然性はない)や、(3)社会保障論(消費税を社会保障目的税とする国はなく、社会保障拡充のためには歳入庁の創設が有効)の見地からも消費増税はおかしいという、日本では珍しい意見の持ち主である。

まず、(1)景気論がひどい。

福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は9日、共同声明を採択した。世界経済の下振れリスクとして貿易摩擦の激化を挙げ、「G20はこれらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」とした。にもかかわらず麻生財務大臣は、10月の消費増税を各国に説明したというのだから、まるで議長国として発表した共同声明を無視するかのような経済政策である。これでは日本の見識が疑われる。

福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議にて

(2)の財政論は、先週の本コラムで再三書いたので、繰り返さない。

今回の本題は、(3)の社会保障論だ。

6月3日に金融庁が公表した、資産形成に関する金融審議会報告書が話題である(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)。報道では、「95歳まで生きるには、夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」とされている。

報告書の中の記述は、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」である。

これは、審議会に提出された厚労省資料に基づく見解であるが、オリジナル資料は総務省家計調査(2017年)で、数字は夫65歳以上、妻60歳以上の高齢無職夫婦世帯の平均だ。

実は、同じ総務省の家計調査では、貯蓄額の数字も出ている。60歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は2366万円である。このため、不足額の2000万円は賄えることになる。

もちろん、高齢者世帯の貯蓄額は人それぞれだ。貯蓄はある意味で人生の結果でもあるので、格差は大きく、その分布はピンからキリまでわかれている。

平均は2366万円であるが、貯蓄額を低い世帯から並べたときにちょうど中央に位置する世帯の貯蓄額は、1500万円程度である。このため、「2000万円の金融資産の取り崩しが必要」というマスコミ報道について、過剰に反応する人が多く出てくるのだろう。

要するに、今でも高齢者世帯では貯蓄の取り崩しが行われているわけで、これを公的年金の不足のせいとみるか、それとも公的年金以上の支出水準を維持するために貯蓄した結果とみるかは、人それぞれであろう。

しかし、報告書で「2000万円の不足」と書かれ、それだけがマスコミ報道で切り取られているから、案の定、「今さら年金をあてにするな、自助努力しろ、と言うのはおかしい」という意見が多く出ている。これは、高齢者世帯の貯蓄額の数字を出さずに「2000万円の不足」と強調し、煽る報道のためである。ネットで過剰反応する人は、高齢者世帯の貯蓄額も調べない人ばかりであろう。

金融庁と財務省の思惑

ここで重要なのは、公的年金について「不足している」、「ひょっとしたら破たんしているかもしれない」と一般の人が考えることは、消費増税を狙う財務省にとって好都合である、ということだ。「年金充実のためにも消費増税」と主張できるのである。

そこで、今回の金融庁による報告書が意味を持ってくる。金融庁のトップは麻生財務大臣である。金融庁はもともと財務省から分離された組織で、今の金融庁幹部は財務省に入省した官僚だから、財務官僚と同じ遺伝子を持っているといってもいい。

マスコミが過剰反応し「年金が不足する」と報じるのを金融庁は見越して、報告書でもその部分を強調したはずだ。それが結果として、「年金充実のための消費増税」をサポートするわけだ。

年金が少ない、あるいは破たんすると煽って金融商品を売りつけるのは、金融機関の営業ではよくある話だ。今回の金融庁の報告書は、まるで金融機関のパンフレットのように金融商品を推奨している。金融庁が金融機関の営業を後押ししている点でも異様なのだ。

年金制度「破綻疑惑」の読み方

では、日本の年金制度は破綻しているのか? 筆者の答えはノーだ。

そもそも年金とは、長生きするリスクに備えて、早逝した人の保険料を長生きした人に渡して補償する保険であるといえる。

65歳を年金の支給開始年齢とすれば、それ以前に亡くなった人にとっては、完全な掛け捨てになる。遺族には遺族年金が入るが、本人には1円も入らない。逆に運よく100歳まで生きられれば、35年間にわたりお金をもらえる。

