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2020年7月8日水曜日

国際法秩序を無視した中国外交に歯止めを— 【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)


岡崎研究所

6月19日付のワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのジョシュ・ロウギンが、「もし中国が米国と良い関係を持ちたいのなら、中国はもっと良い行動をしなければならない」と題する論説を寄せ、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪共産党政治局委員(外交統括)との会談の内容を紹介しつつ、それが実質的には物別れであったと論じている。一部その要旨を紹介する。


 ポンペオ国務長官は、楊潔篪と6月17日ハワイで会談と晩餐のため数時間会った。最近の米中関係で顕著となっている相互非難を抑制する方法を探すため、中国側から今回の会談を要請してきたと言われる。それまでは、習近平がトランプに電話をすれば良かったが、トランプは3月27日の電話会談後、習近平と話すことに興味はないと言っていた。

国務省の声明は、「2人の指導者は意見交換をし、ポンペオは商業、安保、外交の分野で中国が不公正な慣行をやめる必要があると強調した。また、進行中のCOVID-19パンデミックと戦い、将来の大発生の防止のためには完全な透明性と情報共有の必要性があると強調した」と述べている。一方、中国の外務省によると、楊はより良い関係を望んでいるとポンペオに言ったが、香港への国家安全法、台湾への威嚇、新疆でのウイグル人の強制収容などあらゆる争点について、中国の立場を擁護した。

北京のやり方のパターンはよく知られている。北京の悪い行為を批判する人を侮辱または攻撃する。その後、緊張の高い状態を非難し、通常の関係に戻ることを、行動を何一つ変えずに提案する。しかし、今回は通常の関係に戻ることはない。

ロウギンの論説は、6月17日のハワイでのポンペオ国務長官と楊潔篪政治局委員との会談がうまくいかなかったこと、現在の米中関係悪化の傾向に歯止めがかからなかったことを指摘している。

米中外相会談の成果は、今後も話し合おうという合意だけである。中国側はこれまでの行動を擁護し、行動を変えることを拒否したが、そういうことでは再度話し合っても何も出てこないことになろう。

香港への国家安全法制の押し付け、新疆でのウイグル弾圧、台湾への恫喝は内政問題ではない。香港については、1984年の英中共同声明と言う条約に違反している問題であって、条約を守るかどうかの国際的な問題である。ウイグル問題については、国連憲章下で南アのアパルトヘイトなどに関連して積みあがってきた慣行は、人権のひどい侵害は国際的関心事項であるということである。台湾が中国とは異なるエンティティとして存在しているのは、事実である。

中国が台湾は中国の一部と主張していることを理解し、尊重するということは、中国が台湾に武力行使をしていいことを意味しない。

そのほか、インドとの国境紛争、豪州に対する経済制裁、ファーウェイ副社長のカナダでの拘束に絡んでの中国でのカナダ人拘束など、中国の最近のやり方には、国際法秩序を無視した遺憾なものが多い。中国が大きな国際的な反発の対象になり、そのイメージが特に先進国で悪化してきていることは否めない。

中国の緊張を高め、その緩和を申し出、その緩和の代償として相手側に何らかのことを譲らせるやり方は、ソ連、北朝鮮、中国などの共産国が多く使用してきた外交戦術であるが、すでに使われすぎて、相手側に見透かされるものになって来ている。

中国が行動を変えるべきであるとのロウギンの論説は、そういう状況の中で適切な論であると言える。

【私の論評】国際法を無視し、弁証法すら捨てた中共に未来なし!(◎_◎;)

国際関係で、中国の最大の問題は中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないことです。例えば南シナ海問題で中国が直面する国際司法環境の厳しさについて政治局常務委員に正しく伝えられたでしょうか。全く伝えられていないと思います。

中国の外交担当トップの「国務委員」は政治局委員どころか、さらに格が下の中央委員でしかありません。中国は、もともと他国のことは無視して、自国の都合で動く傾向のある国であることは、このブログでも何度が掲載したことがありす。それが、国の統治制度にも反映されているのです。

