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2019年6月10日月曜日

「老後に2000万円不足」金融庁レポートと消費増税の不穏な関係―【私の論評】財務省も金融庁も国民のことは二の次で自らの利益のため国政を操っている(゚д゚)!

「老後に2000万円不足」金融庁レポートと消費増税の不穏な関係

財務省が、ほくそ笑んでいる




老後資金「2000万円不足」は本当か?

先週末ごろから、「7月の選挙は衆参ダブル選ではなく、10月の消費増税は予定通りに行われる」という観測記事が出始めた。

7月の参院選における自民党の公約に、「本年10月に消費税率を10%に引き上げる」と書かれていることが判明した、というのがその根拠である。

これまで安倍総理も「消費増税は予定通り」と公言してきたので、既定路線に変更なしということなのだろう。たしかに、7月の参院選公約をそろそろ確定しないと、もろもろの作業が間に合わなくなるころだ。

自民党の参院選公約と同時並行で策定されるのが、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」である。この原案でも、「消費増税は予定通り」となっている。これが政府の正式案として閣議決定されるのは6月中下旬である。

自民党の公約、政府の骨太方針ともに、これから政府与党内プロセスを経て正式決定されるが、報道によれば、現状の案のまま決定される見込みという。

「べき論」からいうと、今の時期に消費増税を実施すべきではないのは、筆者のこれまでの本コラムを読んでもらえばわかるだろう。

筆者は単に(1)景気論から消費増税に反対しているのではなく、(2)財政論(今の日本の財政は健全で、消費増税を行う必然性はない)や、(3)社会保障論(消費税を社会保障目的税とする国はなく、社会保障拡充のためには歳入庁の創設が有効)の見地からも消費増税はおかしいという、日本では珍しい意見の持ち主である。

まず、(1)景気論がひどい。

福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は9日、共同声明を採択した。世界経済の下振れリスクとして貿易摩擦の激化を挙げ、「G20はこれらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」とした。にもかかわらず麻生財務大臣は、10月の消費増税を各国に説明したというのだから、まるで議長国として発表した共同声明を無視するかのような経済政策である。これでは日本の見識が疑われる。

福岡市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議にて

(2)の財政論は、先週の本コラムで再三書いたので、繰り返さない。

今回の本題は、(3)の社会保障論だ。

6月3日に金融庁が公表した、資産形成に関する金融審議会報告書が話題である(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)。報道では、「95歳まで生きるには、夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」とされている。

報告書の中の記述は、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」である。

これは、審議会に提出された厚労省資料に基づく見解であるが、オリジナル資料は総務省家計調査(2017年)で、数字は夫65歳以上、妻60歳以上の高齢無職夫婦世帯の平均だ。

実は、同じ総務省の家計調査では、貯蓄額の数字も出ている。60歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は2366万円である。このため、不足額の2000万円は賄えることになる。

もちろん、高齢者世帯の貯蓄額は人それぞれだ。貯蓄はある意味で人生の結果でもあるので、格差は大きく、その分布はピンからキリまでわかれている。

平均は2366万円であるが、貯蓄額を低い世帯から並べたときにちょうど中央に位置する世帯の貯蓄額は、1500万円程度である。このため、「2000万円の金融資産の取り崩しが必要」というマスコミ報道について、過剰に反応する人が多く出てくるのだろう。

要するに、今でも高齢者世帯では貯蓄の取り崩しが行われているわけで、これを公的年金の不足のせいとみるか、それとも公的年金以上の支出水準を維持するために貯蓄した結果とみるかは、人それぞれであろう。

しかし、報告書で「2000万円の不足」と書かれ、それだけがマスコミ報道で切り取られているから、案の定、「今さら年金をあてにするな、自助努力しろ、と言うのはおかしい」という意見が多く出ている。これは、高齢者世帯の貯蓄額の数字を出さずに「2000万円の不足」と強調し、煽る報道のためである。ネットで過剰反応する人は、高齢者世帯の貯蓄額も調べない人ばかりであろう。

金融庁と財務省の思惑

ここで重要なのは、公的年金について「不足している」、「ひょっとしたら破たんしているかもしれない」と一般の人が考えることは、消費増税を狙う財務省にとって好都合である、ということだ。「年金充実のためにも消費増税」と主張できるのである。

そこで、今回の金融庁による報告書が意味を持ってくる。金融庁のトップは麻生財務大臣である。金融庁はもともと財務省から分離された組織で、今の金融庁幹部は財務省に入省した官僚だから、財務官僚と同じ遺伝子を持っているといってもいい。