極端に単純化して言えば、年金とは、平均年齢よりも前に死んだ人にとっては賭け損だが、平均年齢以上生きた人にとっては賭け得になるものだ。このように単純な仕組みなので、人口動態が正しく予測できれば、まず破綻しない。

具体的に言えば年金は、数学や統計学を用いてリスクを評価する数理計算に基づいて、破綻しないように、保険料と保険給付が同じになるように設計されている。確率・統計の手法を駆使して、緻密な計算によって保険料と給付額が決められている。

年金制度を実施する集団について、脱退率、年金受給者が何歳まで生きているのかという死亡率、積立金の運用利回り(予定利率)など、将来の状態の予想値(基礎率)を用いた「年金数理」で算出している。

2004年の年金制度改革で、給付額についてマクロ経済スライドが導入された。端的に言えば、保険料収入の範囲内で給付を維持できるように、数理計算で給付額を算出しようということだ。物価や賃金が上がると、それに連動して給付額は増えるが、現役世代の人口減少や平均寿命の延びを加味して、給付水準を自動的に調整(抑制)する仕組みだ。

年金は掛け捨ての部分が大きくなれば保障額が多くなり、小さければ少なくなる。つまり、現役世代の人口が減って保険料収入が少なくなろうが、平均寿命が延びて給付額が増えようが、社会環境に合わせて保険料と給付額を上下させれば、破綻しない制度ということだ。

経済界も加担している

年金不安の根拠として必ず持ち出されるのが、「65歳以上の高齢者1人を、15~64歳の現役世代X人で支えることになる」という理屈だ。

内閣府の「高齢者白書」によれば、2020年には2人、2040年には1・5人で1人の高齢者を支えることになる。このような人口減少はすでに十分予測されており、年金数理にも織り込まれている。つまり、人口減少は予測通りに起こっているので、社会保障制度での心配は想定内である。

にもかかわらず、一般国民にとっては、「年金は間もなく破たんする」という印象が強い。消費増税を目論む財務省が、社会保障費に対する世間の不安を煽り、マスコミがそれを増幅しているからだ。

「年金は保険」という認識が一般人に浸透すれば、消費増税ではなく保険料アップで対応すればいいという、至極まっとうな指摘が出てくる。しかしそうなると、予算編成と国税の権力を握り「最強官庁」の名をほしいままにしてきた、財務省の屋台骨が揺らいでしまう。

つまり、財務省としては「年金は社会福祉であり、今は原資が不十分な状態」という誤解が広まれば広まるほど、「社会福祉は税金でまかなうものだから、消費増税しかない」という俗論がまかり通るほど、好都合なのだ。

その意味では経済界も、「年金は保険」という認識が世間に浸透すると困る立場にある。「保険料の引き上げ」という本来の解決策がとれないのは、経済界の強硬な反対もある。なぜなら、年金保険料は労使折半だからだ。

企業は従業員の保険料の半分を負担しているため、負担を上げてほしくない。保険料アップで年金がまかなえるとなれば、会社負担が増えるのは明らかだ。だから、広く社会一般に負担を押し付ける消費増税の方がマシだと経営サイドは考えている。

財務省は年金制度の成功例として、社会保障が充実している北欧をしばしば引き合いにするが、それらの国における社会保障の充実が社会保険料負担、それも労働者というより経営サイドの大きな負担でもたらされていることには、決して言及しない。

そんな財務省の意向のもとで消費増税を実行すれば、かえって将来の社会保障制度も危機にさらされてしまうだろう。

【私の論評】財務省も金融庁も国民のことは二の次で自らの利益のため国政を操っている(゚д゚)!

