2018年9月23日日曜日

【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに

「これまで考えられなかったことが実際に考えられる状態となりました」

最近の米国の中国への政策や態度の変化を評して日系米国人学者のトシ・ヨシハラ氏が語った。米海軍大学教授として長年、米中関係を研究してきた専門家である。そのとおりだと実感した。

写真はブログ管理人挿入 以下同じ

最近のワシントンでは官と民、保守とリベラルを問わず、中国との対決がコンセンサスとなってきた。トランプ政権の強固な立場は昨年末に出た「国家安全保障戦略」で明示された。要するに中国は米国だけでなく米国主導の国際秩序の侵食を目指すから断固、抑えねばならないという骨子である。年来の対中関与政策の逆転だった。

ワシントンではいま中国に関して「統一戦線」という用語が頻繁に語られる。中国共産党の「統一戦線工作部」という意味である。本来、共産党が主敵を倒すために第三の勢力に正体をも隠して浸透し連合組織を作ろうとする工作部門だった。

「習近平政権は米国の対中態度を変えようと統一戦線方式を取り始めました。多様な組織を使い、米国の官民に多方向から働きかけるのです」

米国政府の国務省や国家情報会議で長年、中国問題を担当してきたロバート・サター・ジョージワシントン大学教授が説明した。

ロバート・サター・ジョージワシントン大学教授

そんな統一戦線方式とも呼べる中国側の対米工作の特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」から9月上旬に学術研究の報告書として発表された。米国全体の対中姿勢が激変したからこそ堂々と出たような内容だった。

「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」

こんなショッキングな総括だった。1年以上をかけたという調査はコロンビア、ジョージタウン、ハーバードなど全米25の主要大学を対象としていた。アジアや中国関連の学術部門の教職員約180人からの聞き取りが主体だった。結論は以下の要旨だった。

・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、教科の内容などを変えさせてきた。

・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新(しん)疆(きょう)ウイグル自治区などに関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の学者への中国入国拒否などを武器として使う。

この報告の作成の中心となった若手の女性米国人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏はこうした工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに強調していた。

こうした実態は実は前から知られてきた。だがそれが公式の調査報告として集大成されて発表されることが、これまでなら考えられなかったのだ。

いまの米国の対中態度の歴史的な変化の反映だといえよう。さて、わが日本でのこのあたりの実情はどうだろうか。(ワシントン駐在客員特派員)

【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

トランプ大統領就任後、米国は40年間続けてきた対中宥和(ゆうわ)政策を転換させました。経済が発展すれば中国は民主化するという考え方は誤りであり、逆に米国や他の自由主義諸国が中国共産党の成長に寄与する結果になったと結論付けました。そのためトランプ政権は対中強硬路線を取り、中国共産党政権に対する貿易戦争を開始しました。

米国は知的財産権や産業技術の保護にも力を注ぎ始めました。外国資本による米国企業の買収を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する法案が近日、議会を通過しましたが、中国共産党を念頭に置いているのは明らかです。

この「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」と呼ばれる法案により、米国の安全保障を脅かす可能性のある投資や買収を未然に阻止することが可能となります。

今日、アメリカは中国共産党政権が長年行なってきた統一戦線工作の手法と、それに関わる中国政府組織を暴露しています。これは中国共産党が続けてきた「硝煙のない戦争」に対する反撃であり、中国共産党の真の姿を暴く意味を持ちます。

また、トランプ政権が米国および世界各国を率いて中国共産党政権に対して反撃を開始し、貿易や統一戦線工作などの分野において「硝煙のない戦争」を始めたと言えます。


ブログ冒頭の報告書はその名称を『中国共産党の海外における統一戦線工作』と題するものであり、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に公表されたものです。

統一戦線工作は世界各国に対する「最も国家転覆的で、最も反民主主義的な浸透工作だ」と指摘しています。そのうえで、「中国共産党は統一戦線工作の範囲を海外まで広げ、外国政府や現地の華人に影響を与えることにより、北京政府に利する結果を得ようとしている」とし、「(中国共産党による統一戦線工作の)目的はアメリカ人を転向させ、アメリカ政府とアメリカ社会の利益に反対するように仕向けることだ」としています。