中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員

政策立案権限のない外務省は仲裁裁判所判断を「紙くず」と切り捨てました。担当する国際法に対し最低限の敬意すら払おうとしませんでした。

中共は現在の国際法が「西洋の産物」にすぎないと考えているのか。半世紀近くも国連に加盟し常任理事国の特権を享受しながら、常設仲裁裁判所の判断を否定する中国の態度は自己矛盾以外の何ものでもありません。国際法を完全無視するというのら、本来は国連から脱退すべきです。

そもそも中国には欧米型の「法の支配」という発想がありません。中国は全知全能の神と被造物である不完全な人間との契約(法)に基づく一神教の世界ではありません。日本にも、そのような考え方は、ありませんでしたが、明治以来それを理解しようと努めてきました。

これを日本では、「和魂洋才」として、とにかく西欧の考え方を学んだ上で、西欧列強に国際社会で伍していこうと努力しました。その努力は、最初は英国に認められ、日英同盟に結実しました。そうして、日本は名実ともに、国際社会の一員となりました。これは、後で述べ弁証法的な考え方に、基づいたものとも解釈できます。現在の中共にはそのようなことをするつもりは全くないです、本当に矛盾しています。

無論、様々な不幸な出来事があり、日本はその後、日英同盟も破棄し、大東亜戦争に月すすけわけですが、戦後には国際法を遵守し、国際社会に復帰しました。

その後の日本は、様々な矛盾を抱えつつも国際社会に貢献し、今日を迎えています。現状では、国内では様々な矛盾を抱え、憲法改正もできない有様です。しかし、そうは言っても、中国のように国際法を無視するようなことはありません。

中国の戦国時代に法家が説いた「法治」とは儒家の「徳治」に対する概念であり、法は権力者がつくるものです。被統治者は法の支配ではなく「立法者の支配」を受けて当然と考えます。

その意味で今2016年の中国の南シナ海実効支配に関する、国際司法判断は、人権や法の支配など欧米的概念と中華的法秩序との相克の新局面と見ることも可能です。

それと、今の中国政治指導者には共産主義者がよく用いていた弁証法的発展という考え方が身についていないようです。

弁証法とは、物の考え方の一つの型です。形式論理学では、「AはAである」という同一律を基本に置き、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進むという、運動・発展の姿において考える見方です。

図式的に表せば、定立(「正」「自」とも言う)Aに対しその(自己)否定たる反立(「反」「アンチテーゼ」とも言う)非Aが起こり、この否定・矛盾を通して更に高い立場たる総合(「合」「ジンテーゼ」とも言う)に移る。この総合作用を「アウフヘーベン」(「止揚」「揚棄」と訳す)と言います。
弁証法の極めて理解しやすい事例

今の中国に見られる、ただ圧倒的に強い力関係にあるとき、単純に強行政策をとって力ずくで自らの意思を相手に押し付けるのはいかがなものでしょうか。弁証法的発展とは、自分たちの意思や行動に対する反作用の効能もよく計算に入れながら、その先に生まれる新しい関係性を戦略的に考える、いわゆる正→反→合という考え方です。

「一国二制度」をどのようにして香港住民も納得できる制度にすることができるのか。これを香港市民や当局者などを巻き込んで本格的に討議するならば、「弁証法的発展」の成果が出てくるかもしれないです。

米中対立はそもそもそれほどイデオロギー性の強いものではなく、超大国の座を目指すイニシアティブの争いの側面も強いです。したがってイデオロギー、政治・経済体制、陣営などで争った「米ソ冷戦」とは異なる面が多いです。

イニシアティブの調整さえうまくできれば、難しいことではありますが、米中共存は可能でしょう。そしてその道を探ることと香港「一国二制度」の再生は連動しています。香港に対する国家安全維持法が全人代で可決され、実施されました。

香港問題は米中新冷戦のフロントラインになりつつあります。香港に対する中国の過剰な強硬姿勢は、香港の良さを失わせる「愚策」以外の何ものでありません。

香港と中国との違いに基づき、香港社会にも受け入れ可能な香港政策を作り出す「弁証法的発展」の成果でもあった「一国二制度」は、返還から23年目で中国によって一方的に廃止されてしまいました。