さて、今回話題になっている、6月3日に金融庁が公表した、資産形成に関する金融審議会報告書ですが、正式名称は、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書、「高齢社会における資産形成・管理」です。PDFで56ページに及ぶ提案書です。

オリジナルの文書に関心のある方は、リンクを張っておくので、よろしければご覧になってください。

この文書のキモの部分だけを抜き出すと、以下のようになります。
・定年の退職金が、バブル期のピークからすでに3~4割ほど減少している
・年金だけで暮らすのは厳しく、試算では毎月約5万円ほど貯金等からの持ち出しが必要となる
・つまり100歳近くまで生きるなら、2000万円は必要なので、準備しなさい

SMBCコンシューマーファイナンスは、2019年1月7日~9日の3日間、30歳~49歳の男女を対象に「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」をインターネットリサーチで実施し、1,000名の有効回答を得ました。

全国の30歳~49歳の男女1,000名(全回答者)に対し、毎月自由に使えるお金はいくらあるか聞いたところ、全体の平均額は30,532円。家族構成別にみると、未婚者は38,674円、子どものいない既婚者は28,565円、子どものいる既婚者は22,096円となりました。

2018年に同社が実施した調査と比較すると、平均額は2018年30,272円→2019年30,532円と微増しています。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、驚いたことに、30、40代では23.1%もの人が貯蓄セロと答えていることです。



このグラフからは、貯蓄が0円~50万円以下という人が、何と47%と、半数近く占めることが分かります。

年代別の報告では、

30代・・2018年198万円→2019年194万円(4万円減)
40代・・2018年316万円→2019年196万円(120万円減)

と、40代では、たった1年で、平均が120万円も減少しています。

平均で出すと分かりにくいですが、これまでの流れから見ると、全体的に額面が落ちたのではなく、おそらく「ゼロに近い人の頭数」が増えたのではないでしょうか。

この人たちが、仮に35歳から60歳までに2000万円貯金するには、月々8万円を貯金しなければならないことになります。衝撃です。

そんなことが出来るくらいなら、現時点の貯蓄が50万円以下であるはずがないです。

しかし、落ち着いて、今一度この金融庁の文書をよく読んでみると、実はこの報告書にはは、国民に対して「貯金しろ」という言葉は出てこないです。

人々がこぞって貯金をするというのは、消費が落ち、内需が縮小することに直結します。この文書をよく見ると、「預金」ではなく、「運用」という言葉が頻繁に出てきます。
そしてご丁寧に、「金融サービスのあり方」と銘打った、銀行に対してのアドバイスの項目も含まれています。

私は、この文書のキモは、国民の老後を考えているものではなくて、長引く金融緩和で疲弊した銀行が、顧客に資産運用商品を売りやすくするためのキャンペーンを、金融庁が張ったのではないかと見ています。無論、上で高橋洋一氏が語ったように、この背景には無論財務省の増税という意図もあるでしょう。

しかし、将来の年金の不安を煽ることで、銀行が個人資産コンサルティングに入り込みやすい顧客の心理状況をつくり、なんとか銀行の業績を底上げしようという意図があるのではないでしょうか。

もはや構造不況業種の銀行業

おそらく銀行界隈では、今後、老後のための個人向け資産を長期運用する類の商品が続出するのではないでしょうか。

若・中年層が老後に突入する頃、麻生大臣はもちろん、財務省のおエラ方も定年を迎え、とっくに現場からいなくなっています。その時、世の中がどうなっていようが、そんなことに彼らは興味がないのでしょう。彼らが心配するのは、常に目先の話なのでしょう。

上の高橋洋一氏の文章のなかにも、「今回の金融庁の報告書は、まるで金融機関のパンフレットのように金融商品を推奨している。金融庁が金融機関の営業を後押ししている点でも異様なのだ」としています。

結局現状の、銀行等の金融機関はそれほど窮地に立たされているということでしょう。

欧米に比較すると、投資に不慣れな日本人は、運用よりも貯蓄に走ってしまう可能性のほうが高いと思います。人々がこぞって貯金をするということは、一見良いようにも見えますが、消費が落ち、内需が縮小することに直結します。そんなことになれば、国内景気が悪くなり、税収が減ります。そうなれば、また財務省は国民などおかまいなしに、増税するのでしょう。

財務省も金融庁も国民のことなどどうでも良いのでしょう。とにかく、天下り等のために有利な状況をつくっておきたい一心で、増税したり金融機関を助けようとして国政を操っているのです。

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2019年4月18日木曜日

アメリカの株高と金利安定は長期化しそうだ  日本は消費増税を取りやめたほうがいい―【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!