中国の人権問題に関心を示す他国に対し、中国共産党政権は「内政干渉」のレッテルを貼りつけました。ところがふたを開けてみれば、中国共産党政権は各種統一戦線工作を通して他国に対する内政干渉を行い、他国民を洗脳し民主主義体制と自由主義社会の転覆を目論(もくろ)んでいました。このような中国共産党政権は間違いなく世界最大にして最も陰険な脅威です。

中国共産党の統一戦線工作の特徴として「3つのD」、すなわち偽装(Disguise)・欺瞞(Deceive)・堕落(Deteriorate)が挙げられる。
1. 偽装(Disguise):中国共産党の官僚やスパイは偽装工作に長け、様々な肩書を使い分ける。こうして彼らはうまく他国に浸透し、各業界と関係を構築しパイプを作る。 
スパイ容疑で拘禁されたエドワード・チーリャン・リン米軍少佐

2. 欺瞞(Deceive):関係を構築したのち、中国共産党のスパイらは各国の政治、商業、軍隊、学術界などのキーパーソンを取り込む。名誉や利益、ハニートラップを駆使してキーパーソンを買収もしくはコントロールし、中国共産党にとって有利となるような言論を発表させる。同時に、中国共産党にとって不利となるような言論や政策を阻止させ、共産党にとって好ましくない人物を妨害する。このような工作を行うスパイらは、時には違法行為も厭(いと)わない。 
元FBIスミスは2003年四月、中国系アメリカ人の女性実業家カトリーナ・レアンに
機密資料を渡していたとしてFBIの同僚に逮捕された

3. 堕落(Deteriorate):統一戦線工作の「トロイの木馬」による浸透が奏功した後、スパイらは継続的に様々な不道徳的な手段を活用して買収工作を行い、さらに多くのインフルエンサー(影響者)を取り込む。 
取り込まれた人物らには中国共産党の利益となる言論を広げさせ、中国共産党が当該国で勢力を拡大できるような政策を制定させる。こうしてその国は政治や経済面において中国共産党にバックドアを開き、ますます堕落し、弱体化する。こうして中国共産党はその国における影響力をますます増大させ、ついには支配する目的を達成することができる。


米国の腐りきった歴史学会を語る米歴史学者ジェーソン・モーガン氏

中国共産党が相手国の立法に影響を与えることができない場合でも、世論を操作して市民社会に波風を立てることができます。例えば、中国共産党が社会の基本的価値観と乖離(かいり)した一部の者を扇動し、一般人から嫌悪される過激な手段で争いを起こすことにより、社会の分断を狙います。

または日常的に混乱や衝突を引き起こすことにより、「社会が自由すぎるのではないか」という感情を国民に植え付け、政府の権力増大を支持させます。この手法でも社会の左翼化と国家転覆の目的を果たすことが可能です。

この報告書は、中国共産党が長年アメリカの政治界と学術界に対し浸透工作を行い、アメリカのエリートが中国共産党のために声を発するように仕向けたと指摘しています。

アメリカ前政権の不作為で怠慢な態度と異なり、トランプ政権は中国共産党の「敵をもって敵を制する」作戦を暴露し、アメリカ国民に警鐘を鳴らしました。

中国共産党の脅威は東アジアや激安商品に潜んでいるのではなく、アメリカ社会の隅々まで浸透しているのです。政治界、軍隊、学術界、商業界、教育界など、中国共産党に浸透されていない部分はなく、その手段は極めて卑劣です。


米国内では日本を貶める工作も進めらている。その目的は日米を離反させること

米国では「大先生」と呼ばれた中国関連の学者や専門家が、会話の中で中国共産党統治下の中国を称賛していました。中国の将来はバラ色だと言う彼らは、書籍を出版し共産中国の素晴らしさを宣伝しました。しかし彼らは「中国と中国共産党は別物」であり、「中国国民は中国共産党員と同じではない」という基本中の基本すら理解していないようです。

後でわかったことですが、それらの「大先生」はみな中国国内で何らかの教育活動に従事し、中国政府から利益供与を受け、多くの肩書や賞をもらっていました。

事実、中国共産党の「敵をもって敵を制する」策略の目的は、徐々にアメリカ社会に浸透することであり、アメリカが中国共産党に対し警戒を解くよう仕向けるためです。同時にアメリカ内部で勢力を持つ社会主義者やリベラル派などの左翼勢力と連携し、アメリカを蝕(むしば)みます。そして米国の政権を奪い取り、最終的には完全に左傾化させ、社会主義国とすることが最終目的です。もし米国が社会主義国となれば、万事休すです。