中国の成長を支えた香港を強引に変化させることは、中国自身の「凋落の第一歩」を意味します。

中共は、本来であれば、西欧諸国が作った国際社会秩序を認めた上で、国際社会でビジネスをすべきでした。それと、国内が矛盾するなら、日本の「和魂洋才」ような、弁証法的な考え方で、矛盾を解消すべきでした。

下の写真は、平成11 8 23日発行の日本郵便の切手です。明治維新後、文明開化とともに外国から様々な文化がもたらされ、 当時のファッションもその影響をうけました。ハイカラとは、 当時大いに流行ったシャツの立て衿(ハイカラー)から来ており、 新しく小綺麗でしゃれた物事をハイカラと呼び、 また、そのような人をハイカラさんと呼びました。


これも、「和魂洋才」を示すエピソードの一つと言えます。とにかく当時の日本は、西欧の考え方を理解することが急務だったのです。

しかし、中共のやり方は、様々な矛盾を自国内を弁証法的に変えようとするのではなく、自国外を自国内部に合わせようとしています。その典型例が、最近の香港の「一国二制度」の破壊です。

先日もこのブログで述べたように、香港住民でない外国人までを「香港国家安全法」の適用対象とした習近平政権はもはや、世界の主人となって世界中の人々を支配てしまおうとするような狂気にとられているようです。

これは、とてつもないことです。個人でも、自分を変えずに、世界を変えることは困難です。それに比較して、まず自分を変えれば、世界が変わって見えてくるものであり、その世界で、自分の価値観を反映した何事かを実現することもできるようになります。

しかし、自分を全く変えないで、世界を変えようとだけすれば、ほとんどの場合失敗します。それどころか、どこまでもそれを推し進めようとすれば、精神に異常をきたしかねません。国も同じことです。

中国は、まさにその道を進んでいるようです。

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2019年3月19日火曜日

混乱招いた著作権法改正案 見送りは政治的に当然だが…海賊版サイト対策も急務だ ―【私の論評】国内だけではなく、中国の知的財産権の侵害にも歯止めを(゚д゚)!

混乱招いた著作権法改正案 見送りは政治的に当然だが…海賊版サイト対策も急務だ 




 自民党が、違法ダウンロード規制を強化する著作権法改正案の今国会への提出見送りを決めた。改正案をめぐっては静止画やスクリーンショットなども対象になるとして問題視されていた。

 現在の著作権法では、音楽・映像について、違法に公開されたものと分かっていながらダウンロードする行為は違法である。これは2009年の著作権法改正によって10年1月から施行されている。12年の著作権法改正を受けて、同年10月から違法ダウンロードの刑事罰化が施行されている。

 今回見送られた法案は、著作権法を改正し、違法ダウンロードの対象を漫画、小説、雑誌などインターネット上のコンテンツに拡大する方向だった。刑事罰対象は悪質性の強いものに限定する方針のようだった。

 こうした政府・与党内での動きに対して、海賊版の被害者であるはずの一部の漫画家から、静止画やスクリーンショットなども対象にするのは問題だとの異論が出た。この動きが広がり、日本漫画家協会や日本建築学会などクリエイター団体や、法律の専門家などから反対意見が出た結果、著作権改正案の国会提出は見送りとなった。

 そもそもこの問題は、違法な海賊版サイト「漫画村」が発端だ。日本漫画家協会も、海賊版サイトは創作努力なしで利益をむさぼっていると批判していた。「漫画村」による被害は3000億円以上だという。

そこで政府は対策を求められた。18年4月、緊急措置としてプロバイダーが接続を遮断するサイトブロッキングが浮かび上がったが、憲法上の「通信の秘密」を侵害する恐れが指摘され、それに代わるものとして、著作権法改正が浮かび上がってきたというのが背景だ。

 法技術的には、適用対象を広く定めて、その中で刑事罰を限定的に絞るのは、役人経験のある筆者にはよく分かる。違法といっても罰則がないなら、訓示的に「違法」というだけで、一般人には実害はない。