東洋経済オンライン / 2019年4月17日 7時40分

NYダウは16日の時点では回復している


アメリカ株の回復が続いている。ニューヨークダウ平均などは最高値圏まであと一歩のところまで上昇している。

筆者が2月に執筆したコラム「アメリカ株は『もう上がらない』と言い切れるか」(2月12日配信)では、早期バランスシート縮小停止などFRB(連邦準備制度理事会)による緩和政策が、新興国を含めた世界経済の安定をもたらし、一部で高値警戒感がささやかれていたアメリカ株を中心に、リスク資産の上昇をもたらす、との見通しを示した。

■「FRBの豹変」は2016年と似ている

その後実際に、FRBは「政策スタンスのハト派化」を強めた。3月半ばのFOMC(連邦公開市場委員会)において、多くのメンバーが政策金利を当面据え置くことを示し、そしてバランスシート縮小を9月早々に停止するとした。

FRBの政策判断の背景には、成長率、インフレが下振れるリスクが高まっていることがある。しかし、2018年後半のアメリカを震源地とした株式市場の大幅な下落は、FRBの判断ミスに対する懸念が主たる要因だった。FRBの政策については、従来からドナルド・トランプ大統領がたびたび批判するなど、混乱している状況をどうみるか、考え方はさまざまだろう。

実際には、インフレ率が2%前後で安定しているにもかかわらず、FRBが政策金利を3%台へ利上げすることへの懸念は、トランプ大統領だけではなく多くの投資家に共有されていた。昨年末から年初早々にジェローム・パウエル議長などが利上げ見送りのメッセージを早々に示し大きく方針転換を行い、金融市場が発するリスクシグナルに柔軟に配慮した、アグレッシブな政策変更は妥当と筆者はみている。

このFRBの豹変は、金融市場が動揺した後に路線変更を行った2016年初と似ている。当時も、2016年初に1年間に4回の利上げを想定していたFRBは、あっさりと利上げを見送り、その後の景気回復と株高をもたらした。2016年と2019年の共通点を指摘する声は増えているが、年初から筆者自身はこの点を強く意識していた。

依然、欧州などの経済指標は停滞している。だが、下落していたグローバル製造業景況感指数は、3月に下げ止まりの兆しがみられる。金融市場で悲観論が強まった2016年初に世界経済が下げ止まったが、この点でも2019年と2016年は似てきている。年初から株高のピッチが速いため多少のスピード調整はありうるが、筆者は「2019年は金利安定とリスク資産上昇が併存し続ける可能性が高い」とみている。

日本の経済メディアでは、筆者からすれば根拠が曖昧にしか思えない「金融緩和の弊害」が強調され、また金融政策の役割や効果を軽視する論調が目立つ。実際には、一足早く成長率が高まり、中央銀行が利上げを始めたアメリカでも、金融緩和的な状況を保つことが重要である構図は、2019年になっても変わっていない。

主要な先進国、さらには多くの新興国で経済成長率が2000年代よりも高まらない中で、中銀が経済を浮上させる景気刺激的な総需要安定化政策を継続することが必要ということである。

また、労働市場において、アメリカや日本などで大幅な失業率の低下がみられている。失業率低下が、賃金やサービスインフレの上昇につながっていないことには、さまざまな議論があるが、筆者は依然として日米ともに失業率には低下余地があると考えている。