マスコミが過剰反応し「年金が不足する」と報じるのを金融庁は見越して、報告書でもその部分を強調したはずだ。それが結果として、「年金充実のための消費増税」をサポートするわけだ。

年金が少ない、あるいは破たんすると煽って金融商品を売りつけるのは、金融機関の営業ではよくある話だ。今回の金融庁の報告書は、まるで金融機関のパンフレットのように金融商品を推奨している。金融庁が金融機関の営業を後押ししている点でも異様なのだ。

年金制度「破綻疑惑」の読み方

では、日本の年金制度は破綻しているのか? 筆者の答えはノーだ。

そもそも年金とは、長生きするリスクに備えて、早逝した人の保険料を長生きした人に渡して補償する保険であるといえる。

65歳を年金の支給開始年齢とすれば、それ以前に亡くなった人にとっては、完全な掛け捨てになる。遺族には遺族年金が入るが、本人には1円も入らない。逆に運よく100歳まで生きられれば、35年間にわたりお金をもらえる。

極端に単純化して言えば、年金とは、平均年齢よりも前に死んだ人にとっては賭け損だが、平均年齢以上生きた人にとっては賭け得になるものだ。このように単純な仕組みなので、人口動態が正しく予測できれば、まず破綻しない。

具体的に言えば年金は、数学や統計学を用いてリスクを評価する数理計算に基づいて、破綻しないように、保険料と保険給付が同じになるように設計されている。確率・統計の手法を駆使して、緻密な計算によって保険料と給付額が決められている。

年金制度を実施する集団について、脱退率、年金受給者が何歳まで生きているのかという死亡率、積立金の運用利回り(予定利率)など、将来の状態の予想値(基礎率)を用いた「年金数理」で算出している。

2004年の年金制度改革で、給付額についてマクロ経済スライドが導入された。端的に言えば、保険料収入の範囲内で給付を維持できるように、数理計算で給付額を算出しようということだ。物価や賃金が上がると、それに連動して給付額は増えるが、現役世代の人口減少や平均寿命の延びを加味して、給付水準を自動的に調整(抑制)する仕組みだ。

年金は掛け捨ての部分が大きくなれば保障額が多くなり、小さければ少なくなる。つまり、現役世代の人口が減って保険料収入が少なくなろうが、平均寿命が延びて給付額が増えようが、社会環境に合わせて保険料と給付額を上下させれば、破綻しない制度ということだ。

経済界も加担している

年金不安の根拠として必ず持ち出されるのが、「65歳以上の高齢者1人を、15~64歳の現役世代X人で支えることになる」という理屈だ。

内閣府の「高齢者白書」によれば、2020年には2人、2040年には1・5人で1人の高齢者を支えることになる。このような人口減少はすでに十分予測されており、年金数理にも織り込まれている。つまり、人口減少は予測通りに起こっているので、社会保障制度での心配は想定内である。

にもかかわらず、一般国民にとっては、「年金は間もなく破たんする」という印象が強い。消費増税を目論む財務省が、社会保障費に対する世間の不安を煽り、マスコミがそれを増幅しているからだ。

「年金は保険」という認識が一般人に浸透すれば、消費増税ではなく保険料アップで対応すればいいという、至極まっとうな指摘が出てくる。しかしそうなると、予算編成と国税の権力を握り「最強官庁」の名をほしいままにしてきた、財務省の屋台骨が揺らいでしまう。

つまり、財務省としては「年金は社会福祉であり、今は原資が不十分な状態」という誤解が広まれば広まるほど、「社会福祉は税金でまかなうものだから、消費増税しかない」という俗論がまかり通るほど、好都合なのだ。

その意味では経済界も、「年金は保険」という認識が世間に浸透すると困る立場にある。「保険料の引き上げ」という本来の解決策がとれないのは、経済界の強硬な反対もある。なぜなら、年金保険料は労使折半だからだ。

企業は従業員の保険料の半分を負担しているため、負担を上げてほしくない。保険料アップで年金がまかなえるとなれば、会社負担が増えるのは明らかだ。だから、広く社会一般に負担を押し付ける消費増税の方がマシだと経営サイドは考えている。

財務省は年金制度の成功例として、社会保障が充実している北欧をしばしば引き合いにするが、それらの国における社会保障の充実が社会保険料負担、それも労働者というより経営サイドの大きな負担でもたらされていることには、決して言及しない。

そんな財務省の意向のもとで消費増税を実行すれば、かえって将来の社会保障制度も危機にさらされてしまうだろう。

【私の論評】財務省も金融庁も国民のことは二の次で自らの利益のため国政を操っている(゚д゚)!