 しかし、今回のように、静止画やスクリーンショットまで「違法」とされると、多くの人は過剰反応してしまうだろう。

 結果として、著作権法改正に対して日本漫画家協会から反対意見が出てくるに至っては、漫画家の権利保護のために改正するはずだったのに、誰のための改正なのか分からなくなる。このため、法案の国会提出の見送りは、政治的には当然だろう。

 しかし、今回の見送りによって、違法な海賊版サイトの問題は全く解決されていない。

 著作権法の適用対象や刑罰対象をもっと限定的にして著作権法改正をやり直すか、損害賠償をやりやすくするなどの別の方策を考えるのか、いずれにしても出直しである。

 重要なのは、創作している漫画家の権利保護であって、創作していない海賊版サイトが不当な利得を得てはいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】国内だけではなく、中国の知的財産権の侵害にも歯止めを(゚д゚)!

政府・与党が海賊版の被害者であるはずの一部の漫画家などの声に応える形で改正案の提出見送りを決めたことには、さまざまな立場の専門家や関係者から評価の声が上がっています。

ただ今回の提出見送りで、ダウンロード違法化と並ぶもう一つの海賊版対策も先送りされることになりました。その中でも、リーチサイトに対する対策です。

3月13日、自民党の古屋圭司・衆院議員はブログに次のように書き込みました。

自民党の古屋圭司・衆院議員

今朝の自民党幹部会にて、ダウンロード対象範囲拡大(投網で大魚だけでなく小魚も一網打尽してしまう懸念)など、まだ関係者の理解を得られていないばかりか、国民の間でも疑問が沸き起こっていることから、今国会での法案提出は見送り。 
次期国会までに関係者へのヒアリングなど丁寧な対応を行い、皆が納得できる法律にブラッシュアップして提出することを決定。 
これこそ自民党の奥深さと良識だ。
古屋氏はマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟(MANGA議連)の会長を務めており、自民党内では今回の法改正について慎重派の中心だったとされます。

今回、異論の強い法案を数の力で押し切らなかった点で、確かに与党は「良識」を示したといえます。

ただ、冒頭の記事にもあように、今回の著作権法改正は2018年春以降さまざまな案が検討されてきた海賊版対策の柱として浮上したものです。いまも被害が続く海賊版に対して実効性のある策は示されていません。

コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は13日、後藤健郎・代表理事の名義で、
著作権法改正案について、今国会への提出が見送られたことは、大変遺憾です。海賊版サイト問題はますます深刻化し、文字通り喫緊の課題です。そのなかのひとつの対策であるダウンロード違法化問題に関し、私的使用目的以外の複製との混同や、対象となる行為への誤解もあったようであり、理解が得られず残念です。
と、遺憾の意を表明した。

今回、政府が提案を目指していた著作権法の改正案にはリーチサイトへの規制が盛り込まれていました。

リーチサイト運営者は、サイトに海賊版のマンガをアップロードせず、海外のストレージサイトなどへのリンクを書き込みます。

海賊版のマンガをウェブサイトにアップロードするのはすでに違法行為ですが、アップロードそのものには関与せず、「リンクを貼る」ことで規制の回避を狙ったものとみられます。

コンピュータソフトウェア著作権協会によれば、最大級のリーチサイト「はるか夢の址」(閉鎖)による被害額は、2016年7月から2017年6月までの1年間で、731億円にのぼったとされます。

私自身は、こうした国内の違法ダウンロード規制も重要だと思いますが、それ以外にも中国による日本の知的財産権の侵害などについても規制をかけるべきと思います。

ワシントンでは中国に関して「統一戦線」という用語が頻繁に語られています。中国共産党の「統一戦線工作部」という意味です。本来、共産党が主敵を倒すために第三の勢力に正体をも隠して浸透し連合組織を作ろうとする工作部門でした。

中国にはすでに、日本工作ののための工作要領がある

習近平政権は米国の対中態度を変えようと統一戦線方式を取り始めました。多様な組織を使い、米国の官民に多方向から働きかけるのです。

そんな統一戦線方式とも呼べる中国側の対米工作の特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」から昨年9月上旬に学術研究の報告書として発表されました。米国全体の対中姿勢が激変したからこそ堂々と出たような内容でした。
米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた。
こんなショッキングな総括でした。

これについては、すでにこのブログでも過去にとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!



詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
中国共産党は長年外国に対して統一戦線工作を仕掛けてきましたが、中国共産党はこれを決して公にしてきませんでした。いま、米国政府は公式報告書で中国共産党の統一戦線工作を系統的に暴露し、その化けの皮をはがしています。同時にこれは、他国を転覆しようと画策する中国共産党の不道徳な国際戦略に対し、米国が照準を向けたことをも意味します。 
過去数十年に渡り、中国共産党は不公平な貿易によって自身の経済規模を拡充してきました。また、非合法的な技術の取得による自身の先端科学産業を発展させてきました。そして非人道的な低賃金・人権無視の戦略を用いて外資企業を誘致しました。

その極みとして、不道徳的な統一戦線工作を通して外国の世論や政策を操り、もって他国の政権や民主主義社会の転覆を目論んだのです。 
中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。 
なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。 
とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。
中国による統一工作の対象は無論米国だけではありません、日本を含めた他国も工作しています。沖縄が中国によって、工作されているのも間違いないでしょう。日本の場合はスパイ保護法がないため、このような工作はもちろんのこと、産業界でも様々な工作により、知的財産が中国によって奪われているのは、確実です。

このようなことは、様々なところから漏れ聞こえてきますが、米国のように日本国内での工作が報告書によって報告されることがないので、一般にはあまり報道されることもなく、多くの国民はあまり知らないようです。そのため、いわゆる反日勢力はそのようなこはないとか、あり得ないとしていることが多いです。

日本でも一刻もはやく、様々な実体を調査し、まずは国会で報告させるような体制を整え、スパイ防止法立法への道筋をつけるべきです。

そのまま放置すれば、日本の知的財産権は侵害されつづけることになります。それだけでも大きな被害なのですが、中国の知的財産の侵害に神経を尖らせている米国は、日本経由で米国の知的財産が漏れているとか、米国製ではないものの、それと同等や類似した日本の技術の中国への漏洩が米国にとって不利益と判断した場合は、日本に対しても制裁を発動するかもしれません。

それは、個人に対するものかもしれません、あるいは企業に対するものかもしれませんし、あるいは日本国政府に対するものになるかもしれません。

米国は、トランプ政権はもとより、議会も、司法当局も中国への対決の姿勢を顕にしています。トランプ大統領がたとえ、ある程度のところで幕引きを図ったとしても、議会や司法当局はその動きはトランプ大統領も止めることはできません。米国は本気です。中国と対決するためには、あらゆる方策を実行し、可能性を探ります。そのことを忘れるべきではありません。

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2018年10月1日月曜日

米中貿易戦争が「流血戦争」になる可能性 歯止めは沖縄、台湾 国際投資アナリスト・大原浩氏―【私の論評】トランプは、中国の覇権阻止とナショナリズムへの回帰へと国家戦略を大転換しつつある(゚д゚)!

米中貿易戦争が「流血戦争」になる可能性 歯止めは沖縄、台湾 国際投資アナリスト・大原浩氏

習氏率いる中国に攻勢を強めるトランプ氏 
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 米トランプ政権が仕掛けた対中貿易戦争は、長期戦の様相を呈しているが、これが「血を流す戦争」にエスカレートしかねないと警鐘を鳴らすのが、中国事情に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏だ。緊急寄稿で大原氏は、9月30日に県知事選が投開票された沖縄、そして台湾が米国にとって極めて重要な「防衛線」だと指摘する。

 米中の貿易戦争が無血戦争(冷戦)の一部であることは、これまでにも述べてきたが、冷戦が本物の「流血戦争」になる可能性はないのだろうか。結論から言えば少なからずある。ただし、それは習近平国家主席が米国に逆らい続けたときに限る。