もはや10年以上も経過するが、2008年の世界的な金融危機による経済ショックが極めて大きかったが故に、表面的な失業率の改善などが示すよりも経済全体にはなおスラック(余剰)が残っており、それが低インフレの長期化をもたらしているとみている。

■「消費増税」=「緊縮財政政策」への危機感が薄すぎる

FRBも、2019年初からのハト派方向への転換に加えて、6月は大規模な会議を開催する予定だ。そこでは、これまでFOMC等で議論してきた、次の景気後退に備えた政策枠組みなどが話し合われる見込みだ。

国民の経済厚生を高めるための金融政策の在り方などについて、重鎮の経済学者なども参加する予定であり、具体的な、インフレ目標の引き上げなどを含めた金融政策のフレームワークなどもテーマになるという。経済安定、低インフレが長期化する中で、インフレ上振れを許容するアグレッシブな金融政策の妥当性が議論されるのではないか。

アメリカでこうした議論が活発になっていることには、低インフレ、低金利が長期化していることがある。これは、主要国経済の「日本化」ともいえるが、この状況に経済学者やエコノミストが強い危機感を感じていることが、政策議論が活発になっている要因の背景となっている。

本来であれば2%インフレの目標実現に一番遠い位置にある日本において、こうした議論がより真剣に行われる必要があるはずだ。ただ、実際には反対のことが起きている。日本銀行の金融政策運営は、2018年からは、利上げバイアスが強い事務方の影響が増している。根拠が曖昧な「金融緩和の弊害」が強調されるなど、金融政策に関する議論について、日本では2012年以前のように、アメリカなどとの対比でかなり低調になっているようにみえる。

一方、2019年10月予定の消費増税については、景気指標の下振れを受けて見送られる可能性がやや高まっているが、可能性は五分五分だろうか。もし増税が実現すればGDPを0.5%前後押し下げるマイナス効果があり、日本経済は主要先進国の中で最も緊縮的な状況に直面する、とみている。だが、日本の経済学者などは、緊縮財政政策への危機感が薄いままである。

こうした状況では、これまでも連載で繰り返し述べてきたが、「アメリカ株>日本株」、のパフォーマンス格差が続く可能性は依然として高いとみる。こうした構図が変わるには、日本銀行による金融緩和徹底は言うまでもないが、消費増税の取りやめ、あるいは家計部門への負担を相殺する追加的な財政政策の発動が必要だろう。

村上 尚己:エコノミスト

【私の論評】増税凍結の判断は連休開けの5月〜6月にかけての可能性が高まった(゚д゚)!

増税などすべきでない理由は、このブログでも何度か掲載してきました。私としては、ぞ増税しないのがごく当然であり、増税するのは異常であるとしか思えません。

特に、14年4月に増税したあとのことを考えれば、10月に再度増税するということは狂気の沙汰としか思えません。

しかし、財務省の増税キャンペーンに煽られたのか、多くの頭の悪い政治家や、マスコミ、それに追随する識者など、あたかも増税は既定路線であるかのような口ぶりで、増税を語っています。

しかし、そうとばかりはいえないことが言えないような事態も生じています。

10月に実施予定の消費増税について、自民党の萩生田光一幹事長代行は本日、日本銀行が7月に発表する6月の企業短期経済観測調査(短観)などで示される経済情勢次第で延期もあり得るとの認識を示しています。

同党幹部が具体的な判断材料を示して増税延期に言及したのは初めてです。市場は反応薄でしたが、夏の参院選を控え、与党幹部から同様の発言が続けば波乱要因となる可能性もあります。

萩生田氏は18日のインターネット番組「虎ノ門ニュース」のジャーナリスト、有森香氏の番組で、10月の8%から10%への消費税率引き上げに関し、「景気が回復傾向にあったが、ここに来て日銀短観含めて落ちている。6月はよくみないといけない」と指摘しました。