さて、今回話題になっている、6月3日に金融庁が公表した、資産形成に関する金融審議会報告書ですが、正式名称は、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書、「高齢社会における資産形成・管理」です。PDFで56ページに及ぶ提案書です。

オリジナルの文書に関心のある方は、リンクを張っておくので、よろしければご覧になってください。

この文書のキモの部分だけを抜き出すと、以下のようになります。
・定年の退職金が、バブル期のピークからすでに3~4割ほど減少している
・年金だけで暮らすのは厳しく、試算では毎月約5万円ほど貯金等からの持ち出しが必要となる
・つまり100歳近くまで生きるなら、2000万円は必要なので、準備しなさい

SMBCコンシューマーファイナンスは、2019年1月7日~9日の3日間、30歳~49歳の男女を対象に「30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019」をインターネットリサーチで実施し、1,000名の有効回答を得ました。

全国の30歳~49歳の男女1,000名(全回答者)に対し、毎月自由に使えるお金はいくらあるか聞いたところ、全体の平均額は30,532円。家族構成別にみると、未婚者は38,674円、子どものいない既婚者は28,565円、子どものいる既婚者は22,096円となりました。

2018年に同社が実施した調査と比較すると、平均額は2018年30,272円→2019年30,532円と微増しています。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、驚いたことに、30、40代では23.1%もの人が貯蓄セロと答えていることです。



このグラフからは、貯蓄が0円~50万円以下という人が、何と47%と、半数近く占めることが分かります。

年代別の報告では、

30代・・2018年198万円→2019年194万円(4万円減)
40代・・2018年316万円→2019年196万円(120万円減)

と、40代では、たった1年で、平均が120万円も減少しています。

平均で出すと分かりにくいですが、これまでの流れから見ると、全体的に額面が落ちたのではなく、おそらく「ゼロに近い人の頭数」が増えたのではないでしょうか。

この人たちが、仮に35歳から60歳までに2000万円貯金するには、月々8万円を貯金しなければならないことになります。衝撃です。

そんなことが出来るくらいなら、現時点の貯蓄が50万円以下であるはずがないです。

しかし、落ち着いて、今一度この金融庁の文書をよく読んでみると、実はこの報告書にはは、国民に対して「貯金しろ」という言葉は出てこないです。

人々がこぞって貯金をするというのは、消費が落ち、内需が縮小することに直結します。この文書をよく見ると、「預金」ではなく、「運用」という言葉が頻繁に出てきます。
そしてご丁寧に、「金融サービスのあり方」と銘打った、銀行に対してのアドバイスの項目も含まれています。

私は、この文書のキモは、国民の老後を考えているものではなくて、長引く金融緩和で疲弊した銀行が、顧客に資産運用商品を売りやすくするためのキャンペーンを、金融庁が張ったのではないかと見ています。無論、上で高橋洋一氏が語ったように、この背景には無論財務省の増税という意図もあるでしょう。

しかし、将来の年金の不安を煽ることで、銀行が個人資産コンサルティングに入り込みやすい顧客の心理状況をつくり、なんとか銀行の業績を底上げしようという意図があるのではないでしょうか。

もはや構造不況業種の銀行業

おそらく銀行界隈では、今後、老後のための個人向け資産を長期運用する類の商品が続出するのではないでしょうか。

若・中年層が老後に突入する頃、麻生大臣はもちろん、財務省のおエラ方も定年を迎え、とっくに現場からいなくなっています。その時、世の中がどうなっていようが、そんなことに彼らは興味がないのでしょう。彼らが心配するのは、常に目先の話なのでしょう。

上の高橋洋一氏の文章のなかにも、「今回の金融庁の報告書は、まるで金融機関のパンフレットのように金融商品を推奨している。金融庁が金融機関の営業を後押ししている点でも異様なのだ」としています。

結局現状の、銀行等の金融機関はそれほど窮地に立たされているということでしょう。

欧米に比較すると、投資に不慣れな日本人は、運用よりも貯蓄に走ってしまう可能性のほうが高いと思います。人々がこぞって貯金をするということは、一見良いようにも見えますが、消費が落ち、内需が縮小することに直結します。そんなことになれば、国内景気が悪くなり、税収が減ります。そうなれば、また財務省は国民などおかまいなしに、増税するのでしょう。

財務省も金融庁も国民のことなどどうでも良いのでしょう。とにかく、天下り等のために有利な状況をつくっておきたい一心で、増税したり金融機関を助けようとして国政を操っているのです。

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