国際投資アナリストの大原浩氏

 1962年のキューバ危機は、旧ソ連が米国の目と鼻の先のキューバにミサイル基地を建設したことがきっかけとなり、核戦争の一歩手前までいった事件である。

 実のところ、当時のソ連の指導者、フルシチョフは米国を甘く見ていたフシがあり、ケネディ大統領の「核戦争も辞さない」との強硬な態度に青ざめて、表面上強気を装いつつも、核ミサイルの撤去という譲歩(降伏)をしたのである。

 今回、キューバに相当するのが台湾だ。第二次大戦末期、蒋介石率いる中華民国(台湾)は連合軍の一員だった。米国とともに血を流して戦ったのは中華民国であり、少なくとも米国の共和党にとっての中国とは、民主主義・資本主義を守る台湾を意味する。

 1971年のキッシンジャー氏の電撃的中国訪問から始まった米中国交回復が、78年12月の第2次米中共同声明までかかったのには、米国内に根強い反共ムードや大量虐殺を行った毛沢東の存在など数多くの要因があるが、台湾問題が一番大きい。

 58年8月から中国人民解放軍が中華民国福建省金門島に侵攻すべく砲撃を行ったのが金門砲戦で、実質的な戦闘は2カ月以内に終わった。しかし、米中国交回復時の79年1月1日まで、なんと21年間にもわたって砲撃が続けられた。



 つまり、米中国交回復は「台湾問題棚上げ」によって実現されたのである。だから、この棚上げ問題にうかつに触れれば米中国交回復はご破算になる。トウ小平はそれをよくわかっていて「能あるタカは爪を隠す」路線を続けたのだが、現在の習主席は、航空会社に「台湾」表記を改めさせようとするなどの圧力を加えた上に、米国が嫌悪する独裁者の毛沢東を目指すなどと発言して虎の尾を踏んだといえる。

 民主主義国家がなかなか戦争に踏み切れないのは事実ではあるが、「民主主義防衛」の大義のためであれば、米国民は血を流す覚悟がある。

 沖縄の米軍基地問題も台湾問題とリンクする。沖縄の与那国島と台湾との間は直線距離で100キロ強しかなく、戦前は小舟で住民が行き来していたそうだ。

 垂直離着陸輸送機オスプレイは時速約500キロで飛行するから、台湾まではおおむね20分ということになる。共産主義中国政府、左翼系マスコミらが「反基地」「反オスプレイ」の大合唱を歓迎するのも当然だ。

 沖縄の米軍基地が極めて重要なのは、台湾に米軍基地を置けないという事情がある。米軍そして米国政府は当然、中国の台湾侵略の野心を承知しており、彼らが騒げば騒ぐほど、台湾防衛のために沖縄の基地を強化し、同時に中国に無血制裁を加え続けるのである。

【私の論評】トランプは、中国の覇権阻止とナショナリズムへの回帰へと国家戦略を大転換しつつある(゚д゚)!

米国と中国が、軍事的衝突を発生する潜在的な可能性に対する政治学的議論は従来からなされてきています。過去60年にわたり、米国の多くの人びとが米国と中国が衝突する可能性が大いにあると指摘し、米中間の軍事的衝突の可能性(いわゆる米中戦争)に対する議論がなされてきました。

米中間の軍事的衝突の舞台としては、過去には朝鮮半島ないしベトナム、現在では台湾海峡が想定されています。それぞれ詳細な考察が行われており、1960年代のベトナム戦争、冷戦の終結に続き、中国は軍事的優位性及び経済的存在感を増し続けている事を背景にして中国脅威論のひとつとして、米中冷戦が、なんらかのきっかけで軍事的衝突に繋がるかに対する危惧があるという潜在的可能性が指摘されています。

現在では主にネオコンといった政治的傾向を持つ識者が主張する場合が多いです。

ベトナム戦争の間、毛沢東をはじめとする中国の指導者は、米国のベトナムにおける戦略を大規模な核戦争の序章であると考えていました。1960年代を通して、中国人民解放軍海軍と空軍は中国の領空を侵犯した米軍機と衝突しました。