その上で、「本当にこの先、危ないぞというのがみえてきたら、崖に向かってみんなを連れていくわけにはいかない。そこはまた違う展開があると思う」と語りました。同氏は党総裁特別補佐、官房副長官などを歴任しており、安倍晋三首相の側近として知られます。

萩生田光一氏

夏には参院選も予定されています。萩生田氏は増税を「やめるとなれば、国民の了解を得なければならないから信を問うということになる」としましたが、衆参同日選の可能性については「ダブル選挙というのはなかなか日程的に難しい。G20(20カ国・地域)サミットもある」と否定的な見方を示しました。

以下に萩生田氏の上記発言の部分を含む動画を掲載します。下の動画は、消費税の話題から始まるように設定しています。




消費増税を巡り、政府は世界的な経済危機や大震災などリーマンショック級の出来事がない限り、予定通り実施する方針を示しています。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、政府の考え方は「全く変わらない」と語りました。

日銀が4月1日に発表した3月調査の短観では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス12と、昨年12月の前回調査から7ポイント悪化しました。悪化は2四半期ぶりで、悪化幅は2012年12月調査(9ポイント悪化)以来の大きさでした。6月調査は月末に開かれるG20サミット終了後の7月1日に発表の予定です。

消費増税を巡っては、同党の西田昌司参院議員も18日のインタビューで、完全にデフレ脱却という状況ではなく、景気回復が実感できないとの声も多いため、現在の経済状況を「事実として受け止めれば消費増税という選択肢はあり得ない」と指摘しました。

増税延期論者は実際は党内にも「それなりにいると思う」と付け加えました。10月からの幼児教育の無償化は消費増税分が財源だが、延期の場合は「国債発行する以外にはない」と述べました。ただし、以前も指摘したように、日本政府の借金など、負債だけではなく資産も加味すれば、ゼロであり、米英よりもはるかに財務は良い状況にあります。

さらに、日銀が金融緩和で、市場から国債を買い取ってきたため、市場では国債が少ない状況にあるうえ、国債の金利もご存知のようにあがっていません。この状況では、国債をある程度刷り増ししたところで、何の支障もありません。というより、国債を発行することがすべて悪であるかのような考えは全くの間違いです。

西田昌司参院議員

このような主張がでてきたということは、無論自民党内でそのような意見の人が一定以上存在することを示していると考えられます。

ただし、安倍総理も現状では、予定通り増税するとしていることから表だってはっきりとはいえない雰囲気があるものと考えられます。安倍総理やその側近たちは、財務省や増税賛成の他の大勢の自民党の議員の議員らの手前、本当は増税などやりたくないにもかかわらず、はっきり言える状況ではなく、その機会を伺っているのではないかと思います。

このブログでは、最近は経済が停滞する傾向がみられつつあると掲載したことがあります。ただし5月には元号が変わり、平成から令和と変わり、祝賀ムードがあり、さらには27日から始まるゴールデンウイークの10連休があります。そのため、景気が目立って落ち込むことはないと思います。

ただし、その反動と経済の停滞が、連休後に顕著になり、5月から6月上旬ぐらいにかけて、それが誰の目に見えて明らかになり、首相が『こんな景気の状況じゃ消費増税できません』と言って、通常国会会期末に消費増税凍結を信を問うと言って、衆参同日選挙を7月に実施と宣言する可能性があると思います。

自民党の中には、憲法改正の国民投票を成功させるため、自民党内に増税の先送りを後押しに利用すべきだと主張する人はある一定数以上は存在するでしょう。もし、5月から6月にかけて、経済の停滞が明らかになった場合、10%への引き上げに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施しても、景気の落ち込みは破滅的となり、世論の不興は避けられないでしょう。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期しかないと考えられます。

まさに、萩生田氏はそれを想定しているのではないかと思います。そうして、6月になっても増税を阻止してみせるという財務省に対する牽制でもあるのではないかと思います。そうして、6月になってからでも、増税凍結の判断を実行に移す方法があるということを意味しているのだと思います。


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