「中国共産党の統一戦線行動は米国に対する重大な挑戦であるにもかかわらず、簡単に説明できる問題ではない。なぜなら中国共産党と中国は分割できないものだと中国共産党が頑なに主張してきたからだ。」

長年、中国共産党は「中国は中国共産党と同一の存在だ」というイメージを意図的に形作ってきましたた。そのため多くの中国人と外国人は「中国と中国共産党は別物である」ということを忘れてしまいました。そのため、中国共産党の統一戦線工作を封じ込めるための政策が、ポリティカル・コレクトの名のもとに「人種差別」「国家蔑視」と批判されてきました。

米国政府はすでにこれを警戒し始めました。今年5月、航空会社の「台湾」表記の問題について、ホワイトハウスの報道官は「中国共産党が」圧力をかけたと非難しました。

今年7月に行われた安全保障フォーラム「アスペン・セキュリティ・フォーラム(ASF)」では、中央情報局(CIA)東アジア部のマイケル・コリンズ氏が中国と中国共産党とを区別すべきだと強調しました。

そうしなければ、中国共産党を批判する言論が「反中国」「反中国人」であると誤解されるからです。「客観的に言えば、私たちは中国や中国国民、中国の発展を脅威とみなしているわけではない」とコリンズ氏は言います。「私たちが心配するのは中国共産党の向かう方向だ。中国共産党が達成しようとしている目標、および彼らが目的達成のためにますます高圧的な手段を用いていることを懸念している」

米国は度々「中国と中国共産党は別物である」と強調してきました。これはトランプ政権が、中国共産党が長年刷り込んできた誤った認識を見破ったことを意味します。中国共産党は長年「中国と中国共産党は同一の存在だ」とする嘘偽りを発信し続け、中国国民を欺き、全世界を騙しました。トランプ政権によってこの化けの皮がいま、はがされつつあります。

正確に言えば、中国共産党は西洋から来た悪霊(共産主義は元々西洋から生まれた思想)のような政権であり、中国伝統文化とは相入れない存在です。中国は中国共産党政権に寄生されたのであり、中国国民は不幸にも中国共産党政権の奴隷となってしまったのです。

米国メデイアが中国に浸透されていることを考えると、
米国メディアのトランプ報道は真に受けることはできない

メディアは中国共産党の統一戦線工作における重要な対象です。報告書によると、オーストラリアとニュージーランドのメディアに対する買収工作が最も進んでおり、オーストラリアの中国語メディアの95%近くは中国共産党政権に買収されています。

ジェームズタウン基金(The Jamestown Foundation)が2001年に行なった調査でも、アメリカでは少なくとも「星島日報」「世界日報」「明報」「僑報」などが中国共産党による直接的・間接的コントロールを受けていることが分かりましたて。

CIAのコリンズ氏もメディア買収に対し懸念を示しました。「私は彼ら(中国共産党)が選挙を操作するのではないかと懸念している。これは政治干渉である。ほかにもメディアに対する干渉、経済に対する干渉などなど。彼らが私たちの思想をも干渉するのではないかという懸念もある」

アメリカのメディアに対する中国共産党の浸透の度合いを調査した研究はまだないですが、トランプ大統領に対するアメリカ左翼メディアの猛烈な攻撃の背後には、中国共産党の姿が見え隠れています。

中国の各種不道徳な行為を暴くトランプ政権

中国共産党は長年外国に対して統一戦線工作を仕掛けてきましたが、中国共産党はこれを決して公にしてきませんでした。いま、米国政府は公式報告書で中国共産党の統一戦線工作を系統的に暴露し、その化けの皮をはがしています。同時にこれは、他国を転覆しようと画策する中国共産党の不道徳な国際戦略に対し、米国が照準を向けたことをも意味します。

過去数十年に渡り、中国共産党は不公平な貿易によって自身の経済規模を拡充してきました。また、非合法的な技術の取得による自身の先端科学産業を発展させてきました。そして非人道的な低賃金・人権無視の戦略を用いて外資企業を誘致しました。

その極みとして、不道徳的な統一戦線工作を通して外国の世論や政策を操り、もって他国の政権や民主主義社会の転覆を目論んだのです。

中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。

なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。

とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。

これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。

そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。

日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。

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