米軍の爆撃機が北ベトナムの6つの海軍基地を攻撃した後、1964年8月5日、周恩来と羅瑞卿は北ベトナムのホー・チ・ミン大統領、ファム・ヴァン・ドン首相、軍の幹部であるヴァン・ティエン・ズンと会談し、両国は米国の脅威に対抗するため軍事的な協力を行うことを約束しました。

その晩、人民解放軍海軍、空軍及び北京軍区の首脳が集まり、緊急ミーティングを開きました。彼らは北ベトナムでの爆撃が直ちに米国との戦争を意味するわけではないが、米軍の軍事的脅威が増加し広州や昆明の軍隊が警戒状態に入る必要があるという結論に達しました。

日本では、1965年には朝日新聞による世論調査が行われ、その年の8月24日に発売された朝日新聞は、日本人の半分以上である57%がベトナム戦争が米中戦争へエスカレートすることを恐れているという記事を掲載しました。

しかし、実際には中国と米国のリチャード・ニクソンはソビエト連邦に対する利害で一致したため、1972年にニクソン大統領の中国訪問が行われ、米中国交樹立が図られました。

最近では、多くの人は米中間が台湾独立をしたときに衝突し、日本はその戦争に巻き込まれるだろうと予想しています。

この戦争で核兵器が使われる可能性があるため、米国はEUが中国に対して武器を輸出することに反対しています。 スタンフォード大学のキム・チャンヨン教授は、そのようなシナリオにおいて中国が勝利を収める可能性は15%であり、米国が勝利を収める可能性は23%、相互確証破壊の可能性は62%であると推測しています。

近年では、将来危惧される第三次世界大戦の可能性のひとつとして「米中戦争」が論じられることがあります。

これはジョージ・W・ブッシュ政権で要職にあったネオコンのコンドリーザ・ライスやリチャード・アーミテージが論文で中華人民共和国が将来的には脅威になるとした中国脅威論を記したほか、それに影響された日本の保守論壇の一部が同様の可能性を主張しています。

これらによれば台湾に対し中国が軍事的制圧を実行する台湾侵攻作戦が米中間の軍事的衝突の引金になるというものです。

この手の議論では、最近ではやはりピーター・ナバロを忘れるべきではないです。そのナバロの書いた『米中もし戦わば』で彼は、米中戦争が起きる可能性は70パーセントとしています。

『米中もし戦わば』の表紙

本書を読めばなぜトランプ大統領は就任以来、中国叩きをしているのかその根本にある「ナバロ思想」が理解できます。400ページ近い分厚い本ですが、特にP332~339に書かれている「経済による平和」部分にその思想が詰まっています。
[経済力による平和の要約]
中国は、通貨操作や違法な輸出補助金、知的財産権侵害などの不公正な貿易方法で経済力と軍事力の強化をしている。特に中国がWTOに加盟して米国市場に参入してきてからは、米国は製造業が衰退し軍事力を維持することは困難になってきている。(実際、米貿易赤字の約半分は中国である。) 
つまり、現状のように中国製品への依存度が高い状態だと、米国は中国製品を買うたびに中国の軍事力増強に手を貸していることになる。よって中国の経済と軍拡を弱体化させる方策は、中国からの貿易関係を縮小すべきだ。米国が国際舞台でリーダーシップを維持するために最も重要なのは米国経済を健全化することで、そのために貿易赤字を削減しなければ中国に対抗できない。
このナバロ思想が的を射ているのか否かは別として、重要なのはこのナバロ思想を根幹にしてトランプ政権が通商政策を進めており、最近では対中国貿易戦争を開始したことです。

よくトランプ大統領のtwitter上での発言は思い付きで呟いているだけだという意見を目にすることがありますが、本書を読むとこうしたナバロ思想に基づいた一貫した発言であることが伺えます。

「アメリカ第一主義」を全面に出すトランプ政権とは逆に、自由貿易を提唱し始めているのが習近平国家主席です。これは極めて意外でした。習近平国家主席は2017年1月17日、スイスのダボス会議で基調講演をして、経済のグローバル化を指示し、保護主義を批判しているのです。

ダボスで基調講演した習近平

ただし、知的財産権を守ろうなどという気のない中国の習近平がこのような批判を行うこと自体が噴飯ものです。

そもそも、貿易に目を向けると、中国に拠点を置く外国企業は様々な規制にさらされ、市場へのアクセスも不足しているうえ、中国企業との合弁や技術共有なども義務づけられています。またEUとアメリカはこれまで何度、中国をダンピングでWTO(世界貿易機関)提訴したかわからないです。中国は、輸出大国であると同時に保護主義大国です。。

ダボス会議には中国は通常、首相が出席するのが慣例らしいのですが今回は国家主席が初めて出席しました。ダボス会議は資本主義の牙城と呼ばれているので、共産主義のトップが出席するのは驚きです。

その意図するところは、「米国に代わって世界の覇権国に君臨する」ことに他ならないです。習近平国家主席はダボス会議で「中国は外国人投資家の中国市場へのアクセスを拡大し、高度で実験的な自由貿易圏を作る」と述べ、「中国市場をより透明化して、安定した経済活動を行えるようにする」とできもしない約束をしました。

トランプ大統領がTPP撤退を決めたことを習近平はチャンスと思ったのかもしれません。中国が中国という国の構造上の問題から入りたくても入れないTPPにより、日米を含めた環太平洋諸国が繁栄することは、習近平にとって脅威だったに違いありません。

習近平が言及している自由貿易や経済のグローバル化とは「一帯一路」というユーラシア大陸やアジア諸国をひとつの経済圏とする思想を指すのだったと考えられます。しかし、そのようなまやかしだったことが今年なってから明らかになっています。

中国は世界貿易機関(WTO)に加盟したことで、世界のどこの国にも輸出できるようになりました。WTOには自由貿易のルールがあります。そのうちの一つは、「輸出補助金の禁止」。国家が企業の輸出促進のために補助金を出したら、企業のコストは下がり、輸出先での価格も下がるります。公平な自由市場を歪めるため、こうした行為は禁じられています。

ところが、中国は大量の輸出補助金を出し、実質的な国有企業として市場介入しています。

また、外国企業が中国に進出してきたら技術を公開させ、それを盗み、堂々と自国のものにします。国際ルールを破って、やりたい放題なのです。

そんな中国に対して、WTOも国連も過去のアメリカ大統領たちも無策でした。そこに待ったをかけたのがトランプ政権です。

世界を驚かせたのが、トランプ大統領が金正恩委員長に会った直後に、中国に対して、2000億ドルの制裁関税を言い出したことです。今起きていることは、単なる貿易紛争ではなく、米中の熾烈な覇権争いなのです。覇権争いという文脈でみれば、トランプ大統領や習近平の行動が良く理解できます。

それにしても、なぜアメリカは中国にこれほどの貿易赤字を許してきたのでしょうか。

1990年代の米国は、「製造業が海外に移転しても一向に困らない。これからのアメリカは"ものづくり"ではなく、金融とハイテクの大国になる」という風潮でした。

その結果、製造業の工場は国内からなくなり、労働者は職を失いました。そこにトランプ大統領が現れ、「工場をアメリカに戻す」と公約し、それを果たすために、減税と今回の関税政策を行いました。

関税のない「自由貿易」は、グローバリズムという資本主義の発展形に見えました。しかし、現実は、庶民と労働者を貧しくし、代わりに、中国に莫大な貿易黒字を許したのです。

トランプ大統領は、この反省に基づき、反グローバリズムへ、そして、中国の覇権阻止、自由貿易は尊重しながらも、ナショナリズムの回帰へと、国家戦略を大転換しているのです。これは、トランプ政権が終わった後にも、大部分が継承されるでしょう。

この大転換の中で、中国との軍事衝突はなるべく避けるという姿勢ではありながら、必要があれば、軍事的衝突も辞さないでしょう。そのためにこそ、海軍を大増強を目指し、先日はこのブログでもお知らせしたように、空軍力の大増強も目指しているのです。

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